水鏡律季と爆乳魔女 ~ハングリー・フォー・バスト~   作:黄緑信号

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8. 新たな敵はボクっ子属性(♡)

 

 

 

 『魔女の悪夢』 ――レイン先生との特訓二日目――

 

 

 

 夢の風景は入るごとに変わる。二日前はプールで、昨日は無人のショッピングモールのような場所に来た。

 今日の夢は、昨日までの薄暗さとはうってかわって晴れた草原の形をしている。一見すがすがしいが、地平線のかなたまで何もない平坦な野が広がり、風も吹かなければ空の雲も一切動かないのだ。まるでパソコンの壁紙の中に入り込んでしまったかのような異様さだった。

 

「色気のない場所じゃよなー。せっかく律季と二人っきりだというのに」

 

「魔物が来たらすぐわかるのはいい点ですけど……うぅぅ、キツイ……!!」

 

「これ、バランスを崩すな。運動部の体幹を見せんか」

 

 俺は今――レイン先生と一緒に、『太極拳』の型を行っていた。

 ラジオ体操のように見えるが、実戦で使う各種の技がシームレスにつながって織り込まれている。『套路』と呼ばれる練習方法らしい。

 

 中国拳法らしく頻繁に片足立ちをする上、全身に重しをつけているので、バランスがどんどん崩れていく。

 こうなるとゆったりした動きなのが逆にきつい。すでに20セット、一時間以上ぶっ続けだ。

 

「で~♪ ででん♪ ふぉ~わ~♪」

 

 一方のレイン先生はまだまだ余裕だった。カンフー映画っぽいハミングをしながら、ヘロヘロの俺を見てニヤついている彼女は、素人目からも恐ろしく流麗なお手本を見せてくれる。

 ――だが、いくつかの型の腕の運びを、胸についた巨大な双球が邪魔していた。今レイン先生は、動きがわかりやすくなるようにと、ビキニタイプのスポーツウェアを着けている。下着同然の露出度がエロすぎて目のやり場に困るが、お手本なので凝視しなければならない。

 むしろ体力よりソッチが辛かった。なにしろ型の実践中なので、前かがみにもなれないのだ。

 

「がたついてきとるぞー? おっぱいばっかり見るからじゃ♡」

 

「す、すみません。……でも、こんなゆっくりな動きで、本当に敵に勝てるんですか?」

 

「そんなもん無理に決まっとる」

 

「えー!?」

 

「そりゃそうじゃろ。馬鹿正直にこの型どおりにやったら勝てるわけがない。拳銃すら想定してない武術が、魔法使いに敵うはずなかろう。

 ただ――今のおぬしは、まだ敵と戦うとかいう段階に達しておらぬからの。まずは基礎づくりから……そういう意味で、これが一番の訓練なのじゃ」

 

「……中国拳法がですか?」

 

「そうじゃ。中国には、古くから魔法に関する知恵がある。たとえば古い医療では、人体のエネルギーの通り道を経絡(けいらく)と呼ぶが――これは要するに、魔法使いの魔力経路と同じもの。太極拳はその経絡を活性化させる拳法じゃから、魔法の基礎出力を向上させる効果があるんじゃ。

 ――どうじゃ律季? そろそろ、『体の中』が痛くなってきたのではないか?」

 

「――! ホントだ……なんか、全身の骨が熱を帯びてるって感じです」

 

「その痛みこそ、おぬしの力が伸びようとしている証拠じゃ。筋肉痛の魔力経路版といったところか。

 やったのー律季♡ レベルアップじゃぞー♡ ぱんぱかぱーんじゃ♡」

 

 ある程度筋トレをする俺としては、痛みがある時ほど鍛錬の効果を実感する。

 ちゃんと効いていることが感覚でわかったのもうれしいが、レイン先生の期待に応えられた喜びのほうが大きかった。……もっとがんばりたくなる。

 

「じゃが、魔力の高を増やすためだけにこれをやらせたわけではない。学べることはもう一つある――『発勁』の技術じゃ。律季も名前は知っとるじゃろ?」

 

「一応。でもあれって漫画の設定じゃないんですか?」

 

