「さて、石舞台に行くか。インセインが居るだろうが、俺達には秘策がある」
宿から戻ってくるなり、エミルは私にそんな事を言った。
……秘策なんてあるの? 飛竜の仔が居ないとどうにもならないんじゃ……。
「おいおい。俺たちは飛竜なら所持してるだろ?」
「そうですよ、マルタさま。主力部隊の一角に飛竜は居ます」
「……飛竜……」
主力部隊……って事は私たちの仲間の魔物だよね。
飛竜……。
「……ラグナサンライズでも使うの?」
「ええ。ラグナサンライズ、イシュラントを中心に飛竜の軍団を編成し、インセインを倒してしまいます」
「ワンちゃん賢いね~♪ それなら、ハイマの飛竜はスルーしても大丈夫だね!」
「もっと敬って良いんですよ? コレットさん」
……うーん、確かに飛竜は飛竜だけど……。
大丈夫なの?
「大丈夫だ、問題ない」
「フラグ立てないでよ!」
まあ、エミルが何か言ったからって結果が変わるとも思えないけど。
とりあえず石舞台を調べに行く?
何も居なかったらその場で儀式をやっちゃおうか。
「……という事で石舞台に来た、けど……」
「「「「ケェェェェェ!!!!」」」」
『働きたくありません働きたくありません!』
石舞台の近くに来た段階ではっきり聞こえるウェントスと思われる働くことを拒否する叫び。
そして……時間と共にあちこちからやってくるインセインの大群。
それが私が石舞台の入り口で出くわしたものだった。
『ゲッ……ラタトスク様!? ……嫌だ! 私は働きたくない! 働くことなど断固拒否する! さあ来いインセイン! この石舞台に近づく愚か者を全て打ち払え! 月曜日の使者など打ち払うのだ!』
「「「「「「「「ケェェェェェェェーーーー!!!!」」」」」」」」
石舞台を守護するようにインセインの大群が集結し、暴風を巻き起こしていた。
もし無対策で石舞台に乗り込もうものなら突風で入った瞬間に追い返されてしまいそう。
……どうしてこうなったの!
「おいウェントス、残念だがそろそろ出番が」
『嫌ですよ! 私はまだアイ○ルマスターワンフォーオールをやり尽くしてないんですよ!? 追加シナリオ全部クリアしてDLC全部堪能して楽曲全部GOLD化して更に全アイドルの写真を各25000枚は保存しないと他の事出来ません!』
「わざわざ石舞台の外にも届くような大声で何アホなこと言ってるのこのセンチュリオン!」
そんな馬鹿な事許されるわけないでしょ!
というかそもそもどこから入手したのそんな物!
「この気配……今度こそ俺がセンチュリオンを手に入れてやる! もう騙されないぞ!」
「あっ! 空からロイドが!」
この段階では居なかったはずなのに!
どうしてここにロイドが……!
『打ち払えインセイン! 私はまだまだアイマスをやりたりません! こんなところで邪魔されるわけにはいきません!』
「「「「ケェェェェェ!!!!」」」」
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!????」
ウェントスの叫びに応えるようにインセインの大群が羽ばたきはじめ、空から降りてきたロイドはそのまま竜巻に飲み込まれて舞い上がって行った。
ロイドは一体何のために……。
「がっ……いってぇ~……」
「というか、インセインの大群の突風に飲まれて生きてるロイドもある意味凄いよね……」
すぐそばに降って来たけど、ロイドの命に別状は無さそう。
……って、すぐそばから殺気!?
「エヘヘ……ロイド、会える時を楽しみに待ってたよ~♪」
「ん? ……アイエエエエ!? コレット!? コレットナンデ!?」
振り返ると、そこにはどす黒いオーラを放ち、背後に悪魔まで出現させたコレットの姿が。
薄いピンク色だった羽は真っ黒に染まり、もはや悪魔の翼と言っても差し支えないような気がする。
そしてそのコレットの姿を見た途端に発狂したような叫びを上げるロイド。
気持ちは分からなくもないけど……。
「聞いたよロイド? ジーニアスからプレセアを奪って毎日お楽しみなんだってね?」
「!?」
「ちょっと待って! さっきそんなこと一言も言ってなかったような気がするけど!?」
もしかしてまた捏造するつもり!?
