ラタが駆け抜ける物語   作:ルスト

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アスカード2

 side マルタ

 

 ウェントスを解放し、石舞台地下遺跡から外に出ると、暴風は止んでいて魔物も消えていた。

 ……終わったんだ、やっと。

 

「ぐぬぬ……薄情者! 私が呼んだのにすぐに帰ってしまうとは! 薄情者め! 風のセンチュリオンの招集に逆らって帰るとは!」

 

 ウェントスが虫かごのような牢獄の中から叫ぶけど、いくら叫んだところで魔物がアスカードにやってくる気配はない。

 ……アスカードのイベントもようやく終わったんだね。

 

「エミル、マルタ、ワンちゃん、春香。少しいいかな?」

「コレット、どうかしたか?」

 

 珍しく真剣な表情のコレットがこちらを見ていた。

 ……どうしたの?

 

「遺跡の中でも言ったけど、私、ロイドを探さなきゃ」

「そうですね。一刻も早く何とかしてあげなければいけません」

「そうだな」

 

 直後に天使化するコレット。

 どす黒い翼が展開され、背後に「バテンカイトス……バテンカイトス……」と呟く黒い背後霊が見えるけど気にしたら駄目だよね……。

 

「私、行かないと。ロイドを探しに。見つけ出さないと、ロイドを操っている元凶を」

「そうだな。見つけ出して、助けてやらないとな」

「うん。待っててね、ロイド。この包丁(劇毒で加工済み)で必ず……」

 

 どう考えてもロイドを刺し殺す気にしか見えないのは私だけなのかな……。

 というか劇毒を塗った包丁なんて殺人以外の何に使うんだろ……。

 

「(え、えっと……。どうしたんですか、これ……?)」

 

 横の春香がついていけないといった表情で声をかけてきた。

 大丈夫だよ、私もエミルやコレットの思考は理解できないから。

 

「(ああ……。時々シリアス展開っぽく演出するの。黙って見てて良いと思うよ)」

「(は、はあ……)」

 

 そう言えば春香は見たことないんだよね、これ……。

 まあ見たことなくて当たり前だけどさ。

 

「応援していますよコレットさん。貴方の思いが通じる事、願っています」

「ロイドの矯正、頑張れよ」

「そう言えば、エミルたちはこれからどこに向かうの? 私はロイドを探すけど」

「どうする?」

 

 エミルがこっちに話を振ってきた。

 ……とりあえずパルマコスタの方で良いんじゃない?

 春香に王朝跡とかパルマコスタを見て行ってもらうには丁度良いし。

 

「原作通りだ」

「そっか。じゃあ、またね。……ロイド、待っててね。エヘヘへへへへへへへへへへへ……!!!」

 

 黒い翼をはためかせ、空へと消えるコレット。

 とりあえずロイドの冥福は祈ろうかな……。

 

「……そのロイドって人がどんな人かは知らないですけど、大丈夫なんですか?」

「あのコレットに見つかったら死ぬんじゃないかな?」

 

 包丁を突き付けてお願いする行為を泣き落としとか言っちゃうコレットだし。

 

「さて、それじゃ旅の続きを」

 

 コレットと別れ、旅の続きに出発しよう。

 そう思った直後、太陽が沈んで月が顔を出した。

 見上げた空には満天の星空。

 ……え!? この世界に昼と夜なんて概念ないよ!?

 

「あ、あれ? さっきまで昼じゃなかったでしたっけ……?」

「そもそも夜の空なんてアルタミラとクエスト以外で見たことないよ!? どういう事なの!?」

「どういう事だこれは! まさかまたロイドか! リーガルか!?」

 

 さすがにそれは無いでしょ……。

 けど、どうしてかな?

 

「あ……。夜の六時を回ってる……」

「春香、それ何?」

 

 春香が取り出したのはテセアラでも見たことが無い折り畳み式の物体。

 横から見ると『18:42』なんて書いてあるけど……。

 

「えっと、事務所で渡される携帯なんですけど……」

「携帯?」

 

 聞いたこともない……のは当たり前だけど、どんな道具なの?

