ラタが駆け抜ける物語   作:ルスト

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大分出来てたのに最後にスランプが……。
お待たせしました。


ナタリア亭

 今まで気づかなかった……というか、入れなかった? 宿。

 どうして入れなかったんだろう……。

 

「ようこそおいでくださいました。『ナタリア亭』にようこそ」

「ナタリア亭……?」

 

 や、やっぱり聞き覚えがないや……。

 エミルは来たことあるの?

 

「……いや、宿があることは知っていたが、入ったことは無い」

「そ、そうなんだ……。えっと、二部屋お願いします」

「畏まりました。200ガルドになります」

 

 見た感じ、普通の宿だけど……。

 どうして今まで入れなかったんだろ。

 とりあえず200ガルド払おう。

 

「はい、確かに。こちらが鍵となります。お部屋まで案内致します」

 

 受付の人についていき、部屋まで向かう。

 途中でエミルとテネブラエは違う部屋に入り、私と春香は二人部屋に案内された。

 

 

 

 

 

「ごゆっくりどうぞ。食事は……どうされますか?」

「え?」

 

 部屋の中に私と春香が入り、荷物を置いたところで案内の女性が尋ねてきた。

 食事って……ここは食事出ないのかな?

 

「あの、ここは食事出ないんですか?」

 

 私もよく分からないし、とりあえず聞くだけ聞いておく。

 私の言葉に対する女性の返事は意外な物だった。

 

「出すことは出せますが……何せ、不評な物でして」

「「……え?」」

 

 私と春香の声が重なる。

 え? 不評ってどういう事なの!?

 

「はい。……ナタリア亭では『アーチェ・クライン』『ナタリア・L・K・ランバルディア』『フレン・シーフォ』の三人を中心とした『一流料理部隊』を編成し、お客様に料理を出していたのですが……」

「ですが?」

 

 あ、あれ……変だな……。

 名前を聞いただけで身体が震えだしてきちゃったよ……。

 い、今別に寒くないはずなんだけど……。

 

「料理を食べたお客様方の評価は『胃の奥が魔界になる』『死の世界が見えた』『料理を食べたと思ったら部屋で倒れていた』『料理を食べた仲間の魂が抜けていた』『ライフボトル50本使ってようやく蘇生に成功した』など、散々な物ばかりでして……」

「何でそんな人たちが料理してるの!? 作らせたら駄目な人ばかりじゃない!」

 

 なんとなく思い出したけど、それってアレだよね!?

 味見したって殺人料理しか出てこない人選だよね!?

 

「えっと……マルタ? も、もしかしてここの料理……」

「食べないよ! というか食べちゃ駄目! 自分で作った方がずっとましだよ!」

 

 そんな料理食べたら間違いなく死んじゃうよ!

 

「やはりそうですか……。では、そこにキッチンがあるのでご自由にお使いください。それではごゆっくり……」

 

 それだけ言って案内の女性は出て行ってしまった。

 ……命を失う事と天秤にかけたら考えるまでも無く自炊を選ぶけど、料理かあ……。

 

「……えっと、実はマルタの料理も殺人料理でした、ってオチじゃ……無いですよね?」

「……だ、大丈夫! ちゃんと味見するから! 食べた瞬間に気絶するような料理は作らない……はずだよ!」

 

 少なくとも自分で食べたら味は分かるし、エミルを即死させるような味の料理だって最終的には作らなくなってたもん!

 

「……私も、作りましょうか?」

「え?」

 

 春香も料理を……?

 私だけだと大変だし助かるけど……。

 

「いいの?」

「はい。それに、二人でやった方が早く作れますよね?」

 

 ……エミルやテネブラエだったら何か言いそうだけど……魔物と戦うわけじゃないから別に良いか!

 

「それもそうだね。じゃあ、手伝ってくれる?」

「任せてください!」

 

 春香と二人で料理を作ることに。

 それはそうと、食材はあったかな?

 …………大丈夫だね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ。アイドルって、具体的にどんなことをするの?」

「アイドルのする事、ですか?」

 

 何事も無く料理も完成したので、春香と二人で夕食を食べることに。

 ……そう言えばエミルとテネブラエはどうしてるんだろ?

 まあいいや。

 

「えっと……大勢の人の前で歌や踊りを披露するのが主な仕事です」

「歌や踊りをたくさんの人の前で披露するの? ……全然イメージできないや」

 

 そもそも、それじゃ魔物一匹倒せない……って、この世界の常識で考えちゃ駄目だよね。

 戦いなんて存在しないだろうし。

 

「私はまだそんな経験は無いですけど、バトルはありますよ」

「……え!?」

 

 歌や踊りを披露する仕事で戦い……?

 「クレアーーーー!!!!」とか「姉貴ィーーーー!!!!」って叫んで相手をノックアウトするのかな?

 それとも「くるくるまわれぇ~♪」って歌いながら音符を大量に出したり、「ワーオ!」って叫んで巨大な文字を……?

 

「えっと……そんな物騒な戦いはしないですよ? そもそも、それって、歌じゃないですし……」

「そうだよね…………」

 

 うーん……それだとますますイメージできないよ。

 どんな戦いなんだろう……。

 

「えっと……フェスって言うんですけど、他のアイドルと同時にライブを行って、どちらがより自分のステージを盛り上げられるかを競うバトルです」

「……」

 

 どちらがよりステージを盛り上げるかって言われてもまるでイメージできないよ……。

 えっと、その『ステージ』が、さっき言ってた『歌と踊りを披露する』物で合ってるのかな?

