彼のことが大大大大大好きな100人の彼女達とその彼氏を隣で見てる普通の友人   作:ヘルメットのお兄さん

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休日にまで会うのは最早呪い

 突然だが、俺には妹がいる。

 

 後出しのようだが居るったらいる。

 

 俺の妹───隣野 覗見(のぞみ)は筋金入りの恋愛脳で、白馬の王子様の様な恋愛がしたいと本気で思ってる、白馬の王子様の様な恋愛ってなんだよ。

 

 そんな妹に脅され、今俺はイチオシのデートスポット蘭舞園フラワーパークに来ている。

 

「ここがフラワーパークね!」

 

「覗見……帰っていいか?」

 

「駄目よ! 今日は月一に開催されるブーケイベントの日なんだから!」

 

 なんでもここのパークの名物イベントで、ブーケを取れば恋人と一緒に特別なウェディングドレスを着て撮影が出来るそうで

 

「お前彼氏居ないのになんで参加する必要ギャッ」

 

「うるさいなぁ! 私はここで記念撮影するカップルを撮って素敵な彼氏との予習をするの!!」

 

 思いっきり目を刺された……

 

『本日はブーケトスを行います、ご参加を希望の方は中央広場まで──』

 

「始まった! 行くわよ兄ぃ!」

 

「前が見えねぇ」

 

 ◇

 

「凄い人だかりだな……」

 

「ブーケを取るに相応しいカップルはいるかしら……」

 

 覗見がスカウターの如くカップル達を目利きしていると、突然ドスの効いた声が聞こえてくる。

 

てめぇーらァァ!! 死んでもブーケを手に入れて撮影権をアタイとユウ君に譲るウホ!! 

 

「「「はい!!! 総長!!!!」」」

 

「なっ何よあれ……」

 

「確か呉莉羅連合とかいう暴走族だな、まさかこんな所に居るとは」

 

「暴走族がなんでブーケイベントなんかに……」

 

 覗見は呉莉羅連合を睨んでいたがユウ君と思しき男の子を見つけると目の色が変わった。

 

「─────あのカップル、有りかしら?」

 

「有りなの!?」

 

「恋太郎ファミリー勝つぞー!!!」

 

 ん? 

 

 物凄く聞き覚えのある声が聞こえ、そちらを向くと

 

「恋太郎だ……」

 

 普通に居た、嘘だろ今日は完全に関わるつもりは無かったのに……

 

「あ、あれって恋太郎さんだよね? 最近沢山彼女作ってるんでしょ」

 

「あぁ、そういえばお前は中学に入ってから会ってなかったな」

 

「5股してるんでしょ? だったら論外よ、一人も決められないような優柔不断な人は私のカップルセンサーには───」

 

 ……え? 何? なんでお前固まったの? ちょっと???? 

 

「───兄ぃ」

 

「は……はい……?」

 

「あのブーケは恋太郎さん達が取るのがいいわ」

 

恋太郎ォォォォォォ!!!!! 

 

「えっ友次郎ゥッ!?」

 

お前ェッ!!! 人の妹にビビーンか!? ビビーンしたのかおい!!!? 

 

「何何何なんのことととととと!!!?」

 

「兄ぃ落ち着いてっ!?」

 

「あがっ」

 

 恋太郎をめちゃくちゃに振り回していたら覗見からバットで頭部を強打され俺は沈んだ。

 

 ◇

 

「恋太郎……本当に何も感じなかったんだな?」

 

「う、うん。唐音達みたいな衝撃は来なかったよ」

 

つまり俺の妹に魅力が無いと……? 

 

どうしろと

 

「兄ぃは黙ってて」

 

「はい……」

 

「恋太郎さんはお久しぶりですね、他の方は初めまして。私は隣野 覗見と申します、中学2年生です」

 

「友次郎さん、妹が居たんですか……!?」

 

「ああ、妹は筋金入りの恋愛脳でな。恋愛をするのも見るのも好きなんだよ、ま、本人は理想が高すぎて未だに彼氏がいた事なっ──」

 

「兄ぃ?」

 

「はい」

 

「私、あのブーケは恋太郎さん達が取るのがいいと思いました、なので皆さんがあれを取れるよう兄ぃと協力します!」

 

「えぇ!? そんな勝手に……」

 

「兄ぃ! 返事!」

 

「はい!!」

 

あの隙のなさ……極限まで訓練された兵士の様だ……

 

 ◇

 

『それではブーケトスを行います、決して他の参加者への妨害、暴力行為は行わないようお願い致します。それではゲストの元砲丸投げ陸上選手の───馬場杏選手、トスの意気込みをお願いします』

 

「えっ教頭先生!?」

 

 驚く恋太郎を他所にほかの皆は知っていたかのように冷静だった。

 

「恋太郎知らねぇの? あの教頭陸上全種目代表だぞ」

 

人間やめてるのか

 

「俺の方が強い!!!」

 

「何と張り合ってるのだ」

 

『とっととギャラ貰ってホスト三昧はい321スタートォ!!』

 

 突然投げられたブーケに全員が追いかける、直後打撃音が聞こえ出す。

 

「(!? 暴力は禁止のはず……)」

 

 恋太郎が驚くと続けて大きな声が聞こえる。

 

「これは"他の参加者への暴力"じゃねーウホ!!」

 

 呉莉羅連合の総長は部下達を殴り飛ばすと吹き飛んだ先の参加者が巻き込まれ脱落していく。

 

「これはアタイ達"呉莉羅連合"のただの修行ウホッッ!!!」

 

「アリかよそんなの!!?」

 

 友次郎は司会を見るが、呉莉羅連合に恐れたのか首を縦に降振っていた。

 