 

「えっと、どう言えばいいのかな……。電話――――えっと、これを持ってる人同士で通信出来たり、画像――――絵のやり取りが出来る、って言えばいいでしょうか?」

「……」

 

 ……えっと、よく分からないけど便利って事だよね!

 

「ああ、やっぱり理解できないんだな」

「ヒロインのくせに勉強不足ですよね」

「むしろ見たことすらないのに分かってる方がおかしいよ!? というかそんなこと言うけど」

「……まあ案の定電話は圏外だな。で、これが時間で、こっちがカメラで……」

「あ、あの。あんまり弄らないでください……」

「何で分かるの!? というか、勝手に触らない!」

 

 このエミルに常識が通じないのは知ってたけど、なんで分かるの……?

 

「ああすまん。主人公なら知ってて当然の知識だったが実物は見たこと無くてな」

「そんな知識必須のわけないでしょ……普通に考えて」

 

 その理屈で言うと、ファンタジアやデスティニーの知識がこの世界で必要だって事になるよ!

 

「何を言うんだ。そんなの当然だろ?」

「当然ですよね? 天地戦争の歴史の丸暗記とダオス戦役の詳細な流れはテイルズに出演をするなら必須事項ですよ?」

「滅茶苦茶だよ!」

 

 そもそも世界的に無関係だし!

 ファンタジアが仮に繋がってたとしても、何千年も先の話だよ!

 

「……ますますエミルが分からなくなったよ」

「えっと、エミルの言っていることは本当の事ですか?」

「むしろ知ってる方がおかしいから!」

 

 というか本当にどこで覚えたんだろ……。

 別の意味で気になるよ。

 

「……なんにせよ日が落ちては進めないな。仕方ない。宿に入るか」

「やむを得ないですね。全く、ロイドかリーガルさんか知りませんが余計な事を……」

「その二人が原因って決めつけないでよ! ……片方は本当にやりかねないけど」

 

 まあどっちにしたって日が落ちたら無理には進めないよね。

 ウェントス戦で散々疲労したし休んでおかないと駄目かな?

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

「……という事で宿に泊まろうとしたんだけど」

「見事に木端微塵だな」

「えっと……ここで一体何があったんですか?」

 

 アスカードで唯一使える宿があった場所には大きな穴が開いていて、そこにあるはずの宿が無かった。

 って、どうしてこんなことになってるの!?

 項垂れてる人が丁度そこに居るし、話を聞かないと!

 

「ああ……客だったのかい? 残念だけどここには泊まれないよ。フルースとかいう名前の剣士がいきなり襲いかかって来て、宿を木端微塵に破壊してしまったんだよ」

「ええ!? どうしてそんなことになったんですか!?」

 

 これじゃ泊まれないじゃない!

 

「それが……「年頃の若い男女が愛を営む可能性のある施設は全て破壊する! モテない男の怒り、思い知るがいいわああああああああ!!!!!!!!」という叫び声が聞こえた直後に宿ごと爆炎に吹き飛ばされたので……」

「……泊まってた人は居たんですか?」

「見事に炭と化してしまったよ……」

 

 宿の店主だった人の指差す先には、抱き合ったまま炭の塊と化した人だった物が転がっていた。

 ……治せるの、これ?

 

「一応生きてますので治せますね」

「はあ……滅茶苦茶だな。で、フルースはどこに行ったんだ?」

「リア充共は皆殺しにしなければならん! 俺がこの手で裁きを下すのだ! とか叫んで、ルイン方面に向かいました……」

 

 それなら出くわす心配はないかな……?

