オーバーレイヴン   作:ざいざる嬢

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思いついたもしもの話です。

緩くお楽しみください。

念のためアンチ・ヘイトタグ付けておきます。


ALTミッション ヤルダバオト迎撃

 

 

 

 

 

『久しぶりだね、レイヴン。こうして君と連絡を取ったのは何年振りだろうか?

 早速だけど依頼の話をしよう。 場所はローブル聖王国。ここに王国を強襲した大悪魔……魔皇ヤルダバオトが侵攻している。 配下にメイド悪魔と……多くの亜人を連れてね。

 ヤルダバオトという悪魔は私は聞いたことがない。 もしかすると君なら知っているかもしれないが、そうなるとヤルダバオトもユグドラシルで生まれたモンスターなのかもしれない。 もしそうなら、この世界の人間ではとても太刀打ちできないだろう。

 このヤルダバオトを倒した時点で依頼は達成だ。 ただ、ローブル聖王国には新たに建国された魔導国の王アインズ・ウール・ゴウンが助力しているらしい。 ヤツは間違いなく《ぷれいやー》か《えぬぴーしー》……ユグドラシルに関係している存在だろう。場合によっては交戦する可能性もあることを憂慮して欲しい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白金の竜王(プラチナム・ドラゴンロード)からの依頼は久しぶりですね。気を引き締めていきましょう。

 ──メインシステム、戦闘モード起動。 行きましょう、レイヴン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ローブル聖王国はかつてない危機に襲われていた。

 かつてリ・エスティーゼ王国を襲った大悪魔ヤルダバオトの襲撃により城壁が破壊され亜人族の連合による侵攻が開始。

 カリンシャにてヤルダバオトと接敵した聖王女カルカ・ベサーレス、神官長ケラルト・カストディオ、聖騎士団長レメディネオス・カストディオは敗れ前者二名は消息不明となり、一人残されたレメディオスは地獄と化した聖王国を救うべく、王国とアダマンタイト級冒険者チーム蒼の薔薇に助力を求めるも失敗。

 代わりに蒼の薔薇より紹介されたかつての戦いでヤルダバオトを撃退したアダマンタイト級冒険者モモンの助力を得るべくアインズ・ウール・ゴウン魔導国へと赴き、従者ネイア・バラハによる必死の訴えにより救援は早められ、ヤルダバオトの支配するメイド悪魔を引き渡すことを条件に魔導王自らが助力するに至った。

 

 

 そうして月日が経ち、アインズ・ウール・ゴウン魔導王と魔皇ヤルダバオトは遂に決戦する……はずだった。

 

 この聖王国を支配する計画は魔皇ヤルダバオト──ナザリック地下大墳墓第七階層守護者デミウルゴスによって立案され実行された。

 このヤルダバオト──憤怒の魔将(イビルロード・ラース)とプレアデスとの戦いはアインズが自身の近接戦闘の訓練を兼ねて行われるものになるはずで、最終的にアインズが死ぬという状況を作り出し、アインズがいなくなった状態でナザリックをどのように運用するかという試験も兼ねる予定だった。

 プレアデスも上位二重の影(グレーター・ドッペルゲンガー)という召喚できるモンスターのため、殺しさえしなければナザリックの損失はない。 結果的にはデメリットが存在しない戦い──訓練になるはずだった。

 

 

 

 

 

 しかし、これらの計画はたった一人のイレギュラーによって破綻することとなる。

 

 

 

 

 

「魔導王陛下! あれは!」

 

 アインズの従者であるネイア・バラハは目撃した。この都市を包み込むように吹き上がる炎の壁を。同時に王国で蒼の薔薇が話していた内容が浮かび上がり、遂にこの時が来たと確信する。

 

「ああ、君の思った通りだろうな。私もモモンより聞いている。……遂にこの時が来たな。ヤルダバオトだ。奴が攻めてきたということだ」

 

