キュップぃ、ボクわるい魔獣じゃないよ   作:しやぶ

19 / 23
設定資料1

 

 分裂魔法(ドッペル):インキュベーターが持つ『個にして群』の特性を象徴する魔法。この魔法によって生み出された個体は本体と全く同じ思考回路を持ち、時間経過によって消滅しない身体を有する。端的に言って『自分を増やす魔法』

 ただしキュゥべえが使うと、何故か『怪物』が出現する。

 

 WALPURGIS NACHT:キュゥべえがドッペルを使った際に出現する『怪物』 通称『宴の夜(ヴァルプルギスナハト)

 その複製元はキュゥべえではなく、HOMULILLYという神代のインキュベーター。

 

 HOMULILLY:現代語に直すと『ホムリリィ』 『感情』を持って産まれた最初のインキュベーター。女性()

 名の由来は、(彼女の特異性が判明したことで)同族から『個体識別名称』が与えられることが決まった際に『リリィ』という花を咥えていたことから。『ホム』という単語は存在せず、適当な擬音を当て嵌めたとのこと。

 

 彼女は『感情を魔力に変換する魔法(マクストイフェル)』を開発し、一族の食糧難を解決した。また、感情が理解できない同族に心を理解してもらうべく、魂を物質化する魔法(ソウルジェム)を開発して魂を可視化した。

 しかし、インキュベーターが心を理解することはなかった。

 それでもインキュベーターは、魂を観測できるようになった。

 結果彼らは、『新たな食糧として最適な生物は人間である』という結論に至った。

 この当時は魔力量と寿命を(かんが)み、エルフも標的(ターゲット)になっていた。感情の機微に乏しくとも、総合的には純粋な人間より効率が良い可能性があったからだ。

 

 そうしてホムリリィは、エルフの赤子を攫った。

 赤子は親が『ゼーリエ』と呼んでいたので、彼女もそう呼んだ。

 

 ホムリリィはゼーリエに魔法の知識を授け、周囲の動物や植物についての詳細な情報・観天望気を始めとする自然の知識を授け、手塩にかけて育てた。その甲斐あって彼女は、計算通り『食べ応えのある食糧』に成長した。

 ……が、ホムリリィは『ただの食糧』だった筈のゼーリエに情が湧いてしまった。

 

 ホムリリィは同族との思考共有を切断し、ゼーリエを連れて逃げることにした。

 

 ──この時点で彼女は、マギアレコードに生体情報を記録されている。

 そして離反者である彼女の情報は『危険因子』として、同時に貴重な『検体(サンプル)』として、別枠(隔離された状態)で保管されていた。

 

 実のところ分裂魔法(ドッペル)は、マギアレコードへ記録した生体情報を元に分身を生み出している。肉体の全盛期に情報を登録すれば、老後でも擬似的な若返りが可能となるためだ。

 キュゥべえがドッペルを使うと別個体が出現する理由はコレである。彼はそもそも、マギアレコードに情報が登録されていない。

 

 そしてキュゥべえに魔法を教えたジュゥべえは、この隔離された別枠側のインキュベーターである。

 

 ──では何故『別枠側の中からホムリリィが選出されるのか』『ホムリリィが怪物として登録されているのはどうしてか』 それは、またの機会に。

 

 

 

 *

 

 

 

 これは余談だが、思考共有切断以降のホムリリィは心機一転。合理性の化身たる同族と決別したことを示すため、己の名前から『意味』を消し去ることにしたらしい。

 

 

『これからは〝リリィ〟ではなく〝ホム〟の部分を前面に押し出していこうと思う』

『……どうせなら全くの別物にしてしまえばいいだろうに』

『名前を変えても、私が〝ホムリリィ〟であった事実は変わらないからね。名残(なごり)を残したいんだ』

『……フン。まぁ〝中途半端〟な方が、〝合理性〟との決別としてはいいのか?』

『うわ……いまそういう理屈っぽいコト言うのやめてくれないかな?』

 

『…………折角花のように綺麗な毛並みをしているんだ。私は〝リリー〟のままでも良いと思うが』

 

『んー、嬉しいこと言ってくれるねぇ。

 ──でも、それはそれとして新しい名前は考えるよ。

 ほむ……ほむ、ほむ……ほー、むず?』

 

『男性名だろうソレは』

 

『ん〜〜、ほむ……ほむ……』

 

『そんなに〝ほむほむ〟言うなら、もうそれでいいだろう』

 

『…………流石に冗談だろう?』

 

『私はいつだって本気だぞ? ()()()()よ。

 ──安心しろ。お前が嫌なら、人前では変わらず〝リリー〟と呼んでやる』

 

『それじゃ()()が……』

 

『そういうのとは決別したんじゃなかったのか?』

 

『ぐぬぬぬぬ…………もう好きにしてくれ……』

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。