ラタが駆け抜ける物語   作:ルスト

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ルーメンの間にて

「オタ! オタオタオタオタオタオタオタオタオタオタ! オタ!」

「ウボァー!」

「ああ、ロイドが! というか何なのこのオタオタ!? こんな化け物見たことないよ!」

 

 ルーメンの間に突入した我々の目に飛び込んできたのは、不気味なオーラを身に纏った身体に七つの傷を持つオタオタがロイドを一方的に攻撃している光景でした。

 身体に七つの傷を持つオタオタのその目は赤く染まり、不気味な光を放ちながら時折レーザーを放ちます。

 

(アレなの。なんでも、毎周必ず村人とラスボスのサンドバッグにされているうちに殺意に目覚めたって話なの)

「自重を壊したからこうなった、って事でしょうね」

「(緑エミルとリヒターが)悪い事をしたな……」

 

 どう見ても本来洞窟入り口でリヒターと一緒に戦って味方モンスターのTPを減らすだけの面倒なチュートリアルでサンドバッグにするオタオタです。

 本当にありがとうございました。

 

(さあ、貴様の罪を数えるがいい。そして我が拳によって裁かれ冥府へ行くがよい)

「オタオタの何処に手があるの……?」

「俺……何も……してねえよ…………」

 

 オタオタの背後に顔だけオタオタにすり替えた全身に傷を刻まれた男の幻影が現れ、指を鳴らしながらロイドを見下ろします。

 ロイドはどう考えても無実のような気もしますが、ここは冤罪を押し付けて裁きを与えましょう。

 

「そいつはな、パルマコスタで何万人もの人間を殺してきたんだ。他にも、ディザイアンとかいう組織の面々を何百人単位で手にかけ、そのくせ平然としてたぞ?」

「待って! ディザイアンはそうかもしれないけど、パルマコスタは明らかに冤罪だよ!?」

 

 マルタさまが居る以上、通用しないかもしれませんけど。

 

(ほう……貴様は、いつも我を叩き潰してきた自称勇者ではないか。だが、今日の我はいつものようにはいかんぞ?)

「って、何でこっちに矛先が向くんだよ……」

(毎回ラスボスと一緒にボコボコにしていくからなの……)

 

 ご尤も。まあ、ゲームなので仕方ないのですが。

 オタオタなどガキでも遊びで狩れるとか、リヒターもあんまりですよ。

 

「全くだ。この程度の魔物、ガキでも遊びで狩れる、とか言って何度も何度も……」

(貴様を見ると、我のこの身体に刻み付けられた七つの傷が疼く……。貴様らを血祭りに上げろと何者かが我の頭の中で叫ぶのだ……さあ、死ぬがよい!)

「ホントになんなのこのオタオタ!? どう考えてもオタオタじゃないよ、この威圧感と邪悪なオーラは!」

 

 オタオタの背後の男の幻影が拳を構え、オタオタの目が怪しく光ります。

 どう考えてもこれは倒さないといけませんね。

 放っておいたらラタトスク様や私の方に被害が出ますし。

 

「仕方ないな。まあ、明らかに常識はずれの強さのインプも居る以上、マルタやロイドに身代わりさせれば何とかなるだろ」

(そこの赤い人、さっさと起きるの。そしてこのオタオタの攻撃からラフゥ(注:このインプ)達を守る壁になるの)

「戦闘不能になってるのに叩き起こして壁にするのはやめて! その内本当に死んじゃって帰ってこれなくなっちゃうから!」

 

 ほーら、美味しいライフボトルですよー。

 さっさと立ち上がって私達を守る壁になってくださいねー。

 

「話聞いてよ!?」

 

 誰も真面目な話は聞きたくないのでスルーです。

 

「酷い!?」

「……また戦えってのかよ!? というか、さっきから全身滅茶苦茶痛いんだけど……」

(優しいラフゥとテネちゃんが回復してやるからさっさと特攻して死んでこいなの。ヒール)

 

 ほら、回復しましたよ?

 さあ、ラタトスク様。

 

「ナイスだ二匹とも。よし、ロイド。俺の身代わりになれ」

「って、おい!? 文字通り身代わりにする気かよ!? ってか、放せエミル!」

 

 ラタトスク様がロイドを盾として左腕に装備しました。

 これで一撃食らっても大丈夫ですよ。

 

(そのような物で我の一撃が止められるかどうか……存分に試してくれよう!)