 この事態を予期していた魔導王の冷静な態度に心は落ち着き、ネイアは魔導王に指示を仰ぎ、速やかに行動を開始する。

 そして、自分を置いて決戦に向かわんとする魔導王に同行を呼びかけ〈飛行〉の魔法で追従する。そうして目的地である司令部へと駆け込む。司令部には魔導王を待ち望んでいた聖騎士たちとカスポンドが──一人、レメディオスだけは気が立っているのか忌々しげな顔をしていたが──討論していた。

 そうして、現れた炎の壁について魔導王が説明し、矢継ぎ早に飛ぶ質問に魔導王は応答し──

 

 

 

 ドォォォオオオンッッッ!!

 

 

 

 辺り一体を震わせるような轟音が鳴り響いた。これには流石の魔導王──アインズも驚き、音の発生源へと目を見やる。

 

(確かあの方向に憤怒の魔将とプレアデスたちがいるはずだけど──何かあったのか?)

 

 本来ならばこの司令部へと憤怒の魔将が襲撃し、勝負の場へと呼び出すはずだったのだが、今のところその気配はない。

 

(まさか──遂に来たか?)

 

 可能性としては考えられるが、果たしてどうだろうか?

 アインズは疑問に思いながらも警戒を強める。プレイヤーが相手であればシャルティアを支配した相手の可能性が高い。世界級アイテムを持っているのは確実だ。

 

(ならば、この場で叩き潰すか? いや、相手を特定して情報を集めてからでも──)

 

 思考に耽っていると再び何かが爆発したかのような音が鳴り響く。 我に帰ったアインズは指示を飛ばす。

 

「どうやらヤルダバオトは私を誘き出そうとしているらしい。 ここからは私一人で行く。君たちも避難してくれ」

 

「魔導王! 私も行くぞ! お前の剣に一時的にだがなってやる! あのゴミ野郎をぶっ殺してやる!」

 

「……やめておけ、邪魔にしかならない」

 

「なんだと!?」

 

「分からないのか? 先の戦いでもお前はあの亜人三人に押されていた。その程度の実力ではヤルダバオトには決して勝てん。はっきり言おう。お前は足手まといだ」

 

 仇を見るような血走った目でレメディオスは魔導王を睨みつけるが反論は出てこない。彼女は自分ではヤルダバオトに勝てないと理解している。だが、勝てないからといって立ち向かわないのは聖騎士としての行いではないと事実を認めず心を奮い立たせていたが、その思いは呆気なく無碍にされ、納得せざるを得なかった。

 

「分かったら皆避難を。 無いとは思うが戦いで都市が半壊してしまったらすまない」

 

「それは構わないが……魔導王陛下、どうか頼む」

 

 

 

 

 そうして、司令部を後にしたアインズは音の発生源へと向かう。

 辺りを見渡せば炎の壁は跡形もなく消え去っていた。

 

 

 

 

 

「これは……!?」

 

 

 音の発生源へと辿り着いたアインズの眼窩に映ったのは──いくつもの死体。

 一つは憤怒の魔将。胸部が何かで貫かれたかのように消滅している。五つはプレアデスのもの──ではなく、プレアデスに変身していた上位二重の影(グレーター・ドッペルゲンガー)の見るも無惨な死体。それぞれがプレアデスの装備をしているのは恐らくアルベドの指示だろう。

 そして警戒のために配備していたハンゾウたちも死んでいた。

 

 憤怒の魔将一体ならアインズでも問題なく倒せる。ここにプレアデスが加わったとしても多少苦戦するだろうが負けることはレベル差を考えてもそうないだろう。しかし、ここにハンゾウが加わったとなれば話は別だ。アインズでもかなりの苦戦を強いられるだろう。

 問題はこれを誰がやったかということ。

 

 すぐさまアインズは〈伝言(メッセージ)〉でアルベドやデミウルゴスに連絡しようとするが──

 

(〈伝言〉が繋がらないだと!?ユグドラシルではこんなことなかったぞ!?)

