アカメが斬る―忠義とは何がために―   作:500円

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前回のあらすじ
元軍人のカールは、軍人時代の先輩であり親友のブラートに呼ばれ帝都へとやってきた。
そこで彼は帝都警備隊の少女と出会う。己の過去がすっかり忘れたかけられていることに安堵するが、ブラートは彼を暗殺稼業の道へと誘う。ブラートの上司であるナジェンダも加わり、彼にナイトレイドへと入隊して欲しいという。
はたして、カールはこれから一体どうするのか。



第2話

昨日の疲れでぐっすりと眠っていたカールは、グワァッ!?という何かの叫び声で目が覚めた。辺りを見回すが、どうやら大きな口を開けた怪物が迫ってきているわけではないらしい。絶対に自身ではないと、小刻みに震える彼だった。

昨晩はナジェンダに殴られた後、そのまま仰向けで寝てしまったようだ。森の中で寝るのは非常に危険なのだが、カールは野宿というのに慣れているつもりだった。

彼は気配に敏感で、自身の認識できる領域まで何かが近づくと、寝ていたとしても飛び起きる、癖とも習慣ともいえぬものがあるのだ。昔に彼はこれを長所といったことがあるが、周りからはビビりとからかわれていた。

もともと生まれが戦争の多いところで、ブラートとの出会いは義勇兵として参戦した時だった。駆け出しのころは彼に何度も守られ、救われた。本当にブラートには感謝してもしききれない。

身体についた砂を落とし、大きく背伸びをする。

 

「ふわーぁ……革命か」

 

恐らくブラートからの手紙は、あの二人がナイトレイドに勧誘するためだけに届けてきたのであろう。郵送ではなく、ブラートが直接運んで窓から投げ入れた。窓を壊して。

その勧誘も昨日済んだ。いや、今朝といった方が良いのか。

 

『本来であれば話をした以上、我々の傘下として働いてもらうのが筋というものだが、生憎と私もブラートも手配書が出ている身だからな。住処まで知られていない以上、無理強いはできん』

 

ナジェンダは腕組みをして、さも困っているように見えた。拉致できないことにだ。ブラートも肩をすくめてお手上げだというポーズをしている。

恐ろしいことに、こいつら顔を知られていなければ誘拐するつもりだったらしい。元軍人二人というだけなら相手にするのは少し難しいくらいだろう。だが、この二人を相手には何があっても勝てる見込みがない。

 

『何にせよ、我々のことは頭に入れておいてくれ…そして、その目で帝都の今後の行く末を見極めてくれ。いつでも待っているぞ』

「見極めろと言われもな………暗殺されるのは得意だろうが、するのは駄目だろうな。そういえば、ハンサムって呼ぶの忘れてたな」

 

荷物を持った彼はその足で、また帝都に戻っていく。

 

 

朝餉は昨日の弁当だった。一応、匂ってみて大丈夫そうだったので食べたが、後で後悔することは…ないはずだ。

街中を歩くころには、すっかり太陽が昇り青空で良い天気だった。

帝都では皆が皆『不況』『不況』と口ずさむ。職種の中でも帝都警備隊が人気で、連日列ができているそうだ。

まぁ、そんなところを受けるつもりがないカールからすれば関係ないことだ。

人だかりをかき分け、ようやく辿り着いた場所は非労働者のための掲示板である。

要は雇用者側がここに張り紙をして、非労働者側が条件を見て受けに行くといった感じだ。

周りいる人は紙に何かしらを書き込んでおり、熱心だなと思う。

 

「ここら辺は昔と変わらないな。特にこの募集掲示板なんかは張り紙を持っていく奴がい

たりするからな…えぇと」

 

➀護衛募集

定員:10人程

内容:合格時に通達

待遇:皇拳寺、軍人、傭兵は優遇

締切:本日中

 

➁料理人募集

定員:3人

業務:豚をしめて肉を捌く行程

待遇:経験者優遇

締切:明日まで

 

➂~~~~

 

 

