ラタが駆け抜ける物語   作:ルスト

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お待たせしました~。


次のクエスト

 マルタside

 

 

「はあ……何とか勝った……」

 

 悪名高い最強の傭兵ササキ。

 その凶悪な攻撃の前に壁の魔物も、控えでお茶を啜っていたエミルとテネブラエも、皆吹き飛ばされちゃったけど、少なくとも私は立っていて無事に生きてる。

 勝ったって事だよね?

 

 

 

 

 

「ふはははははははははははははは!!」

「って、復活早いよ!?」

 

 ササキを倒して安心してたのも束の間、笑い声と共にササキは平然と立ち上がってきた。

 さっきまで光属性魔術のフルコースで叩きのめしていたはずなのに……。

 

 

 

 

 

「さすがムサシだ! この私を成敗するとは!」

「私ムサシじゃないよ!?」

「この血沸き肉踊り骨が震える感覚……これこそ戦いの証よ!」

「完全に頭のネジが壊れちゃってる!?」

 

 斧を構え直し、私目がけて物騒な事を言い放つササキの姿は、どう見ても運命の世界に登場した青い悪魔の再来だった。

 ……バトルジャンキーなんて恐ろしい種族の相手、嫌だよ…………。

 

 

 

 

 

「だが……無限コンボなどと卑怯な手を使いおって! この勝負、私は負けたとは認めん! 今日の勝負はノーカウントだ!」

「勝負に卑怯も何も無いよ!」

 

 高らかにそう宣言するササキ。

 卑怯な手を使ったとか言ってきてる。

 けど、そもそもそっちだって控えメンバー(という名のサボリ)を攻撃したじゃない!

 こんなの反則だよ!

 

「今日の勝負は小手調べだ! 次は本気で行くから覚悟せよ!」

「今日の時点で本気じゃないなら、一体どれだけ進化する気なの!?」

 

 すでに世紀末な強さだったよね!?

 これ以上進化されたらどうすればいいの!?

 

「また会おう! さらばだ!」

「私はもう会いたくないよ!」

 

 一方的に言うだけ言ってササキは走り去って行った。

 ……クエストはクリアしたんだけどさ。

 

「この屍の山、どうすればいいの……?」

 

 私の周囲には魔物の残骸とエミルとテネブラエの残骸が転がっている。

 ササキの攻撃で文字通り皆殺しにされちゃってピクリとも動かない。

 ……生きてる?

 

 

 

 

 

「お疲れ様にゃー! 今すぐ回収するからそこを動かず待機するにゃー!」

 

 そして、どこかから聞こえてきたねこにん……おしごとにんの声。

 視界は光に閉ざされ、アスカードに戻される。

 

 

 

 

 

「お疲れ様にゃー! 依頼主から報酬が届いてるにゃー!」

「えっと……何これ?」

 

 渡されたのは「覚醒ノ書」とかいうタイトルの変な本。

 ……何に使えばいいの?

 

「読めばいいと思うにゃ。グリモアと一緒にゃ」

「は、はあ……」

 

 命がけの戦いに勝って得たのが本一冊ってのもどうかと思うんだけど……。

 この本は後で読めばいいかな?

 

「と、ところで、今受けられるクエストにはどんなのがあるの?」

 

 気を取り直しておしごとにんに聞いてみる。

 他にもクエストってあるのかな?

 

「もちろんにゃ。これがリストにゃ」

「えっと……」

 

 

 

 

 

 盗賊退治 推奨レベル80000

 自警団の討伐 推奨レベル7500

 暴れ魔物の討伐 推奨レベル100000

 野生化した会長の討伐 推奨レベル20000

 医は仁術 推奨レベル800000000

 

「ちょっと待ってええええええ!」

「どうしたにゃ?」

 

 どうしたにゃ?

 じゃないよ! 何この世紀末クエスト!?

 こんなの人間にクリアできる難易度じゃないよね!?

 推奨レベルが既に世紀末なんだけど!?

 ラタトスクの上限レベル200だよ!?

 というか、そもそも何なのこの「野生化した会長」って!?

 

「一軍入りを企てる会長を討伐するだけの簡単な作業にゃ。会長は現在アスカード地下の牢獄を破ろうとしているから力ずくで止める必要があるにゃ」

「ここに何で牢獄が!?」

 

 そもそも、それって本当に魔物なの……?

