がっこうぐらし! 難易度ナイトメアで真・全員生存RTA   作:ランディー55

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ななげんめ! 山猫は見ている

 最初に聞こえたのは悲鳴だった。

 建物の一階、そこでなにかあったらしく人々が逃げ惑っている。

 そして考える隙も与えずに明かりが落ちて停電、当然エスカレーターもエレベーターも動かない。

 なにが起きているのか分からないが、ここにいない方がいいと言う考えは私も圭も同じだった。

 

 階段を使って下に降り、外に出ようとした所で……“かれら”と出会った。

 それと同時に見てしまった、男性が多数の“かれら”に貪り喰われている所を。

 

 腐った死体のような見た目をした“かれら”は私達を見つけるなり、ゆっくりとだが確実に私達に向かってくる。

 私達は逃げた。

 ただひたすら逃げ、最終的に空き部屋のような所に行き着いた。

 

 この部屋は何故かマンションの一室のようにシャワーもトイレもある。

 非常食もあるし助けが来るまでここで待とう。

 

 そう圭に話し、私達は偶然見つけた太郎丸も加えてここで暫くの間生活する事にした。

 1日、2日、3日、4日………一週間。

 

 ……誰も来ないし、“かれら”の気配しかない。

 変化があったとすれば、昨日大きいカラスがエサでも探しているのか窓の外を飛び回っていたがそれぐらいだ。

 

「…流石におかしくない? 誰も来ないよ…」

 

「……事態が事態だし、ここまで手が回ってないだけだよ」

 

「でも…!」

 

「じゃあどうするの!?

 外には“かれら”しかいない! 外に出た所で…あの男の人みたいになるだけなんだよ!?」

 

「………」

 

「あ…その……ごめん…、怒鳴ったりして…」

 

「…いいよ…別に」

 

 互いにこんな言い合いしていても意味などない事ぐらい分かってるのに、先が見えない不安や現状がなにも変わらない焦燥感によって無駄な言い争いで精神をすり減らす日々。

 

 いくら体が大丈夫でも精神はどんどん磨耗する。

 すり減った精神では視野も狭くなり、最終的にはまともな判断も出来なくなる。

 このままだと破滅するのは火を見るより明らかだが、現状は「待つ」事しか出来ない。

 

 せめて他の生存者とかと交流出来ればまだ気持ちは楽にはなるだろうが、今私達が動けないのを見るに仮に他の生存者がいてもまともに交流を持つのは不可能だろう。

 それに仮に交流出来たとしてもなんの問題もなくうまくいくとも思えない。

 

 ……昨日までは、そう思っていた。

 

「…? 太郎丸? どうかした?」

 

「………待って美紀、何かか聞こえない?」

 

「…足音…?」

 

「やっぱりそうだよね…!?」

 

 耳を澄ますとそれは聞こえて来た。

 “かれら”とは違う、早く規則的で静かな足音だ。

 それに加えてキャスターを転がしているような音も聞こえる。

 スーツケースでも引いているのだろうか?

 

「救助かな?」

 

「いや…流石に一人はおかしい。もしかしたら暴漢かもしれないし…」

 

「流石に考えすぎじゃないの?」

 

「でも相手も分かってないのに――」

 

 音がこちらに近づいてきた。

 三人で息を殺して隠れる。

 

 …音が止んだ。

 

「なぁ、誰かおらへーん!?」

 

 男性とも女性とも捉えられる声と共に部屋の扉が乱雑に叩かれる。

 

「やんやぁ…オレは“奴ら”とちゃうぞ? 出てきぃや、な?」

 

 そしてブラフなのか、癖のあるイントネーションでそう続けた。

 

 圭と顔を見合せる。

 大丈夫でしょとでも言いたげな顔だ。

 

「います! 中に三人です!」

 

「ちょっと圭…!?」

 

「ほーらおるらん。ま、取り敢えず鍵開けてーや」

 

 圭は私が止める暇もなく扉の鍵を開けた。

 

「大丈夫だよ美紀、怪しい人じゃない」

 

「もー……」

 

 扉の先に立っていたのは、身長が2mはありそうなとても背の高い綺麗な黒いスーツを着こなした赤い瞳の顔立ちがいい男性だった。

 手にはとても大きなスーツケースを引いている。

 

