「えっと……ここはどこですか……?」
「……」
「……」
ウェントスが召喚したのは異世界の人なのは間違いないけど、どうしてよりによって戦いの無い世界の人を連れてきちゃったの!?
トップアイドル……とか言ってたけど、どう考えてもそれって魔物との戦いでなる物じゃないよね……?
「はっ、こ、こうしてはいられません! 春香さん!」
「は、はいっ!?」
「あなたには力がある。わた……僕と契約して魔法少女n」
「フォトン!!!」
「ぎゃああああああああああああああああああああ!?」
「えええええ!? な、何今の!?」
余計な事を吹き込もうとしたウェントスをとりあえず黙らせる。
……とりあえず、お話……じゃなくて、OHANASHIしよっか?
「えっと……どういう状況なんですかこれ~……」
「ゴメン、少し待っててくれるかな? 私今忙しいんだ。……ドコニイコウトシテルノ?」
「ひっ……ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
逃げようとしていたウェントスの頭を鷲掴みにし、そのまま手に力を込める。
異世界召喚に巻き込まれて出てきたその子には悪いけど、まずはこのセンチュリオンを壊すのが先だよ。
「ああああああああああああああああ!!!! は、離してください!! 頭が! 私の頭がああああああ!!」
「散々馬鹿な事をしてたみたいだけど……お仕置きの準備は出来てるからね?」
ウェントスの頭を鷲掴みにしたまま部屋の外に。
ディバインセイバー5000回、フォトン10000回、レイディアント・ロアー1000回。
とりあえずどれがいい?
「どれも死刑宣告じゃないですか! 私に慈悲は無いんですか!?」
「ああ、居た居た。……おいマルタ」
「エミル、遅かったね」
ウェントスは捕まえたよ?
「ら、ラタトスク様! 慈悲を! どうか慈悲を! 私に救いの手を!」
「ウェントス……」
まるでこれから処刑台に送られる死刑囚が助けを求めるような目でエミルを見るウェントス。
そんなウェントスにエミルは――――
「一回死んで来い。骨は拾ってやる」
「そんなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!???」
満面の笑みを浮かべてそう言い切った。
……まあ、このエミルに助けを求める事の方が間違ってるよね。
「じゃあ、逝こうか。大丈夫だよウェントス、壊れてもセンチュリオンは海苔でくっつけられるみたいだからさ」
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!! 誰かあああああああああああああああああああああああ!!!」
この後の事はあまり覚えてないけど、ウェントスはこの日以来私の姿を見ただけで泡を吹いて卒倒するようになった。
マルタside out
side エミル(ラタトスク)
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
遺跡中にウェントスの断末魔の叫びが響き渡るがとりあえず無視して、被害者に声をかけるか。
さすがに放り出すわけにもいかないな。
「えっと……この悲鳴は……」
「ああ、放っておいていい。そういう遊びだ。あの馬鹿(ウェントス)はお仕置きされるのが好きだからな」
「どんな遊びですか!? というかどんな趣味ですかそれ……」
おかしなこと言ったか?
ウェントスはお仕置きされるとあんな風に喜ぶぞ?
「これは明らかに喜んでる声じゃないと思うんですけど……」
「ラタトスク様、マルタさまが向こうでウェントスと遊んでいましたがいいんですか?」
「構わない。壊れたら海苔でくっつけるだけだ。……ところでコレットは?」
「マルタさまがウェントスと遊んでいるのを見て「私も混ぜて♪」と言って笑顔で向かっていきましたが」
「犬が喋った!? というか空飛んでる!?」
何だ? 空飛ぶ犬が珍しいのか?
「少なくともこれまでの人生で見たことは無いです……」
「はあ……珍しいな」
一体どこから来たんだよ……。
「あの、そんな事より私帰れるんでしょうか?」
「……どうなんだ、テネブラエ?」
「そうですねえ……」
とりあえず帰れるなら帰らせた方が良いんじゃないか?
マルタの傍に居ると悪い影響を受けるかもしれないからな。
「……今のままでは難しいと思いますよ」
「え!?」
……おいおい。
「ど、どういう事ですか?」
「……理由次第じゃ洒落にならないぞ?」
「それがですね……。ウェントスが無理やり呼び出したわけですが、どこから来たのか分からないんですよ」
「はあ?」
何言ってるんだよ……。
どこから来たのか分からないってどういう事だ?
大方あいつがやってるゲームから引っ張り込んだんじゃ……。
「ん? 動くことは動くが……ここから引きずり出したわけじゃないのか?」
登場人物を引きずり出して召喚する術でも使った物だと思ってたんだが。
中身が抜け落ちてるわけでもなさそうだな。
「ええ。ウェントスが召喚しているのは確かなのですが、別に奴が所持しているゲームから引きずり出しているわけじゃないようです。奴が呼びたい存在をどこかから無理やり引っ張りこんできたみたいですので」
「あの……全然話が飲み込めないんですけど……」
「ああ、すまん。簡単に言うと……ウェントスがお前を呼びたいと思ったからどことも知れない場所からお前だけをここに引きずり込んできた、って事だ」
というかこれどうするんだ本当に……。
帰す方法ないぞ?
