彼のことが大大大大大好きな100人の彼女達とその彼氏を隣で見てる普通の友人 作:ヘルメットのお兄さん
前回、恋太郎の彼女達に運動を教えてほしいと言われたので現在俺達はグラウンドに集まっている。
とりあえず恋太郎含め全員ジャージに着替えてもらった、健康的な肌を惜しみなくさらけ出し思わずキュン!! ときた。恋太郎が。
俺はキュンと来たら恋太郎に悪いので我慢する。
「それじゃあ皆、準備運動もしたし折角だから試しに50mを走ってみてくれ、疲れない程度でいいぞ」
まずは唐音(名前で呼んでいいと言われたのでこれから名前で呼ぶ事にする)、中々良い運動神経をしていて平均より高めのタイムを出した。
次に羽香里だが意外と速かった、いい所のお嬢様と聞いていたから運動には縁がないと思っていたが本人がアウトドアな気質なのだろうか。
最後に静ちゃんだが……うん、可愛かった。
『「好本 静」は勉学は向いていたが労働はからきしであった』
「息を切らすほど走れとは言ってないんだけど……とりあえず休む?」
静ちゃんは頷くと恋太郎と一緒に休む事にした。
「(いいなぁ)」
「(いいなぁ)」
「(この二人多分いいなぁとか思ってるな)」
◇
「俺みたいに筋肉をつけたいなら別だが、皆は健康を維持出来るようにとかそのくらいが目標だろ? だからなるべく続けられる様な運動を教えるぞ」
そう言って俺は持ってきたラジカセを置くとスイッチを押す。
「これって、ラジオ体操ですか?」
「そうだ、何の変哲もないラジオ体操だがちゃんとやるといい運動になる。やってみようか」
「べ、別にラジオ体操なんかしたいと思ってないんだからね!!」
「それはツンデレなのか?」
姿勢を正して腕を伸ばす、ラジオ体操とは簡単だが確実に効果のある運動のひとつなのだ。
ラジオ体操を一曲終えると唐音は少し物足りない様な感じだった。
「なんか、もうちょっと激しい運動をすると思ってたわ」
「俺一人だったらやるんだが、健康の為とか言って無理にやって怪我したら本末転倒だからな。全力ダッシュとか、タイヤ引きなんかよりよっぽど健全だ」
まぁ俺はやるけど、筋肉が育つなら多少のイジメは必要なのだ。
そして静ちゃんが戻ってくる、体力はともかくやる気は十分なようで
『この程度なら俺でも勝てそうだぜ』
と言っていた、まぁラジオ体操だからな。
◇
それからいくつか自宅でも出来るストレッチなんかを教えた後今日の所は解散にした。
次の日、以前行ったテストの結果が張り出されるらしく皆で見に行く事になった。
「友次郎さんは何位でした?」
「俺は……あった、240人中9位だ」
……ん? なんか急に静かになったな……
後ろを振り返ると三人とも物凄く驚いている、静に関しては髪の毛が宙に浮いている。
「友次郎は勉強は脳の筋トレって言って筋トレしながら勉強しているんだ」
「勉強はいいぞ、脳を酷使している感覚がして鍛えてられる」
「そこまでくるとドMなんじゃないか」
「……ん? ねぇ、1位の栄逢さんって知ってる?」
「同じクラスでしたよね? 」
『窓際で勉学に励む姿を』
「俺は別クラスだから知らないが……全教科満点なんてやるな、あれは相当脳を鍛えてるぜ」
「私は話したことないけどなんか噂じゃ……正体はAIって説があるとか」
「都市伝説かよ」
◇
それから次の日、静ちゃんに頼まれて俺は本を運ぶことになった。
『助かりました、あなたのお陰で困難に打ち勝つことが出来た』
「これくらい良いよ、女の子に重い物を持たせると恋太郎に殺されちまう」
『「恋太郎君」は悪魔かなんかだってのかい? 』
「────―私と……交際して欲しい」
ふと、通りがかった教室でそんな声が聞こえた。
こういうのはスルーすべきなのだろうがつい気になってちらりとそちらを見てみると、薄紫の髪をした美人が恋太郎に告白している様子だった。
「……ってうわっとととと!!?」
思わずバランスを崩し本を落としかける、静ちゃんはまだ気づいていないようで突然バランスを崩した俺に驚いていた。
『あんたほどの男でもこいつは荷が重かったか……』
俺は静ちゃんの声に無言で指を指す、それにつられ静ちゃんが教室を見ると。
「俺も栄逢さんの事が好きなんだ……────こちらこそよろしくお願いします……!」
「……!!?!?」
物凄く動揺している……いやまあ普通彼氏の告白シーンを見たら動揺してしかるべきか。
しかしこれにて4人目の彼女が出来るという訳か、また紹介されるのだろうか等と思っていると
「ごめんなさい」
「「悪質なドッキリ!!? 」」
「……ん?」
「やべっ」
思わずツッコミが出てしまった……慌てて隠れると幸い気にせずにいてくれたようだった。
まだ動揺している静ちゃんを落ち着かせながら恋太郎と栄逢さんの話を盗み聞きすると、つまり栄逢さんからしたら恋愛は無意義なので恋を終わらせに来たと。
いや、恋太郎は諦めてない。あいつめっちゃハキハキ喋るからここまで聞こえてくる。
「一日だけ……俺とデートしてくれないか……!?」
「!?」
「おお……開幕デートの誘いとは流石だ恋太郎……」
────―あ、そろそろ静ちゃんのキャパがヤバそうなので彼女を抱え撤退する事にした。
◇
数日後、遊園地にて。
俺は変装(サングラス)した静ちゃんと共に恋太郎と栄逢さんを尾行する事になった。
『兄貴ぃ……本当にいいんですかい? 親分にバレたら……』
「だからバレない様に変装したんだよ、これならあいつも気づかないだろう?」
「……(顔は隠してるけど……友次郎君、体格が良いから凄く目立ってるなぁ……)」
静は頷くことにした、この尾行を実行する時点で既に共犯。ならば自分がしっかりしなければと思っていた。
「あ、早速行くみたいだ……メリーゴーランドか、行くぞ静ちゃん!」
『おうよ』
◇
あれから恋太郎たちはメリーゴーランド、お化け屋敷、コーヒーカップに大迷路と遊んでいったが俺達は静ちゃんがお化け屋敷でダウンしたので早々に尾行を中断していた。
「お化けが駄目なら言ってくれればよかったのに……」
『申し訳ありません』
「いいよ、しかし二人を見失っちまったな……ん?」
俺は視界の隅に、何やらイベントを行っている事に気づいた。あれは……カップルチャレンジ?
