段ボールに入った妙な男の手により、突如巨大化したオタオタ。
ルーメンの間の半分近くを占めるその巨体に驚く我々を見て好機と思ったのか、先制攻撃を仕掛けてきました。
「オタオター!!」
雄たけびらしき声を上げ、飛び上がります。
そして、地面に勢いよく着地しました!
「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
「きゃあああああああああああああ!?」
ただ飛び跳ねて落ちて来ただけ。
それだけで衝撃波が発生し、ラタトスク様とマルタさまは足を取られて動けなくなります。
湖底の洞窟全体に轟音が響き、遠くの方ではガラガラと何かが崩れ落ちるような音も聞こえてきました。
(長引いたらあのジャンプだけで洞窟全体が崩れそうなの)
「みたいですねえ。おまけに……」
ラタトスク様やマルタさまは……
「じ、地震攻撃かよ……! 揺れが酷くて動けねえ……」
「か、壁に寄らないと立ってられないよ!」
「…………」
白目をむいてピクリとも動かないラタトスク様の盾はともかく、ラタトスク様が前衛に立てないのは辛いですねえ。
ここは飛行できる魔物の出番でしょうか。
(なの。テネちゃんの切り札を呼んで戦うのが一番なの。ラフゥももちろん戦うの)
「これが相手ではやむを得ないですね」
と、そんな会話をしている間に、ギガオタが動き出しました。
ラタトスク様とマルタさまを狙ったようです。
「オタオタオタ!」
「げっ!?」
「こっちに来た!?」
そう言えば、ロイドガードは破損してしまったような気がしますが、どうするんでしょうか。
「……仕方ない! こうなったらマルタを盾にする!」
「ええ!?」
マルタさまを前面に押し出して壁にしようとするラタトスク様。
剣が光り出した辺り、その間にアイン・ソフ・アウルの充電でもするみたいですね。
「こういう時は普通エミルが盾になるよね!? というか、女の子壁にする主人公って明らかにおかしいよね!」
「人を盾にするんじゃねえ!」
「明らかにエミルが言える言葉じゃないよそれ!」
マルタさまもそんなやり取りをしながらプリズムソードの詠唱をしようとしている辺り、どっちも相手を壁にして時間を稼ごうと考えているみたいですが……。
「何言ってやがる! 仲間を犠牲にして時間を稼いで主人公が怒りの必殺技で締めるのは定番だろ!」
「そうだとしてもそれってヒロインを盾にはしないよね!? ヒロインを身代わりにする主人公なんて明らかに滅茶苦茶だよ!」
「ライフボトルあったら復活できるだろうが! いい加減にしろ!」
「その台詞そっくりそのまま返すよ!」
互いに相手を盾にしようとしているらしく、迫ってくるオタオタが見えていません。
……まあ、こちらで何とかしますか。
「セイレーン、出番ですよ」
セイレーンを呼び出し、戦ってもらいます。
サブマージで眠らせてそのまま魔術でオタオタを料理しちゃってください。
(~~~~~~♪)
「オター!」
あ、もうラタトスク様とマルタさまの目の前に来たみたいですし、間に合いませんね。
まあ、何かあってもライフボトル使えばいいでしょう。
「ちっ! もう目の前に! マルタ! さっさと身代わりになるんだ! お前が犠牲になって時間を稼げば、怒りの秘奥義で俺が仕留める!」
「嫌だってば! そこで「俺が守るからお前は下がってろ」とか言うならともかく、ヒロイン盾にして時間稼ぐってそれもう主人公じゃないよね!? ただの外道だよ!」
「主人公に決まってるだろうが! 俺が主人公だと言ったら、それは主人公になるんだよ!」
「そんな主人公、他の人が認めても私は絶対認めないよ!」
言い合いをしながらも一応詠唱を終えたらしいマルタさまがプリズムソードで足止めを図ります。
どうやって雑談しながら詠唱するんでしょうね。
ラタトスク様もアイン・ソフ・アウルを使う準備終わってますし。
(戦闘七不思議の一つなの)
「とか言いながらちゃんと詠唱している時点で人の事言えませんよね」
全く、妙な話です。
それはそうと、そろそろ効果が出るはずですけど……。
「アイン・ソフ・アウル!」
「オタ!? オ…………タ……」
プリズムソードで怯み、アイン・ソフ・アウルで吹き飛んだところでようやくサブマージが発動したらしく、倒れたオタオタが即起き上がって回転しながら寝ています。
さあ、サンドバッグにしましょうか。
(~~~~♪)
「力が強まる……よくやったテネブラエ!」
「さて、強化されたデリリアスとトランカータに襲わせますか。――――行きなさい!」
ラタトスク様が盾を投げ捨て、突撃します。こちらもやりますか。
グロリアスアンセムでパワーアップした状態からの四方ナイトメアラッシュで文字通り地獄を見せてください。
「本当に盾にされるかと思ったよ……」
「…………俺、い、生きてるよな…………? ああ、母さん……今その川を渡って会いに……」
「それ三途の川だから渡っちゃ駄目! 今すぐレイズデッドかけるから戻ってきてロイド!」
まだ生きていましたか。ああしぶとい。
まあ、戦闘は放っておいても勝てるでしょう。
攻撃と防御を大幅強化されたデリリアスとトランカータ、そしてラタトスク様。
ついでにラフゥも魔術で援護するみたいですし、私はのんびりお茶にしましょうか。
何かあっても即座にセイレーンのサブマージが飛びますからね。
「ああ……旅に出てから今までいろんなことがあったなあ……。マーブルさん……フォシテス……ボータ……」
「走馬灯見てるよ!? 本当に不味くないかなこれ!?」
ロイドを診ていたマルタさまがまた叫びます。
さっさと蒸発していいんですよ?
