ルインの町を飛び出し、無事に湖底の洞窟にたどり着いたラタトスク様。
そこにはもちろん奴が居ました。
「グオオオオオオオオオ!!」
右腕に持っていた林檎を口に放り込み丸飲みし、直後に狂暴な顔つきでこちらを威嚇してきた獰猛な熊型モンスター、ルクレチアです。
「来たな。じゃあ、予定通りにやるか。プランBだ!」
「行き当たりばったりですね。分かります」
まあ、実際それでも問題ないでしょうけど。
ラタトスク様一人で圧勝できるでしょう。
「さて、それじゃテネブラエ。マルタが来そうになったら教えろ。それまでこのサンドバッグで剣の練習だ」
「了解しました」
マルタさまが来たら「エミル」を演じるおつもりでしょうか。
わざわざ目を緑色にしましたしね。
「……ってなわけで、お前は今すぐ俺にタコ殴りにされていろ!」
神剣エコートレイサーを鞘から抜き、ラタトスク様がルクレチア目がけて駆けます。
エコートレイサーは材料さえあったら量産可能なくせに神剣の名を賜るこの世で最強の剣ですし、ラタトスク様の戦闘力もグラズヘイムで底上げされてます。
我々はゆとりではありませんからね。半年も時間があったらその間に準備を整えるだけですよ。
「早速で悪いが、秘奥義(笑)すら上回る俺の奥義で一瞬にして終わらせてやる! 斬り! 斬り! 斬り! 斬り! 斬り! 蹴り! 斬り! 斬り……!」
「ギャアアアアアアアアアア!?(何でじゃあああああああああああ!?)」
やる気満々ですが動きの遅いルクレチアでは、ラタトスク様の初撃を防ぐことなどできません。
というか、そのまま無限コンボで嵌められてしまいました。
「斬り、斬り、斬り、斬り、斬り、蹴り、斬り、斬り……遅いな。おい、まだなのか?」
「いえ、そんなすぐに来ないかと」
というか、マルタさまはようやくルインを出発しましたし……。
「それまで蹴り続けか? ……暇だ」
「しかし、この後のためですよ」
エミル依存症のマルタさまと戯れたい、と言うならですけど。
「まあ、しょうがないか……」
「グオオオオオオオ……(早く、早くこの悪魔をなんとかして……。誰か助けて……)」
ルクレチアが涙目で助けを呼んでいますが、もちろん誰も来てくれません。
ラタトスク様の奥義はゲーム自体を沈める秘奥義を持つ伝説の格闘家の物と同様、ある意味それ以上の性能ですからね。
通常攻撃という名前の秘奥義を連発すると言う凶悪無比な攻撃ですし、使用するだけでTPも回復していくと言う驚異の性能を誇ります。
あまりに強すぎて他の攻撃を使用する理由が見つからない技ですしね。……っと、そろそろですよ。
「マルタか? よし、準備するか。――――うおおおおおっ!」
ラタトスク様が気合を入れた直後、その身体から爆発的にマナが吹き出し、ルクレチアを弾き飛ばしました。
この半年間の修業の成果で、ラタトスク様もヴァンガードのモンスター同様にオーバーリミッツが使えるようになっているのです。
「グ……グオオオオオオ……!(や、やっと暴力から解放された! さっさと逃げ……)」
「あ、逃げないでくださいよ」
手持ちのジャスコニアスを16体出現させて逃げ道を塞ぎます。
ルクレチアよりも大きいその身体が逃亡障害になってルクレチアの逃げ道を封鎖しました。
……ルクレチアが小さいモンスターなら下を潜って逃げられたんでしょうけど。
「グ、グアアアア!」
そして、逃亡経路を絶たれた哀れなルクレチアが、ラタトスク様の方に向き直って必死に威嚇します。
その身体は既に傷だらけで、本来なら既に数万回倒されているであろう深手でした。
「うわああああー」
そして、超がつくほどの棒読み演技を始めたラタトスク様。
自分から地面に倒れ込み、緑エミルの真似事を始めました。
傷だらけのルクレチアが必死に威嚇し、無傷のラタトスク様が尻餅をついたように見える光景は、傍から見てると凄く滑稽に見えてきます。
「このままじゃ殺されちゃうー。お……僕、やだよー」
最強の神剣エコートレイサー片手に、無傷のラタトスク様が、全身傷だらけで今にも倒れそうなルクレチア相手にそんな事を言っても説得力は一切ありません。
それに、緊迫感が明らかに足りていませんよねえ。
「危な……く無いよね!? 明らかにエミルが圧倒してそうな光景なんだけど私の気のせいなの!?」
まあ、マルタさまの目にもそう見えますよねえ。
というか、下手に天翔舞を叩き込んだら多分ルクレチア倒れます。
「ああ、丁度いいところに! お……僕、凄く怖かったんだ……。助け」
「……る必要無さそうな気がするんだけど!? どう見ても相手の魔物瀕死だよ!? それにエミル無傷だよね!? というか、何なの周囲のジャスコニアスは!?」
置物ですよ?