 けど、まさかフルースがそんな恐ろしいモンスターになってるなんて……。

 

「ルイン方面には帰れないな」

「さすがに出会うわけにはいかないよね……」

 

 フルースって確かモテない事をずっと引きずってて、エミルに激しい嫉妬の炎を燃やしたこともあったような……。

 それでも諦めきれないからか知らないけど、すぐ貢ぐんだよね……。

 

「え、えっと……今日の宿は大丈夫なんですか……?」

「あー……ごめん春香。パルマコスタまでの強行軍になっちゃうかも……。エミル、途中に宿なんて無かったよね?」

 

 というか、アスカードからパルマコスタまでかなり距離があるのに、宿の類が一切無いのって本当にどうなんだろう。

 かなり長い距離を移動することになるんだよね……。

 

「……マルタ、お前の目は節穴か?」

「え? だって本当に宿なんて無いよね!? なんでそんな目で見るの!?」

 

 どうしてそんな呆れたような目を向けられるの!?

 

「宿ならこの町にも道中の救いの小屋にもあるだろ」

「え!?」

 

 確かこの町に宿なんてもう無いよ!?

 怪しい建物はあったけど、入れそうで入れないオブジェしか無かったよね!?

 町の入り口にも『INN』とか書いた看板ぶら下げてたオブジェはあったけど、やっぱり入れなかったし!

 それに救いの小屋……って、何……?

 

「……」

「ちょっと待ってよ! 私嘘は言って無いはずだけど!? 本当にこの町に宿は一件しかないはずだし、それに、救いの小屋なんて……?」

 

 ……そういえば、時々外で見かけたあの建物は一体なんだったんだろ……。

 まるで今まで絶対に気付かないようにされてたかのように、全く印象に無かったけど、でもよく思い出したら道中に小屋がぽつんと建ってるのはどう考えても……。

 

「……それが救いの小屋だ。ついでに言うと、お前が言っている『町の入口にある入れないオブジェ』がこの町の宿その1だ」

「え!? まさか本当に宿あるの!? じゃ、じゃあどうして入れないの!? そこに宿があるのに入れないって明らかにおかしいよ!」

 

 というか、よく見たら町の入口のあのオブジェ、荷物を背負った人が普通に出入りしてる!

 どういうことなの本当に!?

 

「どういう事なんですか? これ……」

「……すまない春香。これもロイドって奴の仕業なんだ」

「ええ。休息施設をことごとく使用不可にして強行軍を強いるロイドの卑劣な作戦です。恐らくフルースを差し向けたのもロイドの仕業でしょう」

「日が落ちたところでタイミングよく宿を破壊し、他の宿の認識が出来ないマルタを使ってパルマコスタまで強行軍を強いらせる……。卑劣なロイドの考えそうなことだ」

「そこで出鱈目を吹き込むのは止めて! 後々ロイド仲間に加わるんだよ!?」

 

 ……仲間にならない方がもしかしたらロイドは幸せなのかもしれない、とか思ってしまうけど。

 

「まあ、マルタさまが宿の存在を認識できるようになったのでこの町の宿に泊まっても問題は無いでしょう。町の入口の宿で休んでから、パルマコスタに向けて出発しましょうか」

 

 なんだか釈然としない……。

 けどまあ、春香に無理させるわけにもいかないし、そこの宿に入れるなら強行軍も必要ないわけだし、今日はアスカードで休もう……。




シンフォニアでは実際にアスカードの中に宿が3つもあるのにラタでは1つしか使えなくなっており(今回壊された宿のみ)、入れません。
ついでにパルマコスタまでの道中とハコネシア峠への道の途中に救いの小屋がありますが、これもラタではマップに存在しておらず入れません。
そしてマルタはこれまでこれらの宿を背景としか認識できず一切利用できなかったため、この話の中の彼女は毎回ゲーム準拠でパルマコスタ~ルイン間を一気に走り抜けていることになります。
そう書くとマルタがものすごくタフな気がしてくる不思議。

……というか宿とハコネシア挟むからパルマコスタ到着遅くなりそう。
2~3話で片付くかなあ……?
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