ラタが駆け抜ける物語   作:ルスト

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ルインに帰ろう

「よーし、ルーメンを孵化させるぞ」

 

 無事に洞窟を脱出した我々。

 ルーメンのコアもちゃんと確保しましたし、言うことなしですね。

 それじゃ……。

 

「ええ。孵化させて湖底の洞窟を沈めてしまいましょう」

「ちょっと待って!? 明らかに今湖底の洞窟の中には人が居るよ!?」

 

 私がラタトスク様の言葉に便乗し、孵化を勧めたところでマルタさまが割り込んできました。

 何ですか全く。モブが洞窟の中で沈もうと気にすることなどありませんよ。

 

「気にして!? ほんの少しでもいいから良識持ってよ!」

「良識? それって投げられるのか?」

「投げ捨てていいと思いますよ」

 

 というか、あの洞窟の中に居る生物って殺しても死なない化け物ばかりのような……。

 赤い奴も三途の川を渡っていきそうですがまだ生きてるでしょうし、クラトスとか言う親バカが助けるでしょう。

 それ以外のモブなど全員水没させた方が世界のためですよ。

 

「その理屈が既におかしいんだってば!」

「煩いな……全く。姑かお前は」

 

 ですよねえ。もっと言ってやってください。

 

「何で!? 当たり前のこと言ってるだけだよ!?」

 

 

 

 とまあ、こんなやり取りをしながらルインまで歩いていきます。

 マナの守護塔跡が背後にありますが、ルーメンのコアを孵化させれば中から復活したオタオタが出てきて暴れまわり、壊されるでしょう。

 

「そんなことしなくても今ぶっ壊せばいいだろう?」

(名案なの。どうせここには入れないなら、メテオスウォーム連射の訓練ついでに解体してあげるの)

「それは解体って言うより破壊だよね!?」

 

 騒がしいマルタさまはどうにかならないのでしょうか。

 通常のマルタさまみたいにエミルにベタベタな状態でも罰は当たりませんよ?

 

「この状態で私まで色ボケに走ったら何処に向かうつもり!? 絶対世界中の町や村をメテオスウォームで破壊しつくしてから、勇者みたいに世界中の家を物色して略奪するつもりだよね!?」

「何寝ぼけたこと言ってるんだ。そんなことするはずないだろ?」

 

 ラタトスク様が言い返します。

 その手には「テセアラ略奪計画表」というタイトルのノートが握られています。

 メテオスウォームの連射で町を丸ごと遺跡に変えてから魔物の軍団を乗り込ませて略奪する計画のようです。

 

「じゃあその物騒なノートは何!?」

「テセアラの宝箱を安全に回収するための手段を纏めた物だが、これがどうかしたか?」

「メテオスウォームで町を丸ごと遺跡に変えてから略奪するってどう考えてもやりすぎだよ! そんな強盗実行されたらあっという間にこの世界から町や村が消えちゃうから!」

 

 別にそんなことはないと思いますけどね。

 遠い遠い異世界の開拓地ではこんな強盗が多発するらしいですし。

 

「それもう強盗やらなくてもどこかの傭兵や軍に仕官して生きていけるよね!? なんでわざわざ強盗やってるの!?」

「強盗行為が好きだからじゃないのか?」

「強盗行為が好きとか最低を通り越して呆れるしかないよ!」

 

 何を言っているのやら。

 この世界の住民も、大半は周辺住民の家から略奪して生計を立てていますよ。

 

「この世界そんなに物騒なの!? というか略奪する前に真面目に働こうよ!」

「いつかモブの日常でも見せてやろうか? あちこちで恐ろしい状態になってるぞ」

「そんな恐ろしい世界正直見たくないんだけど……」

 

 まあ、そう言いながら見るんですよね。

 それはそうと、周囲の雑魚は我々を見るなり逃げ出していくので戦いになりません。

 大人しくマナの守護塔を破壊してルインに行きましょう。

 

「守護塔を壊す必要は無いから! というか、壊しちゃ駄目!」

(別に聞く必要ないの)

 

 まあ、こんな姑ヒロインの言う事なんか聞く必要ありません。

 さっさとメテオスウォームで守護塔とかいうガラクタを――――

 

 

 

 

 

「…………そこの陰険とインプ、無限フォトンの刑に処しても良いんだよ? 永久に爆発する光の中に放り込んで反省するまで延々と――――」

 