 

 なんらかの魔法で〈伝言〉が封じられてしまっていた。 これでは不味いと判断したアインズは〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)〉を使用しようとするが──

 

 

 パリーン……

 

 

 何かが砕けた音が聞こえ──〈上位転移〉の発動は失敗した。

 

 

「これは……転移の阻害か!?」

 

 アインズはすぐさま身構える。〈伝言〉が伝わらず、転移系統の魔法が封じられたとなればナザリックからの救援は期待出来ない。

 ならば、アインズ一人で迎え撃つしかない。 武器である杖を取り出し、警戒を強める。 そして──

 

 

 

『敵性反応──推定レベル100死の支配者(オーバーロード)。 名前と種族から──ギルド〈アインズ・ウール・ゴウン〉のギルドマスター、モモンガと推測されます』

 

 

 アインズは突如聞こえた声の方向を見上げる。

 そこにいたのは──黒いパワードスーツを纏った一人のプレイヤー。この光景を生み出した元凶。

 

「──まさか」

 

 アインズの脳裏に二つの昔話が過った。 一つはモモンとして冒険者の活動を始めた際に、ニニャが語った昔話。

 

『かつてこの世界を滅ぼそうとした魔神たちに立ち向かったのは十三英雄ですが、その大半を滅ぼしたのは黒い鳥と呼ばれたモノだと言われています。 詳しいことは調べないと分かりませんが、スレイン法国では不吉の象徴として酷く恐れられているそうです』

 

 昔話に語られた存在。二百年も前の話。鳥人(バードマン)などの亜人、異形種ならばもう生きていないだろうと考えていたが、その考えを嘲笑う様に黒い鳥がそこにいた。

 

 そしてもう一つ過った昔話は──ユグドラシルで恐れられたとあるプレイヤー。

 翼が装飾された黒いパワードスーツを纏い、多くのギルドに単独で攻め込み攻略しギルドの象徴を片っ端から破壊し、敗北者と引退者を増やしたとも言われているとあるプレイヤー。

 最終的にはこのプレイヤー一人に対して八パーティ──四十八人による討伐隊が組まれ、拠点へと襲撃したらしいがその全てが敗れ去ったという伝説を残したプレイヤー。その名は──

 

 

 

『メインシステム戦闘モード再起動。 レイヴン、気をつけて』

 

 

 

 ──レイヴン。それは、かつてムスプルヘイムを中心に活動していた地雷プレイヤーの一人。

 下手をすればワールドチャンピオンが相手でも格上殺しするのではないかとまで言われた黒い鳥(レイヴン)は、アインズを滅ぼすべく行動を開始した。

 

 ブースターが火を吹き、アインズへと急接近する。 その速度は〈飛行〉ではとても追いつけない程の速さで、衝撃のあまり動かずにいたアインズは接近を許してしまう。

 それを逃さなかったレイヴンは右手に装備されている魔導銃であるショットガンを至近距離で発射し行動を阻害する。

 ショットガン──ZIMMERMANによる一撃はアインズをたった一撃で少なくないダメージを与えスタッガー状態へと追い込み、ろくな抵抗もできないまま追撃を許してしまう。右肩部の魔法武装から放たれるのは〈朱の新星(ヴァーミリオン・ノヴァ)〉。

 炎属性によるダメージはアンデッドの弱点のため、アインズに大ダメージとなるはずだったが、アインズも弱点をそのままにしておらずマジックアイテムによって炎によるダメージを完全無効にしている。その為、致命的なダメージを負うには至らなかったが不利な状況には変わりがない。

 

 

「ぐうっ……一度距離を取らねば……だがその前に〈第十位階死者召喚(サモン・アンデッド・10th)〉」

 

 

 転移魔法は使えない為、召喚系魔法で盾役を作りその間に体勢を整えることを選択したアインズは召喚した破滅の王(ドゥームロード)をレイヴンにけしかけ、魔法による自己強化を始める。