「来い、化け物! 主人公で勇者の俺が成敗してくれる!」

「主人公も勇者もそんな最低な作戦取らないよ!? というか、どう考えてもエミルもテネブラエも極悪非道な悪役だよね!?」

「本気で洒落にならないから離sうわあああああああああああああああああああああ!?」

 

 マルタさまが何か言っていますが、ラタトスク様はそんなの知らぬとロイドを装備したままエコートレイサーを引き抜き、オタオタ目がけて走り出しました。

 

「ほ、本当に不味いよ! 援護してオタオタの攻撃を阻止しないと、ロイド本当にエミルの盾にされて殺されるよね!?」

(マルちゃん、せいぜい第二の壁として頑張るの)

「後は任せましたよ。我々はのんびり後方で食事をしておきます」

「ちゃんと戦ってよ! アレを放置して見物しようとしないで!」

 

 我々にはロイドなんて二軍はどうでもいいですしねえ。

 

(育たないキャラは二軍行きと相場が決まってるの。ロイドがここでやられるのも二軍だから仕方ないの)

「戦闘にも使えず薬箱にも使えない役立たずに用はありません。超級の強さと装備変更権利を持って出直してきなさい、ってことで不要です」

「必要だから!? 料理の熟練度の都合上二軍必要だからね!? かなり厳しい条件の料理とかあるんだよ!?」

 

 そういう面倒なことは一々覚えていませんし、必要なら薬草で何とかしますよ。

 そのためのマルタさまですし。

 

「自分でやるならともかく、そこで私に押し付けるってどうなの!?」

「万能道具箱なんですし、当然でしょう?」

 

 こんなヒロインでも、盗める、回復できる、スペル・エンハンス使える、無限フォトン使える、レイズデッド出来る、秘奥義が全体攻撃+回復、と器用ですからねえ。

 本当に万能な道具箱です。

 

「道具箱って何!? 私人扱いされてないの!?」

「え? 道具箱でしょう? 薬箱(注:リフィル)の上位互換ですよ?」

「本当に扱いが酷すぎるよね!?」

 

 だってマルタさまですし。

 というか、そんなこと言ってる余裕ありましたっけ?

 

 

 

 

 

「あっ……」

 

 しまったとばかりに振り向いたマルタさまですが、遅かったようです。

 

(殺撃の拳を食らうがよい! オタタタタタタタタタタタタタタタ……)

「ちっ、ロイドガード!」

「ぎょええええええええええええええええええええええええええええええ!!??」

 

 神速の尻尾捌きで百烈突きを繰り出してきたオタオタの前にラタトスク様が左腕に装備したロイドを出し、文字通り盾にしました。

 ロイドの腹部にオタオタの百烈突きが突き刺さり、一瞬で戦闘不能になったロイドの身体には更なるダメージが刻まれていきます。

 

 

(マルちゃんがサボってる間にロイドが落ちたの)

「どう考えても私の責任じゃないよこれ!?」

 

 そうやって遊んでるから、二軍が処刑されたわけです。

 ああ可哀想に。

 

「思ってないよね!? 可哀想とか全く思ってないよね!?」

(可哀想なのー。またロイドが死んじゃったのー)

「ああ……ボロ雑巾みたいになってるな。貴様、なんてことをしてくれたんだー」

 

 ラタトスク様も左腕に着けているロイドを見て口を開きましたが、どう考えても悲しんでいますよね。

 

「そこのインプもエミルもテネブラエも、どこをどう見たら可哀想とか思ってるように見えるの!? 私には全くそう見えないよ!」

「ええい! いつまでも遊んでないで戦えマルタ! ロイドガードは使い捨てなんだぞ!?」

「遊んでないってば! って言うか、そんな酷い物使おうとしないでよ!」

 

 酷くないですよね?

 二軍の有効活用だと言ってください。

 

「それは有効活用でもなんでもないよ!」

「有効活用だ! たった一回で使い物にならなくなったが、こんな脆い盾でも使えただけ価値がある! リバースドールの代わりになったんだぞ!?」

「身代わり(物理)なんてやったからね!」

(雑談しながらとは余裕だな!? 我の力はこんな物ではないぞ! セイントバブル!)

「なんでオタオタがセイントバブルを使えるの!?」

 

 まあ、目の前で雑談しながら戦ってれば当然怒るでしょうねえ。

 殺意むき出しの一撃をロイドガードした辺り、ラタトスク様とはそこそこまともな戦いをしてたみたいですけど、我々最初から見てなかったですし。

 もちろん、セイントバブルなど誰も当たりません。

 

 

 

 

 

「……お前らも手伝え。片付ける」

(了解なのー。サンダーブレード、サンダーブレード、サンダーブレード)

「ベルウィルリング達に任せるとしましょうか」

 

 もちろん、サンダーブレードの乱射で。

 合計20本のサンダーブレードがオタオタを串刺しにしました。

 

(ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!)

「終わりだ! 正義の一撃を食らって冥界に帰るがいい! アイン・ソフ・アウル!」

 

 怯んだオタオタにラタトスク様が光の塊を叩きつけ、オタオタは火柱の中に消えました。

 殺意があっても雷に弱い辺り、所詮オタオタはオタオタですよn

 

 

 

(まだだぁぁぁっ! 我は負けぬ!)

