彼のことが大大大大大好きな100人の彼女達とその彼氏を隣で見てる普通の友人 作:ヘルメットのお兄さん
俺の友人に愛城恋太郎という男が居る。
そいつは子供のころから一緒にいる幼馴染で一言で言えば愛に飢えてる悲しきモンスター。
顔は良い、運動も勉強も出来る方だし誠実を絵に描いたような真面目な奴だ。
……なのにどういう訳かあいつと出会った幼少期から中学三年の卒業式まで未だに彼女が居ない、一度恋太郎を振った女の子に「どうしてあいつを振ったんだ?」と聞いてみたが
────―恋太郎君の事は好きよ? とっても真面目だし運動も勉強も出来るし、それに私が困っている時すぐに助けてくれたから……だけど恋愛対象としては反吐が出そうなの! 本当良い人なんだけど反吐が出そうなの!!
あの良好な反応で反吐出されてた、しかも二回も。
俺も彼女は出来た事は無いが丁度先程100回も振られた恋太郎は凄かった、卒業証書入れる黒い棒を何故か二個持ちながら泣いていた。
「そ、そう悲観するなって恋太郎、人生まだまだ長いんだからきっと高校では彼女が出来るって」
「友次郎先生…………彼女が、欲しいです────―っ! 」
「三井かてめーは」
友次郎というのは俺の名前、
正直こんな俺の友人をやってくれる恋太郎には感謝している、多分女だったら惚れてた……けどもし女だったらやっぱり俺も反吐が出るのだろうか?
「あ、ほら恋太郎。ここ確か縁結びの神社じゃなかったか? ほらお祈りしていこうぜ」
「彼女が出来ますように彼女が出来ますように彼女が出来ますように……!!!」
「せめて賽銭箱の前でやれ階段に祈ってどうすんだ」
そうして俺は五円を、恋太郎は5千円を賽銭箱にぶち込んでお祈りをした。
「(高校でも恋太郎と仲良くいられますように)」
「どうか……どうか恋の神様仏様……!! 高校でこそは彼女が出来て幸せな学園生活が送れますように……!!」
なんだろう、ここまで本気で祈られると神様も大変だろうなと思う。
「大丈夫じゃ」
────―? 今、賽銭箱の方から声が……
そう思い賽銭箱を見ると、白い髭をこれでもかと伸ばしたハゲの老人が賽銭箱から顔だけ出していた。
「「ぎゃああああ賽銭泥棒!?」」
「こんな奇々怪々な登場の仕方する賽銭泥棒がおるか!! わしゃこの神社の神じゃ!!」
「そんな奇々怪々な登場の仕方をする神がいるか!!」
「いや待て恋太郎! こいつ明らかに賽銭箱をすり抜けている……! 多分本当に────―妖怪の類だ」
「仮にも神を妖怪とか言うな」
神は物体をすり抜けながら俺達の前に立つと恋太郎に目線を動かした。
「……恋太郎よ、祈願などせずともおぬしは高校で”運命の人”と出会うことになっておる」
「う……運命の人……!? ────―あぁ、あれね。”うんめぇのひと”ね? 運命じゃなくてうんめぇのね? 味が」
「恋太郎大丈夫!! このハゲちゃんと運命って言ってるから! デスティニー! フェイト!!」
「おのれは神の事ハゲとか言わない方が良いよ?」
◇
「────―つまり、恋太郎はこれからの高校生活で運命の人に100人と出会えると?」
「うむ、そういう事じゃ」
「そ、そんな……俺が彼女選び放題だなんて……!!」
恋太郎がかつてない程にやけた面をしている……しかしこれならずっと彼女ができなかった理由がつく、謎の反吐は彼女達が恋太郎の運命の人じゃないからだった訳か。
「う……嘘じゃないよな? そんな夢みたいな話……!」
「ああ、神は嘘などつかぬ」
「良かったな恋太郎、とうとうお前の苦難が報われるんだな……!」