「もちろん実際にある技術じゃ。熟練した武術家ならごく普通に使える。

 ――ま、ともかく見せてやる。息を止めて口を閉じるんじゃ」

 

「? は、はい」

 

「……えいっ♪」

 

「――ぐう゛ッッ!!??」

 

 てのひらを俺の腹につけて、レイン先生が軽く「くいっ」と掌底を押し出した瞬間――俺の体が、くの字に曲がる。

 とてつもない衝撃と激痛が走り、一瞬目の前が赤くなった。全身から汗を吹き出しながら崩れ落ちる。

 

「っ……あ゛あ゛……ッ!!」

 

「ちなみにこれも、太極拳が律季に向かない理由の一つでな。このように掌底を使った攻撃が多いせいで、根本的に『生本能の拳(リビドーナックル)』とかみ合わんのじゃ。……どうじゃ、威力がわかったろう?」

 

「も、もちろんです。でも、ちょっとは手加減してほしかったっていうか……うぐぐ……」

 

「すまんのー、しかしこれでも精いっぱい弱めたつもりなのじゃ。――ほれ、痛いの痛いのとんでけっ♪」

 

「……は、はい。ありがとうございます。おさまりました」

 

「……えっ?」

 

 本当にけろっと痛みが消えた。さすがは魔法使い、彼女の手にかかれば子供のおまじないも本物の癒しになってしまうらしい。――なぜかレイン先生本人はドン引きした顔をしていたが。

 

「でも、確かにすごい技っすね。こんなのが直撃したら誰でもイチコロですよ」

 

「……あ、ああ、うん、そうじゃな……。これを使いこなせれば、格上の魔法使いとも十分渡り合えるはずじゃ。

 ――しかし、破壊力がある分デメリットも大きい。体内の力の流れを速めて放出する技ゆえに、力の流れが妨げられてしまうと、誤った場所で『発勁』が起きてしまうのじゃ。つまり、さっきのが自分の体内で暴発することになる」

 

「……想像したくもないですね」

 

「エネルギーがでかいほど大けがはまぬがれん。要はその事故を防ぐために、先に『型』をマスターするんじゃ。

 体内で生み出したエネルギーを、末梢へ効率よく伝達する動きが『型』。正しい動きによって余計なクセや力みを解消することで、体内にある魔力の流れを整え、スムーズに出口へ持っていくのじゃ。

 それを安定して成せるようになれば、あとはどこからでも破壊力ある攻撃が繰り出せるじゃろう。パンチ、キック、タックル、なんなら頭突きでもOKじゃ」

 

 ビックリするほどわかりやすい。やっぱりこの人は教師なのだ――と再認識する思いだ。ただの変な大人ではない。

 『型』の練習は使える魔力量を増やすと同時に、攻撃動作の矯正の役割がある。俺に一番合うように考えられた訓練だ。

 

「とはいえ、今は超回復中じゃから焦って動いてもムダじゃな。

 ――というわけでご褒美タ~イムじゃ♡ 律季、今日はなにがしたい……?」

 

 しかもこの調子で、事あるごとにエロいことをさせてくれるのだ。

 教えるのもうまければ、貰いすぎなくらいアメもくれる。理想の教師にもほどがある。

 

「……太ももを、すりすりさせてほしいです……」

 

「おっ♡ すなおになってきたではないか~♡ ――良いぞ♡ 心ゆくまで触るがいい♡」

 

 煽情的なカラダを目の前でフリフリされて、そろそろ限界だと思っていたころだ。

 レイン先生は迷わずお尻を俺のほうに突き出す。パッツパツのスポーツビキニに包まれたデカケツが、「早く♡ 早く~♡」と誘う。しゃがんで顔を両脚の間にうずめ、両手で太ももをなでまわした。

 

「っ~~~♡♡ そ、そこまでガッツリいかれるとさすがに恥ずかしいの……♡ 顔が見えないから少しおっかないな……♡

 ――じゃから反撃する♡ こっちからも押し付ける~♡」

 

「――ううっ♥」

 