「な、何言ってるんだよ!? そんなことしてねえっての!」
「嘘。ロイドとプレセアが同じ部屋に泊まってお楽しみだったってジーニアスが言ってたもん」
「ま た あ い つ か ! いったい俺に何の恨みがあるんだよジーニアス! 単に旅の途中で宿の部屋が一部屋しか使えなかっただけなんだよ!」
またあいつか! ……なんて言われる辺り、相当ジーニアスに恨まれてるのかな……。
その恨みが明らかな逆恨みなのは置いておくとしても。
「ヒロインは私なんだよ? なのに……」
「い、いや! 落ち着けコレット! 一体何する気だよ!」
コレットが呟いた直後、コレットの背後の悪魔から魔力が迸る……ような感じが。
どう考えても嫌な予感しかしないよこれ……。
「ロイド……私が手に入れるためには、もう手段を選んでいられないみたいだね」
「全く、酷い奴だなロイドは。ヒロイン捨てて別の女に浮気なんてな」
「全くですねえ。しかもわざと嫌われるような発言を繰り返していたとか」
「火に油注ぐのは止めようよ二人とも! あのコレット何仕出かすか分からないよ!?」
もしかしたらロイドここで死ぬかも……。
「それならそれで面白い」
「面白いとか言わないで止めようよ!」
「死体を加工する方法なら任せてくださいコレットさん。一生貴女から離れないように仕立てても良いですよ」
「さらっと怖いこと言わないで!」
「うん♪ その時はお願いするね、ワンちゃん!」
「……駄目だ! 俺の味方はここには居ない! だったら……」
ロイドが何かを決意したような目でアスカードの町の方を見下ろす。
まさか……。
「逃げるが勝ちだ!」
「あっ……」
ロイドは脇目も振らずに逃げ出した。
ものすごい速度で階段を駆け下りていくし、これならたぶん逃げ切れ……
「知らなかったのロイド? 私からは逃げられないんだよ♪」
「うわああああああああああ!」
私の後ろに居たはずのコレットはいつの間にかロイドの目の前に。
いつの間に瞬間移動を覚えたんだろ……。
「じゃあ……逝こうか♪」
コレットが笑顔でロイドにそう告げた直後、ロイドは上空から降って来た巨大な剣の餌食になってしまった。
地面に突き刺さった剣から放たれた波動がアスカードの一角を消し飛ばしていく。
……どうして私はそんな光景を見て平然としてられるんだろう。
「ヒロイン力が上がったな。良い事だ」
「違う、絶対違うよこれは……」
エミルはヒロイン力とか言うけど、これは単に非常識のオンパレードを前にして考えるのを止めかかっただけだと思う……。
まあ、放っておいてウェントスを確保しないとね。
ラグナサンライズやイシュラントを突っ込ませるんでしょ?
「その通りです! さあ、行きなさい!」
テネブラエの叫びと共に、飛竜の仔のように無数のラグナサンライズやイシュラントが特攻していき次々に爆発する。
インセインの被膜、破壊出来たらいいんだけど……。
『ああっ! インセインさんがっ!? 不味い! もっと! もっとたくさんの魔物を集めなければ!』
インセインの大群に飛竜の大群。
育て上げたラグナサンライズとイシュラントの方が上回ったらしく、インセインを撃破していく。
そして、ニートセンチュリオンのウェントスはその光景を見て焦ったらしく、暴走の力をますます拡散させてしまった。
すると――――。
「不味い! 魔物の大群が石舞台に!」
「ウェントス! 貴様俺を裏切る気か!?」
私達の目の前で風属性の魔物の大群が石舞台を守るように集結していく。
アックスビーク、ムーンロックス、パック、シンク、チュンチュン、シムルグ、ハーピー、パーガー、サレ、ツァトグ……。
もちろんインセインもさらに集まって来て、アスカード石舞台は来る者を阻む烈風の要塞と化してしまった。
……どうしよう、これ……。
「仕方ないな、一時撤退だ! 逃げるぞマルタ!」
「覚えていなさいウェントス! そこから引っ張り出して、痛い目に遭わせてやりますよ!」
これにはさすがの二人も歯が立たなかったみたいだね……。
まあ、こんなのを正面から超える方がどうかしているけど。
アスカードに戻ろうか。
アスカードの町に戻ると、そこにはロイドの干物とコレットが。
ホントに哀れだよね……ロイド。
「……」
「ロイドの目が死んでる……」
ピクリとも動かないロイドの目には光が無い。
というか、コレットがどいたらロイドの身体はそのままアスカードの風に乗ってどこかへ行ってしまいそうだよ。
「どうしたの、皆?」
「アレを見ろ、コレット」
そんなロイドの上に馬乗りになってるコレットは何事も無かったように声をかけてきた。
……どうして平然としてられるのか不思議だよ。
「……サイクロン?」
アスカードの石舞台を見たコレットの口から出たのはその言葉だった。
いやまあ、確かにサイクロンにしか見えないけど。
「ウェントスの野郎、ついに反逆を起こしやがった。魔物を呼び寄せてあんな物まで作りやがってな」
「ウェントス……許しておけません!」
「私も手伝うね! ロイドを捕まえる手伝いをしてくれたから!」
(ロイドは勝手に降って来ただけのような……)
まあ、このコレットは強いし頼りになるのは確かなんだけど……。
「分かりました! それではハイマに急ぎましょう! 行きますよマルタさま!」
「マルタ! 遅れるな!」
「急ごう!」
「え? あ、はいっ!」
簀巻きにされたロイドを引きずりながら進むエミルたちの後を追うように私も走る。
アスカードの石舞台からは相変わらずウェントスの叫び声が聞こえている。
『……変態!? ロリコンプロデューサー!? ……それでも構いませんとも! 好きになった女の子がたまたま14歳だっただけなんですからね!』
「……」
……あのセンチュリオン、一回ぶん殴っていいかな?
無限フォトンやディバインセイバーじゃ駄目な気がしてきたよ。
これ以上自由生物が増えても困るだけなんだけど……。
「……そんな事より助けてくれ、マルタ……」
「ゴメン、ロイド。それ無理……」
……ウェントスがニートどころかロリコンになってしまった。
ちょっとゲーム変えただけでこの様だよ。