陰の実力者編 無法都市
アルファVSジョン・スミス
「まさか――あなたは」
アルファはそう呟いて、仮面を外す。仮面の下から美しいエルフの顔が現れた。
「――シャドウ?」
アルファの瞳は、既に確信していた。
ジョン・スミスはしばらく彼女の視線を受け止めて、仮面を外す。
「その名はもう捨てた……」
そして、仮面の下から見知ったシドの顔が現れた。
分かっていたはずなのに、アルファの顔が驚愕に染まった。
「そんな、どうして……。名前を捨てたってどういうこと……?」
「そのままの意味さ。今の僕はジョン・スミス。それ以上でも、それ以下でもない」
「どうしてあなたがジョン・スミスに……。何か、何か理由があるのよね?」
アルファの声は、何かに縋るかのようだった。
「これが最善だったからさ」
「それだけじゃ分からないわ、ちゃんと説明してよ!」
「悪いけれど、これ以上話す気はない」
「ねぇ、デルタは? デルタはどうなったの!? どうして彼女をッ!!」
「デルタは遠いところに行く必要があった。それ以上の理由は言えない」
「だから分かんないって言ってるでしょ!!」
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「強くなったね」
凄まじい衝撃に彼女は倒れ意識が揺らぐ。
「安心して、峰打ちだよ」
そして、遠ざかっていく彼の足音。
彼女は薄れゆく意識の中で、必死で手を伸ばす
「お願い……私をおいてかないで……」
彼女の声は、彼には届かなかった。
列車から転がり落ちていく体、燦々と降り積もる雪がクッションとなり、落下の痛みを軽減する。
無様に転げ落ちるままに、凍てつく寒さの中でアルファはただひたすらに体を縮める。
「く・・・うぅ・・・わぁぁぁ 」
顔を泣き崩している、どんな事があっても冷静なあのアルファが
「……っ、シャドウ、シャドウ………っ!」
彼の名前をひたすらに叫ぶ
「なんで!どうして!?貴方の為にどんな事でもやるのに!!どうして!?どうしてよシド!」
答えはなく、寒々とした空の下で、時間はゆっくりと流れていく。
ただ彼女の鳴き声だけが空を飛ぶ。
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暖炉の火がパチパチと燃えていた。
「きっと、何か理由があるはずなのよ……」
「私もそう思います」
「彼は私たちを見捨ててなんかいない……」
「もちろんです」
「そうよね……?」
その会話はもう何度も繰り返されたものだった。
しかし何度繰り返しても不安は晴れず、アルファはどんどん悲痛な表情になっていく。
「彼がそれを望むなら、私は彼の望みに応えましょう。だって、約束したもの。彼が死ねと言えば、私は死ぬって……」
「アルファ様……」
アルファの顔は悲痛だった。しかしそこには今までにない決意があった。
「最期の仕事を果たしましょう」
そして彼女は立ち上がる。
その時だった。
「アルファ様ッ!」
ノックもせずに、ベータが部屋に飛び込んできた。彼女は手に一枚の書類を持っている。
「研究室のイータに解読させていたシャドウ様の暗号が――解けました!」
イータは研究を専門とする七番目の七陰だ。そういえばベータは主から暗号を受け取り、イータに解読を任せたと言っていた。
「これです!」
ベータの差し出した書類をアルファが受け取る。
その文面を読み進めていくにつれて、アルファの顔に喜色が表れていく。
「アルファ様……?」
怪訝なガンマの声に、アルファはくしゃくしゃの笑みで応じた。そこにはもう悲痛な面持ちはない。
彼女の頬に流れる一筋の涙は、喜びの涙。
「私たちは、見捨てられてなんかいなかった……」
そう言って差し出された書類をガンマは受け取り読み進める。
「こ、これは――ッ!」
そこにはイータの筆跡で驚くべき事実が書かれていた。
『悪いね、僕は裏切ることにするよ。
雪狐商会のユキメと一緒に偽札を造って金貨を集めることにしたんだ。
覚えているかい?