耳をすませば司会のお姉さんの声が聞こえてくる。
「始まりましたカップルチャレンジ! カップルで挑戦する様々なお題にクリアすれば豪華景品をゲット! 司会は私、独身の人理実 曽呂がお送りしまーす!」
その瞬間、俺に天啓が落ちる。
「静ちゃん、あれだ。あそこの観客席で探していればカップルという言葉に敏感な恋太郎は必ず釣れるはずだ!」
『我々も突入するぞ』
◇
「あぁー残念ー! チャレンジ失敗ー! さぁ次の挑戦者はー?」
イベントステージに着いて探しているが、恋太郎と栄逢さんは見えない。ここもハズレだったか?
「……スケジュールを見る限りイベントも半分ほど過ぎた、ここだと思ったんだけどな……他を探そうか」
俺は席を立ち静ちゃんとこの場を離れようとすると───
「おっと! そこの体格のいいお兄さん! 挑戦するのかな!?」
「えっ」
しまった、立ち上がったのを挑戦の意志ありと思われてしまった……
しかし静ちゃんは俺の彼女ではなく恋太郎の彼女、即ち俺は司会のお姉さんと同じ独り身なので断ろうとしたが。
『俺達に任せろ! 』
「えっ、静ちゃん!?」
『このまま探しても埒が明かねぇ、ここは一つ餌を使っておびき出すんだ』
「だ、だけどそんな事をしたら……」
恋太郎に粉微塵になって殺される……
それだけは嫌なので断ろうとしたが行動力があるのか無いのか、俺の腕を引っ張って壇上に上らされてしまった。
「それではお名前をどうぞ!」
「あ、えっと……愛城 恋太郎です……」
「!?」
俺は嫌だった、恋太郎の彼女相手に不手際を起こさせようものなら死が待っているのは明らかだったから。
せめて名前だけでもと偽った。
「なるほど! そちらのお嬢ちゃんは?」
「あぁー、彼女は恥ずかしがり屋だから匿名にしておいてくれないかな」
「なるほど彼女思いの彼氏さんですね!」
彼氏じゃねぇよ殺されるぞ!!! 俺が!!!
「それでは早速カップルチャレンジ行きましょう! まずは一つ目! カップル綱引き!」
俺達の前に現れたのは一本の縄とその縄が埋まった壁だった。
「改めてルール説明! カップル二人でこの縄に巻かれた黄色いテープまで引っ張ればクリア! 豪華景品を獲得できます!」
「掃除機のコードみたいだな」
だがまぁ、これなら下手な事は起こるまい。俺は安心して縄を掴んだ。
「(ククク…………独身の私がそう簡単にカップル共を祝福する訳ないでしょう……! これは彼氏が失敗し続けて彼女に幻滅される為に改造した特性激重ロープ……! 引っ張る所か縄を持つことすら出来ず脱落よ……!)」
友次郎達は知る由もないが、この時独身を拗らせた司会のお姉さんによるカップル破局大作戦が秘密裏に行われていた。
『共に困難を乗り越えようぞ』
「大袈裟だな……それにこの程度なら……よっと」
しかし相手は常日頃から鍛え続け筋肉の為にヤバい薬にまで手を出す自分を普通と思っている筋肉お化けである、そんな変人が綱引きなどしようものなら。
「ほい完了っと、豪華景品貰おうか」
「……え?」
そこにあったのは壁だったもの、この男縄を引きすぎて黄色いテープどころか中身まで全て引き抜いてしまった。
◇
あの後司会のお姉さんから悔し涙を流しながらバカでかいペンギンの人形をプレゼントされた、なんで泣いてたんだろう。
静ちゃんは大きさ的に持って帰れなさそうなので俺が持って帰ることになった。
結局恋太郎達を見失ってしまった、果たしてデートは上手くいったのだろうか……
次の日、恋太郎から栄逢さんと付き合うことになったと言う報告を聞いた。どうやら杞憂だった様だ。
あと、静ちゃんと尾行したのがバレた、しかし恋太郎は俺にアイアンクローをかますだけで許してくれた、寛大な男だ。
最後に、あのクソデカペンギンの行方だが……
「あ! ペン太郎なのだ! どうしたのだそれ!?」
「ん? あぁちょっと景品で貰ってな……家に置いとくのも邪魔だし誰かに押し付けられないか学校まで持ってきたんだよ」
「じゃあそれ! 楠莉欲しいのだ!」
「これペン太郎って言うのか……いいよ、後で家まで贈ってやるよ」
「やったー!! ペン太郎が家に来るのだ! うおー!」
最適な人物に渡せた様だった。