苦難の陳述者?ふざけた名前だな!   作:人事プロファイル

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Case24:負けず嫌いのゲーム

「キララ、この面子は如何なることか」

「仲悪そーだったから……親睦会、みたいな」

 

 キララに文句を言いたくなる気持ちは良く分かる。俺もこの面子はやばいんじゃないかと、睨み合うアカフユとフィアメッタを見て思わずにはいられなかった。

 

 事の発端は、キララから今度の休みに娯楽室でゲームをやらないかというメッセージが届いたことである。彼女なりに歩み寄ろうとしているのだと思って俺はそれを了承した。問題は、彼女が同様のメッセージをアカフユとフィアメッタにも送っていたことである。

 個々人なら問題は何も無い。だが、俺を見逃してはくれても信用はしていないアカフユ。先日の一件からかアカフユを危険人物と認識しているフィアメッタ。場の雰囲気は最悪だった。

 

「ほら、協力ゲームだから、さ」

「……カンレイとフィアメッタだったな。足を引っ張ったら許さんぞ」

「そんなマジにならなくても良いからね?」

 

 バチバチに煽ってくるアカフユに血の気が引いた顔をしているが、お前が作った地獄だ諦めろ。

 

「カンレイ。言われたまま黙ってるのは随分あなたらしくないわね」

「いや、最善の努力はするけどな。俺、ゲームなんて生まれてこの方、やったことねえぞ」

「えっ」

 

 三人同時に声が出た。三人寄れば姦しいというがその声量に耳を塞ぐ。首をそらして詰問の視線から逃げようとするが、アカフユとフィアメッタの二人は背が高いからあんま逃げられないな。キララくらいだともう顔も見えなくなるんだけど。

 

「極東出身でゲームしたことがない……!?」

「おいそれ極東人に対する偏見だろ」

 

 ラテラーノ人はスイーツを食べないと死ぬみたいな。ラテラーノに存在するジェラート屋の数を考えるとこれは事実な気がするな。じゃあクルビア人はピザとコークが大好きみたいな。いやこれもだいたい事実か。もしかしたら、極東人のも偏見じゃないような。いややっぱり偏見だろ。

 

「私でさえ触れたことがあるというのに、お前生まれも育ちも北朝だろう?」

「お武家様と田舎出身を一緒にしないでくれ」

 

 ちゃんとした教育を受けたおひいさまと違って、こっちはまともに学校すら出ていない。ロドスに来るまでの教育は、二つ離れた村で不定期に行われていた寺子屋くらいだ。

 

「確かに……ゲームしてるところは見たことないけど」

「漫画と映画と酒があれば娯楽は事足りるからな」

 

 ここまで言われることかとちょっとムッとなる。ゲームをしたことない奴なんて幾らでもいるだろう。軍に居た頃は、ゲームに狂ってる同僚も居たが、そもそも仲の良い友人なんかも居なかった俺には関係の無いことだ。

 

「やってみたら意外と……上手いかもしれないし、とりあえずやってみよ?」

「笑われるようなことはしないでよ?」

 

 キララからコントローラーを渡される。アカフユがゲームの起動ボタンを押した。横向きの人間が映し出される。記憶が正しければ、ジャンプを駆使して右端のゴールを目指すゲームだった筈だ。極東に居た頃に広告で映像を見たことが有る。

 

「ああ、これ見たことあるわ。ランクウッドで実写映画化してたよな」

「やってたねー。まあ有名なゲームだし。でもやったことない?」

「やったことはない。けど、プレイしてるのをちらっと見たことはあるな」

「左の十字キーで動いて、右のこのボタンでジャンプ。あとはやってみようか」

 

 赤い帽子と緑の帽子がキララとアカフユ。それとキノコ頭二人が俺とフィアメッタらしい。穴に落ちたらゲームオーバーらしいので、落ちないようにジャンプボタンを押す。

 

「わりと行けるな」

「まだ最初のステージだからな。幼子でもできる」

「さいですか」

 

 まだゲームは始まったばかりらしい。

 

□tips□

 

「ふー……ちょっと休憩しよ」

 

 ステージを五つ程クリアしたところでキララがコントローラーを置いた。普段からゲームをしているというキララが上手いのは当然として、アカフユも古風な出で立ちに似合わずゲームが上手い。ただ、アカフユの方はガンガン進んでいってしまうので俺らがついていけないことも度々あった。

