■■翼の幼馴染み 作:語り部
つまり、本編主人公様が運命に遭う前ですね。
あ、視点は本作主人公の視点となります。
原作主人公様視点で書くとか言ってましたが、予定は予定であり、
実際にどうするかというのはやって見て決めるものなのでね。
つばさランウェイ その1
001
それは、直江津高等学校2年生として、送れる最後の日々。
冬休みが明けた、1月のこと。
「翔、おはよう」
「ああ、おはよ」
通学路で出会った幼馴染と挨拶を交わして、特に相手に歩調を合わせることも一緒に行こうと意識をすることもなく、学校への道を歩く。
今の気温のように冷えた態度に見えるかもしれないが、腐れ縁の相手に対してはこんなものだろう。
翼もその態度について、気にした風はないように、勝手に横に並んで雑談を始める。
「この間に借りた推理小説だけど、展開は悪くなかったけど、ミステリー要素が微妙じゃない?」
「お前が勝手に借りるって言って持ち去ったやつな、その作者の展開構成が好きで読んでるからなあ、まあぶっちゃけミステリーとしては及第点取れるくらいでちょうどいいだろ。推理・ミステリー小説なんてコナン・ドイルが嫌々描いた探偵冒険活劇がほぼ原点なんだし」
「確かに、シャーロック・ホームズはドイル先生の小銭稼ぎで書いた作品で、世界中に認められてしまって本当に描きたい歴史小説よりもホームズを求められて辟易したから無理やりホームズを殺したりしていたけれど、実際名著でしょうに」
「名著であることを否定したわけじゃあないんだな。設定された謎を解き明かすって要素があれば探偵ものだよ、と言いたいわけ。魔人探偵脳嚙ネウロ見てみろよ、トリック無茶苦茶だけど筋は通してるから割と人気だぞ」
「なるほど。まあ、そう言われるとそうなのかもしれないね。ネウロが犯行のハウダニットだけをひたすらに解くことに執着しているという点においては、ロジックが滅茶苦茶でも探偵ものとしては納得のいくモノにはなっているわけだしね」
ここに数学が得意で幼女愛好家疑惑の濃い友人がいたら、
『お前、なんで羽川とそんなシームレスに知的な談話出来るの?』
とかツッコミが飛んできているかもしれない。
翼は知能指数がバグってて品行方正みたいな、噂が巷にはびこっているのは知っているが、この女はただ貪欲なだけだ。知識に対しても、モノに対しても、人間関係に対しても。
品行方正のように見えてるのは、ただ、一般普遍の正しさを信仰して、それを自分に課すことで周囲になじもうという涙ぐましい血みどろの努力の結果なのだ。本人はあまり意識をしていないようだけれど。
この女と同じようなものを読んで、同じような情報資料を取り入れて、同じような貪欲さがあれば、別に話を合わせたり振ったり、ディベートみたいな会話をすることも特段難くない。
昨今の推理小説や漫画、アニメ、ドラマなどを参考に語り進めたところで、教室に着く。
教室に着けば、俺は男子のコミュニティでの会話に加わって、学校内の情報や季節の行事、授業のスケジュールの話などを仕入れていく。
と言っても、始業時間の30分前なため、居る人数はかなり疎らではあるが。
進学校である、この直江津高等学校において、この30分は始業前の準備として、前回範囲の復習や今後の範囲の予習を行う時間として使うこともあれば、今日のように友達と情報交換や駄弁りやらをするということも大事だ。
その目の隅で、ただ自席で読書をしている翼を目に留め、軽い吐息を漏らす。
今日もまた、放課後の付き合いで大変面倒で荒唐無稽な嵐を宥めることになりそうだ。
002
その日の放課後、翼が学級委員長としての仕事を終えるまでの間、高校の図書室で一度読み終えている本を手にとってはパラパラと流し読みをして時間を潰す。
宿題だの、課題だのは授業後の休み時間5分でばっと済ませてしまっているし、来年こと3年次の予習については翼と協力して1年次と今年の夏休みと年明け前にしているし、受験勉強については自宅のアパルトメントで本格的にやった方が効率が良いから、この場ではしない。
今は、流し読みをしつつ嵐の対処をどう行っていくか、シミュレートする必要もあるのだ。
そのまま直帰したって良かったのだが、そうした時にとんでもないしっぺ返しを受けているので二度としない。
小学生の間は別に帰りまで一緒にするような習慣はなかったのだが、中学になって俺が友達とゲーセンやカラオケに誘われ出したあたりから、急に距離を縮めて来て放課後に一緒に帰る事を一方的に定めてきたのだった。
何度か断ろうとしたり、逃げようとした。が、あの女の恐ろしさを実感しただけだった。
断りの理由を理詰めで完封してきたり、逃げるための抜け道の先にすでに立っていたり、そして何より一番厄介なのが────
「やあ、やあ。遅くなってごめんなさいね。
「いや、別に。そこまで待って無いですヨ。
このよく分からないはっちゃけた怒り状態であった。
見ろよ、あの司書さんの顔を。最初の一回はとんでもない驚き顔だったけど、今じゃ俺のことを養豚場にいる豚を見送る目をしているぞ。
因みにここでこの女を『翼』と呼ぶとこんな具合に捲し立てて来る。
『ん、何かな。
『それはいけない、いけないよ。
『女子を呼ぶときは、ほら
このように言う通りにしないと被害妄想マシマシな思考を武器にして攻撃性特化な言論で責め立ててくる。
この傍若無人ではた迷惑な────
「ん、どうしたのかな?
