「……『断る』と言ったら?」
「殺さねばならんな。お前を、
「──ハッ。不可能だな」
「──本当に、そう思うか?」
「俺は、アイツを殺せる魔族を知らない」
「単純な話だ。
アレには『無名の大魔族』を複数当てている。中には、単騎でお前と『勝負』が成立する者もいるぞ?」
「語るに落ちたな。最高戦力が
「私がそんな手落ちをすると思うか?」
「…………」
「──
今だ。やれグラオザーム」
「ッッ!?」
(このタイミングで、実力行使だと……? 確かに不意を突かれはしたが……ディーアゴルゼの防御が間に合わないほどじゃない。
──そして『今の俺』に、幸せな夢は通じない。シュラハトの狙いはなんだ……?)
グラオザームの手に光球が浮かび、マハトは倒れた。
その直後、空から亜音速で『白い何か』が飛来し──着地と同時に、高密度の魔力を噴出。シュラハトは飛び退き、グラオザームは塵紙のように全身を圧縮されて消滅した。
「────オイ、お前……!!」
「来たか、キュゥべえ。
「ボクの
憤怒が魔力となり、彼の身体から溢れ出す。
それだけで、魔族の将軍すら屈服させ得る──圧倒的な『力』の奔流。
────それが、
「……ぇ?」
「無防備に背を向けるとは、舐められたものだな」
キュゥべえの背中に、鋭利な『黄金』が突き刺さっていた。
それは伸縮自在で、あり得ないほど頑丈な──『黄金に似ているだけのナニカ』だった。
──マハトの固有魔法によって生み出された、外套の槍だった。
「どう、して……?」
「今更だな。
「────」
「
その発言で、彼は察した。
今のマハトは、四百年以上前の──
「…………あぁ、そうだよ。『インキュベーター』は、ボクで最後だ」
「そうか。では死ね」
背中の紋様に刺さっていた槍が、引き抜かれる。
一気に血が溢れ、ドクドクと流れていく。
(…………あぁ……ダメだね、これは……どうしようもない。
動かなくなった彼を、一瞥だけして──それからマハトは、シュラハトの方に向き直った。
「……シュラハト。ここ最近の記憶がハッキリしない。お前の仕業か?」
「あぁ。グラオザームに記憶を消させた」
「……戻せるのか?」
「──戻したいのか?」
「…………あぁ、自分でも驚いている。まさか俺が……『時間』を取り戻したい、なんて……こんなことを願う日が来ようとは」
「そうか──
「…………本当に、手立てはないのか?」
「あぁ。術者のグラオザームが生き返りでもしなければな──」
「──
その直後、空から亜音速で『白い何か』が飛来し──着地と同時に、高密度の魔力を噴出。シュラハトは飛び退き、グラオザームは
「来たか、キュゥべえ。三秒遅かったな」
「…………うるさいな。これでも全速力で来たんだよ」
──時間遡行。
キュゥべえのソウルジェムが砕けた時、規定量の魔力が流出したタイミングで発動する──彼の父ジュゥべえが遺した遺産。
ジュゥべえの魔力量では発動できず、キュゥべえの腕では術式を再構築できない── 一度限りの
(……そろそろか)
「──ふむ。避けたか」
「二度目だからね」
「そうだったか? 悪いがお前達とどう戦ったかなんて、逐一覚えてはいない」
「うん、知ってる。キミは『そういう奴』だって」
「────。
なんだ……? お前は、俺は……『
「──うん。そうだよ? キミはボクを、知っていた。
そしてボクは……もう一度キミに、ボクのことを知ってほしいと願っている。思い出してほしいと願っている。
────これは、そのための自己紹介。もう二度と忘れられないように、インパクトしかない
「来るぞマハト。グラオザーム。衝撃に備えろ」
「さぁ、その魂に刻み込んでくれ!
ボクは『インキュベーター』のキュゥべえ。またの名を──」
「──ヴァルプルギスナハト。
この世全ての悲劇を滅するために造られた……『舞台装置』の魔獣だよ」
『宴の夜』が、幕をあけた。