「あ……言っとくけど、こんな時にこんなことしてていいのか~、とかいう罪悪感は感じなくてよいからの~♡

 ――律季をエロい気持ちにさせる事も、わしの計算のうちじゃから♡」

 

「え……? ど、どういうことですか?」

 

「性的興奮にも魔力回路を育てる効果があるんじゃ。しかも通常の訓練とは違って、痛みという副作用もない。

 だから……ただ根を詰めて訓練するより、ごほうびがあるほうが賢いやり方なんじゃ♡ 鍛錬とエッチのサイクルこそが、最適解というわけじゃな……♡」

 

「――!」

 

「わしがこ~んな格好してるのも最初からそれが目当てじゃ……♡ おぬしがムラついているのを感じて、わしは内心しめしめと思っとったんじゃぞ~♡ 興奮してくれればくれるほど力の伸びにつながるわけじゃから……♡

 しかし、律季はわしに感謝せねばならんぞ? だって、バディでもないのに鍛錬目的で体を貸してくれる女なんて、ふつうはいないんじゃからな……♡ 

 ――よかったの♡ わしが『都合のいい女』で……っ♡」

 

 感謝するに決まっている。していないわけがない。鍛錬目的であろうがなかろうが、こんな気軽にエロいことをさせてくれる女性がそもそも皆無だ。

 ただの逆セクハラ魔だと思っていたが、やること全部に意味がある――レイン先生って、実はとんでもなく凄い人なのか?

 

「だから我慢するな……いっぱいハァハァしてくれ♡」

 

「そ、そうですよね……これで強くなれるんですもんね」

 

「そうじゃぞ~♡ こうやってわしの太ももに甘えるのが、炎夏を助けるのに繋がるんじゃ♡

 おぬしのムラムラは正しいムラムラ……♡ おぬしのセクハラは正義のセクハラ……っ♡ 気持ち悪くなんかないぞ~っ♡ むしろかっこいい事なんじゃっ♡」

 

 天使の微笑みで、そんな事を言ってくれる。

 俺のために献身してくれる上、わずかな罪悪感さえ取り払ってくれる。それどころか、男が性欲をむき出しにする様を『かっこいい』とほめてくれるのだ。

 

「わしは非力じゃから、戦闘には参加できん……こんな形でしかおぬしらの力になってやれんが、どうか許してくれよ」

 

「そ、そんなっ! 謝ることなんてありませんよ」

 

「――っ♡ んぁぁぁぁ~~~~~~っ♡♡ 律季の、入ったぁ~~~~~っ♡♡」

 

 閉じられた太ももの間に指を差し込んだだけなのに、レイン先生はわざとらしく嬌声をあげる。

 露骨な演技なのに体中が熱くなった。――教えるのだけでなく、男の性欲を煽るのも最高にうまい。

 

 ――ずぷっ♡ ぐぐぐ……っ♡ ずぷ……っ♡

 ピッタリと合わさった太ももが俺の指を締め付ける。何が起こるかは明白だが、たまらず抜き差ししてしまった。

 

「――あんっ♡ あぁんっ♡ 律季、好きっ♡ 好っきぃ~……♡」

 

「う゛う゛……レイン先生、かわいい……!!」

 

「ふふっ♡ がんばれがんばれー♡ いっぱいムラついて力を鍛えろ……っ♡

 魔法を悪用する教国の連中に、おぬしの正義を見せてやるんじゃっ♡ 力とは、女を無理やり手籠めにするためのものではない――女に見せびらかして、惚れさせるためのものだとな~っ♡」

 

「……み、見せびらかす……?」

 

「――ああ♡ もちろん、炎夏に……じゃ♡ 襲ってくる魔法使いを叩きのめしてやれば、おぬしの雄姿に炎夏もメロメロ……♡ 彼女にして~♡ って、むこうから頼んでくるに違いないぞ……♡ そしたら契約で、自動的にわしもゲットじゃ♡ 

 爆乳魔女二人を毎日はべらせる、おっぱいハーレム♡ その完成は間近……っ♡♡ 男にとっての永遠の夢も、おぬしなら簡単に叶えてしまえる♡ 教国の魔法使いなんか蹴散らして、四つのおっぱいを手に入れような~っ♡」