「あぁ……! そうだ、もし嘘だったらこの神社燃やしても良いか?」
「いくら疑わしいからって普通神を脅すかこのバーチャル世代が」
「あ、神様。ついでだから俺にも運命の人がいるかどうか教えてくれよ」
俺は神にそんな事を聞いてみた、恋太郎みたいに100人とは言わずとも、一人くらいはいても────―
「あ、あー……そうじゃな……おぬしは……高校に入ってからのお楽しみという事にしておこうかの!」
「恋太郎、そこのかさの開いた松ぼっくり持ってきてくれ」
「確実に燃やそうとするな」
◇
高校入学式当日。
凄い日が飛んだ気がするが多分気のせいだろうな、うん。
「恋太郎とは名前が離れてるから番号が遠いんだよな……えっと、この後はクラスでの校則説明があるから……あ」
俺は恋太郎を探していると廊下で座り込んでいる三人組を見つけた。
どうやら曲がり角でぶつかったようだがはて、どうやら揉めているみたいだ。
「って、恋太郎じゃないか」
そこにいたのは足を押さえている女の子二人と涙を流している恋太郎、ふむ。
「あ、友次郎……! 良かった、俺を殴ってくれ!!」
「オラァッ!! 」
「「!!!!?」」
ノータイムだった。
俺は誠実な恋太郎の頼みなら誠実に答える様にしている、だから恋太郎が自分を殴ってくれと言うならばきっとそれ相応の理由があるのだろう。
なので死なない程度に本気の2割の力で殴った。
「もう五回は殴ってくれ……!! 歩く筋肉要塞の俺を……!!」
「五回は死ぬぞ?」
「なっななにしてんのあんた!!?」
慌てて立ち上がった二人を見た恋太郎は驚いた様な顔をした。
「あ、あれ……二人とも、足は?」
「「────―」」
二人は静かに姿勢を戻すと
「「いたたたた」」
「!?」
「い……いいから早く肩貸しなさいよ!」
「え……あ、う……うん……」
そうして恋太郎は二人の女の子に肩を貸すと(一番肩を貸されるべきは肩が陥没している恋太郎なのだが)保健室へ連行されて行った。
「────―あ、もしかしてあの子たちが運命の子か?」
俺は以前会った神の事を思い出す、だとしたら本当に恋太郎に春が訪れたという事だ。なんと喜ばしい事だろう。
さてそれから放課後、恋太郎が見つからないので趣味の筋トレを裏庭の柱で懸垂していた所、4時間ほどたったあたりで恋太郎が慌ててジュースを持って来ていた。
「(あれ、恋太郎……? と、あそこで這いつくばってんのは金髪の子じゃないか)」
何か会話しているようだが金髪の子の顔が赤くなっていって……あ、どっか行った。
内容が気になるが今日はまだ筋トレがあと4時間残っているのでこのまま続けることにした。
少しして入れ替わるように桃髪の方の子がやって来た、あの子はわかりやすく恋太郎に惚れているな……。
あ、恋太郎が桃の子にジュースを渡して……えぇ……めっちゃ溢してる……そして落としてこれ以上ない程悔しがっている……ヤバいなあの子……
恋太郎がハンカチを桃の子にさっと渡した、うーむ流石気遣いの鬼恋太郎だ。あの優しさで彼女が出来なかったの、つくづく運命って残酷なんだな。
……ん? なんか後ろからガチャガチャ音が……
思わず足を上げ天井に張り付く様に隠れると金髪の子が大量のジュースを持って走ってきた、恋太郎に渡す為だけど好みがわからなかったと見た。俺は恋太郎の好物は卵料理だと知っているがな。
「す……好きです…………! 私と……付き合ってください……!」
直後、大量の缶が落ちる音。そして呆然とする金髪の子、これは修羅場ですか?