ラタトスク様がどこかから買ってきたスペクタクルズで覗いたら物理攻撃力が軽く9000を超えてましたけど。
もちろん16体全部。
「それ置物じゃないよね!? というか、何で一度に16体も出してるの!? ルクレチア一匹相手に16体のジャスコニアスって明らかに超過剰戦力だよ!」
そんなことないですよね?
エミル一人じゃ勝てませんし。
「そ、そうだよー。僕一人じゃ……」
「それに、そもそもこれエミルじゃなくてラタトスクの方だよね!? どう見ても棒読み演技だし!」
(……おい、テネブラエ。予定と違うぞ、どういう事だ?)
ラタトスク様からテレパシーが飛んできました。
……そう言われても、マルタさまがそこまで単純じゃなかったとしか……。
「というかテネブラエ! ガーネットで作った本物そっくりの偽物のコアってどういう事!? 全然光らないし、助けを願っても何も起きないじゃない! 騙すなんて酷いよ!」
「はて、何の事ですか?」
そもそも、偽物のコアなら最初から額についてるでしょうに。
前の周回で取り忘れてましたし。
「あの後、宿で鏡を見て心臓が止まりそうになったんだから! え!? 何で既にくっついてるの!? って本当にびっくりしたんだよ!?」
「グ、グオオ……!(い、今のうちに逃げ……)」
マルタさまがこっちに気を取られてる隙にルクレチアがまた逃げようとしてますね。
「まあ、何処に向かおうと16体のジャスコニアスに必ず回り込まれますが」
「やめてあげてよ! どう考えても虐めにしか見えないからこれ!」
マルタさまは何を言っているのでしょうね。
ジャスコニアスは愛嬌のある外見ですよ?
沢山のジャスコニアスに囲まれて幸せじゃないですか?
「そんなわけないでしょ!? 凄く狂暴そうな外見の巨大魚16体に囲まれて幸せそうに見える方がおかしいよ! 3体でも怖いのに!」
「……ああ、全く。思いついた計画が台無しじゃねえか。しっかりやれルクレチア。マルタに見破られたのは全部お前のせいだぞ」
「ラタトスクもラタトスクで何言ってるの!? そもそもパルマコスタの時点でおかしかったよ色々と! 何で宇宙に行ったはずのクラトスさんが居るの!? とか、実際に助けに来てどうするの!? とか!」
今更何を言っているんでしょうねえこの人は。
いつもと同じじゃないですか。
「全然違うよ! 明らかに違ってるから! クラトスさんがパルマコスタの町中で妙な機械片手に走り回ってたり、本来コアから再生するはずのラタトスクが最初からエミルの姿で私の前に出てきてたり、ルインに入ったらリヒターがライフボトルを買い占めてた時点で明らかに異常だからね!?」
「それが普通だ。そうだよな、ルクレチア?」
「グア!?(何でこっちに振るの!?)」
「ラt……エミル! 明らかに聞く対象おかしいから!? 敵に聞いてどうするの!?」
動揺するルクレチア。
空気くらい読んでください。
「この空気を察しろって方が無理じゃないかな!?」
「……まあ、マルタで遊ぶ目論見が外れた以上、もうお前には用は無い。――――消えろ!」
マルタさまで遊ぶ計画が潰れてしまい、用済みになったルクレチアに対し、ラタトスク様が両目の紋章から極太の赤いレーザー光線を放って攻撃し、ルクレチアを爆砕しました。
ラタトスクレーザーとでも名付けましょうか。
「はい終了。 失敗したし、次行くか次」
「ですね。何とも言えない結末でしたが」
目論見は外れたわけですしねえ。
「ちょっと待って! なんなの今の攻撃! あんなのラタトスクに無かったよ!?」
しかし、先を急ごうとしたらマルタさまがこんなことを言ってきました。
……全く、私達は急いでいるというのに……。
「空気くらい読め。俺がせっかくエミルの真似をしたのに、あっさり見破った挙句に普通の対応しやがって……」
「それは別に私悪くないよね!? そもそもおかしいのはエミルの側だよ!」
ああもう。時間が無い時に限って……。
さっさと私達は洞窟の奥にですね……。
「その前にルインに戻ってよ!? というか、どうせ二人の事だから奥に罠とかいっぱい仕掛けてるだろうから、急がなくたって大丈夫でしょ!?」
「何を言っているのか分からないな(ルーメンの周囲にセレスティアのノームの鉱山でベルトコンベアから発掘した宝箱をたくさん置いたんだが何故ばれた?)」
「ですよねえ?(ルーメンの代わりにトパーズで作った偽物のコア……ルーメソ置きましたけど)」
「絶対二人とも何かしたよね!? そもそも、展開が明らかにおかしいし!」
変なところで勘が働くと言うか、心を読んでくるのが面倒ですよねえ。
このマルタさま。
「まあいい。放っておいて進めば……」
「駄目だってば! ……って、私引きずったまま強引に進まないでよ~!?」
「強行突破するだけだ」
マルタさまを半分スルーして強引に洞窟の中に進みます。
さあ、いよいよ冒険の始まりですね!