 確かに怪しい人には見えないが、仮にこの人に手を上げられたら私達では勝てない。

 念のため、探り探りで行こう。

 

「…なんでスーツなんですか? こんな時に。

 しかも汚れ一つないし…」

 

「そらお前人に会いに来たんやから身嗜み整えなアカンやろがい。

 ……って言うのは半分ウソで、単純にオレのサイズの服がこれと持ってきた普段着含め3つしかないんや。

 スーツは今まで着てなかったからキレイなままやったてだけよ、そう怪しまんでもええ」

 

 男性はそう言いながら部屋に入り、部屋の隅の方に重たそうなスーツケースを寝かした。

 外からやって来た物の匂いが気になるのか、太郎丸が匂いを嗅いでいる。

 

「取り敢えず自己紹介しとこーか。

 オレはホージョー、鳳条麗人(ほうじょうれいと)

 麗人と書いてレイトや、レイトでええよ。

 ま、見ての通りのビジネスマンやな。

 出張でここ来たんはええんやけど如何せんこの有り様でなぁ…

 今まで駅ちこぉのホテルに籠城しとったんやけどだーれもおらんさかいに、流石に寂し思て取り敢えずここ来てみたって訳や。

 自分らは?」

 

「直樹美紀です」

 

「圭…祠堂圭って言います」

 

「ほー…なるほどね。

 あーそうや、このケース会社の書類とか試作品とかが全部纏めて入ってるから勝手に開けんといてなー、一応機密とかで守らなアカンモンやから。

 ほら降りぃこの犬っころ、なんもええもん入っとらんから」

 

 レイトさんはそう言いながらスーツケースの上に座る太郎丸をおろした。

 

 しかし何故だろうか、レイトさんからは謎のデジャブを感じる。

 どこかで見た事…はまずない、他にレイトさんに似たような人も特に思い付かない。

 鳳条の名字もどこかで聞いた事がある気がするが…

 んー…どうせ他人の空似とかだろうし、深く考える意味はないか。

 

「しかし…これからどーするー?

 あ、先言うとくけど他に“人間”はおらんかったで、どこ見ても“奴ら”しかおらん。

 そんなんやからオレもタイミング見て虫みたいに隅っこコソコソ移動してやっとの思いでここまで来た。

 アテもないから、今外出るんは自殺と変わらんやろな」

 

「…なら救助を待つしかないですね…」

 

「不服そーやなケーちゃん、気持ちは分かるが。

 ………そういや自分ら、一週間はここおるよな? ずっとその服着とんか?」

 

「え? まぁはい。洗濯してる間はタオル巻いて凌いでますね」

 

「そうか……なら今から探しに行かへんか?」

 

「「…え?」」

 

「おー見事に被ったな。

 いや“奴ら”ってどうも習性があるらしくてな、昼はなんでか知らんけどフードコートに集まって他はガラガラになりおんねん。

 原理は分らんけど今はええチャンスやないか? それにこれ飯も切れかけとんとちゃうんけ?」

 

 言葉に乗せられるがまま、私達は外に出てモール内を探索する事になった。

 レイトさんの言う事には半信半疑だったが、実際に“かれら”は昼食を求めるかのようにフードコートに集まっている。

 これなら大丈夫だと言う事で、作戦通りその隙を突いて日用品や食料をそこにあったリュックサックやバッグに詰めて持てるだけ持って帰った。

 取り敢えず必要最低限は確保できた感じだが、レイトさんは満足してないらしく次は夜に外に出るから体を休ませておけと言った。

 

 しかし夜はなんと言っても暗い。

 そんな中、懐中電灯の光だけで暗闇の中物を探すのは危険だろう。

 なにより夜も同様、“かれら”が少ないそうだが()()()()()()訳ではないので尚更だ。

 でも昼に比べて静かな分音も聞こえやすいので、“かれら”の呻き声を察知して余裕を持った対応をする事が可能なので夜が相対的に安全なのも事実。

 この状況で一番脅威な“かれら”の有無で言えば必然的に夜になるのも当然の帰結か。

 

「……で、なんで私達はミリタリーショップにいるんですか?」

 

「オレが行きたいから。

 心配せんでもミキちゃんが行きたがっとる本屋にはちゃーんと寄る」

 