要らない子の二軍ですし。
「必要だってば! というか、ロイドにライフボトルもレイズデッドも効かないんだけど!? このままじゃ本当に死ぬよねこれ!?」
「惜しい人を亡くしました……」
「まだ死んでないよ! ……もう手遅れかもしれないけど」
リフィルの料理でも与えれば生き返ると思いますけどねえ。
「それ確実に止めを刺すための料理だよ! あの人の料理は全部劇物だし!」
「そうでしょうか?」
毒が薬になるように、劇物料理が奇跡の治療薬になる可能性もあるんですよ?
「あの人の料理は何があっても奇跡の治療薬にはなりえないからね!? 不味い料理はどこまで行っても不味い料理のままなんだよ!?」
「まあ、そうだとしても何もできませんがね」
泡を吹いているロイドの残骸にレイズデッドも効かなかったとなれば、手の打ちようはありませんし。
異世界から都合のいい助けが来るならともかく、そんな人来ませんよ。
大人しく埋葬しましょう。
「だからって埋葬しないで!? 今やったら明らかに生き埋めだよ!」
(テネちゃん、危ないの! オタオタがそっちに飛んだの!)
マルタさまと雑談している最中、いきなりラフゥが叫んだので振り返ると、エクスプロードの爆風で吹っ飛んできた巨大オタオタがこちらに飛んできていました。
エクスプロードって事は……セイレーンさん、支援使い終わって攻撃に参加してたんですか?
「危なっ……って、ああっ!」
「ぐふえっ……」
「ロイドがオタオタの下敷きになりましたね」
私達は回避しましたが、吹き飛んできた巨大オタオタがそのままロイドの上に落下。
ロイドを下敷きにしてしまいました。瀕死のロイドに更なる追い打ちとは、酷いオタオタですね。
「オタッ……」
しかし、運がいいのか悪いのか、オタオタはそこで戦闘不能になったらしく、宝珠を吐き出して小さくなりました。
飲み込んだ宝珠は砕け散ってしまって消滅しましたが。
ちなみにオタオタの身体には無数の打撃痕が刻まれており、ナイトメアラッシュでタコ殴りにされたのが一目で分かる傷となっています。
頭に焼け焦げた跡がある辺り、エクスプロードの他にブレイジングハーツも使用されたんでしょう。
「終わったか。さーて、撤収撤収……」
そうですね。ルーメンを回収して帰りましょう。
「待って! せめてロイド何とかしようよ! エミルが盾にして庇わせた上にオタオタの追い打ちまで受けたから今にも死にそうなんだけど!?」
「運が無かったんだ。次のロイドは上手くやってくれるさ」
「次のロイドとか居るわけないでしょ!? 何言ってるの!?」
またマルタさまが変なこと言っていますね。
次のロイドくらい何処にでも居るでしょう?
「居ないから!?」
「ロイドAとかロイドBが居るだろ。さっさと呼んで来い」
「そんな物何処に居るの!? 聞いたことも無いよ!?」
何言ってるんですか。その辺の草原に生息してるでしょう?
「携帯用モンスターじゃないんだからそんなところに居るわけないでしょ!」
(放っておいてルインに帰るの)
「ですね。行きましょう」
まあ、とりあえずルーメンは頂きましょう。
台座の上で光っている偽物は無視してここの台座の仕掛けを動かして……。
ありましたね。本物のルーメン。
「やっぱり変なことやってたじゃない! 仮にロイドがコアを取っても偽物でしたとかそういうオチがあったんでしょ!? 案の定台座の上に置いてあったのは偽物だったし!」
地面を転がっていたルーメソを掴んだマルタさまが何か言ってきます。
当たり前じゃないですか、そうですよねラタトスク様?
