後悔と懐念   作:歯に優しいケーキ

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始まり

 

 

 呪霊。人の負の感情から生まれた異形。それは古来より人に災いをもたらし、時には一つの集落をも破壊するレベルの事象を起こす事もあった。

 

 だが彼らは呪力を認識出来ない一般人では基本視認する事が出来ない。

 故にこのような人の居る大通りで、その一行が集団で歩いていたとしても、誰も気に留める事すらできず――

 

 

 

 

「....ったく。あの夏油という男、どこまで信じていいやら....」

「大丈夫でしょー。とっても面白い人だったし」

「お前の基準で物事を測る程怖い物は無いわい」

 

 大地の呪霊、漏瑚(ジョウゴ)は同じく呪霊仲間である真人(マヒト)の発言に対していつものように突っ込みを入れる。

 そして次に後ろを振り向き、一番最後尾を歩いていたそれに話を投げ掛けた。

 

「おい、坂根。お前はどう思う。」

「....昔は良かったです。ここにあった煎餅屋、本当に美味しかったんですよね....」

「お前の懐古話などどうでもよい。あの胡散臭い袈裟男を信頼していいかと聞いておるのだ」

 

 

 呪霊、『坂根(サカネ)』。

 服装はよくあるjkのセーラー服に二つ結びのおさげ。そしてダウナー寄りではあるが整ったその容姿は一見すれば普通の女子高生。その溶け込み具合は実験した真人曰く、呪力が無ければ仲間ですら人ゴミにいる彼女を確認するのに一手間かかる程。

 だが逆に言えば彼女から滲み出てなお溢れる呪力は、彼女が人とは異質な存在である事を、充分すぎる程に示唆していた。

 

 

「....大丈夫だと思いますよ。わざわざあちらから交渉を持ちかけて来たくらいですし、取り敢えずは様子を見て良いかと」

 

 眼を細め、ゆったりとした口調に笑顔を添えて言葉を話す。

 それに漏瑚も納得したのか、ただ「フン」と一言漏らすと、再び前を向き、歩みを進めた。

 

 

「遘√b蝮よ?ケ縺ョ險?縺??壹j縺?縺ィ諤昴>縺セ縺吶?ら桝縺??縺ッ諤ェ縺励>蜍輔″縺後≠縺」縺ヲ縺九i縺ァ繧《私も坂根に賛成です。疑うのは怪しい動きがあってからでも》」

「だーからお前は喋るなぁ!! 言葉は分からんのに内容だけは頭に来るから気持ちわるいのじゃ!!」

「ぶふぅー!! ぶふぅー!!」

 

 自然の呪霊と大海の呪霊。花御(ハナミ)陀艮(ダゴン)。彼らは普通の言葉は話せず、代わりに花御の方は直接脳内に語り掛けるような言語を使う。

 だがされる方はとても気味悪いらしく、それは呪霊である漏瑚も例外では無い。

 真人と坂根は不思議な物だとして面白がっているらしいが。

 

 

「....坂根よ。もしだぞ。 もし万が一、我らに何かあった時――」

「あぁ!! あそこの駄菓子屋!! まだあったんですね!! わー懐かしいー!!」

「話を聞けぇ!!!」

 

 自由奔放。流石に真人程では無いが、大人しいかと思えば急に興奮しだしたり、そもそも普段から感情が読めなさすぎたりと、掴めなさで言えばある意味彼をも上回る。

 そんな事を坂根に対して思いつつも、それでも漏瑚が基本相談を彼女にするのは、一つはなんだかんだまともな答えを出してくれる事、そしてもう一つは彼女の確かな実力、能力にあり――――

 

 

 

「....えぇ。そうですね。その時は戻りましょう」

 

 

 坂根は瞼を閉じ、祈るように両手を結ぶ。

 

 

「――皆さんで、悔いの無いように」

 

 

 何が()()()かは、誰も知らぬまま。

 

 

 

 

 

♢♢♢♢

 

 

 

 午後、渋谷の駅前。

 五条悟は仕事終わりで高専に向かうべく、現在監督の伊地知と共に、渋谷の街に降り立っている。

 

 

 

「....あれ? 伊地知くぅん。あんなとこに煎餅の店なんかあったっけぇ?」

「何をおっしゃっているのですか。妙に古臭い代わりに昔ながらの美味しさを残した有名な店ですよ。高専に行く際にも毎回見かけてるじゃないですか」

「....だよなぁ。何言ってんだろ、俺」

「急ぎましょう。伏黒君が待ってます。」

「あぁい....」

 

 

 わずかな違和感を気にかける暇も無く、現代最強の呪術師こと五条悟は伊地知が持つ車の方へ向かう。そしてそのまま助手席に乗り、その車は高専へと走って行った。

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