彼のことが大大大大大好きな100人の彼女達とその彼氏を隣で見てる普通の友人   作:ヘルメットのお兄さん

7 / 9
主人公は俺じゃない

 ───恋太郎君、お別れしてください。

 

 昨日の言葉が耳に残る、部外者だと言うのに。

 

 あれから俺は話を聞こうとしたが、ウェディングドレスを返す為更衣室に向かった羽香里を最後に見なくなってしまった。

 

 恋太郎に話を聞こうとしたが、大丈夫だと言っていた。だが、あれは嘘だ……皆を心配させない様に振舞っていた。

 

「兄ぃー? やる事ないなら買い物行ってきてー」

 

「っあ、ああ。わかった」

 

 既に時刻は夕方、恋太郎も電話に出ないしまた明日聞いてみようと思っていた。

 

 俺は買い物袋を手に外を出る、心のモヤが何時までも消えず振り払う事が出来ない。

 

「───? 電話だ」

 

 相手は……っ恋太郎だ。

 

「もしもし?」

 

『友次郎、頼みがあるんだ』

 

 何時もより弱々しい、しかし覚悟の決まった声。俺はこういう時、返事は決まっている。

 

「いいぜ、何をすればいい?」

 

 ◇

 

 夜────俺は羽香里の住む豪邸の前にいた。

 

 恋太郎から事情は聞いた、羽香里は母親に恋太郎達との関係を知られ、転校させられると。

 

 そんな事は恋太郎はさせないし俺も納得いかない、俺は夜闇に紛れる為黒い手袋を着けると恋太郎達もやってきた。

 

「友次郎」

 

「あぁ、わかってる」

 

「友次郎、アンタも来たのね?」

 

「恋太郎の頼みだからな、まずはお前らをこの柵から越えさせる」

 

 まずは俺が柵の上に飛び乗ると恋太郎から順番に唐音達を引き上げる。

 

「うおー! すげー噴水なのだ!!」

 

「音が大きいからすぐにはバレない……っと恋太郎、これを渡しておく」

 

「これは……トランシーバー?」

 

「ドンキで買って来た。どうせお前は彼女達と一緒に行動するだろ、連絡は一つでいいよな」

 

「ああ……、任せてくれ……ッ!」

 

「あんた達こういう所男の子よね」

 

双方から同時攻撃をかけるのか

 

「友次郎には屋敷の探索と、もし俺達が気づかれた場合の陽動を頼んでるんだ。俺達とは別行動になる」

 

「それより窓から花園羽香里を呼んだ方が効率的」

 

「いや、俺もそうしようと思って窓を伝ってノックしたんだが反応が無かった。直接会いに行った方が良い」

 

「登るとこなんてあるのだ……?」

 

 ◇

 

 そんな訳で、現在俺は唯一空いていた二階の窓から侵入していた。

 

 どうやら使用人か客人かの部屋らしい、簡素な物しか置いていなかった。

 

 俺はそっと扉を開け左右を確認す───

 

「お侵入者様でございますか?」

 

「ッ!」

 

 気づかれた! しかし、見た所相手は警備員では無くただのメイドの様だった。申し訳ないが恋太郎達が羽香里に会うまで拘束を────

 

「お侵入者様は追い返す様にと、羽々里様から承っておりますので───排除致します」

 

 咄嗟に顔を横にズラすと頬を掠めるようにスタンガンが繰り出された。

 

「っぶね……ッ!? メイドがそんなもん持ってていいのかよ!?」

 

「私めは今回お侵入者様を追い返す様に命令されておりますので、穏便に排除できるように用意させていただきました」

 

 言葉を離しながらも細めのメイドは俺に何度もスタンガンを突き出してくる。暗闇で視界は悪いというのに凄まじく精度が高い、まるですべて見えているような────―ッ

 

「ッ今掠ったぞ……ッ! 怪我したらどうすんだ!」

 

「スタンガンは気絶するほどの電力はありません、お侵入者様の動きを止める事は出来ますが」

 

 酷く時間を取られてしまった、さっきから通信しているが恋太郎からの応答も無いし何かあったのか────―!? 

 

 ◇

 

 一方その頃、恋太郎たちは

 

「……ここの廊下、床から天井までセンサーがびっしりと張り巡らされている……ッ」

 

 インポッシブルな廊下に遭遇してた。

 

「唯一の突破口はあのシャンデリア……あの高さにはセンサーが無いからあそこまで行ければ……」

 

「って……そんな所どうやって通るのよ」

 

「────―そうだよな……普通の廊下なら壁に手足を突っ張らせて登れるんだけどこの廊下の広さじゃ……」

 

「それなら、強い筋力を持った二人の人間が協力すれば理論上は可能」

 

「え……!?」

 

「なら友次郎を呼び戻すのだ! 友次郎なら壁に足をぶっ刺して登る事くらいできるのだ!」

 

「そうだ……! 早速トランシーバーで」

 

 恋太郎は友次郎から受け取ったトランシーバーのスイッチを押すが、反応が無い。

 

「あ、あれ……? どうして……ッ」

 

「ま、まさか友次郎に何かあったんじゃ……」

 

ダチの危機たぁ見過ごせねぇ

 

「……愛城恋太郎、バッテリーが切れている」

 

 ────―トランシーバーは置いていくことにした。

 

 ◇

 

「もう……別に何を取る気もねぇんだから諦めてくんない?」

 

「羽々里様のご命令ですので」

 

 既に俺の事はバレており、複数の警備員が捕えに来たが全員気絶させた。しかしあのメイドだけは拘束できずにいる。

 

 何度も躱してはいるが数発はスタンガンを受けてしまった、特に左腕はとっくに筋肉が硬直して使い物にならない。

 

 恋太郎は反応しないし……手加減をやめる決意をした瞬間。

 

羽香里お嬢様が逃亡しました!!!! 羽香里お嬢様が逃亡しました!!!! 