 

「受けるにゃ?」

「……正直避けたいんだけど」

 

 推奨レベルがおかしい時点で私一人で挑んだって勝てる気がしないし。

 そろそろこの残骸どうにかしないと……。

 

「レイズデッド!」

「ああ全く、酷い目に遭った……」

「同感です……」

 

 散った魔物も含め、全員復活させる。

 レイズデッドは万能だから大体の状況なら復活できるし問題ない……よね?

 

「……大丈夫?」

「あの化け物め! 殺す気か!」

「全くです! 控えメンバーを攻撃するなど、ルール違反ですよルール違反! あのような卑怯な生物、次会ったら叩き潰してやりますよ!」

 

 怒り心頭なエミルとテネブラエ。

 戦闘中にお茶を飲んで寛いでた時点で自業自得だと思うんだけど……。

 

「何を言うのですか! 控えメンバーは戦闘中、何もせずに安穏と過ごすことができるポジションですよ!?」

「二軍のベンチは安全地帯だ! それをあの卑怯者め! 不可侵条約違反だ!」

「そもそも不可侵条約なんてこの世界に無いからね!?」

 

 イセリアのアレは例外中の例外だし、そもそも戦いにそんなルール無いから!

 

「……この怒りとストレスは全部会長にぶつけてやる! 行くぞテネブラエ!」

「承知! 叩きのめしてやりましょう!」

「いや、ちょっと待って! それ推奨レベルが既に異じょ」

「了解にゃ! 誰も受けなくて困ってたのにゃ! 早速逝って来てほしいにゃ!」

「言い方怖いよ! というか、私受けるなんて一言も……」

 

 私の言葉は完全に無視され、強引に依頼を受ける羽目に。

 こんなことやってていいのかな……?

 

「大丈夫だ、問題ない」

「それ大抵の場合において問題がある時の台詞なんだけど……」

 

 けど、今の二人に何言っても聞かないんだろうし……はあ……。

 

「マルタさま、ため息つくと幸せが逃げますよ」

「誰のせいなの!?」

 

 ……せめて普通のラタトスクとテネブラエにしてくれたらよかったのに。

 どうしてこうなったんだろ……。

 

 

 

 

 

「じゃあ、送るから逝って来るにゃー!」

「だからその言い方止めて!」

 

 再びおしごとにんの強制ワープで飛ばされる。

 アスカードの牢獄って言ってたけど、この町にそんな物あったかな……?

 

「くそっ! 出せ! 私は、こんな場所で捕まっているわけにはいかんのだ!」

「暴れるな! どうすればいい! このままじゃ牢屋が破壊されるぞ!」

「私は、この世界最大の会社の栄光ある会長だ! こんな牢獄に拘留されるいわれなど無い!」

「おい、依頼を受けて来たんだが、誰をぶちのめせばいいんだ?」

 

 飛ばされてきた先は本当に牢獄で、牢屋の看守と誰かが言い争っている光景が。

 そこにエミルが踏み込んでいったけど……。

 

「ああ、あんた依頼を受けて来たのか!? なら頼む! この頭の狂った変人を大人しくさせてくれ!」

「ええい! 私をここから解放しろ! 出せ! 出すのだ! 私は、私は一軍に……!」

 

 看守がエミルに気づき、慌てた様子で縋ってきた。

 牢屋の中には……仮面を被った青い長髪の男?

 ……青い長髪……世界最大の会社の会長……牢屋……一軍……。

 

「……すっごく認めたくない予想が出来たんだけど、言っていい?」

「聞きましょうか?」

「まさかと思うけど、あの牢屋の中の人、リーガルさんなんじゃないかな~って思ってしまったんだけど……」

 

 け、けど、そんなわけないよね!?

 リーガルさんかなり真面目な人だったし!

 少なくとも、シナリオ完全に破壊するような暴挙に及ぶような人じゃなかったし!

