キュップぃ、ボクわるい魔獣じゃないよ   作:しやぶ

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プロローグ

 

「──『魔族』とは、『言葉を話す魔獣』のことである。これは知っているな?」

「うん。どこぞの大魔法使いが()()急速に普及させている定義付けだね」

「そうだ。その定義に従えば、()()()()()()()()()()()()()。これも解るな?」

「そうだね。胸糞悪い」

 

「しかし、我々と魔族の祖先は同じだ。魔族の祖先については知っているな?」

「物陰から人に向けて、『助けて』と声を発した魔獣らしいね。……ボク達の祖先でもあるってのは、初耳だけど」

「聞かれなかったからな。今日までの間に『我々の祖先について』問われていれば、答えたさ。

 ──まぁ、それはさておき。その魔獣は己の弱さを補うために、『知恵』を武器とした。『言葉』を『騙し討ち』の道具にしたのだな。

 そしてそのまま、『人を騙すことに特化した』のが魔族だ」

 

「──でも『()()()()()()()()()』でしょ? 何度も聞いたよ」

「その通り。我々は『知恵』を『騙すこと以外』に使う道を模索した個体の末裔だ」

「それで、ご先祖サマはその『知恵』を使って何を『新しい武器』に選んだの?」

「魔力さ。つまり『魔法』だよ」

「でもボク達の魔力は、魔族に遠く及ばない」

 

()()()()()()、だな。それは」

「昔は違ったの?」

「あぁ。我々は魔族より一足先に魔法を発展させた。昔の我々は、昔の魔族(奴ら)より強かったんだ。

 更にその魔法で我々は、無性生殖と同族同士での思考共有を可能にした。我々は個にして群になったのだ」

 

「いまサラッとトンデモないこと言ったね??」

 

「数は力だ。情報及びそれを扱う知性も力だ。そして個体毎の強さも、他を寄せ付けなかった。我々は紛うことなき『最強の種族』として君臨していた」

「だろうね。同時にますます、『どうして今こうなってるのか』が解らなくなった」

 

「魔族に狩られてしまったからさ」

「だーかーらー。それはどうしてなの? 今の話を聞く限りじゃ、負ける要素が思い付かない」

 

「我々は調()()()()()()()()んだ。

 引き際も考えずに、『産めよ増やせよ地に満ちよ』とね。するとどうなるかは、以前教えたな?」

「あ゛ー……()()()()()()()()()のか」

「正解。だから我々は、食糧難を乗り越えるために複数の解決案を考案し、それぞれ独自に計画を進行させた。

 『新たな食糧源の探索』『食糧の栽培及び家畜の養殖』『共喰い』『光合成もしくは草食を可能とするための魔法開発』等々……計画は多岐に渡った」

 

「待って何か恐ろしいの混ざってなかった???」

 

「結果、我々は一つの偉業を成し遂げた」

 

「え、無視??」

 

「──我々は、『感情を魔力及び栄養に変換する魔法』の開発に成功したのだ。即ち永久機関の完成。食物連鎖からの脱却である」

 

「………………マジ?」

 

「マジもマジ。大マジだ。

 ──しかし我々がこの魔法を扱うには、一つ致命的な問題があった」

「それは?」

 

()()()()()()()()()()()()()

 

「────は?」

 

「結局我々は食糧難の根本的な解決ができずに共喰いを繰り返し、数を減らし、我々を脅威と認識していた魔族はその隙に鬼気迫る勢いで力を付け、団結し、我々を狩り始めた」

 

「おぉう」

 

「敗北を悟った我々は恥を忍び、魔法の技術提供と引き換えに人間の手を借りようとしたが……」

「無理だろうね。人間からすればボク達は、魔族(奴ら)と同じ『言葉を話す魔獣』にしか見えない」

 

「──という訳で、我々は魔族からも人間からも嫌われている絶滅危惧種になってしまったのさ。

 とは言え、まだギリギリ巻き返しは利く。我々には、最後にして最大の希望が残っている」

 

「それは?」

 

()()だ」

 

「…………はぁ?」

 

「真面目な話だ。

 我々の溢れる知性を総動員した『未来予測』の結果、()()()()()()()()()()()という結論が出ている」

 

「この絶滅一歩前の状況を回避できなかったポンコツ未来予測なんて信用できないんだけど」

 

「まぁ聞け。──()()()()()()()()()アイツ(母さん)の息子だからな」

()()()()()()()()()()よ」

 

「…………まぁ、とにかくそういうワケでだ。我々の秘術を習得すれば、お前だけは理論上()()()()()()使()()()ようになる」

 

「ふぅん……それを()()()()教える気になったのはどうして?」

 

「…………さて、どうしてだろうな?」

 

 

 

 *

 

 

 

 ──父が死んだ。魔族に殺された。

 

 父は子供のボクより魔力量が少なくて、弱っちかったけど……賢くて、器用で、色んな魔法を知っていた。

 

 ────父は、未来視の魔法を常用していた。

 

 父がボクに新しい魔法を教えるのは、いつもボクが困難にぶち当たる直前だった。

 ……余裕が無かったのだ。いつもいつも、ボク達はその場凌ぎで精一杯だったから。

 

 それでも、いつもギリギリでどうにかやってこれた。『あの日』は、いつもと変わらない一日だった。

 

 

 だから、最期だなんて思わなかったんだよ。

 

 

 この魔法で、いつものように……父と揃って危機を脱せられると思っていたのに。

 

 

 

「ぶっ殺してやる」

 

 

 

 『感情を魔力に変換する魔法』がとりわけ効力を発揮するのは、『希望と絶望の相転移時』らしい。

 

 

 轟音は無い。極光も無い。派手さの欠片も無い、上下左右全方位からの──純粋な魔力による圧殺。

 

 防御も回避も許さない。確実に()()()()ためだけの一撃。

 

 終わればそこに、跡は無い。木々も、大地も、周囲と何も変わらない。ただの()()()()()()が一つ増えているだけ。そしてそれも、直に塵となって消えるだろう。

 

 ──お前なんか、喰ってすらやるもんか。お前なんかのために、『戦いの痕跡』なんて残してやるもんか。……そんな、つまらない意地。

 

 

「…………ボク達は、絶滅なんてしないぞ」

 

 

 父の言葉を、本当にするのだ。『我々(ボク達)はまだ詰んでいない』と、証明するのだ。

 

 ひとりになっても、進んでみせよう。

 ──目的地は、エルフの集落だ。

 

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