キュップぃ、ボクわるい魔獣じゃないよ   作:しやぶ

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 本格的に前の話と連結しない話が多くなってきたので、サブタイの表記法を変更しました。
 魔王討伐までの十年を『勇者の記憶編』
 マハトとの五百年を『黄金の記憶編』としています。
 (魔王討伐後は『追憶編』とする予定)
 


真実を明かそう(『勇者』の記憶4)

 

 北側諸国、とある街の門前にて。

 

「──おい、どこへ行く気だ? キュゥべえ」

「……おや、アイゼン。どうしたんだい? こんな時間に」

「お前を追ってきた。以上だ。

 それで、もう一度聞くが……こんな時間に一体どこへ行くつもりだ? キュゥべえよ」

 

「…………目的地はないよ」

「それで俺が納得すると思うか?

 ──この街についてから、お前は()()……寝室に身代わりの分身を残して、夜な夜な抜け出している」

 

「……そうだね。仕方ない、真実を明かそう。

 謝罪するよアイゼン。()()()()()()()()()()()()。初めて会ったその日から、ずっと」

 

「──ッ。フリーレンのこともか?」

「あぁ。彼女と過ごした五百年の間にも、こうして何度となく脱走していたけれど……今のところ一度もバレた形跡はないね」

 

「…………悪魔め。キサマの目的はなんだ?」

「悪魔だなんて、酷いなぁ。確かにボクはかつて悪魔と(そう)呼ばれた一族の末裔だけれど……今は『魔王討伐』という、同じ目的を共有する仲間じゃないか」

「……魔王を倒すという意思自体は、本物だと?」

「勿論」

 

「なら、お前の言う『真実』とは何だ?」

 

「ボクがキミ達に吐いた嘘は二つ。

 一つは『嘘しか言えない』ということ」

 

「……おい、まさか」

 

「もう一つは、すまない……。

 実はボク、メスブタじゃないんだ……!!」

 

「ふざけているのか」

 

「いや、真面目な話。ボクはその二つ以外は、本当のことしか言ってないよ」

「なら、正直に答えろ。キサマは何のために外出している?」

 

「不特定多数の安眠妨害をしないためだよ」

「……どういうことだ」

 

「こう見えてボクは、千年以上生きてる大魔獣だからね。気を抜いちゃうと、漏れ出る魔力の『存在感』だけで、感覚の鋭い魔法使いや戦士達を叩き起こしてしまうんだよ。

 だから人の多いところ……こういう街中なんかでは眠れないんだ」

「…………魔力ならハイターとフリーレンも垂れ流している筈だが」

「いや、フリーレンは抑えてるよ? 寝てる時含めてずっと。大体1/10くらいに。

 ハイターの方は言ってないだけで、寝る前に隠密魔法を使って誤魔化してるねアレは」*1

 

「……ならお前もハイターに隠密魔法を使って貰えばいいだろう」

「アイゼン、ボクは神敵。悪魔の末裔だよ? 女神様の魔法は身体が受け付けない」

 

「…………魔力制限の方は?」

「アイゼン……もう白状しただろう? ボクはメスブタじゃあないんだ」

「関係ないだろうそれは」

 

()()()。ボクの感性は至ってノーマルだ。

 フリーレンから聞いていないかい? 魔力総量がそのまま身分になる魔獣と、魔獣から進化した魔族にとって、『魔力制限』は『自ら尊厳を投げ捨てる行為』なんだよ。

 戦場で泥を被って身を隠すくらいなら許容範囲だけど、その後湯浴みもせずに往来を歩きたいかい? 少なくともボクはイヤだ。要するにそういうことさ」

 

「…………つまりお前は、誰にも迷惑をかけずに眠れる場所を探していただけ……ということか?」

「初日はそうだね。二日目以降は場所を定めてるから、魔力を発散しつつあてのない散歩をした後に、そこで寝てるよ」

「細かいな」

「伏せる意味の無いことを伏せて、これ以上余計な誤解を招きたくはないからね」

 

「…………スマン。ハイターの言った通りだった……お前は無害な魔獣だ。悪魔などと呼んでしまったことも、謝罪する」

 

「うん『許す』……とだけ言っても、納得できないって顔だね。

 じゃあアレだ、手料理一食分で手を打とう! まぁボク、四足獣だから打つ手とか無いんだけどね!!」

 

「……反応に困るんだが。とりあえずハンバーグでいいか?」

 

「あ、ごめん。ボク乳製品可の菜食主義(ラクトベジタリアン)なんだ」

 

「…………ハイターより僧侶に向いてそうだな」

 

「いや、ボク一応神敵なんだけど」

 

「ハハッ、そうだったな」

 

「……何故冗句の方ではなく、ただの自己申告で笑いが起こるのか。人間のユーモアは難しいね」

 

「安心しろ。お前はそのままで充分愉快だ。……俺が思っていたよりずっと」

 

「わけがわからないよ」

 

*1
ハイターの隠密魔法は十二巻収録の百十五話に登場。六巻の一級魔法使い資格試験における三次試験を見るに、『アウラと同格の魔力』を持ったハイターがそのまま魔力を垂れ流すなんて、一種の公害でしかないので……今作では『こういう対策を取っていた』という設定となっております。

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