「ウホホホ! 巻き込まれたって知らないウホよぉ!!!」

 

 総長はまた部下達を投げ飛ばし、その先には羽香里が居た。

 

「羽香里!!」

 

 恋太郎が叫ぶも間に合わず、ゴリラは羽香里にぶつか──

 

「!!」

 

 る直前、前に出た唐音と覗見がゴリラを受け止めた。

 

「唐音さん、覗見さん……っ!」

 

「このゴリラが……んな無茶苦茶通用すんならねぇ……!」

 

「ルールを守らない奴に勝ち取る資格無しよ……! そっちがその気なら……!」

 

 捕まえたゴリラから唐音は上着を、覗見はハチマキを奪い取るとそれぞれ身につける。

 

「「これで私達もこの瞬間から呉莉羅連合よッッッ!!!」」

 

 か……カッコイイ……ッ!!! 

 

「オラァァァ!! 修行でもなんでもやってやろうじゃないのッ!!!」

 

「ゴリラ程度がハルク(兄ぃ)の妹に勝てると思わない事ねッッ!!!」

 

「な、何ウホこのゴリラのような筋力は……ッ!」

 

「あんたに言われたくないのよッッ!!」

 

「総長! こっちもヤバいです! このガキ二人を相手に押し勝って……」

 

「総合格闘家の父とプロレスラーの母を持ち……筋肉バカのイカれた家族を持つ私相手に……たった二人で勝てると思うなァァッ!!!」

 

「「ウホォォォォォォッ!?」」

 

「こっちは私達が抑えるからあんた達はブーケを!!」

 

「分かった!」

 

 唐音が総長を抑えこのまま勝てると恋太郎は思っていたが、突然総長は声を張り上げた。

 

今だやれウホォォォォォォ!!! 

 

「!?」

 

 直後、ゴリラ達は巨大な団扇を振り回し、巨大な風を巻き起こした。

 

 風に煽られたブーケはゆっくりと呉莉羅連合に飛んで行った。

 

「ブーケがゴリラ達の方に……!!」

 

「このままだと───あれ? 静ちゃんはどこ行った?」

 

 友次郎の声に恋太郎はハッと空を見上げる、ブーケと一緒に何かが飛んでいた。

 

「あれは!?」

 

「鳥だ!!」

 

「飛行機だ!!」

 

「──いや」

 

静ちゃんだッッッッ!!!! 

 

「嘘だろ!?」

 

 静がタオルをグライダーに空を舞っていた。

 

 だが、お陰で誰よりもブーケに近かった。

 

 静は震える手を止め覚悟を決めると

 

今こそ勝利を我が手に!! 

 

 ブーケを掴み取った。

 

 しかし、タオルを手放した静は浮力を失いそのまま落ちていった。

 

おらまだ死にたくねぇ

 

「恋太郎ッ!」

 

 走り出す恋太郎を、友次郎は叫び止めた。

 

 友次郎は覗見のバットを手に構えていた。

 

「乗れ」

 

 一方凪乃達は落下予測地点に立ち静を待ち構えていた。

 

「静さん!」

 

「楠莉達が受け止めるのだよ!」

 

 しかし受け止める瞬間、6つの胸が静を弾き飛ばしてしまう。

 

「ああっ! 駄目、勢いが残ったまま──地面にッ!!」

 

 その五秒前、友次郎と恋太郎は。

 

「頼むぞ友次郎……ッ」

 

「俺を誰だと思ってんだ、お前の親友だぞ? ───行くぞ、全身全霊!! 水平ホームランッッ!!!!! 

 

 バットに乗った恋太郎を構え、友次郎は全力で静の元へ射出した。

 

 100m以上はあった距離を一瞬で詰め、地面へぶつかる寸前だった静を恋太郎は受け止めた。

 

「良かった……間に合った……!」

 

あ……アニキィ〜!! 

俺と結婚してくれ

 

「ふぅっ……一件落着か……?」

 

「に、兄ぃ〜! 助けてよ!!」

 

「俺達相手に一人で勝つなんて……アンタこそ副長に相応しい!! 俺達呉莉羅連合に入って欲しい!!」

 

「熱烈じゃないか、副長ぐらいなったらどうだ?」

 

「そんな事言わないで……何とかしてぇ〜!!!」

 

 ◇

 

「それでは撮りまーす! はい、3、2、1!」

 

 パシャリ、と思い出が作られる音がした。

 

 友次郎と覗見は少し離れた所で恋太郎達を見ていた。

 

「良いなぁ……」

 

「ウェディングドレスがか?」

 

「それもだけど……あんなに沢山彼女がいるのに、恋太郎さん、平等じゃない。じゃなきゃあんなに皆幸せそうな顔出来ないでしょ」

 

「……そうだな、恋太郎だから出来る事だろうよ」

 

「私も恋太郎さんみたいな彼氏が欲しいなぁ───」

 

「ソウダナ」

 

「兄ぃは彼女欲しくないの?」

 

「……欲しくないと言ったら嘘になるけど、今は───」

 

 友次郎は恋太郎達を見る、皆楽しそうにしていて、全員が幸せだった。

 

「──見てるだけで十分かな」

 

「ふぅん? あ、写真撮り終わったみたいだし、私達も行こう?」

 

 覗見に引っ張られ、友次郎は恋太郎達の輪の中に入っていく。

 

「お! 見るのだ覗見! れんたろーがバッチリ撮れてるのだ!」

 

 友次郎はすっかり仲良くなった覗見に安堵し、ウェディング姿の羽香里と恋太郎に声をかけようとすると──

 

「───恋太郎君……私と……」

 

 ────お別れしてください

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