キュップぃ、ボクわるい魔獣じゃないよ   作:しやぶ

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 いつまでも更新しないワケにはいかないので、少し唐突ながら書きやすい部分からスタートしております。お待たせしておいて正直完成度はあまり高くないです。すみません……。
 


過去であり、未来の物語(追憶編1)

 

「──勝てなかった……!? フリーレン様が、四人がかりでですか!?」

「うん」

 

 彼女が敗北すること自体は、そこまで珍しくもない。千年の人生の中で、彼女は何度となく『逃走』を選択してきたし……()()()ほど、『明確な負け』を経験してもいる。いずれも彼女より、魔力の小さい相手との戦いだ。

 

 しかし今回の相手は、その中でも殊更特殊な相手であることは確かだ。

 

 腐敗の賢老クヴァール。

 大魔法使いフリーレンをして、掛け値なしに『強過ぎた』と評する魔族。

 

「あ、あの……では何故、私達二人だけで挑もうと?」

「大丈夫だよフェルン。『今の私達』には防御魔法があるからね。勝算は充分にある」

「いや『防御魔法』って、()()()()()()じゃないですか! せめて入念に作戦を練ってから……!」

 

「…………やっぱりフェルン、歴史書全く読んでないでしょ」

 

「い、今その話をしますか」

 

「実際に戦えば、どうして『今』この話をしたのか分かるよ。

 ……いや、やっぱり今の内に話しとくか。『余裕は持てるだけ持っておけ』って、アイツもよく言ってたからね」

 

「はぁ……?」

 

「フェルン。現代の防御魔法はね、クヴァールの魔法を防ぐために開発された魔法なんだよ。そしてその研究には、私も携わっていた。……というか一応、主導者」

 

「えっ」

 

「クヴァールの魔法は強過ぎたからね。大陸全土でこぞって研究が行われたワケだけど……アレを直接見て生還した魔法使いは少ない。

 しかもクヴァールは、当たり前だけど優秀な奴から始末していった。生還した数少ない魔法使いの大半は、自力じゃアレを再現できない未熟者だったんだ。

 ──だからまぁ、私が頼られるのは当然の流れだよね? 至極当然で、自然なこと。ここまではオッケー?」

 

「あ、はい」

 

 謎の圧を発し始めたフリーレンに気圧されつつ、フェルンは首肯する。

 

「それで私は()()()()()()()()()ッ。魔王討伐後も全国各地を転々としていたんだ。

 そうしたら、何が起こったと思う……?」

 

「……??? フリーレン様の銅像が増えた、とかですかね?」

「いや──ウッ、思い出しただけで吐き気が……!!」

「大丈夫ですか……?」

 

 顔を青くしてガクガク震えている師の背中を、フェルンは優しく撫で……少し落ち着いたところで続きを促す。

 

 ──そしてフリーレンから『答え』を聞き出した彼女は、冷たい目で『うっわ』と口にした。

 

「フリーレン様、よくそれで愛想を尽かされませんでしたね」

「……やっぱり私が悪い? これ」

「当たり前じゃないですか。十割フリーレン様が悪いですよ。

 ()()()()にその調子で、よく『世界一有名なおしどり夫婦』になりましたね……」

「…………まぁ、私達は始まりからして『奇跡』だったからね」

「……奇跡、ですか?」

 

「うん。或いは運命ってヤツなのかな? アレは過去の出来事であり──同時に、未来の物語でもあるから」

 

 

 

 *

 

 

 

『──誓いのキスを』

 

 荘厳な式場に、厳かな声が静かに通る。

 目を閉じれば、世界は花嫁たる私と、夫となるヒンメルだけ。

 

 とても、幸せな空間だった。

 

 唇に、人肌の感触。

 目を開けると、遠くに困ったようなヒンメルの顔。

 私の唇に触れていたのは、彼の指だった。

 

『フリーレン、僕は何をすればいい?』

 

 口が開いた時には、凛々しい戦士の表情(かお)になっていた。

 改めて見ると、やはり彼は自称するだけあってイケメンだ。私の旦那は世界一格好いい。

 

『──誓いのキス。してくれないの?』

『…………フリーレン。僕達は今、魔族の攻撃を受けている。これは現実じゃない』

()()()()

『え……?』

 

 声と感触がするまでの(あいだ)に、()があった。

 ──したいなら、『操られていた』ことを口実に……してしまえばよかったものを。

 だけど、そういう誠実なところも好きだ。

 

『いま私達が戦っている相手は七崩賢 『奇跡』のグラオザーム。これは奴が見せている、〝叶わないと諦めた夢〟

 ……ヒンメルはずっと、私と添い遂げることを望んでくれていて……でも私は、それに気付けなくて……いつしか()()()に、『諦め』を覚えさせてしまった』

 

『────キミは、誰だ?』

 

『フリーレンだよ。本物の。──ただし()()()()()()フリーレン』

 

『未来から……?』

 

『うん、そういう約束だったからね。──鶏が先か卵が先か。それは分からないけれど……私はここで、()()()()()グラオザームの魔法に嵌る必要があったんだ』

 

『──何?』

 

『名残惜しいけど、そろそろ終わる頃かな。

 ──さよならヒンメル。久しぶりに会えて嬉しかったよ』

 

『待ってくれ、キミは何を──』

 

 

「こんのヘタレエセ勇者がァァァ!!!」

 

 

 幻覚さえぶち抜いて響く声と共に、魔法の夢は終わりを告げた。

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