 

「マルタ、お前今頃気づいたのk「そうだ! この私は!」」

 

 エミルの言葉を遮るように、牢屋の中の人が声を張り上げて自分の仮面を取る。

 投げ捨てられた仮面が砕け散り、同時に男の素顔が明らかに。

 忘れるはずもない、その顔。

 世界最大の会社……レザレノ・カンパニー。

 そしてその会長。思い当たるのは一人しか居なかった。

 

「テセアラ、いやこの世界最大の会社、レザレノ・カンパニーの栄光ある会長! リーガル・ブライアンだ!」

 

 全身に見たことも無い妙な装備をしているけど、その姿は間違いなく、本物のリーガル・ブライアンだった。

 ……一番の常識人だったはずのリーガルさん。どうして、こんなことに……。

 

「フフフ……久しぶりだなエミル、マルタ、テネブラエ。私を二軍に落とす貴様らを排除してでも私が一軍の椅子に座るため、私は進化して帰ってきた!」

「確か一番まともだったはずなのに! どうしてそんなことになったんですか!?」

 

 本当に、どうしてこんなことになったの!?

 私達の方に指を突きつけて「貴様らを排除してでも一軍の椅子に~」なんて物騒な発言をするこの人がリーガルさんと同一人物なんて思えないし思いたくないよ!

 

「私は……ずっとずっと待ち続けていた。自分が、一軍の椅子に座り、一軍として敵と戦える日が来ることを」

 

 確かにリーガルさんってずっと二軍行き安定するような気がするけど……。

 

「だが……その日はいつまで経っても来なかった! 次々に殺戮兵器へと作り変えられる魔物。そして、この世界最強の破壊兵器へと生まれ変わった死神マルタ」

「死神言わないでよ!」

「私も、いずれ貴様らと同じように一軍に立つ日が来るのだと思って待ち続けていたのだ! だが……」

 

 リーガルさんはどこか遠い所を見つめるように目を細める。

 よく見ると目に光が宿っていない。

 

「その日は! いつまで経っても来なかった!」

 

「私が! どれだけ渇望しても!」

 

「どれだけ要求しても!」

 

「私が一軍の椅子に座れる日は来なかった!」

 

「一軍の椅子に座るのはいつも貴様らだ!」

 

「私がどれだけ求めても手に入らない一軍の椅子を!」

 

「お前たちは!」

 

「いつも当たり前のように奪い取る!」

 

「いつも! いつもだ!」

 

 逆恨みのように一軍の椅子に座れないことを口にするリーガルさん。

 ……これは、どう反応すればいい場面なの?

 リーガルさんだけが一軍の椅子に座れないわけじゃなくて、ロイドもコレットも、というか、私とエミル以外の全人間キャラ二軍だったような気がするんだけど……。

 

「だから私は考えた。どうすればいいのか、長い時間、考え続けた!」

 

「どうすれば一軍の椅子に座れるのか! 二軍の椅子に、メンバーリストの一番下に放り込まれてからの数百時間、延々と考え続けた!」

 

「そして、ようやくその答えが出たのだ!」

 

 リーガルさんの目には狂気しかなかった。

 ……もう、手遅れなのかな、この人……。

 

「お前たちを排除し、私が一軍の椅子に座ろうと!」

 

「だから、私は力を得たのだ! この力で、これからは、私が一軍の椅子を奪い取る!」

 

 そして、リーガルさんが牢屋を破壊し、私たちの前に姿を現した。

 ――――空中に浮いた無数の巨大なロケットランチャーやガトリングガンをこちらに向け、すべての魔術を反射するバリアを展開して。

 

「あの世で私にわび続けろエミル、マルタ――――!」




推奨レベル…クエストの推奨レベル。実際にはレベル80の物が限度。この話のような地球外生命体が挑む推奨レベルはありえない。

不可侵条約…イセリアが人間牧場と結べた契約。あっさり破られて村焼かれました。マーブルさん助けるためだもん、仕方ないね。

リーガル・ブライアン…レザレノ・カンパニーの会長で、シンフォニアでは一番最後に加入するキャラ。ラタトスクでは技が大幅に変えられ、AIが技馬鹿にされ、レベル上限が50までになり、変えられた秘奥義が非常にしょぼくなり(一応威力自体はしいなの物と同等)、スキルが二つ強制セットされているせいでスキルセットの自由も無く、装備固定……と、戦闘面では不遇の極みのようなキャラ。シナリオでは活躍しているが、明らかに実力と合っていない。正直、彼がこの話で一番崩壊していると思う。
当たり前だが、本来の登場はこんなに早くない。
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