 

 「えい、やーっ♡」とパンチをする真似をして、レイン先生が応援してくれる。

 ――もう、なんでもできそうな気分だった。信じてくれる彼女を裏切れないという責任感も生まれる。

 

「もうちょっとだけイチャイチャしたら、訓練に戻るぞ~♡

 『型』を一通りマスターしたら次は実戦編。魔法使い流の格闘術を叩き込んでやる。当然、ごほうびもたくさん挟みながらな……♡ 

 

 ――くくく♡ 特訓もエッチも、まだまだこれからじゃぞ~♡」

 

「むぐっ……は、はい……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの夢の中の戦闘から四日後。

 「敵がいつ来るかわからないから油断するな」――そうレイン先生に忠告された私は、学校にいる時も常にポケットの中に杖を忍ばせていた。

 異界である夢の中ならいざ知らず、イルミナ教国と日本では地球の裏と表だ。下っ端の魔法使いがやられたぐらいでムキになって、わざわざ私を狙ってくるのか? ――その疑念はあるのだが、そう言うとレイン先生はなぜか口ごもる。

 どうも彼女しか知らない――私個人を特別に狙う理由が、なにかあるようだった。

 

「――あ、水鏡くん」

 

「こんにちはー。秋月先輩も」

 

「おす。……なんか、ずいぶんお疲れだな?」

 

 昼休みに教室を出ると、廊下で水鏡くんが待っていた。

 ニコニコしているが目の下にクマができ、若干元気がない。勉強やバスケ部の練習に加え、やはり魔法の自主トレも隠れてやっているのだろう。

 彼を魔法に深く関わらせるのは、心が痛いが――自衛のためでもあるし仕方ない。実際に敵に襲われた時には、私が守ればいいことだ。

 

「ゆうべ暑かったから寝不足なんです。天道先輩に相談があるんですけど、お時間いいですか?」

 

「ええ、もちろんいいわよ。ご飯まだなら一緒に食べる?」

 

「……? 相談ってお前、ここんとこ毎日来てるのにまだ相談があるのか? 

 ――仲直りできたのはよかったけど、あの時から二人ともなんか妙だぞ。何かあったのか?」

 

「――い、いえ、別になにも……!」

 

(……伝えてないのか。ということは秋月先輩、俺が魔法使いになったのもまだ知らないな……)

 

 「……アイツ、また来てるのか」という声がどこからか聞こえる。ここのところ彼は、ずっと私にくっついていた。

 ボディガードをしてくれているのに、周囲にはストーカーっぽく思われてしまっているらしい。螢視は純粋な好奇心で聞いているだけだが、わりと本気で水鏡くんに敵意を抱く男子までいるのだ。それが嫌だった。

 

 ――ただ、やはり誰も水鏡くんの髪色については気にしていない。

 面識があるはずの螢視でさえもだ。私は、いまだに違和感があるというのに……。

 

「……まあいい。無理にとは言わねえよ」

 

(うっすら察してるわねこれ! あーもう、どれだけ隠し事がヘタなんだ私はー!?)

 

「じゃ、先輩をお借りしていきます。今度三人でご一緒しましょうねー」

 

「ああ」

 

 二人で話しているところは見たことが無かったが、この距離感の近さ。水鏡くんと螢視が中学時代に友達だったというのは本当らしい。

 では、やはり、あの『転校の話』も真実なのか――中学に入って間もない時に、親御さんを亡くしたというのは。階段を上っていく彼の背中を見ながら、私はそれを信じられない。

 

 

 

「――ふう。どうせ同じ建物の中にいるんだから、無理に来なくてもいいのに。変な噂が立ったら君も困るでしょ?」

 

 

 

 屋上へたどり着き、人目がなくなった時、私はそう言った。

 太陽の光を浴びて伸びをしながら、水鏡くんはニコニコして返す。

 

「構いませんよー。実際先輩に会いたくて来てるんだし、あながち誤解でもありませんから」

 

「……むう」

 