 破滅の王がどれだけ時間稼ぎになるか不明な為、満足な強化は出来なかったものの最低限のバフは掛けられたため反撃へと移行する。 その頃には破滅の王はレイヴンの猛攻を受け塵と化していた。

 

『破滅の王撃破。 続いて──オーバーロード、モモンガ来ます!』

 

「随分と派手にやってくれたじゃあないか……! だが、アインズ・ウール・ゴウンを舐めるなよ。 〈第十位階死者召喚〉、〈中位アンデッド作成〉」

 

『新たに敵性反応。破滅の王と死の騎士(デスナイト)です。 レイヴン、対処を』

 

 再び破滅の王を召喚し、更に死の騎士を召喚することで前衛を揃える。これにより多少の不利は覆ったとアインズは自分に言い聞かせる様に言い聞かせた。

 そもそもレイヴンというプレイヤーの情報が少ないのもある。 レイヴンがユグドラシルで猛威を振るっていた頃はプレイヤーも減少傾向にあり、ギルド〈アインズ・ウール・ゴウン〉もメンバーのおよそ半数が引退していた。

 分かっているのは精々自動人形(オートマトン)というプレアデスのシズと同じ異形種であり、パワードスーツに並々ならぬこだわりを持っていたことや個人で複数世界級アイテムを所持しているという噂程度。 戦法なども話題になってたかもしれないが、少なくともアインズは聞いたことはなかった。

 

 しかし、パワードスーツを中心とした職業ビルドならばHPとMPは低めと予想は出来る。パワードスーツは強力な反面、それに頼り切ると素のステータスは低くなるという欠点もある。そこにアインズは勝機を見た。

 

(あくまで装備者のHPは据え置き……ならば、高威力の魔法で押し切る!)

 

 アインズが知る限り自動人形という種族は雷属性のダメージが倍加するというアンデッドと同様の欠点がある。次点で炎属性、酸属性が弱点になる。 恐らく雷属性に対しては完全耐性を付けていると仮定してアインズは使うべき魔法を選出していく──よりも早く事態は急展開を迎える。

 

「……チャージ完了〈MOONLIGHT(月光剣)〉」

 

 レイヴンの左腕が変形しブレードが形成され、凄まじい光が収束し──大回転し横一線に光波を放った。

 

「何!?」

 

 その光波はドゥームロードと死の騎士を飲み込みあっさりと消滅させた。それだけに止まらず後衛に回っていたアインズへと今にも届きそうになっていた。

 すかさず無詠唱化した〈飛行〉で上へと回避し直撃を免れる。同時に見たこともないスキルに警戒の色を強める。少なくともレベル70代のドゥームロードすら一撃で屠る程の一撃をそう何度も受けるわけにはいかない。

 変形させた腕を元の形に戻したレイヴンは再びブースターを起動しアインズへと接近する。対してアインズは〈光輝赤(ボディ・オブ・イファルジェント)の体(ヘリオドール)〉を発動。斬撃に対するダメージを軽減するこの魔法は同系統の〈光輝緑の体(ボディ・オブ・イファルジェントベリル)〉〈光輝青(ボディ・オブ・イファルジェント)の体(アクアマリン)〉と同時に使用できないものの、先程の〈MOONLIGHT〉による一撃を警戒するなら最適解だったと言えよう。しかし、これは少々軽率な行動だった。 何故ならレイヴンは自分の手札をまだほんの僅かしか見せていない。

 

 

 

 

 

 レイヴンはアインズへと接近しながら必殺コンボを決めるべく行動に移す。前世での『ARMORED CORE Ⅵ』でも決まれば大半の敵を一撃で仕留められる──ミッションによっては逆に仕留められるが──とある武器は、幸いなことにYGGDRASILでも別の形で実装していたのは彼にとって幸運だった。

