キュップぃ、ボクわるい魔獣じゃないよ   作:しやぶ

11 / 23
彼女の『親友』(『勇者』の記憶編1)

 

 勇者ヒンメルの死──その約六十年前。

 ヒンメル・ハイター・アイゼンの三人は、エルフの魔法使いフリーレンと激闘を繰り広げ、その果てに互いの実力を認め合い……共に冒険をする仲間(パーティー)となった。

 始まり(その直後)からアホな理由で国王に処刑されかけたり、明らかに序盤で遭っちゃいけない類の強敵と戦って敗北しかけたり、前途多難の旅ではあったが……彼らは誰一人欠けることなく、冒険を続けてきた。

 その過程で幾度となく彼らは助け合い、絆を深めていったワケだが……。

 

「なぁハイター、フリーレンの『親友』について……どう思う?」

「…………『どう』とだけ言われましてもね。具体的には?」

 

()()()()()()()()()()?」

 

「……珍しいですね。貴方が他者を疑うとは……」

 

 時刻は正午過ぎ。宿屋の一室にて。

 ようやっと起き出して食事を済ませ、魔導書を漁りに外へ出たフリーレンを見送り──その隙にヒンメルは、ハイターと密談を行っていた。

 

「らしくないのは解ってる。だが、()()はいくらなんでも……!」

「……そうですね。正直、私も常々『怪しい』とは思っていましたが……()()()()で、『ほぼ確定』と言ってもいいでしょう」

「…………やっぱりお前も、そう思うか」

 

「えぇ。おそらく、彼女の『親友』は──」

 

「──『男』、なのか……ッ!」

 

「そうオト、え?」

 

「え??」

 

「ス──……ヒンメル? アナタ一体何の話をしているんですか?」

 

「決まっているだろう。フリーレンと彼女の『親友』が恋仲だったのかどうか──」

「本人に聞いてきてください」

 

 そして溜め息と共に『時間を無駄にしました』と吐き捨て、ハイターは席を立った。

 

「まぁ待てハイター。お前が言いかけたことも、分かっている。

 ──()()()()()()()()、だろう?」

 

「……分かっていたなら、茶化さないでください」

 

 ハイターは表情を引き締め、再び着席する。

 

「私の『魔法使い』としての知識は『素人に毛が生えた程度』ではありますが……それでも分かる。彼女の扱う魔法には、明らかに魔族の技術が取り入れられています」

 

「──で?」

 

「『で?』ってアナタ……」

 

「どうでもいいだろう、そんなこと。ハイターだって、『フリーレンがいつか裏切るかもしれない』──なんて考えてるワケじゃないんだろう?」

 

「それは、そうですが……」

 

「それにこれは『疑惑』だ。確たる証拠があるワケじゃない」

 

「……人は空を飛べません。常識です」

 

 この世の空は、魔族と魔獣の独壇場だ。

 ──しかしフリーレンは、飛行魔法を使うことができる。

 彼女はそれを『親友に習った』と言うのだ。

 

「だとしても、あれだけ魔族という種族そのものを嫌っている彼女が……本当に魔族を『親友』と呼ぶか?」

「…………そこ、なんですよねぇ……」

 

 勇者一行は、以前魔族の襲撃から村を救ったことがある。

 その際最後に生き残った魔族は──少女だった。

 ヒンメルは、少女を殺せなかった。村長は、少女を受け入れた。

 

 だがフリーレンは、徹頭徹尾『今すぐ殺すべきだ』と主張し続けた。

 

 ──ある日、村長の家で火事が起こった。

 村長は、少女の手で殺されたのだ。遺体には明らかに、他殺の傷跡があった。その上で確実に葬るために、家まで焼いたのだ。

 しかし村長の娘は、無事だった。それは何故か?