 ぶっ壊そうと詠唱を始めた直後、突如雰囲気が変わったマルタさまが氷のようなオーラを纏って我々に警告を発します。

 インプの詠唱はマルタさまの威圧感に飲まれ、恐怖で反射的に解除されてしまいました。

 マルタさまは笑顔で言っていますが、その目は明らかに殺気に満ちています。

 ここで逆らったら文字通り死ぬまでフォトン地獄に飲み込まれるでしょう。

 

(マルちゃんが怒ったの! ……自動回復と光防御持ってないから逆らえないの…………)

「……ちゃんとヒーラーリボンとメンタルシンボル持ってからやるからさ、いつか終わるなんて思わないでね? 泣いて謝っても、許さないよ?」

 

 言葉通り、マルタさまはヒーラーリボンとメンタルシンボル、更にマスターマインドとウィンドミルまで取り出します。

 逆らったら完全にこちらを殺す気ですね……。

 

「……おい、死神を呼ぶな。…………こっちまで寒気が……!」

 

 ラタトスク様まで怯えますか……。ヴォ―ダンマント二つ羽織っているというのに。

 というか、私の魔物まで震え上がってますね。

 ラスボスや裏ボスすら単独で締め上げ、数多の戦場に光の雨を降らせて屍の山を築き上げてきたこの世界最強の殺戮ヒロイン「死神マルタ」が目覚めてしまったようです。

 

「……エミルも、分かったよね?」

「……」

 

 両手を上げて降参の意思表示をしたラタトスク様。

 ……アレをなんとかしない限り本当の意味での我々の時代は訪れませんね。

 しかし、今の我々に「死神マルタ」に逆らえる戦力は無いです。

 ラスボスの炎すら凌駕するそのオーラに飲まれて恐怖に屈し、何もできません。

 逆らったら死ぬまで無限フォトンとプリズムソードの雨に襲われるでしょうし。

 

「……あんまり勝手なことすると、お仕置きするからね? 分かった?」

「承知しました」

(怖いの嫌なの……)

 

 ああ恐ろしい。身体が固まるかと思いました。

 これが本当にヒロインのオーラだと言うんですかねえ。

 全てを圧倒的な暴力で文字通り叩き潰すようなオーラだったんですが。

 

「じゃあ、気を取り直してルインに」

 

 我々を恐怖のオーラで黙らせたマルタさまが再び足を進めようとします。

 その直後――――

 

「野生化教会騎士団・グラズヘイマーだー!!」

「野生化フェイク(エターニア)だー!」

「野生化クラトス・アウリオンだー!」

「向かお――――え……?」

 

 ルイン側から絶叫が聞こえてきました。

 湖底の洞窟に居た宝箱さんがルインまで移動しながら戦いを繰り広げているんでしょうか。

 

「これは我々の責任ではないですよね」

「ああ。俺は全く知らん」

「ちょっと待って! 明らかに今この世界の人達が正体を知るはずもない名前が出たよね!?」

 

 そんなこと言われましてもねえ。

 マルタさまは慌ててルインの方に駆け出したので一応ついて行きます。

 

「野生化ジャスコニアスだー!」

「野生化マーグナーだー!」

「野生化自警団・グラズヘイマーだー!」

「ルインは一体どうなっちゃったの!? どう考えてもこれ世紀末世界になってる予感しかしないんだけど!?」

 

 ルインに近づくにつれて魔物の名前を叫ぶ叫び声も大きくなり、町に近づくとルインの町から煙が上がっているのが少しずつ見えてきます。

 そして、ルインの全域で自警団や教会騎士団、ジャスコニアスが暴れまわっている光景が目に飛び込んできます。

 ゲームで使ってる場所とラタトスク様の家以外木端微塵にされています。

 

「ホントどうなってるの!? というか何が起きたの!?」

「上空にレアバードが浮いてる時点で普通じゃないな……」

「え!? 何でレアバード!?」

 

 ルインの入り口近くまで近づいたところで上を見上げると、ラタトスク様の呟き通りレアバードが上空に一機浮いており、その上に誰か立っています。

 

「ふふふふふふ……力のみで全てを従えてきた愚かな死神マルタよ。聞くがいい! 如何に貴様がそいつらを力で従わせて混沌からの脱却を図ろうとしても! また、如何に貴様が普通の展開を望んでいようとも! そのようなつまらぬ世界は! 私が一軍として輝くことができない、そのような腐った世界は! 仕様と運命と使い勝手に全て支配されている呪われた世界は! 全てこの私が破壊する!」

