ラタが駆け抜ける物語   作:ルスト

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ハイマ

 アスカードの石舞台に集結した魔物軍団。

 当然私達ではどうにもならないため、対処法を探すためにハイマにやってきた……んだけどさあ。

 

 

 

 

 

「どうしてこの世界はいつも世紀末が広がってるの!?」

 

 ハイマを徘徊するのはソードダンサーを中心とした霊族の大群。

 レヴォナス、パスティアージ、ペイルライダー、クルセイダー、グレイブディガー……。

 どれもこれも最上位の魔物なんだけどどういう事なのこれ!?

 ここってウルフやアックスビークがうろついてるだけのはずだよね!?

 

「そりゃ、ハイマには墓があるからな」

「霊族が出没してもおかしくはないでしょう」

「それでもアレは明らかにおかしいよ!」

 

 まるで町の住人みたいに振舞う魔物の軍団。

 雑貨屋の店員はレヴォナスにすり替わっているし、そのレヴォナスからペイルライダーとクルセイダーがグミとライフボトルらしき物を受け取っている光景なんてやっているのが魔物で無かったら自然な光景だよ。

 だけどさあ……。

 

「いつの間にハイマは魔物の町になっちゃったの!? 人間がどこにも見当たらないよ! あとおしごとにんも!」

「へえ~おしごとにんって四刀流の鎧武者なんだな~」

 

 エミルが言った通り、本来おしごとにんが居るはずの場所にはソードダンサーが立っていてレヴォナスとペイルライダー、ゾンビ、ホーントのパーティらしき集団に紙を見せながら何か伝えている光景が見える。

 けど明らかに違うから!

 あんな物騒なおしごとにんが居るわけないでしょ!?

 

「マルタ、偏見は良くないよ?」

「偏見の次元じゃないからこれ!」

 

 というか、何処からどう見たって違うじゃない!

 ピンゾロでも振らない限り間違えるわけないでしょ!

 

「……あのさ、マルタ。その前に良いか?」

「ロイド、どうかしたの?」

 

 ……簀巻きにされてコレットにここまで転がされてきたんだし、まあ言いたいこともあるだろうけど。

 というか私だったら絶対に抗議する。

 

「逃がしてくれないか、何とかしてさ」

「ああうん……無理」

 

 だってもし私がロイドを逃がしたら間違いなくコレットとエミルに何かされるし……。

 

「そう言わずに頼むよ~。このままじゃ俺……」

「……」

「何か、ヤバい方向に目覚めそうで……」

「……えっ」

 

 ロイドまでまともじゃなくなるの……?

 どうしよう、どんどんまともな生き物が減っていく……。

 

「ちょ、何でそこでドン引きしてるんだよ!? 頼むから逃がしてくれ!」

「ロイド……?」

「あっ……」

 

 ロイドが大声で叫んだせいでコレットに気づかれてしまった。

 ……まあ、私はまだ何もしてないから大丈夫だよね?

 

「……やっぱり、私の事なんて嫌い? 殺してしまいたいくらい憎んでる?」

「そう言いながらロイドの首に包丁突きつけるのは止めようよ! どう見たってただの脅迫だよそれ!」

「え? 泣き落としだよ?」

「どこが!? 相手の首に包丁突きつける泣き落としとか聞いたことも無いんだけど!?」

 

 そんな物騒な泣き落とし止めて!

 

「コレット……何度も言っただろ、俺には」

「プレセアが、って言うんでしょ?」

「違う。……俺、実はさ」

「?」

 

 プレセアとくっついたんじゃないの?

 

「最近、男も良いなって思えてきてさ……!」

「「「「……!!!」」」」

 

 微かに頬を染めてそう叫んだロイド。

 その直後、ハイマの空気は凍りついた。

 エミルはエコートレイサーを抜いて即座に距離を取り、テネブラエはそのエミルの後ろに。

 そして……。

 

「だって、そうだろ? 逞しい体は、どうやったってコレットやプレセアじゃ無理だから……」

 

 ロイド……。

 本心か嘘かは知らないけど、その発言は間違いなく「ロイドは男の人に興奮する変態」だって周知させることになるんだけど……。

 

「嘘っ――――」

 

 ショックでコレットは石化した。

 まあ、無理はないよね……。

 一方的な恋だったけど、まさか好きな人がホモだったなんて……。

 

「……よし! 今だ! 脱出!」

「……あっ!」

 

 転がされていた状態から器用に立ち上がると、ロイドはそのままコレットを尻目にハイマの崖から飛び降りた。

 気づいたコレットが捕まえようとしたけど既にロイドはレアバードと共に空の果てへ……逃げちゃったね。

 

「……」

「……コレット。生きてたら、きっと何か良い事があるはずだ。だから……その……更生を諦めるのだけは、止めておけ」

 

 ロイドが飛んで行った方角を見つめ、石像のようになってしまったコレットにかけられた声はそれだけだった。

 エミルですらこれなんだから、私達には何も言えなかったよ……。

 

「……ロイドが、男の人を好きだったなんて……」

「ああ、うん……。さすがに私もショックだったよ、これは……」

 

 ロイドが本気かどうかはともかく、ハイマの町中で堂々と「男も良いなって思えてきてさ……」とか叫び出したらもう疑う余地は無い。

 ロイドは変態だったって事だけは確定的に明らかだよ。

 

「……さっそくこの情報を全世界にばらまきましょう! あの変態を野放しにしておくわけにはいきません!」

「だな。今すぐ動ける魔物を集めろテネブラエ! 衝撃のニュースだと全世界に公表するぞ!」

「だからってそんなことしなくていいから! というかロイドの名誉のためにも止めてあげて!」

 

 あのコレットを止めるにはこれくらいしないと駄目だったんだろうし……。

 

「……マルタ」

「え? どうしたの……?」

 

 再起動したコレットが声をかけてきた。

 ……やっぱりまだ引きずってる?