「もしかして武器にするとかですか?」

 

「いやいやいや、こんなオモチャなんぼ強化しても弱い弱い言われとる22ロングライフルにすら到底届かへんねん、威力欲しいなら専門の空気銃やないと無理なのよケーちゃん。

 じゃ、オレ奥の方で吟味してるから。

 ヤバそうやったら呼んでなぁ~」

 

 そう言ってレイトさんはリュックサックを持ってカウンターの奥へと入って行った。

 仕方ないので使えそうな物がないか探しながら待つ。

 

「見て美紀、これ丁度太郎丸入るよ」

 

「確かに丁度いいね…」

 

 圭が胸に太郎丸を入れたポーチをぶら下げている。

 

 最初は大した物はなさそうだと思っていたが、いざ店を探ってみると思いの外使える物が多い事に驚いた。

 大容量かつ使い勝手の良さそうなリュックサックに明るいライト、丁度いいサイズの腰に下げるポーチもある。

 

「お待たせ、ほな行こか」

 

 私達が物の選別し終えると同時に、ほくほく顔のレイトさんが店の奥から出て来た。

 リュックサックには長さ的に入りきらないのか、ヒョウタンのような形をした銃の先端ががはみ出ている。

 

「なにかいいものはありました?」

 

「帰ってから見せるわ。いや時間的に明日か?

 まぁええわ、次は本屋やな」

 

 そして本屋に行き、目当ての物を見つけるとリュックサックに放り込んで急いで部屋に戻った。

 持って帰ってきた物で部屋が散らかっているが、もう夜も遅いので整理整頓は明日やるとし今日は寝る事にした。

 

 翌日、午前を丸々使い使ってなかった棚を並べ直したり空き箱の段ボールを潰したりして整理整頓をする。

 かなり苦労したがその甲斐はあり、レイトさんが来る前よりも使いやすく広い部屋になった。

 しかも、その過程でまだ見つけられていなかった保存食や日用品を大量に発見できた。

 持ってきた物も含めるとかなり持ちそうだ。

 

 少し遅めのお昼御飯にはレイトさんが作ってくれた八宝菜を食べ、午後は各々休憩。

 昨日も今日も色々あったからか、私は自分が思っている以上に疲れていたようで暫く横になっていた。

 体力も回復すると昨日持ってきた本の確認をする。

 

「そういやミキちゃん、その小説英語よな? 読めるんか?」

 

「まあ…はい。スラスラ読める…とかではないですけど」

 

「へぇー、言語ちゃうのにすごいなぁ。

 どんな話なんや?」

 

「双子の兄妹がスナイパーとして活躍する物語です」

 

 舞台は争いを無くす為に感情を持つ事を禁止されたリブリアと言うディストピアな国家。

 そんな国の特殊部隊所属の主人公のヘンゼルとグレーテルは、リブリアの中で活動する反対勢力のトップを秘密裏に狙撃し暗殺する命令を与えられる。

 しかしこれは反対勢力に仕組まれた罠で、ヘンゼルとグレーテルが撃ち抜いたのは反対勢力のトップではなくリブリアのトップであるビックブラザーだった。

 二人はリブリア政府に捕まるも反対勢力に救出され、感情を押さえつけるのは間違っていると諭される。

 そしてそのまま反対勢力に協力しクーデターに参加。

 狙撃の腕を生かしてクーデターを行う反対勢力を援護――せずに反対勢力を一方的に狙撃していき、ついには反対勢力のトップを撃ち抜いた。

 二人は最初から反対勢力に協力するつもりはなく、協力する振りをして情報をリブリア政府に流していたのだ。

 流した情報により軍や警察も出動し、反対勢力は鎮圧されリブリアは平和な国となった。

 

「……と言うのが大まかな流れですね」

 

「ディストピア物で主人公が裏切ると見せかけて裏切らんのは珍しいな」

 

「えぇ。だから私は気になってよく読み返しているんです、なんでこの二人は裏切らなかったのかって」

 

「と言うと?」

 