 

 おや、光の中から飛び出してきましたね。まだ動くんですか?

 さっさと倒れていいんですよ?

 

「俺に殺されるために立ち上がって来たか。良いだろう、何度でも撃ちこんで……」

「させぬ! これを使うのだオタオタよ! 一軍どもを墓場に送れ!」

 

 ラタトスク様が再び攻撃しようとしたとき、誰かがオタオタ目がけてアイテムを投げつけました。

 そのアイテムが吸い込まれるようにオタオタの口に入りましたが、一体何なんでしょうか。

 声のした方を見ると、天井に張り付いた段ボールから妙な仮面を被った青い長髪の男が顔を出しているのが確認できます。

 ……何がしたいんでしょう?

 

「……何この変な人!? というか、何で天井に段ボールが!?」

「フハハハハ……最後に笑うのはこの私だ! 必ず一軍の椅子を手に入れてみせよう! お前たちを血祭りに上げたうえでな!」

「お前……前の周回でも裏切ったのに、とうとう最初から敵になったのか……」

 

 呆れているラタトスク様は、この変人の正体に心当たりがあるようですね。

 私には思い当たりません。

 何分、二軍の知識などどうでも良い物で。

 

「フッ……そうやって余裕を見せていられるのも今のうちだけだ! いずれ必ず、貴様らはこの私を一軍に入れざるを得ないのだ。その時を楽しみにしているがいい……」

 

 驚くマルタさまや呆れるラタトスク様を尻目に、段ボールが洞窟の天井の中へと消えていきます。

 そして――――

 

「オタオタオタオタオタオタオタオタ……」

「きょ、巨大化した……っ!」

 

 先ほどまで戦っていたオタオタは、ポシディオンよりも更に巨大化してしまいました。

 顔だけオタオタに差し替えた幻覚は消えたようですが……また面倒なことになりそうですねえ。




オタオタ…チュートリアル戦闘で必ず戦わさせられる相手。
チュートリアルなんか放置すれば進むと思う方もいるかもしれないが、ラタのチュートリアルは「ちゃんと動かして実行しないと説明が無限ループする」恐ろしい仕様である。
オタオタ相手に真面目に攻撃や防御をする練習を行い、実際に実行する。ヴォーテックスに魔神剣を撃つ。これは両方必須事項なのだ。

ディザイアン…シンフォニアではハーフエルフのみで作られたクルシスの下位組織でエクスフィアを作り、ハーフエルフ差別撤廃のために全人類を無機生命体化させる計画と衰退世界の神子、マーテル教会信仰作戦を実行している組織。
なのだが、ラタでは既に崩壊させられてるのでちょっとした説明しか出ません。

ラフゥ…実際に悪魔の候補にある名前。ちなみに悪魔には「ゲーティア」「グリモア」なんて名前まである。おいおい。
インプの口調や設定的な中身的になんとなくこれになった感あり。

リフィル…Sキャラの中ではまだましな人。詠唱が遅い上に威力も低く、攻撃面は使い物にならないが、シャープネス、バリアーでの支援と回復系にはレベルと能力は関係ない。
そして、ハートレスサークルで戦闘終了後に一軍のHPを回復させる仕事はリフィルの低能力でも問題なく行える(毎試合ハートレスサークルを使ってるとさすがにTPが切れるが)。ちなみに、アリスと彼女だけがリザレクションを使えます。

セイントバブル…タイダルウェイブがあるのに何故か出てきたアビスの魔術。発生は遅いが、何処にでも出せるのでタイダルウェイブのように敵の位置に気を付ける必要はない。また、威力はこちらの方が上。
グリモアが無いため、習得できるのは限られたモンスターだけであり、貴重。アクアエッジとこれは固有魔術になる。
ちなみに詠唱無しで放つフォースバブルという技もある、のだが、あまりに重大な欠陥があるのでまるで使い物にならない。

サンダーブレード…Sの性能をそのまま使った魔術。アビス使いまわしのラタトスクにしては珍しいシンフォニア基準(斜め上では無く、真上から降ってくる)。
ちなみに、モンスターは習得に制限が無い。

アイン・ソフ・アウル…隠し(笑)秘奥義。威力は上級魔術並みの6なのに、消費TPが100も必要。
光属性の魔物を手持ちに232体加えると威力が最大まで上がるらしいが、やる人はいるのか?
ラスボスに使うとエターナル・リカーランス!されてカウンター。おまけに終盤(しかも実質ルーメン技と交代)で永久封印。とことん使えない。

段ボール入りの仮面男…一軍入りのためにエミル含む一軍を抹殺しようとする恐ろしい敵。エミルは正体に気づいたようだが一体誰なのか。
その目にあるのは一軍の椅子への執着のみである。蹴落とされる筆頭候補だし仕方ないね。
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