「最初から滅茶苦茶なんだけど!?」
多分この話を読む人はテイルズ知っている人ばかりで不要だとは思うけど、用語の解説でもどうぞ。
無駄に力が入ってる気がしなくもないけど、こういうのやってみたかったり。
エミルとラタトスク…二重人格になってる主人公。緑目の方がシナリオでのメイン主人公扱いで、赤目の方(ラタ様)は最後に封印されて永久退場する。
そんなラタ様を主人公にした妙な自称コメディーがこれ。
ラタトスク…上記の赤い目の方。攻撃的で乱暴な口調が特徴。ただ、根は良い人。
色々疲れ果てて自重と一緒にテンションが壊れたようです。主人公として終始立ち回る人。
エミル…主人公なのにまさかの不在という緑目。普通のラタトスクは彼の成長物語です。
マルタ…エミルにベタベタのヒロイン。だった。
ご覧のありさまだよ!超絶な恋愛脳や萌え系台詞は犠牲となったのだ。恋愛タグの消滅も納得。
テネブラエ…あんまり変わってない気がしなくもない。
陰険と犬をかけて陰犬と呼ばれる。ラタトスクの忠実なしもべポジションのセンチュリオン。
斬り×5+蹴り…エコートレイサーを装備(というか、エコートレイサーに付属しているアクセルのスキルが必要)すると使えるエミルの秘奥義。秘奥義であるにも関わらず消費TP無し、単体の敵を完封できる、特技や奥義に連携することができる、とまさに最強の技。その実態は通常攻撃6発。
エコートレイサー…クリティカル2、アクセル、光属性の付いたラタトスク最強の神剣。ラタの仕様とクリティカル2の効果で10%強制仰け反りを付与できます。アクセルの効果で最強の秘奥義が使えます。と至れり尽くせり。しかも合成で作れる武器なので量産可能。最強武器は量産できるのだ。
光属性は本来他の武器と比べて足かせになるはずだが、とある理由でこの武器だけのハンデでは無くなる。故に結局最強。
ルクレチア…イベントなのでマルタが来るまで無敵で不死身の哀れな熊。動きも遅く技も無いのでただのサンドバッグである。
オーバーリミッツ…野生化した人間モンスターのみが扱える驚異の技。ダメージ減少+仰け反り無効+防御しないことで敵AI強化。
ゲームではエミルどころかラタの味方は誰一人使えない。今作のラタ様は世界観ぶっ壊して人間止めてるので使える。
ジャスコニアス…ラタ原産の巨大魚。固有種で他作の使いまわしではない。凶悪性能の通常攻撃とヴァラースチャージで数多の巨大モンスターをバラバラにしてきたラタトスク界のバルバトス(物理最強的な意味で)と言って良いであろうモンスター。
物理攻撃特化で育て、物理攻撃9999のこいつに教書「一撃必殺」を使ってスキル習得+装備後、フェラルシャドウを二つ装備させたらこの書き込みの意味が分かる。ラタトスクの超馬鹿AIすら自身の攻撃性能の強化に用いている恐ろしいモンスター。
モンスターの性能的にはヒプノタイズより圧倒的に強い。実用性では前衛モンスター第一位だと個人的には思う。小さい敵に手が出せないのが唯一にして最大の欠点。
セレスティアの鉱山の宝箱…何度も開けるとフェイクが流れてくる。このフェイクはエターニア最強の雑魚である。