 

「はい。……って言っても、私は見たことがあるだけで、実際にやったことは無いんですけどね」

 

 互いの歌と踊りを披露する……。

 バラバラにやるならともかく、同時に行ってどちらがより自分のステージを盛り上げられるか勝負する、かあ……。

 ……どうやってどっちが勝つか判断するんだろ、それ。

 

「見たことは無いんですけど、スコア集計してくれる機械があってそれで決まるみたいです。まあ、そんな物無くても、トップアイドルの行うライブは相手のファンの人まで惹きつけてしまってどっちが勝ったのか一目瞭然になっちゃうみたいですけど」

「へえ~……」

 

 もはや異次元って感じだけど、世界って広いね……。

 実際に武器や魔術は使わず、歌や踊りで対決、かあ……。

 ……って、ん?

 

「えっと……それってバトルなんだよね?」

「え? はい、そうですけど……」

「自分の力を出し切るだけじゃどうにもならない相手に出会ったとしたら、対処法……みたいなものはあるの?」

 

 私達で言うアップルグミや術技みたいな物……は無いよね。さすがに。

 けど、今の春香の説明を聞いただけだと、フェスってただの実力勝負になるんじゃないかな?

 極論を言うとそれこそただ通常攻撃を繰り返すだけの戦いみたいな……。

 

「えっと……社長や小鳥さんは『思い出』『バースト』『バーストカウンター』とか色々変な単語を喋ってましたけど……詳しくは分からないです……」

「そういえば、春香はアイドルの候補生だったっけ」

 

 これからアイドル頑張る、っていう本当に大事な時に、ウェントスの馬鹿がこっちの世界に引きずり込んじゃったんだよね……。

 ホントとんでもない事やってくれたよねあのセンチュリオン。

 まさか全く知らない世界から人間を拉致するなんて……。

 

「……そのことについては気にしては……いますけど、でも、起きてしまったことは変えられないですし、それに、少しこの世界にも興味が湧いてきたっていうか……」

「ん? どんな事に?」

 

 やっぱり戦い?

 それとも魔物?

 

「色々、です。何もかもが私の居た世界と違うので……」

「確かにね」

 

 春香と話さなかったら「アイドル」なんて単語知ることも無かったし。

 エミルとテネブラエだったら勝手に言っててもおかしくは無いけど、あの二人と違って知らないことが多すぎる気がするよ。

 ……知ってたらおかしい事ばっかりのような気がするけど。

 

「……そう言えば、ウェントスさん相手に叩き込んでたアレって……」

「ん? 魔術の事?」

 

 そういや魔術って他の世界にはあるのかな?

 春香の世界ではどうなんだろ?

 

「魔術……ですか?」

「そうだよ。エルフの血の力でマナを操って強力な攻撃を放つ行動の事。普通ならね」

「普通なら?」

 

 髪を持ち上げ、額のレプリカコアを春香に見せる。

 私は人間だけど、これがあるからね。

 

「え!? 額に宝石が埋まってるんですか、これ……?」

「そうだよ。と言っても、これの本来の役目は果たしようがないけどね」

 

 私自身もこれが「偽物のコア」だって知ってるし、テネブラエが普通に「ラタトスク様」呼びしている時点でこのコアを使って隠れ蓑にする、なんてことは不可能だろうし。

 ……というかこれって「ラタトスクの騎士」の意味が無いような……。

 深く考えたら駄目かな?

 

「それって、外せるんですか?」

「一応外せることは外せるけど、外すつもりはないよ。無いとすごく困るし」

 

 フォトンとプリズムソードとキュアが使えなくなったら命にかかわるしね……。

 ……なんていうか、本物のコア(=エミル)より頼りになるような……。

 

「魔術、ですか……。エルフの血が必要ってことは、普通の人間には無理、ですよね?」

「それが常識だけど、この世界だったらどうだろう……。明日テネブラエに聞いてみる?」

 

 テネブラエなら大体知ってるだろうし。

 もしかしたら世界のルールすら変わってて人間が魔術を使えることもあったりして。

 

「世界のルールが変わってる……?」

「うん。主にエミルとテネブラエのせいでね」

 

 おかげでリーガルさんが物騒な兵器で武装してたりジーニアスが狂人になっててもう滅茶苦茶だよ。

 でも、その結果として春香と会ってるんだよね……。

 

「普段はこんな感じじゃない、って事ですか?」

「まあね。普段のエミルは今の……ラタトスクとは別人だし」

 

 どこに行ったのかなあ……エミル。

 エミルがいなくなって、完全にラタトスク一色になってしまってるんだよね。

 しかも普段のラタトスクならともかく、完全に頭のネジを外しちゃってるし。

 

「そうなんですか?」 

「うん。臆病なところはあるけど優しくて勇気もあって……」

 

 ……この周回が終わったらちゃんと会えるかな?

 元に戻ればいいんだけど。

 

「私も会ってみたいかも。……って言っても、多分会えないですよね」

「そうなんだよね……。エミルの気配自体がしないし……」

 

 ラタトスク一色! って言わんばかりの雰囲気が出てるというか、もしエミルが居たらラタトスクの中からでも突っ込んでくれそうな気がするのにそれが無いし……。

 

「って、話し込んでるうちに遅くなっちゃったかな? 少し眠くなっちゃった」

「ふあ……ほんとですね。いつの間にか時間が……」

 

 もう寝ないと明日に響くかな?

 まだ話はしたいけど……。

 

「夜更かしは良くないですし、話の続きは明日でも良いですよね?」

「……そうだね。お休み、春香」

 

 別に明日帰ってしまうわけじゃないし、明日以降に話せばいいよね。




……やりたかったこととはいえ、マルタと春香しか出さなかったらこうなるよね。
それが当然とはいえ普通の会話にしかなってねえ。
次話はラタ様とテネブラエ視点で書こう。
ネタはあるから、早く書きあがるといいなあ。
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