殺される。間違いなく殺される。男はすぐやってくるだろう。
「──ー」
槍の穂先が走る。その瞬間膝が体を支えられなくなり前のめりに倒れる。奇跡的に穂先をくぐり抜けて、その槍は本来の行き先ではない土蔵の重い扉を強打し、その扉を弾き開けた。
これが最後のチャンス。
「ぐっ、!」
土蔵の中に何か武器になるものはないかと四つん這いになって中へ滑り込む。そこへ、避けようのない必殺の槍が放たれた。
必死で強化したポスターを盾替わりにして槍と身体の間に滑り込ませる。その一撃は防げたがポスターはひしゃげ、突き出された槍の衝撃に自分の身体が壁まで吹き飛ばされる。
「ぁー」
床に尻餅をついて顔を上げると目前には、槍を突き出した男の姿があった。
「もしやとは思うが、お前が七人目だったのかもな。ま、だとしてもこれで終わりなんだが」
今までの速さが嘘のようにスローモーションに見える。
走る銀光。
心臓に吸い込まれるように進む穂先。
一秒後には血が出るだろう。
こんなところで意味もなく死ぬのか? 本当に?
俺は生きて義務を果たさなければいけないのに、こんなのふざけている。ふざけるなっ、!
「え」
それは唐突に、魔法のように、現れた。
目映い光の中、それは、俺の背後から現れた。
現れたそれが、侍の姿をしていることしかわからない。
それは現れるなり、俺の胸を貫こうとした槍を打ち弾き、躧躇う事なく男へと踏み込んだ。不利と悟ったのか、男は獣のような俊敏さで土蔵の外へ
飛び出し、退選する男を体で威嚇しながら、それは静かに、こちら
へ振り返った。
風の強い日だ。
雲が流れ、わずかな時間だけ月が出ていた。
土蔵に差し込む銀色の月光が、侍の姿をしたその男を照らしあげる。
「おい、お前さんが俺の、マスタかー?」
その日、少年は運命と出会った。
広大に緑々と広がる森
生い茂る草木や花の源には
清らかに流れる川
そして美しい海
生命があふれていた頃のとある国から
かつての当代きっての人気者、見参。
「ただいま〜」
少年、衛宮士郎は食材の買い物を終えて自宅、衛宮邸へと帰ってきた。
「おう、帰ったか!」
「おかえりなさい、衛宮くん」
帰ってくる声は2つ。荒々しくもどこか惹かれるものを感じさせる侍風の男と、同じ学校に通っているみんなからの憧れの才色兼備の女性の声。
数奇な運命により衛宮邸にはこれまでより人が増えていた。
先に手でも洗ってきなさい、などというどこか育ちの良さを感じるお嬢様然とした言葉を聞き入れながら彼はひとり心の中でごちる。
なんでさ。