 

 少女は言った。

 『自分が食べてしまった娘の代わりを用意しました』と。

 

 『親子』というものをまるで理解していない彼女の言動で、勇者一行と村人達は、ようやっと『魔族』という種族が『どういう存在』か理解した。

 

 ──不幸中の幸いと言うべきは、そこにフリーレンが居合わせたこと。

 

 

 ()()()()()()()()

 

 

 フリーレンは分身を用いて魔族の少女を常時監視。卓越した魔力隠蔽により、気付かれず潜伏。

 (コト)が起こる直前に、転移魔法と分身魔法の抱き合わせで、村長を救出しつつ身代わりを送っていたのだ。

 

 その時ヒンメル達は、村長が生きていたことに安堵しつつも──フリーレンの周到さに、魔族への根深い憎悪を垣間見て……身震いした。

 

「『魔族は()()()()()()()、無慈悲で残忍酷薄』というのが彼女の主張だろう?」

 

「──『インキュベーターに心が芽生えたと言われた方が、余程信じられる』  僧侶()の前で()()()()()()()()()すら引き合いに出したのです。アレが嘘とは思っていません」

 

「なら、彼女の親友は魔族じゃない。ただ『ちょっと特殊な魔法を沢山使えるだけのエルフ』だ」

「…………そうですね。そう思っておきましょう」

 

「──さて。じゃあハイターも納得してくれたところで、本題に戻ろうか」

「待ってください本気でそっちが本題だったんですか? 素面(シラフ)でそんな話に付き合いたくないんですけど」

「そう言うと思って──。

 用意しておいたぞ」

「……安酒じゃないですか」

「昼から飲みに付き合ってやるんだ。大目に見ろ」

「割に合いませんね……」

 

 

 

 *

 

 

 

「──しかし実際、どっちなんですかねぇ? 捜索のために『どういう方か』と聞いた際の答えが、『小さくて可愛い』だったワケですが」

「だが『それを本人に言うと怒る』って話だろう? 僕も小さい頃はよく『可愛い』と言われて怒っていたものさ」

 

「他に分かっていることは、『口煩いけどその分賑やかで面倒見がいい』『昔はさておき、まだ生きているならたぶん(おそらく)(フリーレン)より強くなっている』 実際彼女の人智を超えた魔法は、大抵『親友に習った』らしい。

 ……性格面はさておき、正直『フリーレン(彼女)より強い』というのは疑わしいところですがね」

「ハイター。それは単に『()()()()()()()()()』という願望だろう? 彼女の話が本当なら、『黄金郷のマハト』は全盛期のフリーレン二人を同時に相手取って尚圧倒できる怪物ってことになるからな」

「…………クヴァールとの戦いで、我々は彼女の足手纏いでした。それが何を意味するか、解っているでしょう?」

「フリーレンも言っていただろう。アレは相性の問題だ。必要以上に気負うな」

「……そうですね」

 

「まぁ僕も、フリーレンが『密かに想いを寄せている男の強さに幻想を抱く乙女』だった場合のことを考えたくないって願望はあるけどね」

「一瞬でもアナタに『リーダーの風格』を覚えた私の感慨を返してくれます?」

 

 

「うぅ……自分のイケメンさが憎い……あの頃の可愛さを取り戻したい……」

「はいそこ、贅沢を言わないでください。それに、フリーレンの好みが可愛い系と確定したワケでもないんですから」

 

「なんだよぉ……『仮に街で擦れ違ったとして、私以外じゃ気付けない』って……」

「別に運命的な(そういう)意味じゃないと思いますよ……? 『ほぼ確実に、名前も姿も頻繁に変えながら逃げている可能性が高いから』と、彼女も言っていたじゃないですか」

 

 

「ア゛ァ 〜……」

「ハイハイ、水飲んでくださいねー」

 

「…………どういう状況コレ」「何があった」

 

「あぁ、帰ったんですね二人共。

 すみません。お酒を片手に、ヒンメルの相談に乗っていたのですが……止められませんでした」

 

「お前が介抱に回ることを想定して飲むとはな……どんな勢いで呑んでたんだ、ヒンメルは」

「……『相談』って、何の話をしてたの?」

 

「秘密です。僧侶には守秘義務がありますので」

「生臭坊主でも、そこはしっかり守るんだね」

「ハッハッハ」

 




 
 ……え、『これはシリアスじゃないのか』ですって?

 心外ですねぇ。村長救済込みのほのぼのしたヒンフリだったじゃあないですか(震え声)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。