前言を改めよう。今、張り紙を勝手に持っていくのはカールだ。これでも地面に落ちたものだったので、古いだろうから問題ないと思ったのだ。

だが、あの場で拾おうとしたのが間違いだった。アレだけ人が密集していれば、おのずと空いた空間は潰される。ちょっと屈んだだけで、ひじ打ち、裏拳が顔の周りを飛び交い、挙句には四肢をついた際に踏み台とされ、背中は足跡だらけになった。

 

「結局…ある程度名の通った信用に足る人物に限るな。しかもチョウリといえば、元帝国大臣しか思いつかないよな…?」

 

苦労して手に入れた無価値の張り紙を手に持って、人に道を聞きながらチョウリ邸を目指す。ここまでして人違いの場合は、適当にごまかそう。

チョウリというのは、現在のオネスト大臣とは違って民を中心とした政策で支持を得ていた元大臣だ。それ故、貴族からは嫌われていたが本人は気にも留めていなかった。

その彼の護衛を募集しているというのがあり、向かっているところだ。

何でも試験が難しいらしく、定員2名だというのに未だ採用者がいないらしい。

この不景気だと、倍率が100であっても問題はないだろうに。

 

「っと」

 

道の向こう側から帝都警備隊の装備をした4人が、こちらに向かって歩いてくる。左右を見て路地に身を隠す。彼らが何かを話しながら歩いていたおかげで、カールに気付くことはなかった。

そして、隠れることや誤魔化すことが習慣になっているのだと気づかされる。

 

 

カールがチョウリ邸に着いてみると、本当に誰もいなかった。どうやら護衛募集はしたが、ことごとく返り討ちにしたようで受けに来ようとする者すらいなくなったようだ。

そもそも元大臣ともなれば、帝国の武術養成機関である皇拳寺から人材が来るだろう。皇拳寺は人材不足なのだろうか。

さらに、邸宅の周りにも張り紙があった。こちらはグレードアップしており『来たれり猛者』と書いてあるが、もはや趣旨が違っていると思う。これでは道場破りに来いといっているようなものだ。

門をくぐってすぐのところ、腰掛の背もたれに伸びきっている女性がいた。

見かけは若く、金色の長髪でお嬢様のような感じであった。それとは裏腹に、絶望した顔で口から何かがこぼれてきそうだと思って見ていると、目が合った。こちらに気付いたようだ。

次の瞬間、凄い剣幕をした彼女が猪のように走ってきた。うん、場所を間違えたか。

 

「そこの人!待ちなさい!」

「待つも何も護衛を…っ、槍を投げた!?」

 

本当、女性というのはよくわからん。昨日のナジェンダといい、顔を合わせるとこうだ。人の肉を食う。これを世間では肉食系というのだろうか。

そうしている間にも迫りくる槍。槍だというのに矛先の形状が細くない。どうやら、彼が思っている槍とは違い、大きめの包丁を先端に付けた棒といった感じである。このことから突くというより、薙ぎ払うことに適しているようだ。

 

「ならば…」

 

彼はその場で腰を落として前かがみになり、両手を前に出して構えた。

タイミングを計って先端付近を虫を取るように両手で一気に挟み込む。カカッと音がして腕が手前に引っ張られた。胸の前で合掌しているように見えてしまうだろう。

しかし、なんとか刃取りをしてみせた。

摩擦で生じた熱さが手に残る。幸いにも手の皮が少し歪んだ程度で済んだようだ。

 

「はぁ、危なかった…長い間、鍛錬だけで実戦をしていなかった分、頭が働かん」

 

自身の力不足を感じる。以前であれば、挟んだ位置で止めていた。故に紙一重とまで迫ることはなかっただろう。

それ以前に、こうも度々に殺されかけると怒りを通り越して呆れを感じてしまう。

さらに投げた本人は目を輝かせ、拳を握りおおっ!と感心していた。本当に殺す気か。

止めた槍を持って彼女へと近づいていくカール。自身と同様に受けに来た人間かと思ったが、そうではないようだ。

 

「是非とも父上の護衛に志願を!」

「…父上?」

 

それが無職からの護衛への前進だった。

 




今回からあらすじも書くことにしましたが、前話を見ていただければ問題ないと思われます。
帝具、人物、そのほかの設定の説明もまだ先となりそうです。
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