◇
その後、恋太郎から直接聞いたが桃髪の子────花園さんというらしい──と金髪────院田さんからの告白を保留にしてもらったそうで、修羅場にはならなかったらしい。
恋太郎はそれはもう幸せそうに悩んでいた。
「────―なんで俺は彼女いないん?」
「なんじゃ藪から棒に」
「恋太郎が恋愛で悩めるのは良い、あいつには良い人生を送って欲しいからな」
「それで?」
「俺も彼女居ても良くない?」
「そう言われてものう……運命の人がいる、それだけで幸運なんじゃ」
「えー……、というか、他にいるのか?」
「何がじゃ」
「恋太郎みたいに複数の運命の人がいるって事」
俺がそういうと神様はぎくりと視線を逸らした。
その様子に訝しんでいると切羽詰まった顔で恋太郎がやってきた。
「あれ、友次郎……?」
「よう恋太郎、……あぁ、その様子だと決められずにいるな?」
俺の言葉に恋太郎は図星だったようで困ったような嬉しい様な顔をしていた。
「そうなんだよ……それで他の人はどうしてるのかと聞きに来たんだ」
「…………………………そ、そのことなんじゃがな………………」
◇
「はぁ!? 運命の人は一人しかいない!?」
「本来はな……お主が生まれた時、ある重大な出来事があってそのせいでワシがミスを犯してしまったんじゃ……」
「そ、その重大な出来事って……?」
神様は沈黙した、そして重い口を開くと
「金曜ロードショーでラピュタがやっとったんじゃ……」
「テレビ見ながら仕事してんじゃねーよ神が!!!」
「神もラピュタ見るんだ……」
「違うんじゃ……! あれがワシの初見だったんじゃ! 初見バルスなんじゃ!!」
「ああ、初見じゃあ仕方ないな……ってなるか!!」
「というか、確か恋太郎は100人の運命の人がいるんだよな……? まさかこれから先もこうやって悩まなきゃいけないのかこいつは」
だとしたら俺は神を始末する必要が生まれるかもしれない、と思っていると神は更に申し訳なさそうな顔をして……
「それから……言いづらいんじゃけども……運命の人と出会った人間がその相手と愛し合えなければ……近いうちになんやかんや不幸にあった後死ぬのじゃ」
────―死ぬのじゃ?
「え、じゃあもし片方を断ったら……」
「ああ……もう一人は、死ぬ」
「そんなもん選びようがあるかああああああああああ!!!!!! 」
◇
「ぐおおおお……!! 悩みを減らしに行ったはずがむしろ増大してしまった……!! 」
「どうするんだ、恋太郎」
顔を覆いながら壁にわかめの様に張り付いている恋太郎に声をかける、はっきり言ってあのハゲ神が100%悪いがどうこう言った所でどちらかが死んでしまう事は変わりがない。
くねくね苦しんでいる恋太郎だったが、突然考えたような表情をすると俺に提案をしてきた。
「……院田さんと花園さん、それぞれに内緒で二人同時に付き合っちゃえばいいんじゃないか?」
「内緒でって……」
「明日……約束の裏庭では断ってその後個別に付き合うと言えば……」
バキィ、と殴る音が響いた、恋太郎の頬が痛みで赤くなる。
「────―いや何やってんの???? 」
なんか急に自分を殴りだした……怖
「馬鹿か俺は……っ!! あんなに一生懸命に気持ちを伝えてくれた二人にそんな事をしていい訳ないだろうっ!!!!」
「あぁ……そうだな、でも急に自分を殴るのは止めような? 俺が代わりに殴るからさ……」
恋太郎は顔を拭うと曇りが晴れたような目で俺を見て来た。
「ありがとう。────―友次郎、手伝って欲しい事がある────」
◇
翌日。
俺は裏庭の全体が見える二階の窓から恋太郎を見下ろしていた。
花園さんと院田さんがやって来る、恋太郎は二人に手を差し出すと────―
「二人とも
俺と付き合って下さいっっ!!!! 」
────―二階まで聞こえる本気の声、それに対して彼女達は……
ああ、やっぱり困惑と驚きの表情が浮かんでいる。
まあ、普通はそうだ。目の前で堂々と二股宣言をしているのだから、そりゃ怒るのも当然だろう。
けど────―
「俺にはどうしても……決められなかったんだ……! 二人とも大好きすぎてっどちらか片方なんて選べなかったんだ!!!」
恋太郎は誠実だ、本気で二人を幸せにすると決意しているし覚悟を見せる為に本気で動く。そういう奴だから────―
二階から見える裏庭には、恋太郎が二人にピンクのクローバーを差し出す姿が映っている。
「はぁ……恋太郎め、これからあと98回は繰り返すつもりか? 全く……」
そう言う男だからこそ、100人の運命は恋太郎を選んだのかもしれない。
あ、二人が鼻血出して倒れた。
◇
「見てたぜ恋太郎、模範解答かどうかはわからなかったが……お前らしくて良い告白だったぞ」
「あぁ、ありがとう友次郎……お前が居てくれたからクローバーを見つけられたよ」
「……俺ベンチに座って応援してただけだぞ……?」
「親友の応援があったから見つけることが出来たんだよ」
「お……おう」
こいつは本当に人を褒める、人型なら見境なく堕とす気かこいつ??
俺は顔を背けると照れを隠す様に腕に着けている重りを増やす。
「後で友次郎にも、俺の彼女を紹介するよ!!」
「嫉妬しそうだから今日はいいです」