キュップぃ、ボクわるい魔獣じゃないよ   作:しやぶ

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間話:『百分の一』のプロローグ

 

「ふむ。やはり無理か」

 

 ──かつて私は、人類最強の勇者から『共に戦わないか』と勧誘を受けたことがある。

 しかし私が断ると、彼は簡単に引き下がった。まるで結果を知っていたかのように、『私は君を説得するだけの言葉を持ち合わせていないからね』と、彼はそう言ったのだ。

 

「実際に分かっていたのだよ」

 

 私に勧誘を断られることも、()()()()()()()()ことも……彼は全て、分かっていたのだ。

 

「気に病む必要はない。もう覚悟は済ませている。

 ──本題はここからだ」

 

 『近い内に〝青髪の若い勇者〟と〝眼鏡をかけた長身の僧侶〟〝身の丈よりも大きい斧を背負ったドワーフの戦士〟がやってくる』と、彼は言った。

 彼曰く、世界を救うのはその〝青髪の勇者〟であるらしい。そして私は、彼らと共に旅をすることになると。

 

 ──『くだらない』と、そう思った。

 

 私の故郷には、ミリアルデというエルフがいた。

 

 ミリアルデは、いつも何もせず呆けている女性だった。

 私は生前の彼女に、何故呆けているのか……その理由を聞いてみたことがある。

 

『エルフは長い人生を使って、何かを探究することが多い。どうしてだと思う?』

 

『──私みたいにならないためよ』

 

 答えになっていなかった。

 でも、今なら……彼女の言っていたことが、痛いほどよく分かる。

 

『フリーレン。人生をかけて探し出したものが、何の価値もないゴミだった時のこと……想像できる?』

 

 燃え尽きてしまったのだ。失意の底に沈んで、もう抜け出せなくなってしまったのだ。

 時間が、滝のように流れて……(こぼ)れ落ちていく。

 

「──この森に、長く生きた魔法使いがいると聞いた」

 

 『長く生きた』と言っても、ダラダラと生きてきただけだ。

 五百年前の敗北以降、私は本当に戦うことを辞めてしまったのだから。今ではもう、戦い方すら思い出せない。

 

「──()()()?」

 

 本当だ。

 私が戦いを辞めてから、百年ほど経った頃……再び奴は現れた。

 

 ……私は、何もできなかった。手も足も出なかった。

 たった百年で、私はどうしようもなく『弱い魔法使い』に堕ちていたのだ。

 

「────()()()?」

 

 ……本当だ。

 奴に殺意があったなら、私は死んでいた。

 

 あの時奴は、私の親友に『話がある』と言ってやって来た。そもそも戦う気がなかったんだ。

 奴は私の抵抗を、片手間にあしらって……最後に両脚を、黄金に変えた。『追いかけてこれないように』って。

 

「……攫われたのか。その親友は」

 

 そうだ。

 そして私は、黄金にされた脚を戻すのに五年もかけてしまった。

 ……それから百年、必死に探したよ。半分不老不死みたいなヤツだったからさ、どこかでしぶとく生きてる筈だって……自分にそう言い聞かせながら。

 

 …………でも、見つからなかったんだ。

 それから四百年は、本当に何もしていない。

 

 

「──()()()

 

 

 ……は?

 

「キミは戦いを諦めていないし、すぐにでも親友を探しに行きたくてウズウズしている」

 

 何を根拠にそんなことを。

 私は実際、五百年を棒に振ったのに。

 

「僕は『今』の話をしているんだよ」

 

 ……いまさらだ。もう遅い。間に合わなかったんだよ、私は。

 

「ならどうして、諦めなかった。お前はまだ『戦士の目』をしている。怖くても先に進めるヤツの目だ」

 

 ……いいや、諦めたよ。もう先に進もうにも、脚が動かないんだ。

 

「おかしいですね──では、その荒ぶる魔力は何なのです? それほどの力を隠蔽していた技量も……並大抵の努力では身に付かない筈ですが」

 

 …………ただの癖だよ。

 

「本当に?」

 

「──ッ。あぁそうだよ! ()()()()()()()()()()()()()!! だけど、()()()()()()()()()()ッ!

 私は未だに、『マハト(アイツ)に勝てる自分』のイメージができない……!!」

 

「ならキミと僕達で、模擬戦をしようか。

 僕達がキミの戦いに手を貸そう。背中を押して、腕を引いて、隣で一緒に戦おう。

 ──そうできるだけの力があると、ここで証明してみせる」

 

「………………へぇ? なら、場所を移そうか」

 

 

 ■録された■■を■■する魔法(コネクト:マギアレコード・レプリカ)

 

 

「これは……驚きましたね……」

「なぁハイター、お前にも()()()()に見えるか?」

「えぇ……まさか()()()()()()()()()とは……」

 

「此処なら邪魔な木は無いし、足場もしっかりしてる。──『近接メインの二人が力を発揮できなかったから負けた』なんて言い訳はさせないよ?」

 

「……腕が鳴る」

「……想像以上に大きい拾い物になるみたいだね」

「どっちが拾われる立場かわからんな。俺達の両手で抱え切れるか?」

「僕達は世界を背負う勇者パーティーだよ? 抱えるものも大きくないと、釣り合いが取れないだろう」

 

 

「じゃあ──始めようか」

 

次回からは……

  • 過去:キュゥべえとマハトの『お話』
  • 現在:推定エルフの『彼』に嫉妬する勇者
  • 未来:クヴァール戦(の前のフリフェル)
  • 未来2:キュゥフリのほのぼの旅はよ
  • 流れは任せる。だから全部書け
  • 全部。でもシリアスはお腹いっぱい
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