ラタが駆け抜ける物語   作:ルスト

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即座に書きあがった為、同日二話投稿しています。
前の話を見ていない方はそちらからどうぞ。


ナタリア亭の翌朝

 マルタside

 

「ん~……もう朝かな?」

 

 窓の外から入ってくる光が目に入り、意識が少しずつ覚醒する。

 ……えっと、確か昨日は……。

 

「すー……すー……」

「春香……?」

 

 ……ああ、そうだった。

 昨日春香と一緒にこの部屋に泊まって、色々話を聞いたんだよね。

 アイドルの事教えてもらったけど、全然違う世界の事だからすごく新鮮だったな。

 歌と踊りで戦う世界……。機会があったら見てみたいかも。

 

(……春香、ぐっすり寝てる……。まあ、無理も無いよね。いきなり知らない世界に放り込まれて疲れないって方があり得ないか)

 

 もし逆の立場だったらどうなるんだろう……。

 突然春香の住んでいる世界に放り込まれて、帰る方法も分からないまま、全く知らない世界にたった一人……。

 エミルもテネブラエも、ロイドたちも居ない、下手すると言葉も通じない世界で生きていかなきゃいけないんだよね……。

 

(……春香が無事に帰れるように、私だけでもちゃんとしないと!)

 

 残念だけどエミルもテネブラエも……と言うか下手するとロイド達も頼りに出来ないし……。

 少なくとも狂人と化したジーニアスや病んだコレット、物騒な兵器を持って暴れ回るリーガルさんはあてにしちゃ駄目だよね。

 というかリーガルさんは絶対に駄目。

 あの歩くテロリストを頼りにするくらいなら私が自分で春香を守る。

 

(……けど、まずは朝食だよね。春香を起こさないように注意しないと)

 

 多分起きたら手伝ってくれるだろうけど、起こす必要はないよね。

 精神的にすごく疲れてるだろうし、せめてゆっくり眠らせてあげたい。

 

(そうなると……何を作ればいいのかな? 春香の好きな食べ物とか分からないし……)

 

 昨日聞いておけばよかったなあ……私の馬鹿。

 聞いておいたら作れるかもしれなかったのに。

 

(仕方ないや。お刺身でも作っちゃおう。火を使ったり炒めるわけじゃないから……)

「ん、うーん……」

 

 ……って、もしかして起こしちゃった?

 別に音を立ててはいないはずだけど……。

 

「……朝、なの……? 遅れちゃうし、起きない、と……」

「は、春香! 朝食なら私が準備するからまだ寝てていいよ!」

「……伊織の声? ……そっか。私の家じゃないなら大丈……すー……すー……」

 

 ……私の声を聞いて安心したのか春香は寝ちゃったけど……。

 伊織って誰だろ……。

 その子と私の声、そんなに似てるのかな?

 ……とにかく、春香を起こさないように朝食だけ作ってしまわないと。

 お刺身と……デザートでいいかな?

 合わないかもしれないけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……料理も出来たし、春香を起こさないとね」

 

 テーブルの上にはお刺身とデザート。

 魔物用に何度も作っていただけあり、自然と作ることは出来た。

 ちゃんと味見もしたし……問題ないよね。春香を起こそう。

 

「春香。朝ごはん出来たからそろそろ起きて」

「ん……おはよう、伊織……伊織がご飯作ってくれたの……?」

 

 春香は起きたけど……なんだか寝ぼけてる?

 また私の事伊織って言ってるし。

 

「私は伊織じゃなくてマルタだよ」

「へ? ……!!」

 

 ……一瞬呆けたような表情をしたけど、すぐに「しまった!」と叫んでそうな表情を浮かべた春香。

 相当疲れてるんだよね、やっぱり……。

 

「ご、ごめんなさい! 私寝ぼけて変な事言っちゃったみたいで……!」

「へ!? い、良いよ別に! 気にしてないから!」

 

 伊織が誰なのか気になると言えば気になるけど。

 

「それよりも、朝ごはん作っておいたから食べよう、春香?」

「えっ、起こしてくれたら私も手伝ったのに……!」

「いいよ、気にしないで。ぐっすり寝てたから、起こしたくなかったんだ」

「うう~……気を遣わせてばっかりでごめんなさい……」

 

 うーん、気にしなくてもいいのに……。

 仕方ないけど、距離があるのはどうしようもないのかなあ?

 

「いただきます」

 

 ……お刺身とフルーツパフェ、春香の口に合えばいいんだけど。

 どうかな?

 

「あっ、これ、すごく美味しいです……!」

「そう? 春香の口に合ってよかった」

 

 ブラックソディも使ったかいがあったね。おかげですごく美味しくできたよ。

 フルーツパフェはどう?

 

「わあ~……すっごく美味しいです! お店で買う物と同じくらい美味しいかも♪」

「そ、それは言いすぎじゃないかな……」

 

 これくらいなら、ワンダーシェフのレシピと材料さえあったら作れると思うし……。

 

「!! そのレシピ、見せてもらっていいですか!?」

「へ!? うん、いいけど……」

 

 今までにないくらい強い剣幕で迫られた。

 って、よく考えたら春香文字読めないんじゃ……。

 

「何書いてるのか読めない事すっかり忘れてました……。うう……私の馬鹿」

「やっぱり……」

 

 言葉が通じても文字が読めないんだよね……。

 ……教えようか?

 

「へ? いいんですか?」

「もちろん」

 

 断る理由がないよ。

 春香と仲良くなりたいしね。

 

「ありがとうございます! えへへ、楽しみだな~……」

 

 春香ってこういうの(デザート)作るの好きなのかな?

 

 ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ!!!!

 

 ……って、足音?

