ラタが駆け抜ける物語   作:ルスト

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一見誤字に見えるサブタイトル。
こんな世界では誤字のわけがない。


世紀末な魔地・ルイン

「大丈夫ですか!?」

 

 ルインに駆け込んだマルタさまと我々。

 マルタさまは逃げて来た人の一人を呼び止めます。

 呼び止められたモブはまさに着の身着のまま、という言葉がぴったりな状態です。

 

「や、野生化した自警団や教会の騎士団が町を襲って……! おまけに、湖底の洞窟の方から宝箱と旅の傭兵がこの町まで戦場を移してきたんだよ!」

「何やってるのあの人達!? 湖底の洞窟からここまで戦場を移動させてるの!? ここ町だよ!?」

 

 マルタさまの叫びは町中に響き渡る爆音や戦闘音でかき消されました。

 何せ町の家と言う家に野生のジャスコニアスが群がってヴァラースチャージをぶち込んで崩壊させており、ロイド教の総本山である教会では屋根の上で親バカ率いる軍団と宝箱さん達が激闘を繰り広げています。

 おまけに町中では野生の自警団とマーグナーによってグラズヘイム送りにされた教会騎士団が戦っているわけです。

 隊長のマーグナーよりも教会騎士団の方が強そうですね。

 

「そもそも何なのこの惨状は! いつの間にラタトスクの世界は世紀末になったの!?」

「何寝ぼけたこと言ってるんだ。これが普通だろ?」

「こんなのが普通のはずないでしょ!」

 

 しかし、町を守る自警団と教会の騎士団やマーグナーが戦うのはおかしくないんですよね。

 オーバーリミッツを会得するためにグラズヘイムで修行していた自警団が見事に野生化していて、避難しているモブまで襲っていなければですけど。

 

「何のための自警団なの!? 町を守る自警団が町の人攻撃してどうするの!」

 

 しかし、乱闘している自警団にはその言葉は届きません。

 代わりにこちらにも連中の矛先が向きました。

 

「俺、オ前、排除スル。俺、街守ル」

「ヒャッハー! ロイド教の蛮族の本拠地は消毒だー!」

 

 こちらに向き直った自警団と教会騎士団の一匹がそのまま向かってきます。

 とりあえずターゲットチェックで調べましょう。

 

 

 

 

 

 教会騎士団・グラズヘイマー

 属性:モヒカン・雷

 LV:398

 HP164500/164500

 

 自警団・グラズヘイマー

 属性:野生動物・土

 LV:403

 HP152354/152354

 

 

 

 

 

 どう見ても世紀末な強さですね。さすがカオスです。

 

「これはもうそう言う次元じゃないよね!? というか、序盤なのに何でこんな世紀末な強さの敵が出てくるの!? おかしいよ! それにグラズヘイマーってどういう事!? あんな危険な場所が誰にでも開放されてるの!?」

「立ち入り自由だぞ? グラズヘイムは誰でもウェルカム、だとか言ってたな」

「この前広告に載ってましたよね。グラズヘイムで君も生まれ変わろう! とか書いてあったと思います」

 

 果敢に挑戦していった者達も居ましたが、大半が最初のノイシュもどきに噛み殺されていましたね。

 数万ものモブに殴られてあらかじめ弱っていて、運良く倒せてもその場でリコールされて泣いていました。

 

「そんな物どうして宣伝しちゃうのこの世界は! 世紀末な場所に一般人を呼び込まないでよ! 封鎖しないと!」

「いや、あの場所封鎖しようにも封鎖できないぞ? 名も無い村の自警団や各地でグラズヘイム送りにされた連中のたまり場になってるからな」

「どうしてこんなことになってるの……。とにかく、目の前の世紀末兵士を倒さないと……」

 

 色々あるでしょうが、マルタさまは目の前にいるグラズヘイマーにプリズムソードやフォトンの連射を叩き込みます。

 数多の相手を倒してきたこのコンボ。いくらグラズヘイマーといえど……。

 

「ぐわぐわぐわぐわぐわぐわぐわぐわぐわっ、ぐわっ!? ちっ……ぐわぐわぐわぐわ……」

「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 教会騎士団の方はあっさりハメに成功したようです。

 連続で悲鳴を上げるのがシュールですね。

 しかし、野生化した自警団には通用しないようです。

 

「げっ! 野生化した自警団がオーバーリミッツを使ってきたか!」

(と、とにかく魔術を使うの! タービュランス!)