 アインズが使った〈光輝赤の体〉はあくまで斬撃ダメージの軽減であり、刺突や打撃には対応していない。〈光輝緑の体〉なら一度きりとはいえ完全無効化されていたことも考えると今の状況は非常に都合がいい。

 ブースターを加速し──気持ち的にはAB(アサルトブースト)をしている──敵プレイヤーであるアインズへと急接近する。 相手は杖を持ち構えるのと同時に最強化したであろう〈現斬(リアリティ・スラッシュ)〉を三重に放ってくる。回避は困難、大ダメージは受けるがレイヴンは即座にスキル〈自己修復(オートリペア)〉を使用し、損傷を回復する。 これも一日に三回までと制限はあるもののHPを中位魔法程度回復出来る優れたスキルだ。これも同じくリペアキットを思わせるスキル──もしかすると『YGGDRASIL』にはフロムの製作陣がいたのかもしれないなどとくだらないことを考えながら、当時は戦いに明け暮れていたのを思い出す。

 そうして〈現斬〉の弾幕を掻い潜りアインズと距離を詰めた。対するアインズは手に持つ杖をこちらに叩きつけてくる──が、ブースターを一時加速しQB(クイックブースト)の要領で回避する。魔法詠唱者(マジック・キャスター)であるアインズが態々至近距離でそれを振るうからには何かしらの魔法的効果があると考えるのが自然だ。恐らくこの場合ならノックバック効果かそれに準ずる距離を稼ぐための効果が付与されているのだろう。

 だがレイヴンはその様な戦法を取るプレイヤーをこの五百年、加えればYGGDRASILでの経験でよく知っている。その様な策はレイヴンには通用しない。

 更にブースターを起動しABの要領で再度アインズに接近し、蹴りをお見舞いする。高位のアンデッドとはいえ身体は骨だからか軽い感触しか感じなかったが、打撃に弱点を有するアインズには加速した蹴りは堪えたらしく少しばかりよろける。そこを見逃さない。

 

「〈アサルトアーマー〉」

 

 レイヴンを中心に衝撃を伴った爆発が発生する。これによりダメージを受けたアインズは数秒ではあるが完全に動けない状態に陥った。 もしも転移系の魔法が使えればこの場を離れることで追撃は免れただろう。しかし、それはこの戦いが始まる冒頭でレイヴンがいくつか使用した魔封じの水晶に込められた〈次元封鎖(ディメンジョナル・ロック)〉により叶わない。

 

『レイヴン、今です!』

 

 そしてレイヴンは左腕を変形しパイルバンカーを形成。チャージしそれをアインズ目掛け──

 

「ま、待ッ──」

 

「チャージ完了〈パイルバンカー〉

 

 ドォォォオオオンッ!

 

 パイルバンカーはアインズの胸元を穿ち、その仮初の生命を消し飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(俺は……死んだ、のか?)

 

 アインズは気を失う──アンデッドでは本来起こり得ないことだが──直前のことを思い出す。

 レイヴンにより先手を打たれ続け後手に回ることしか出来ず、最後はあの〈パイルバンカー〉による一撃で七割は残っていたHP全てを失い死んだはずだった。

 

 何故アインズが今生きているのかと言えば、九つ装備している指輪の一つに蘇生の効果を持つ物を着けていたからだ。その指輪は役目を終え砕け散っている。

 

「生き返った……のか」

 

 蘇生の影響か減ったMPこそそのままだが、HPは全回復している。 かつてのシャルティアの様に継続して戦うことも可能だろう。しかし──アインズは死に恐怖していた。

 この世界に転移してからアインズ──ナザリックに敵う存在はいなかった。それこそシャルティアとの戦いは肝を冷やした場面があったものの、シャルティアのことを熟知していたアインズは有利に戦いを進めることが出来た。