「だから貴方誰!? というか、さっきもそうだけどどうして私の呼び名が死神マルタなの!?」

 

 レアバードの上に立っていたのはまたしても青い髪の仮面男でした。

 レアバードの上に仁王立ちになり、つまらぬ世界を破壊するなどと宣言しています。

 

「貴様のような悪魔にはこの私の素性を知ることも出来ぬか。まあいい。その方が好都合だ。だが、これだけは覚えておくがいい! 如何にお前がそこの連中を押さえつけたところで、この世界は混沌の渦から抜け出せぬ! 私が混沌の渦に沈めてくれよう!」

「というか、さっきから聞いてれば勝手な事ばっかり言ってるよね!? オタオタの時もそうだけど、いい加減にしてくれるかな! ディバインセイバー!」

 

 青い髪の男が混沌の渦にこの世界を沈めると宣言しています。

 その言葉に呆れ返ったマルタさまがディバインセイバーで先制攻撃を仕掛けますが……。

 

「ふふふ……愚かな。わが社が開発したこの反射リング搭載レアバードにそんな物は効かぬわ!」

「って、ディバインセイバーが反射されてる!? ラタトスクにそんな装備品ないよね!?」

 

 マルタさまの放ったディバインセイバーが謎のバリアで反射されてしまい、攻撃が通用しません。

 反射されたことに驚いたマルタさま。もちろんすぐさま攻撃の手を止め、回避しました。

 

「フフフ……フハハハハハハ!! わが社の最新兵器、この反射リングレアバードさえあれば、貴様やメテオスウォームの雨など恐れるに足りぬ! 私が今度こそ一軍になるのだ! その時を楽しみにするがいい! ハーハッハッハッ!」

 

 ラスボス級の幹部のような高笑いをした後、レアバードに乗った男はそのまま飛び去って行きました。

 ……マルタさまではどうにもならないみたいですね。シンフォニアに弓キャラが居たら落とせるんですが。

 

「何なのアレ! あんなの一体どうしたら……!」

(テネちゃん、良いこと考えたの)

「なんですか?」

 

 まあ、私と同じ事でしょうけど。

 

(あの反射リングを仕入れたらマルちゃんなんて恐れるに足りないの! ラフゥ天才なの♪)

「私も同じこと考えましたよ。まさに名案です」

 

 早速どこの商品なのか調べて仕入れましょう。

 それで安心ですよ。

 魔術の無い死神マルタなんてただの回復できる盗賊です。

 

「さっきの反射、嫌な予感がするんだけど気のせいかな……」

 

 反射リング付きの敵だらけになってマルタさまはほぼ何も出来なくなる未来ですね、分かります。

 

「そうなったらエミルやテネブラエも止められそうにないんだけど……。どうにかしないと」

「どうにかしないでくださいよ。面白くないですから」

「こんな滅茶苦茶な世界そのまま見過ごせるわけないじゃない!」




マナの守護塔跡…ガラクタとなった塔の残骸。入れません。

ヒーラーリボン…テクニカル3(消費TP1固定)とリコールの効果のあるマルタ最強装備。トクナガにグローリーがあるけど、こんな装備に勝てるわけが無かった。

マスターマインド…スピードスペル2と術攻撃上昇2のついたマルタ用最強防具。術攻撃の上がるミスティシンボルを腕に着けるような物。

ウィンドミル…術攻撃上昇2と術防御上昇2のついた実質マルタ用最強防具。そんな性能なのに引継ぎしたら3章で作れるぶっ壊れ品。

ヴォ―ダンマント…光耐性付きのマント。二つ羽織っているのでこの世界のラタ様は一応光耐性100%。まあ、1ダメージでも受けると9999回フォトンされて死ぬので安心ではありません。回復したって永久コンボからは逃げられない。

野生化…さすがに暴れ○○そのまま流用は…。元ネタ通り何でも野生化しています。

グラズヘイマー…グラズヘイムで進化したからグラズヘイマー。

反射リング…反射=リフレクト。後は分かるね? こんな物持ってこられたらマルタは詰みます。

弓…シンフォニアには弓を使う人間がいない。ラタにはネレイスが居ますがジャンプできないモンスターです。手も足も出ない。
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