 

 野生動物はオーバーリミッツで恐ろしく面倒になりますからね。

 これで怯まない上にガードもしなくなり、特攻するだけの極悪思考に切り替わってしまいました。

 

「排除排除排除排除排除!」

「うおっ!? 攻撃ばっかりしてきて手を止める気配がねえ!」

 

 自警団がラタトスク様を攻撃してきます。

 その攻撃は文字通り我武者羅そのものですが、ラタトスク様が反撃に転じようとしても全く隙がありません。

 ラタトスク様が剣を振ろうとした次の瞬間には自警団の槍が襲ってきています。

 

「エミル! 大丈夫!? こいつ何とか倒してそっちに援護攻撃するから、それまで持ちこたえて! フォトン! フォトン! フォトン!」

「ぐわぐわぐわぐわぐわぐわぐわぐわ……ぐわっ! ぐわぐわぐわぐわ……」

 

 ラタトスク様の事を心配していますが、先に教会騎士団を倒さないといけないマルタさまではどうにも出来ませんね。

 

 

 

「早くしろよ! この自警団、止まる気配がねえ!」

「シャアアアアア!!」

 

 ラタトスク様の言葉通り、自警団は血走らせた目をラタトスク様に向け、雄たけびを上げながら一心不乱に襲い掛かってきます。 このままでは不味いですね……。援護しましょう!

 

 

 

(了解! タービュランスなの!)

「やりなさいグリフォン、ベルウィルリング! タービュランスです!」

「ウガアアアー!!!」

 

 召喚したグリフォンとベルウィルリング、そしてインプが四方八方からタービュランスを自警団に叩き込みますが、自警団はびくともしません。

 オーバーリミッツのオーラが痛みを遮断しているのか、それとも野生化した自警団の本能なのか、痛みを無視してラタトスク様に突っ込んできます。

 手も足も出ないラタトスク様は逃げ回るだけです。

 

(弱点なのにびくともしないの! 化け物なの!)

「もっと叩き込みなさい! オーバーリミッツの上から強引に倒すんです!」

(イエッサー!!)

 

 私の指示に従い、詠唱を続ける魔物部隊。

 相変わらず野生化した自警団は全く止まらないですがこれでいつかは……。

 

 

 

 

 

「はーはっはっはっ! マーテル様と我らがロイド様に逆らう愚かな野蛮人のシルヴァラント人よ。私が育てあげた精鋭の前に苦戦しているようですねえ?」

「マーグナー!?」

 

 グラズヘイマーに苦戦している我々を嘲笑うようにしいな像の上から話しかけてきたマーグナー。

 金色の鎧が特徴的な自称教会騎士団ですね。

 マルタさまが驚きの声を上げます。

 

「どうです? 私がグラズヘイム送りにして育て上げた教会騎士団の力は? さる御方に頂いたジャスコニアスの力と合わせて、こんな町一ひねりですよ!」

 

 教会騎士団に苦戦してるんじゃなくて自警団に苦戦してるんですがね我々は。

 そこでハメられてるのが見えないんでしょうか?

 

「「ぐはー!?」」

 

 とか思ってたら落ちましたね。自警団も落ちたのでマーグナーへの道が出来ました。

 

「って、何やってるんですか!? いきなり倒されてどうするんです!? この役立たずが!」

 

 出落ちみたいなタイミングですしね。

 まあ、無限フォトンとぶっ飛んだ術攻撃のタービュランスですし。

 

「も、申し訳ありません!」

「言い訳など聞きたくありません! 今度は、グラズヘイム3層の記憶陣まで道中の敵を駆除しながら進むマラソンを休み無しで追加550周させても良いんですよ?」

「ひいいいいいいいっ!」

 