「あぁ、はいはい。悪かった。さっさと準備しない俺が悪かったです。
「そっかー、それならいいのよ」
さっさと、本を元の場所に戻して、自分の荷物を背負い図書室から、嵐を連れて離れる。
というか何気に、心読んでくるなよ。マジで面倒くせえな。
「今マジで面倒だとか────」
「思ってないデス、ホントホント」
怒ると自分のことを言葉で自傷する上、肯定するとそれで落ち込みながら、さらに被害妄想を募らせていくとかいう負の塊になるため、扱いが要注意状態となる。
だが、この怒りの正体については、本当に謎である。ある程度、付き合って差し上げたら、すっと機嫌が落ち着くのでとにかくご機嫌取りに勤しむこととする。
003
「ふぅ、それで、
「あー、そう。それは結構なことで、地層調査は流石に専門器具が必要だから今からは────」
「発音のイントネーションで揚げ足を取らないの、地層調査をしてみるのもそれはそれで面白そうだけれど、ボールで10本のピンを倒す方のボウリングについて、投げ方のコツを試したいのと教えてほしいって話」
「わかってるよ、意地悪いことを言っただけだ」
「ええ、わかってるわよ。乗っかって差し上げただけです」
下校しながらも、謎のお怒りが収まり、呼び方も普通に戻って小粋なジョークを挟みつつ切符を買って電車を乗り継いで複合施設のボーリング場へと向かう。
ここには何度か来て遊んでいる。この女と一緒に二人でというのも含めれば結構な頻度で、教えてほしいとか宣っているが、既に翼はマイボウルを我がアパルトメントに置いているくらいには経験者で、数回パーフェクト経験しているくらいには猛者である。
俺もボウルとグローブとシューズを自前で持つくらいにはやり込んでおり、2回か3回に1回パーフェクトを取れるくらいには上級者であるため、翼に対して
とはいえ、今日は急な提案であったため、両方レンタルで本領はセーブしたお遊び程度のものであるが。
そうして、お互いにストライクを取り合い2ゲーム分ほど競ってから、ファミレスで軽食を取っていた。
「うーん、なかなかにうまくいかないモノね。スペアの方は安定してとれるようになってきたのだけれど」
「スペア安定してとれるようになってるだけで、とんでもねえ進歩だよ。俺は回数こなして慣れ含めた上級者だからな。パーフェクト自体がかなりの高難易度だよ」
「ぐぬぬ、今日もまたスコアで負けたの、パーフェクトを取られたのが原因だもの。狙ってパーフェクト出来るように腕を磨く!」
「ふはは、全部レンタルのお遊びなんだ。そうムキになるなって」
というか負けられんのだ。勉強や格ゲーでも負けが増えている中、ボウリングやダーツなどに関してはまだ負けていないので、多趣味人としてこれ以上は敗北したくないという意地があるのだった。
「それで? 楽しめたか」
「ええ、とてもいい息抜きになったわ」
「それならよかった」
週に2度ほど、娯楽に付き合う。お互いに勉強や読書ばかりでは息が詰まってしまうと、俺から提案したものだった。
それまでは、行先がほぼ図書館で固定されており、ひたすらに本を読むというのは問題なかったのだが、他の友達との付き合いや本以外からも知識を得る場所はあるということで紹介して、それならばこうしようというように二人の間で取り決めたのだった。
翼は、バニラのアイスクリームを。俺は、フレンチトーストを。
小皿にとりわけシェアして、バニラアイスの乗ったフレンチトーストという理想的な間食を食べ終えて、帰路につく。
彼女の家庭事情については、すでに何度か本人からも聞き及んでいて、そんなものかと思いつつ、今もまだ続いているなら、俺のアパルトメントで泊まることを翼の親に当たる人物たちはなんとも思わない程度には無関心なのではないかとも思う。
思うが、求められていないことを提案するほど、俺はお人好しではないし、助けようとも思わなかった。
まだ、自分にはそれをできるだけの責任能力もないのだから、お節介で首を突っ込めるほどの余裕はないのだ。
だから、アパルトメントに着く前に翼とは別れる。
「じゃあ、またな翼」
「うん。またね翔」
こうして、止まり木から小鳥は飛び立つ、疲れは癒えた。
それでも、寂しさは募るばかりだった。
大事なことなので二回書きます。
この時点では、この二人、何とまだ交際関係にありません。
この時点では、この二人、何とまだ交際関係にありません。
なんということでしょう、こんなに砕けた態度で接している幼馴染関係があるでしょうか。
いや、続終物語でありましたね。なら問題ないか。
え、謎の怒りの原因?
さあ、なんでしょうね......
天野くんは羽川さんのことを除け者にして、ただ友達と楽しくおしゃべりしていただけなので、
それを読書しながら横目に見てて何かふつふつとする感情でもあったのかもしれませんね。
また、怒り方に関しては化物語の副音声を参考にして書きました。
後、細かく原作との違いを特に強調せずに描写したりしていますが、
気付いたら「ここすき」とか入れてみてください。
前の2話に対しても、好きな描写や拙作の羽川翼の原作からの変化を感じた個所に
「ここすき」を入れていただけると大変今後の参考と励みになるのでお願いします。
その1ということはその2があるということではという期待を持たれた方には残念。
私は猫のように気まぐれなので、とりあえず、その1としただけです。
その2がでるとしたら、バレンタインデーの話とかになるかもしれません。
※予定は未定で実際には変化している可能性が多分にあります。
そもそも原作の話も変わりそうだなと思いつつ今回のつばさランウェイを執筆しました。
一応、天野君には裏設定も仕組んでますが、そこまで話が伸びるかも分かりません。
のんびりとお待ちいただければと思います。