 誰!? こんな朝早くから宿の中走り回ってるのは!?

 

「……えっと、今外から足音聞こえませんでした?」

「うん。はっきり聞こえたね。……こんな朝早くから宿の中走り回るなんて……」

 

 人の迷惑考えてよ!

 まだ寝てる人だっているかもしれないのに……。

 

 バタン!

 

「ま、マルタ! 頼む! 助けてくれ!」

「って、エミル!?」

 

 よりによってエミルが朝早くから宿の中を走り回ってたなんて……。

 何考えてるの全く!

 

「そんな事言ってる場合じゃねえ! 薬だけじゃ手が足りないんだ!」

「……何? 魔物かササキかリーガルさんでも襲撃してきたの?」

 

 というか、その辺の襲撃だったら魔物達の力で倒せるんじゃ……。

 

「違う! 夕食に手を出した連中が大変なことになってんだよ! アスカード中の薬をかき集めても足りねえ!」

「夕食って……まさか食べたの!?」

 

 あんな話を聞くだけでいかにも「危ない」って確信できるものに突撃するなんて……。

 ホント馬鹿なの!?

 

「仕方ねえだろ! 賞品がとんでもないアイテムだったんだ! それに……あんなとんでもない物が出てくると誰が考えるんだよ!」

「……というか、魔物は? ライラならレイズデッドが使えるでしょ? それに、ベルウィルリング達もヒールやハートレスサークルが……」

 

 私が出るまでも無いと思うんだけど……まさか!

 

「全滅したんだ……。テネブラエも、魔物も、あの物体に挑戦して、全員玉砕した……」

「…………」

 

 開いた口が塞がらない……。

 馬鹿だとは思ってたけど、まさか魔物まで巻き込んで自殺未遂をやらかすなんて……。

 というか、魔物全滅ってどうするのこれからの戦い!?

 

「だからこうしてお前に頭を下げてんじゃねえか! せめてライラ一匹でも復活してくれたら……」

「……えっと、一体何があったんですか?」

 

 置いてきぼりにするわけにもいかないよ。

 春香にも説明しないと……。

 

 

 

「……つまり、マルタが止めた「夕食」を食べた人や魔物がそんなにたくさんいるって事なんですか!?」

「ああ! 犠牲者は430以上出ている!」

「「430!?」」

 

 本当に何考えてるの!

 そんなに大量に犠牲者出してどうするの!?

 

「……はあ。とりあえず、やることはやらないとね」

 

 このエミルがこんなに慌ててるってことは相当大変な状態なんだろうし。

 ナタリア亭の夕食に手を出した時点でどう考えても自業自得だし見捨てたいけど、治癒術が使える以上見捨てるわけにもいかないよね……。

 

「エミル、案内して!」

「あ、ああ! こっちだ!」

「わ、私も行きます!」

 

 とにかく、現場を見ないと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっと…………何コレ?」

「み、皆死んでるんですか……?」

 

 エミルに連れてこられたのはナタリア亭の食堂。

 そこに踏み込んだ瞬間、私も春香も言葉を失った。

 人も、魔物も。

 皆平等に倒れ、生物としてあってはならない色に変貌している。

 その口からは赤や青などの不気味な色の泡が断続的に噴き出しており、その目は完全に真っ白になっている。

 ……どう考えても埋葬しないと駄目な気がする……。

 

「まだ生きているんだ! ……多分! 恐らく! きっと!」

「……とりあえず、出来る事だけはやってみるよ。…………レイズデッド!」

 

 蘇生の治癒術、レイズデッド。

 これで生き返らなかったら多分どうしようもない。

 エミルもライフボトルや状態異常回復アイテムを片っ端から死体に飲ませているみたいだけど……。

 

「……あんしwふぁおmどぇじscぽあ!!!!!!!!!!! ……ゴフッ」

「って、生き返った瞬間に死んだ!?」

 

 生き返った兵士は、直後に意味不明な言葉を叫んで死んでしまった。

 ……って、どういう事なのこれ!?

 

「分かったかマルタ? 生き返った直後に死んでしまうんだ……! これまでどれだけ蘇生させても駄目だった!」

「あぎゃばばばばばばばばばばばばばばばばばばば!!!!!!!!!!!!」

「くそっ! また駄目か!」

 

 叫びながら自分もライフボトルを兵士に飲ませたエミル。

 しかし、兵士は生き返った直後に奇声を上げて死んでしまう。

 ……これ、どうすればいいの?

 

「……わ、私はどうすればいいんですか……!?」

「春香……とりあえずこれを倒れてる連中にかけてくれ!」

 

 エミルは春香にライフボトルを渡した。

 ……けど、ライフボトルもレイズデッドも効かないんじゃ打つ手、無いよね……?

 

「は、はい! 分かりました!」

 

 春香まで働かせることになるなんて……。

 でも、こんな状況じゃ仕方ないかな……。

 というか、ここの人間はどうして誰も何もしないの!?

 

「……私たちは役割以外の仕事は行いません」

「……受け付けは受付だけです」

「私は配膳だけ……」

「そんな事言ってる場合なの!? 目の前の大惨事を他人ごとみたいに言わないでよ!」

 

 そんなことを言ってる間にもレイズデッドを放つ。

 ……が、やっぱり成功して生き返った瞬間に死んでしまう。

 この無限ループ、どうすればいいの……?

 

「……お、俺は悪くねえ……。こんなことになるなんて知らなかった! 俺は悪くねえ! 俺は悪くねえ!」

「ルーク……あんまり俺を……げ、幻滅……さ、させ……」

 

 本当にどうしよう、これ……。




案の定大惨事である。
しかも書いてるうちに想定より酷いことに……。
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