 マーグナーの怒りが近くの教会騎士団に向けられます。

 550周とは理不尽なようで、随分温いですよね。

 

「どこが温いの!? あの場所3層まで降りるって滅茶苦茶大変なんだよ!? そんなの550周もさせたら死んじゃうって!」

「マルタさまは世間知らずで情けない……。今のご時世、グラズヘイム10層のアルブム・アートルムまで765周の全敵討伐マラソンは全ての自警団、騎士団の基本教練なんですぞ?」

「そんな教練させたら死んじゃうって! 明らかに人間の行う訓練じゃないよねそれは!?」

 

 マーグナーがそう言うあたり、この世界では自警団の基本教練なのでしょう。

 まあ、おかげで野生化してしまったのでしょうが。

 

「何を軟弱な事を言ってるんですか? その辺の子供すら、グラズヘイム3周は日課のようにこなしますよ? もちろん、道中の敵は皆殺しです」

「その子供って何者!? プレセアとかジーニアスの間違いじゃないよね!?」

 

 何言っているのやら。

 マルタさまは「その辺の子供」と言う言葉が耳に入らなかったんですか?

 

「信じたくないよそんな恐ろしい現実!」

「ウガガ……今グラズヘイム645周……俺、何モ……考エラレナイ…………。町、守ル……敵、消ス……。ウガガ……」

「もう止めて! それ以上精神が崩壊する前にグラズヘイムマラソンを止めて!」

 

 倒れた自警団が会話に入ってきました。

 ……ふむ、まだまだ修行が足りないですね。たった645周でその様とは。

 

「それにしてもこの町の住民共の情けなさときたら……。我々が襲撃した名も無き町はグラズヘイマーと化した住人が圧倒的な抵抗を見せてテセアラ蛮族(きぞく)も我々も一人残らず叩き出されたというのに……。ルインの住人は虫けらばかりですなあ!」

 

 全くです。

 たかがグラズヘイマーに襲われただけで逃げ回るだけの虫けらとは!

 

「その基準がすでにおかしいって皆自覚してよ!?」

 

 マルタさまの叫びだけが虚しく響きます。

 いや、間違ってるのはその常識ですよ。この人倒した後の本格的な冒険できっと嫌になるほど思い知ります。

 

「ゴク……ハア。……だから言っただろうがマルタ! いい加減現実を見ろ!」

 

 一升瓶に入ったフレアボトルとハードボトルを一気飲みしたラタトスク様がマルタさまに喝を入れます。

 さて、ラタトスク様も復活して戦力は十分ですし、マーグナーやっつけましょうか!

 

「おやおや。自警団ごときに苦戦した貴方たちが私を倒せると? ただのグラズヘイマーに苦戦する貴方たちなど私の敵ではありません! マーテル様と我らがロイド様の像の前に、その首捧げるとしましょうか!」

 

 自信満々にマーグナーが槍を構え、しいな像の頭を踏み潰して飛び降りてきました。

 戦闘開始ですよ!




ターゲットチェック…ラタトスクにおけるスペクタクルズ。HPとレベルと属性だけの欠陥品。

自警団…明らかにロイド一行よりも強い世界最強クラスのモブ。レベル400になってもなお「鍛えてくれ!」と言うその謙虚さは見習うべきである。正式名称は自警団員。

教会騎士団…この場所限定の自警団のコンパチ。雷属性の自警団。

ノイシュもどき…オライアン。ウルフ共々執拗に操作キャラを狙うAIとリコール連発で泣かせてくれるナイスガイ。

マーグナー…教会騎士団もどきのヴァンガード。とはいえ、本家の教会騎士団がアレなのでこんな成りすましが通じるのも仕方ないのかもしれない。

極悪AI…オーバーリミッツした敵は一切ガードしなくなり、攻撃に対する自動ガード機能が付き、更にグローリーが付与される。無限フォトンも通じない。

しいなの像…ルインの名物の一つ。

フレアボトル…攻撃が上がるドーピングボトル。ラタには出ない。

ハードボトル…防御が上がるドーピングボトル。空気。
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