 

「ゲームって意外と疲れるんだな……」

 

 腕を回すとぽきぽきと骨が鳴る。

 

「でも、カンレイ初めてとは思えないくらい上手かったよー」

「まあ、初見にしては上々か」

「そいつは良かった……」

「……こっち見るな」

 

 顔を赤らめて唇を尖らせるのはフィアメッタ。なんと困ったことに、一番下手だったのがフィアメッタだった。ゲームの経験はあるそうなのだが。落下するわ敵にはぶつかるわで散々。真面目にやっているのにどうしてこうなった。

 

「モスティマやレミュエルに絡まれて数回やっただけよ」

「お前よくそれで俺煽れたな」

「……私が最初にやったときはもっと酷かったから、行けると思ったのよ」

 

 その結果こいつが下手だったのが露呈しただけに終わったのだが。やけになって用意した菓子をぼりぼり食べている。

 

「まあ、ゲームってアクション以外もあるから」

「格ゲーに変えるか?」

「それ絶対ボコボコにするつもりじゃない!」

 

 キララのフォローもアカフユのからかいに上書きされる。普段スカした態度してるから、こういうの見てると溜飲が下がる気分だな。その不遜な態度に助けられたことも何度もあるから。言葉に出しては言わないが。

 

「今、スカッとするなーって思ったでしょ」

「人の心を読むな」

「分かりやすいのが悪いのよ」

 

 睨みつけられたので舌を出す。言うつもりは無かったのに勝手に察されてしまった。

 

「以心伝心という奴か」

「そんな大層なもんじゃないだろ。そう思ってたらムカつくから釘刺しとこ、ってくらいだ」

「人の心読まないでよ」

「分かりやすいのが悪いだろ」

「……やっぱり二人、仲良しだよね」

 

 仲が良いと思われるのは悪くないけど、これを見て言われるのはなんとも言えない気分になるな。

 

「でもこれ苦手だと……RTSとかFPSも駄目かも」

「あーるてぃ……えふ……なんだそれ」

「リアルタイムストラテジーとファーストパーソンシューティングだよ」

 

 長ったらしい横文字を使われても全く分からん。ストラテジー(戦略)シューティング(射撃)って言うんだから、戦うゲームっぽい感じか。

 

「シューティングなら出来るんじゃねえか。こいつ一応狙撃オペレーターだぞ」

「コントローラーと実銃じゃ勝手が違う気がするけど」

「ほう、では己が得意分野でも勝てぬと白旗を挙げるのだな」

「は?」

 

 アカフユの挑発的な言動に、フィアメッタも瞬間沸騰したようだった。すわ乱闘かとも思ったが、彼女はコントローラーを握り直す。

 

「そのえふぴーえすとやらを出しなさいよ」

「落ち着け。ゲームは別にお前の土俵じゃないだろ」

「ここまでコケにされて黙ってられないわよ」

 

 駄目だ。こうなったらテコでも動かない。困ったようにこっちを見たキララに、俺は白旗を挙げるふりをした。アカフユはノリノリで迎え撃つつもりだ。血の気が多い奴に血の気が多い奴が喧嘩を売るとこうなるのは必然。後はどっちがより負けず嫌いか。

 

 こりゃこいつが勝つまで終わらないな。ゲームを楽しむことからプレイヤーを見て楽しむ方向に意識を切り替える。キララにポテトチップスの袋を渡してコークの蓋を開けた。

 

「あれ、ほっといて大丈夫?」

「大丈夫じゃないだろうが、どうにもならん。見世物にした方が気分が楽だ」

「ええー……」

 

 ぽきぽきとフィアメッタが指を鳴らす。

 

「ぶっ潰す」

 

 その後、利用時間ギリギリまで挑み続けてアカフユですら頬を引きつらせていたのは言うまでもない。




キララ、アカフユは公式設定でゲームが上手い。
フィアメッタはサンクタに巻き込まれてゲームはやってるけど説明書とかヒントを読まないで突っ走るタイプ
カンレイは経験なくてもわりとなんでも卒なくこなすタイプ。その割にアクティブな趣味はカクテル作りくらい。
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