「作中、主人公二人は“国の命令だから”で済ませるんです。

 でもそれで片付けられるのはおかしいと私は思うんですよ、そもそも国に従おうと言う気持ちがどこから出てくるのか分からないんですよね。

 感情がないので思想に則る正義感なんて当然なく、同様に国に愛着なんてのもない。

 保身にしても、この後リブリアは戦争で滅びますし…」

 

「…二人の目標が分からないと?」

 

「はい。この二人は才色兼備の上技量も経験も持ち合わせ、それこそリブリアからも逃げられるのにリブリアで戦うんです、戦争でリブリアが滅ぶ最後まで。

 感情がないから恐怖がないにしても、滅ぶのが見えているのになんでリブリアにいるのか…

 洗脳されてる訳でもないし、国に愛着がないならそのまま逃げればいいのに」

 

「……確かに…分からんな」

 

 そう言うレイトさんの表情は少し複雑だった。

 なんと言うか…己の人生を回顧している…と言った感じでしか表現出来ない、雰囲気と表情だ。

 この小説にレイトさんもなにか思う所があるのだろうか?

 

「てかそんな小難しいせんといてぇーなー、いや言い出しっぺはオレやけどさ」

 

 しかし次の瞬間にはその神妙な面持ちも消し飛び、何事もなかったかのようにいつも通りの表情豊かなレイトさんに戻っていた。

 さっきの事を聞いてみようかとも思ったが、雰囲気的にもしかしたらレイトさんの“地雷”かもしれないので触れないでおこう。

 この人との関係性を崩したくはない。

 

 まだ1日だがレイトさんが来てくれてよかったと本当に思っている。

 最初こそ疑ったが食料や服を探すのを手伝ってくれたし、その時に一番物を持ってくれたのもレイトさんだ。

 性格も明るいし、部屋の整理整頓もこの人がいないと出来なかった。

 

 この人なら信頼出来ると言っていい。

 これからも四人で仲良くしていきたい。

 

「そういえばレイトさん、レイトさんが昨日持ってきた物ってなんなんですか?」

 

「え? あぁこれ? いやえらい珍しいモンあるな思てな。

 AN-94、俗に言うアバカンやね。はい」

 

「よく分かりませんけど…よく出来てますね」

 

「そらそうやろ、モノホンやねんから」

 

「…………え?」

 

「タマ抜いとるから好さわってええよ。

 後はやな…そうそう、HK437に45口径のUSPか。

 USPはオレが貰うなぁ~、ミキちゃん達は437使い」

 

「いや…そうじゃなくて…、なんで本物がここにあるんですか…!?」

 

「さぁ…? オレに聞かれても困るわ。

 状況見るに、最初からこれ想定して置いてたって所やないかな?

 この部屋だってそうや、ショッピングモールにこんなガチガチの部屋があるわけない」

 

「それは…確かにそうですけど…」

 

「ま、理由なんてなんでもええ。“奴ら”に対抗できんのが重要なんや。

 鉄砲も部屋もありがたく使わせてもらおうやないか」

 

 …やっぱりこの人、ヤバい人かもしれない。

 


 

[AN-94 アバカン]

 ソ連の「アバカン計画」と言う次期主力アサルトライフル採用計画にて最後まで生き残り、ソ連崩壊後のロシアに採用されたマガジンが斜めに刺さっているアサルトライフル。

 愛称のアバカンは経過名から来ている。

 詳細はいずれ作中で話すのでここでは省く。

 

 作中の個体は標準仕様。

 

[HK437]

 [HK433]のハニーバジャーと同じ300AACブラックアウト弾を使う派生型で、ドイツの特殊部隊にMP5SDの後継機として採用された。

 元となったHK433はドイツ軍で使われている[G36]を代替するアサルトライフルとして作られトライアルに提出されたが、トライアルがグダりにグダり最終的に皆大好きHK416に負けて落選。

 今後も商売は続けるそうだが売れるかどうかは神のみぞ知る。

 

 作中の個体は標準仕様。

 ドットサイトがポン付けされている。

 

[USP]

 Mk23と同時期に開発された、Mk23とは双子のような存在の傑作拳銃。

 あまりにも尖りすぎて需要が限られていたMk23とは違い、様々なバリエーションを展開しその扱いやすさから世界中で採用されている。

 

 作中の個体は45ACP仕様のUSPタクティカル。

 両利き仕様にカスタムされている。

 

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