 

 耳をつんざくような音声と非常ベルの鳴り響く音。

 

 俺は反射的に耳を塞ぐがこの事態はメイドも想定外だったようだ。

 

「っ!?」

 

「い、一体何が……」

 

「……お侵入者様、優先すべき事が発生いたしましたので今回はお引き取り願います」

 

 頭を下げながら答えたのは先程と同じ内容、だが……表現しづらいが、言葉から本当に焦っている事が伝わって来る。

 

「……わかったよ、……悪かったな」

 

 ◇

 

 あれから俺は窓から飛び出ると庭を歩いている、俺は何もできず……後の事は恋太郎達にかかってる。

 

 まあ……恋太郎なら大丈夫だろう、羽香里への気持ちは間違いないしきっと誰も悲しまない終わりを見せてくれる。

 

「────―クソッ」

 

 あのまま無理にでも行く事は出来た、だけどあのメイドの顔……俺はそれを踏み抜いてまで超える気は無かった。

 

 せめて全てが終わるまで門の前で待っていよう、そう思い歩くと

 

「────―っ」

 

 騒がしい声が聞こえてくる、恋太郎が羽香里を救えたのかと上を見上げると

 

恋太郎が窓から落ちる羽香里を支えていた

 

「は────―何して……っ」

 

 恋太郎の居る位置は三階、どう落ちても助からない高さだ。それに恋太郎の姿勢も悪くいつ落ちてもおかしくない。

 

「離してください恋太郎君ッ!! このままじゃ二人とも────―ッ!!」

 

「離さない……ッやっと掴めたんだ……ッ絶対に……二度と離すもんかッ!!!」

 

 恋太郎がその言葉を放った時、俺と目が合った。そして俺は走り出すと同時に、屋敷中に響き渡る声で叫んだ。

 

恋太郎────―跳べッッッ!!! 

 

 恋太郎は身を乗り出すと羽香里を胸に抱え身を投げ出す。

 

 俺は恋太郎達が居た窓の真下まで走るとそのまま一足で二階の窓に乗り足を掛け────―

 

 真横に飛び出した。

 

「友次郎……ッ」

 

「安心しろよ……怪我はさせねぇからよ……ッ!!!」

 

 俺は恋太郎と羽香里を空中で捕まえるとそのまま自分を背にしプールに落下した────―

 

 ◇

 

 ────―柔らかい。

 

 まるで雲の上で寝転んでいるような感覚だ、混濁した意識故か余計に心地良く感じる。

 

 もう少し体を預けていようか────―ッ!? 

 

「グハァッ!?」

 

「覗見ちゃん!?」

 

「なななにしてんのだ!?」

 

「兄ぃを起こすのはこれが一番良いんです」

 

「う……覗見? ……なんでここに……」

 

「恋太郎さんから連絡を貰ったの、兄ぃが馬鹿やったって……」

 

「馬鹿って、俺は────―ッ」

 

 反論は覗見が胸に飛び込んだことで返せなかった。

 

「────―馬鹿兄ぃ……」

 

「……すまん」

 

「友次郎……ありがとう。俺と羽香里を助けてくれて」

 

「良いよ、最後にカッコいい所魅せれたか?」

 

「すげーかっこよかったのだ! 窓をバンって飛んでシュバって二人をキャッチしてゆーじろうかっこよかったのだ!!」

 

そなたこそ真の勇者よ、その功績は語り継がれるだろう

 

「……そういえばここって」

 

「客室よ、殆ど外傷は無かったから寝かせておいただけだけど……」

 

 部屋に入って来たのは羽香里を相応に成長させたような美人、察するに彼女は……

 

「羽香里の母親ですか」

 

「ええ、花園羽々里です。貴方にも迷惑をかけたわね……ごめんなさい」

 

「いや、俺は何も……」

 

「家のメイドから聞いたわ、警備員を20人は薙ぎ倒した上にスタンガンまで受けたんでしょう?」

 

ハルクか

 

「いやあ……それ程でも……」

 

「なんで照れてんだよ」

 

 俺は恥ずかしそうに顔を赤くする、そしてふと胸板に顔を擦り続けている覗見に違和感を感じた。

 

「……なんかお前いい匂いすんだけど……それにその寝間着、俺は知らねぇぞそんなの」

 

「何……兄ぃの変態」

 

「ちっげぇよ!」

 

「あぁ、それはお風呂に入ったので……家のパジャマを貸しちゃいました」

 

「マジか、なんか悪いな羽香里……」

 

「いえ、今日は皆さん泊まる様に言っているので。友次郎さんもですよ?」

 

「え!?」

 

「あんた、気づいてないでしょうけど今もう夜の十時よ」

 

 思わず部屋の時計を探す、確かに十時を回っていた。

 

「風呂に入っていないのは愛城恋太郎と隣野友次郎だけ」

 

「恋太郎も?」

 

「お前を待っていたのと……彼女達が上がるのを待ってたってのもあるから」

 

「そうか……んじゃ上がるとするか……っと」

 

 俺はベッドから降りると恋太郎に連れられ風呂に入る事になるのだった。

 

「────―二人とも行ったわね」

 

「はい、……それじゃあ」

 

「なにしてんのよ二人とも……それに覗見ちゃんも、何かの支度?」

 

「……? 何って……」

 

「「「覗きに決まってるじゃない(ですか)」」」

 

 唐音はドン引きした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。