・ホムリリィとキュゥべえの関係。
端的に言うと『血縁上の叔母と甥』が最も近い間柄になる。
キュゥべえの父『ジュゥべえ』は、本人も言っていた通り『感情持ち同士を交配する実験の被験者』である。しかし極めて稀な『精神疾患個体』が、雌雄揃って生まれることはまずない。
──キュゥべえの母『リリス』は、ジュゥべえの交配相手として作られた『ホムリリィのドッペル』である。
ただしホムリリィとリリスの肉体は同一であるが、魂は全くの別物。
ドッペルは、感情を複製することができない。思考回路まで複製できても、それは『喜怒哀楽の影響を受けていない状態の思考のみ』である。通常のインキュベーターであれば何の問題もないが、人間や精神疾患個体の完璧な複製は作れない。*1
リリスは『感情が宿ったことのある肉体には心が芽生えやすいだろう』という理由で大量に複製・共喰いが繰り返されていた『ホムリリィのドッペル達』の中から『本当に心を持って生まれた個体』である。
・リリスについて。
夫のジュゥべえが『死にたくない』という『根源的恐怖』を持っていたように、彼女は『種族を繁栄させたい』という『原始的欲求』を持っていた。
確かに彼女はジュゥべえが言及していたように、彼と同じく『死』を恐れ、それを理解してくれない同族達を気味悪がっていたが、彼女が恐れていたのは『自己の消滅』そのものではなく『無意味な死』である。
彼女は、『
──リリスはジュゥべえと違い、子供を産んだ直後に捕食されることを知っていた。
何せ生まれてすぐに、自分と同じ肉体を持った姉妹達が同族に喰われていく様子を見ている。そして、その理由を知らされている。
彼女はそのこと自体に嫌悪感を抱くことはなかった。何故なら喰われていった姉妹達は、『その結末』に納得していたから。
しかし『
『〝次の自分〟ではなく、〝私〟が一族の役に立ちたい』と。『もっと意義のある死が
その点『一族最後の生き残りを産むこと』は、彼女にとって充分に満足のできる役割だった。
実のところ、精神疾患個体達の中では最も『通常のインキュベーター』に近い価値観を有していた存在だったりする。
……と言うと誤解されそうだが、彼女はジュゥべえに出会った直後『完全に私情』で求婚している。死後
息子キュゥべえを育てられなかったことが心残りではあったが、強く生きている様子なので安心している。
・『怪物』としてのホムリリィについて。
生前の彼女が、『女神』と戦った時の姿。
ソレが『真正の神』だったのか、『ただ神と形容するしかない力を持っていただけの
…………仮にその正体が『死にもの狂いで己を鍛え上げ、引導を渡しに来た
・彼女が『怪物』と化した理由。
…………彼女が許せなかった、『戦争』が終結したワケを知ってしまったからである。
彼女とゼーリエは、当時の人間では手も足も出なかった『魔獣』を数え切れないほど葬っていた。
彼女らは、大勢の人間に感謝されていた。
──しかし、それこそが戦争の原因だった。
人間は、余裕のある時にしか戦争ができない。
戦争が始まった理由というのは、つまり──ホムリリィが『世界を平和にした』からである。
戦争が終わった理由とは、即ち……彼女が『新たな人類の脅威』として認識されたからである。
それを悟った彼女は、絶叫して己の両目を潰し、頭を大地に打ち付け、鼓膜を破り──『平和を願う本心』とは『
・ホムリリィの最期について。
『女神』との戦いに、彼女は敗北している。
敗北した彼女は命からがら逃げ出すが……その先で漁夫の利を狙っていた同族に捕食され、『怪物の肉体』と『擦り切れた心』のデータを取られている。
その際彼女は──。
・ハイターがキュゥべえに抱く『神敵とは対極』の感慨について。
ホムリリィは、どれだけ歪み果てても……人類を愛していた。
彼女と戦った『女神』が『本当は誰だったか』なぞ関係なく──女神は彼女を『敵』とも『悪魔』とも認識しないだろう。
少なくとも『物語形式の暗号』である『女神の教典』に、いかにも物語映えしそうな『女神と悪魔の戦い』は
『インキュベーターという悪魔』については書かれていても、『ホムリリィという個体』については……記載されていないのだ。