 しかし、今回レイヴンとの戦いはその逆。万全な準備も出来ずにいきなり交戦し、終始後手に回り呆気なく敗れ死んだ。

 かつてたっち・みーや武人建御雷といった仲間たちとPVPを重ね、何度も敗れては挑戦を繰り返すということをしてきたが、あれはあくまでもYGGDRASILというゲームの中での出来事だったから出来たことだ。

 ゲームの世界が現実になり、実際に命を失い蘇生したことによって死の支配者であるアインズに死に対する恐怖が生まれてしまったのだ。

 

『敵性個体モモンガが蘇生した様です。 レイヴン、警戒を』

 

 無慈悲な機械的な女の声が耳に届く。

 アインズが身体を起こせば目の前には既にレイヴンが立ちはだかり、ショットガンを此方に向けながらと左腕をあのブレードへと変形させている。〈光輝赤の体〉の効果は失われているためあのブレードによるダメージはまともに受けてしまう。

 この状況からアインズは勝ちの目を探ろうとして──途端に恐怖に襲われる。

 

(この状況で反撃したとして……勝てるのか? いや、無理だ。どうやってもこの状況から勝てる光景(ビジョン)が浮かばない──詰みだ。

 ナザリックから救援が来れば可能性はあるが、この状況でも来ないところを見ると望みは薄い。 だったらどうする?どうすればこの状況を──)

 

「ま、待ってくれ!待って欲しい!頼む!」

 

 アインズが咄嗟に身体を起こし土下座をする。 レイヴンは武装をアインズに向けたまま微動だにしない。しかし同時に引き金を引いたりすることもなかった。

 

「わ、私はアインズ・ウール・ゴウンのギルドマスター、ナザリック地下大墳墓の主人だ。 見逃してくれるのであれば、相応の礼をする。だから……殺さないでくれ」

 

 アインズの心は折れていた。たったあれだけの戦闘で、一度死を経験したことでアインズの中の『鈴木悟』という人間が死に怯えてしまった。

 一度恐れを抱いたものはそう簡単に払拭出来ない。故に生を望んだ。生きてさえいればかつての友人たちとも再会できるかもしれないのだ。その機会すら奪われるのはアインズにとって耐え難いことだった。

 

『……レイヴン、どうしますか?』

 

 

 

取引に応じる◁   ▷取引に応じない

 

 

 

 

 

 

 





最後、レイヴンがアインズを見逃すかどうかは皆さんのご想像にお任せします。
多分その方が色々想像できて楽しいんじゃないでしょうか?
なお、ナーベ以外のプレアデスの装備は全てレイヴンに回収されるのは共通です。


レイヴンのいる世界線の転移後世界
真なる竜王はツアーと隠れ潜んでいる竜王以外は全滅。原因は八欲王との戦いにエントリーしたレイヴンが八欲王と戦っている中で諸共殺そうと何体かの竜王が攻撃したためにターゲットになってしまったから。敵対者にレイヴンは容赦しない。
スレイン法国では『黒い鳥』の伝承が警句として残されており、敵対する何もかもを焼き尽くすとされている。
スルシャーナに関しては八欲王が弑虐しているためレイヴンは全く関与していない。
二百年前の魔神との戦いでもレイヴンが参戦。魔神の大半を滅ぼし、十三英雄たちとも一度は交戦し、リーダーと白金の説得に応じ和解した経緯がある。

また、この世界線ではレイヴンが身につけているというパワードスーツの研究が帝国やツアーの元で行われており、模造品もかなり高額で取引されているがオリジナルには遠く及ばない。
その為、アズスが持っているパワードスーツは割と狙われている。

ツアーと知り合って以降はレイヴンは大陸中を巡り、更には大陸外に冒険に向かっている。その際、プレイヤーの残したギルド拠点を攻略したり、守護者を倒したりしており、プレイヤーの遺産や世界級アイテムを所持している。
また、ツアーからは度々世界を脅かす敵の排除を依頼したり、ユグドラシル関連の調査を依頼されている。


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