「私、帰れないんですか……?」
「どうなんだテネブラエ?」
さすがに異世界から突然人を拉致した挙句帰せません、は不味い。
ウェントスの首一本じゃすまないぞ?
「……次の周回に移動するための機能を使えば何とかなるのではないでしょうか?」
「あれか……」
確かに、次の周回に進めるための機能を使えばこいつが元居た場所にも移動できるかもしれないな。
あれを使えば世界の状況は巻き戻せるわけだし、召喚される前の状況に戻せるはずだ。
けどそれを使うって事は……。
「この周回が終わるまで辛抱していただくしかありませんね」
「えっと……どれくらいかかるんですか、それって?」
「そこまで長くはならないはずだが……あくまで普通の時限定だからな」
「我々すら想定外の事態ですし……いつ帰れるかの確約はできません。間違いなく帰してあげられることだけは確かなのですが」
「うう……。帰れない間に事務所を無断欠勤でクビになったりしなければいいんですけど……」
落ち込むな、って方が無理だな……。
こんな事態を招いたウェントスは後で絞めるとして、とりあえず……。
「あの馬鹿が勝手な真似をして本当にすまない。責任を持って元の世界に送るから、どうかそれまで待ってほしい」
「私からも謝らせてください。巻き込んでしまい本当に申し訳ございません」
謝罪の言葉は言っておくし頭も下げる。
まあ全部あの馬鹿のせいだが。
「え、あ、あの、頭を上げてください!」
「いえ、完全にあの馬鹿の責任ですから謝罪の言葉は言わせていただきます」
全く、無関係の人間巻き込みやがってウェントスめ……。
とりあえずこの場を収めないとな。
「……も、もう大丈夫です! ちゃんと謝っていただきましたし……。それに、帰れることは確実なんですよね?」
「それは保障します」
「……じゃあ、謝罪の話はこれで終わりにしませんか?」
「構わないのか? 望むならあの馬鹿を切り刻んでも良いんだが。包丁ならいくらでもある」
それにウェントスの一匹や二匹、居なくても替え玉は居るから困らないと思うが。
「さ、さすがにそれは良いです……。それよりも、これからの事を考えた方が良いかなって思うんですけど……」
「これから?」
何言ってるんだ? そんなのルインの俺の家で待っててもらって……。
「いえ、この世界で安全な場所は我々の傍くらいじゃないでしょうか?」
「ちょっと待て。マルタとか居るのに大丈夫か?」
主に精神面で。
悪影響が出るんじゃないか?
「仕方ないでしょう。会長はどこにでも現れますし」
「どこに置こうと悪影響を受けかねないって事か……」
(……この一人と一匹が言える事なのかなあ……?)
何故か微妙な表情をされてるが、まあ仕方ないな。
「帰れる日まで旅についてこないか?」
「え?」
テネブラエ、説明は任せる。
「あなたには町で待っていてもらおうと思ったのですが、残念ながらこの世界に安全な場所はあまり無いんですよ。なので、我々が護衛する形で同行していただきたいという事なのですが、どうでしょうか?」
「……帰れる時まで守ってくれるって事ですか?」
「そう言う事です。まあこんな姿であっても、戦力は山ほど保有していますから」
「それに……」
「それに?」
「お前は妙に異世界に縁がありそうな雰囲気がある。異世界慣れしておいても損は無いんじゃないか?」
「どんな縁ですかそれ……」
まあこんな世界なら異世界慣れする練習にもなるだろう。
「もちろん無理強いはしない。どうする?」
「仮に町で過ごす選択をした場合でも、ちゃんと守りますよ。その点は安心してください」
「……分かりました」
決断早いな。
(ウェントスの制裁は終わってないから)別にじっくり考えても良いんだが。
「……縁とかはよく分からないですけど、これも経験ですよね。旅についていっても、良いですか?」
「分かった。可能な限り全力で守らせてもらう。いいな、テネブラエ?」
「承知」
決まりだな。
とりあえずマルタの影響を受けないようにすれば大丈夫だろう。
っと、戻って来たか?
「エミル、ウェントスはとりあえずお仕置きしたよ」
「逃げ回ろうとするから時間かかっちゃった♪」
「…………」
マルタの右手にはウェントスらしき物体が握られている。
炭のように変色し、ばらばらになった体は海苔で無理やりくっつけたせいで今にも崩れ落ちそうになっている上に、センチュリオンのマークも適当にくっつけたせいで崩れきっているが、多分これはウェントスだな。
「同行することになった。とりあえずウェントスはこれからさらに制裁を加える」
「ここまで酷い事になってるのにまだやるんですか!? というか生きてるんですかこれ!?」
「無論だ。こんなことをしでかした罰は重い」
……さて、今後は俺の番だな。
覚悟しろよウェントス?
「……私、いきなり選択を間違えたかなあ……?」
一話使ってるのに何故か自己紹介すらしていないラタ一行。
そしてウェントスに明日は来るのか。