 間延びした口調といい、あけすけな物言いといい、ちょっとレイン先生の性格がうつっている気がする。

 あれからというもの、水鏡くんは完全に私への好意を隠さなくなった。しかし付き合い方そのものは以前とあまり変わらない。あくまで親しい友達の距離感を保ちながら、遠慮なく好き好きオーラを放ってくる感じだった。

 露骨に狙ってくるので若干の危機感はあるが――私の経験上振った相手は、よそよそしくなったり、完全に近寄らなくなったりすることが多かった。それに比べると、水鏡くんの方がずっと安心できる。

 

「それに――もっとヤバイ奴らも、先輩を狙ってますからね。

 いざって時になったら合流する余裕があるかどうかも分かりません。二人になれる時はできるだけ二人の方がいいでしょ?」

 

「大丈夫よ。攻撃されるならまず私だから」

 

「だから、それが嫌なんですってば。夢の中でも言ったような気がしますけど」

 

「私だって君を巻き込みたくないわよ。自分一人で片づけたいの」

 

(……あいかわらず強情だなー……)

 

 水鏡くんは不満げだ。というより、ちょっと拗ねている。

 分からず屋だと思われているのだろう――確かに論理的にいえば彼が正しい。そんなことは私だってわかる。水鏡くんの能力はすでに実証済みであり、一人で戦うより二人で戦う方が勝率が高いのが道理だ。誤解されるのも顧みず、私を助けようとしてくれるのは本当に嬉しい。

 

 ――しかし、狙われているのはあくまで私一人。

 本来なら戦うのは私だけでいいはずだし、危険を招いた者として他者を巻き込まない責任がある。

 水鏡くんが善意で力添えをしてくれるのはありがたいが、ぶっちゃけると見捨ててもらえた方が、むしろ気が楽なのだ――好きだという理由だけで命まで賭けられては、こっちが委縮してしまう。

 水鏡くんはもっと自分を大切にするべきだ。

 

 

 

「――ほう? ではキミの期待には沿えないかな」

 

「――!!」

 

「先輩。俺の後ろへ」

 

 

 

 頭上から響いた声に私は驚愕する。

 水鏡くんは瞬時に笑みを消し、弁当箱を日陰に置きながら源形(アーキタイプ)を展開する。もう片方の手で私の手をとり、自分の後ろに引き寄せてかばった。

 対応によどみがなさすぎる――ニコニコしながらも、ずっとこれあるを覚悟していたのだ。

 

 

 

「早く片づけて昼ごはんが食べたいんだ。出来たら、とっととやられてくれない?」

 

「……それ、降伏勧告のつもりかよ?」

 

 

 

 貯水槽に座ってスケッチブックを手にした、茶髪のボブカットの女の子。その傍らに立って細長い棍棒を肩にかけた、銀髪赤目の少年。

 ――彼女たちが、敵? 二人とも私と同年代にしか見えない。しかも教国の人間のはずなのに、明らかに日本人だ。

 

(参ったわね……まさか白昼堂々、学校で襲ってくるなんて! 水鏡くんも一緒なのに……!!)

 

(学校で襲われるなら好都合(・・・)だ。帰り道や家にいる時に、別々で襲われるのが一番怖い……そうレイン先生が言ってた。二人で戦えるなら勝ち目はぐっと増す。

 だから――むしろ問題は、『この人たちがあえてそうしなかった(・・・・・・・・・・)』理由だ……)

 

「さっ、戦の流儀だ。口がきけなくなる前に名乗りなよ」

 

「――ずうずうしいこと言わないで。あなたたちが勝手に仕掛けてきたんでしょ」

 

 そう言いながらも、密かに解析(クリアボヤンス)で周囲を探った。

 少なくとも近くには他の人の気配はない。やはり『二人組』――水鏡くんの言葉通り、バディのツーマンセルの原則に従っている。

 

 

 

「じゃあボクらから名乗らせてもらおう。

 ――イルミナ教国SSS(シークレット・ソーサリー・サービス)所属。神瀬ユウマだ」

 

「同じく朝霧レン。これよりお前たちを逮捕する」

 

 

 

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