 

「私、ロイドの意中の相手と思われる男の人を探して血祭りに上げないといけなくなっちゃった。アスカードを救ったらお別れだね」

「え?」

「許せなくなっちゃった。プレセアだけでもそうなのに、ロイド、今度は男の人に思いを寄せるなんて……その人は私自らマーテル様の元に送ってあげないとね♪」

「……あ、うん……」

 

 これでロイドが嘘をついてたらコレットはこれから見つかりもしない相手に狙いを定め続けることになるけど……。

 けど、ある意味その方が幸せなのかなあ?

 

「おいマルタ。とりあえずさっきのロイドの言動を世界中にばらまくための下書きを作ったんだが、これでいいか確認してくれ」

「作るの早っ!? というかそんな物作らなくても良いでしょ!」

 

 ロイドが飛んで行ってからここまでまだ5分も経ってないのに原稿用紙72枚分も下書き用意してあるの!?

 というか、そんな長すぎる下書き読んでる時間無いよ!

 

「……ロイドの本当に好きな相手は男だった。我々統一世界新聞記者連合は直ちにロイドの意中の男をでっち上げ、その情報を全世界に……だから何でこんなことする必要があるの! でっち上げてまで作らないでよ!」

「「他人の不幸は我々の幸せですから!」」

 

 そんな事堂々と胸張って言わないでよ!

 テネブラエも!

 

「で、これで良いと思うか?」

「そんなわけないでしょ! でっち上げてる時点で大問題だよ!」

 

 出まかせを書いてどうするつもり!?

 

「おいおい、俺達は新聞記者連合だがな」

「……」

「嘘出まかせでっち上げ万歳の悪徳記者で無いとは一言も言っていないぞ?」

「イメージ悪化でダメージを与えましょう。リセットなんてありませんし」

「やっぱり最低だよこの二人組!」

 

 敏腕記者ならともかく悪徳の方だなんて!

 ……というか、この二人の性格的にどうやっても敏腕記者は無理だよね。

 正しい事を書くつもり最初からなさそうだし……。

 

「ねえエミル。……そこにロイドに関する話を沢山記述したいんだけどいいかな?」

「良いぞ。どんな内容だ?」

「コレット、一体何言うつもり……?」

 

 もうコレットの口を封じた方が良いような気がしてきたけど……。

 

「えっとね……。ロイドは子供の頃から「自主規制」するのが大好きでね、酷い時には校舎の裏で女の子を押しt」

「いきなり何言ってるのコレット!? いくら魔物しか居ないって言ってもあろうことか町中でそんな発言……!」

 

 いきなり何言い出してるのーーーー!?

 

「良いねえ! 続きは続きは!? それで記事書いたら間違いなくロイドの奴は社会的に抹殺されるな!」

「その続きをお願いします!」

 

 しかも何で目を輝かせてるの二人とも!?

 

「止めてよ! コレット止めないと年齢制限上がりかねないよこの話!?」

 

 けどエミルもテネブラエも何もしないから、結局私がコレットを羽交い絞めにして口を塞ぐしか……。

 

「ふぇ? もうひてほめるのはふた?(え? どうして止めるのマルタ?)」

「止めるに決まってるでしょそんな話!」

 

 下手したらこっちが天罰食らっちゃうよ!

 でっち上げにも限度って物が……!

 

「全く、止めるなマルタ。空気読め」

「同感です……。やれやれ、熱も冷めましたし、さっさと飛竜だけ拾って帰りましょう」

「マルタ、皆の邪魔は良くない事なんだよ?」

「何で今の流れで私が非難されるのか逆に聞きたいよ!!」

 

 空気読めよ……みたいな目で私の事見てるけど、むしろ三人が怒られる側なんじゃないかなこれって!

 私別に間違ったことしてないよ!?

 

「集団の原則、その一。多数決で意見は通る。たとえ道を外した物であっても多数の人間が望めばそれは正しい物になる。……これくらい覚えておけ」

「それただの暴論だよ!」

「マルタ。いずれマルタにも……分かるはずだから。世界は多数の意見こそ正しい物として扱われるって事が」

「……分かりたくないよそんな暴論」

 

 ……ああもう、戦いがあるわけでもないのに疲れてくるよ……。

 

「体力が無さすぎるな、マルタ。仕方ない。お前はこれから毎日グラズヘイム最下層まで100周!」

「殺す気!? というか、100周もしてたら日が暮れるし1日で回れるわけないじゃない!」

「軟弱ヒロインには体力強化が必要です!」

「……エミルもテネブラエも連れて行くけど良い?」

 

 まさか私一人だけにやれ、とか言わないよね?

 そんなこと言うくらいだし。

 

「…………ああ、用事を忘れるところだった。さっさとハイマの山頂に行くぞテネブラエ」

「…………そうですね! 行きましょうラタトスク様!」

「……」

 

 ……自分が巻き込まれる事最初から頭になかったの?

 まあ、また無茶な事言ってきたら道連れにすればいいよね。

 

「マルタ……。主人公は大事にしないと駄目だよ?」

「一番蔑ろにしてるコレットにだけは言われたくない台詞だよ!」




泣き落とし…簀巻きにした相手の首に包丁を突き付けてお願いする行為。言う事を聞いてくれなかったら包丁を突き刺してもう一度お願いします。実行者の余りの健気さに泣き落としを受けた相手は了承するしかないとか。
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