キュップぃ、ボクわるい魔獣じゃないよ   作:しやぶ

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ボクは(『黄金』の記憶4)

 

「……『断る』と言ったら?」

「殺さねばならんな。お前を、お(・)友(・)達(・)ご(・)と(・)」

 

「──ハッ。不可能だな」

「──本当に、そう思うか?」

 

⑤

 

「俺は、アイツを殺せる魔族を知らない」

「単純な話だ。知(・)名(・)度(・)と(・)実(・)力(・)は(・)比(・)例(・)し(・)な(・)い(・)。

 アレには『無名の大魔族』を複数当てている。中には、単騎でお前と『勝負』が成立する者もいるぞ?」

 

「語るに落ちたな。最高戦力がそ(・)の(・)程(・)度(・)では、まるで足りない」

「私がそんな手落ちをすると思うか?」

 

④

 

「…………」

「──安(・)否(・)確(・)認(・)に(・)意(・)識(・)を(・)割(・)い(・)た(・)な?

 今だ。やれグラオザーム」

 

「ッッ!?」

(このタイミングで、実力行使だと……? 確かに不意を突かれはしたが……ディーアゴルゼの防御が間に合わないほどじゃない。『楽園へと導く魔法』(アンシレーシエラ)は防げないが、殺傷力のある魔法じゃあない。

 ──そして『今の俺』に、幸せな夢は通じない。シュラハトの狙いはなんだ……?)

 

 

③

 

 

 グラオザームの手に光球が浮かび、マハトは倒れた。

 

 その直後、空から亜音速で『白い何か』が飛来し──着地と同時に、高密度の魔力を噴出。シュラハトは飛び退き、グラオザームは塵紙のように全身を圧縮されて消滅した。

 

 

「────オイ、お前……!!」

 

「来たか、キュゥべえ。三(・)秒(・)遅(・)か(・)っ(・)た(・)な」

 

「ボクの友(・)達(・)に、何をしたッ!?」

 

 憤怒が魔力となり、彼の身体から溢れ出す。

 それだけで、魔族の将軍すら屈服させ得る──圧倒的な『力』の奔流。

 

 

 ────それが、霧(・)散(・)し(・)た(・)。

 

 

「……ぇ?」

 

「無防備に背を向けるとは、舐められたものだな」

 

 

②

 

 

 キュゥべえの背中に、鋭利な『黄金』が突き刺さっていた。

 それは伸縮自在で、あり得ないほど頑丈な──『黄金に似ているだけのナニカ』だった。

 

 ──マハトの固有魔法によって生み出された、外套の槍だった。

 

 

「どう、して……?」

 

「今更だな。こ(・)れ(・)ま(・)で(・)何(・)度(・)も(・)殺(・)し(・)合(・)っ(・)て(・)き(・)た(・)だろうに」

 

「────」

 

「お(・)前(・)で(・)最(・)後(・)か(・)?」

 

 

 その発言で、彼は察した。

 

 記(・)憶(・)が(・)消(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)のだ。

 

 今のマハトは、四百年以上前の──キ(・)ュ(・)ゥ(・)べ(・)え(・)に(・)出(・)会(・)う(・)前(・)の(・)状(・)態(・)に戻されている。

 

 

①

 

 

「…………あぁ、そうだよ。『インキュベーター』は、ボクで最後だ」

「そうか。では死ね」

 

 背中の紋様に刺さっていた槍が、引き抜かれる。

 一気に血が溢れ、ドクドクと流れていく。砕(・)け(・)た(・)ソ(・)ウ(・)ル(・)ジ(・)ェ(・)ム(・)から、穴の空いた風船のように魔力が抜けていく。

 

 

(…………あぁ……ダメだね、これは……どうしようもない。致(・)命(・)傷(・)だ(・))

 

 

⓪

 

 

 動かなくなった彼を、一瞥だけして──それからマハトは、シュラハトの方に向き直った。

 

「……シュラハト。ここ最近の記憶がハッキリしない。お前の仕業か?」

「あぁ。グラオザームに記憶を消させた」

 

「……戻せるのか?」

「──戻したいのか?」

 

「…………あぁ、自分でも驚いている。まさか俺が……『時間』を取り戻したい、なんて……こんなことを願う日が来ようとは」

 

「そうか──す(・)ま(・)ん(・)な(・)。結論から言うと、不可能だ」

 

「…………本当に、手立てはないのか?」

 

「あぁ。術者のグラオザームが生き返りでもしなければな──」

 

 

「──オ(・)ー(・)ケ(・)ー(・)」

 

 

③(・)

 

 

 グ(・)ラ(・)オ(・)ザ(・)ー(・)ム(・)の(・)手(・)に(・)光(・)球(・)が(・)浮(・)か(・)び(・)、マ(・)ハ(・)ト(・)は(・)倒(・)れ(・)た(・)。

 

 その直後、空から亜音速で『白い何か』が飛来し──着地と同時に、高密度の魔力を噴出。シュラハトは飛び退き、グラオザームは首(・)か(・)ら(・)下(・)が(・)複(・)雑(・)骨(・)折(・)し(・)て(・)倒(・)れ(・)た(・)。

 

「来たか、キュゥべえ。三秒遅かったな」

 

「…………うるさいな。これでも全速力で来たんだよ」

 

 ──時間遡行。

 キュゥべえのソウルジェムが砕けた時、規定量の魔力が流出したタイミングで発動する──彼の父ジュゥべえが遺した遺産。

 ジュゥべえの魔力量では発動できず、キュゥべえの腕では術式を再構築できない── 一度限りの反則技(ちゃぶ台返し)。

 

②

 

(……そろそろか)

 

「──ふむ。避けたか」

「二度目だからね」

「そうだったか? 悪いがお前達とどう戦ったかなんて、逐一覚えてはいない」

 

①

 

「うん、知ってる。キミは『そういう奴』だって」

 

「────。

 なんだ……? お前は、俺は……『そ(・)の(・)目(・)』を、知っている……?」

 

 

⓪

 

 

「──うん。そうだよ? キミはボクを、知っていた。

 そしてボクは……もう一度キミに、ボクのことを知ってほしいと願っている。思い出してほしいと願っている。

 ────これは、そのための自己紹介。もう二度と忘れられないように、インパクトしかないチ(・)ョ(・)ベ(・)リ(・)バ(・)な(・)方(・)の(・)『とっておき』を解禁しよう」

 

 

「来るぞマハト。グラオザーム。衝撃に備えろ」

 

 

「さぁ、その魂に刻み込んでくれ!

 ボクは『インキュベーター』のキュゥべえ。またの名を──」

 

 

 

WALPURGIS NACHT

 

 

 

「──ヴァルプルギスナハト。

 この世全ての悲劇を滅するために造られた……『舞台装置』の魔獣だよ」

 

 

『フふッ』

 

 

 『宴の夜』が、幕をあけた。

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