「当たり前だろ? 何でわざわざロイドに本物のルーメンをくれてやる必要があるんだ? ルーメソで良いだろ。一見本物そっくりの宝石だからそこの単細胞は気づかないさ」
「そして合流してコアを返すとか言ってきたときに残念。偽物のコアでしたー! なオチを持ってくる予定でしたけどね」
「宝箱の罠に加えて偽物の台座とか明らかにやりすぎだってば! どこまで徹底してるの!?」
「二重三重に罠を用意するのは戦争の基本だ」
歴戦の軍師のような事を言ってのけるラタトスク様。
その通りですよ。
「ロイドとのコア争奪戦は戦争だとでも言うつもりなの!?」
「何を言ってるんだ? 当然だろ?」
「違うよ!? 明らかに違うし、そもそもこんなことしなくてもエミルなら正面から奪い返せるよね!?」
さて、お話は切り上げてルインに帰りましょうか。
「そうだな。行くぞ」
「まだ話は終わってないってば!? というか、置いてかないでよ!」
ライフボトル…戦闘不能から回復させるアイテム。テイルズのアイテムは基本上に掲げるだけで使えるため、ガラスと思われる瓶に詰まった液体をどうやって使用しているのかは不明。
プリズムソード…マルタのメインウェポン。光の檻を降らせて広範囲に攻撃できる光属性の魔術で、教書「ルナのお仕置き」でモンスターも習得可能。唯一の難点は、締めの一撃でダウンさせてしまってコンボが途切れること。
ただし、マルタへの攻撃を防ぐ障害として機能させるには十分な性能で、複数の敵をこれで足止めしつつゲージとグリッドを溜め、秘奥義につなげるのは基本。
セイレーン…ハーピーの進化形で、レベル50上限のモンスター。マーテル教会の聖堂やギンヌンガ・ガップで普通に出るので見ること自体は難しくない。
優秀な技を二つも持っている上にAIも後方支援特化型(一軍に入れて1000回戦っても前線に特攻しに来ないくらい通常攻撃の頻度が低い。一度見たので0ではないが、限りなく0に近い確率)、固有術も引継ぎで優秀な物があると良いことずくめなのだが、異常なやり込みでもしない限りレベルと能力のせいで味方では使い物にならないのが現実。
尚、レベルに制限のない敵の場合はヒールとサブマージとグロリアスアンセムでサポートに回る非常に厄介な敵になる。黄昏の宮殿でジャスコニアスとのセットで出るので、そこで泣かされた人もいるはず。
サブマージ…敵全体を眠らせ、移動速度まで下げる凶悪技。ただでさえチート性能なヴォ―デヴィルのナイトメアの完全上位互換技である。
セイレーンのAIの都合上、使用頻度は若干低いが、それでも普通に使用するため、下手すると全員眠らされた上にまともに動けなくなることがある。消費TPの多さが難点。
グロリアスアンセム…味方全員の物理攻撃と物理防御を6割上げるセイレーンのチート技の一つ。攻撃が9999なら15998まで上がると書くとどれだけ恐ろしいかは一目瞭然。ただし、消費TPが莫大で、気軽に使うとすぐにガス欠を起こす。
ちなみに敵の時は開幕でほぼ確実に使う。味方の時も設定しないと普通に開幕使用する。この凶悪技を開幕でほぼ確実に使うのもセイレーンの特徴。
トランカータ…レベル100が上限の植物で、お腹に顔が、頭に牙の生えた花が咲いたモンスター。基本的にデリリアスのコンパチ。ちなみにラタトスクオリジナル。お腹の顔は擬態らしい。
デリリアス…レベル200が上限の魔物で、頭に豪華な花が咲いたトランカータ。物理攻撃に特化すると化けるモンスターで、ナイトメアラッシュは範囲とモンスターの性能がやや足を引っ張るものの恐ろしい性能を誇る。最低レベルの移動速度と鋼体0を味方の行動で補えば非常に強い部類になる物理モンスター。
ナイトメアラッシュ…両腕の蔓を激しく回転させて当たった相手を叩きのめすトランカータ、デリリアスの必殺技。多段ヒット、超威力、ダウンさせないと強技の特徴を満たしており、上手く当たったらごっそり相手の体力を削り落とせる。
ただ、両者とも身体が大きく、攻撃範囲が正面では無く若干横になっているため、普通にやっても当てにくいのが残念。
マーブル…シンフォニアのイセリアの人間牧場で出会った老婆。少し出てきてすぐに退場してしまう人なのだが、彼女の存在が冒険の引き金になったり、パルマコスタ牧場でのイベントに繋がるなど、実はかなり物語に関わった人。
フォシテス…イセリア人間牧場のボスで、五聖刃の一人。ディザイアンの英雄と呼ばれるなど、ハーフエルフにとっては良い人だったらしいが、作中ではマーブルを怪物化させたりショコラを不意打ちで後ろから撃ち殺そうとするなど、酷い人としての描写が目立つ。やはり悪人は悪人か。
ボータ…レネゲードの幹部。実は顔出しはかなり早く、シンフォニアで最初に襲撃してきたボスの居る部隊の指揮官をやっている。最期は人間牧場の自爆装置を解除し、部下とともに水の中へ消えた。
エクスプロード…アビスにもシンフォニアにもあったのでそのまま続投した魔術。グリモアは無いが一部のモンスターが覚えるので変化で引き継げる。
ブレイジングハーツ…リバースの魔術。フェニアからハーピー系全部が変化で引き継げる。ただ、それでもハーピー系統限定の魔術である。
ロイドA…既に倒れたこのロイド。本では戦う回数によってロイドAとかロイドBと個別に表記されている。
ルーメン…本来はここでロイドに勝っても勝利後の謎の闇討ちによって奪われてしまうコア。手に入るのは八章、しかも魔物の数の属性強化が重複するアイン・ソフ・アウルと入れ替わる形である。あんまりだ。