君たちと一緒に姉さんを救出したあの地下施設に偽札工場を作って、そこに金貨を集めているのさ。
もうじき金庫をいっぱいにしても収まりきらない量の金貨が手に入るんだ。
でもね、これはただの裏切りじゃない。君たちを救うためでもあるんだよ。
なぜだか分かるかい?』
気が付けば、ガンマの頬にも涙が流れていた。
アルファも、ガンマも、そしてベータも。
みんなでくしゃくしゃに笑いながら泣いていた。
「何もかも、全てシャドウ様が用意してくださいましたね」
ベータが尊敬に満ちた声で言った。
「これから裏切る人間が、わざわざ裏切るって書くはずないじゃない」
アルファが少し呆れた声で。
「そんなバカいませんよね。やはりシャドウ様はお優しい」
ガンマが少し疲れた声で。
「ベータの言う通り、彼が全てを用意してくれたわ。シャドウガーデンとミツゴシ商会との関係が漏れるわけにはいかなかった我々の代わりに、彼が裏で動いてくれた」
「はい。シャドウ様は偽札の換金により我らが必要としている大量の金貨を用意して下さったのです」
「後は我々が金貨を回収すればいい。ご丁寧にもそこは我々にとってなじみのある場所で、そして金庫の位置まで記されています」
「この苦難を耐えるしかできなかった私たちなのに、彼は容易く乗り越えて莫大な利益をシャドウガーデンにもたらした。この金貨があればミツゴシ商会の信用は崩壊しない。それどころかさらに躍進する」
誰からともなく深いため息が漏れた。
「まったく、ここに書かれている通り、まさに私たちを救うための裏切りね……」
「敵を騙すにはまず味方から……勉強になります」
「最初から、すべてを読み通していたのですね。さすがシャドウ様です……でも、だとしたらデルタは?」
不安そうなガンマだったが、しかしアルファの瞳はもう揺らがない。
「彼のことだからきっと心配はいらないわ」
その時、外で物音がした。
そしてゆっくりと窓が開く。そこに、どこかばつが悪そうなデルタの姿があった。
「――ほらね」
「デルタッ!? よかった……」
ガンマの顔に喜びが満ちる。
「うぅ……アルファ様……デルタは秘密のシークレット任務で……その……」
デルタはアルファの反応を窺いながらビクビクしていた。
「わかっているわ。彼に何か任されたのでしょう?」
デルタはパッと顔を明るくしてコクコク頷く。
「デルタは黒いジャガを……! ぁぅ、秘密のシークレット任務だから言えない……」
「デルタ、言葉は正しく使いなさい。秘密のシークレット任務じゃ意味が重複しているわ」
「で、でもボスが……!」
「彼がそんなこと言うはずないじゃない。でも、無事でよかった……」
アルファは何か言いたそうなデルタの頭を撫でて抱きしめる。
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「やっぱり、何も言わなかったのはいくら何でも不味いよね.....」
そう呟くシドは、シャドウガーデン本部にコッソリ侵入していた。彼女たちからすれば一連の流れは裏切りに等しいのだ、
勿論、暗号で前世の日本語のメモを渡しはしたが、もしかしたら解けていなくて、ただ単に裏切ったと思っているかもしれない。
いくら何でも、デルタのあれは不味いかもしれない。冬眠でもしてるのかな?と最初は思ってたけど、まだ戻ってなかったとしたら......
「やばい.....絶対、気まずい......僕は知ってるんだ!いくらモブでも許されない事ってあるんだって!」
勘違いがさらなる勘違いを引き起こして、感情が融合しあって、最早手をつけられない事になるかも知れないと戦々恐々していると
「……シャドウ?」
「!?……」
コッソリと扉を開けて覗いていたら見つかってしまった。
「こんな所でわざわざコソコソして...何してるの?」
不思議そうに顔をしているアルファ
「や.....やぁ、アルファ、今日もい、...i、いい天気だね?」
それに対するは気まずそうに顔を背ける僕
「……いえ、今外は大雪と強風でとても外に出ていられない程天気が良くないけれど」
「…え?」
「え?」
まさかの悪天候!軽い天気の話題から話を持っていこうとした僕は焦ってしまいどう話題を持っていくか悩んでしまった。
「..................................................................」
「..................................................................」
二人の間を沈黙が並び、居心地の悪い空間が出来上がる。僕は猛烈に目が右へ左へと泳ぐ、あのアルファが泣くところを見てしまった以上どうにかして
あの件を終わらせて仲直りしないといけない、そう思い口を開こうとするとアルファが口を開いた。
「あの時のことだけれど......」
「ごめんなさい!」
「え?」
開口一番に土下座である。流石に泣かせるのはヤバいと警鐘が鳴り響く。
「本当は裏切るわけじゃなくて、シャドウガーデンを救うために、ミツゴシとバレないように」
「ええ分かっているわ」
「裏で動いていただけなんだよ!」
「勿論分かっているわ」
「へ?」
「最初は私を……私を…私たちを見捨てて……、いやそう思っていたわ」
アルファはゆっくりと話しながら思い出話を語るかのように言った。
「でもそうじゃ無かった、貴方は…シャドウは私達がバレないように、彼女たちと動いてくれた」
「そのお陰で信用崩壊を乗り切ることが出来た上に、大商会連合は崩壊、教団の策も知っててそれが動く前に行動したかったからよね」
「ありがとう…シャドウ、私達の為に動いてくれて、いつも貴方を助けたいと思っているのにふがいないわ」
そうつぶやくとアルファは涙を流し始めた。
「あの日から、悪魔憑きとして死んだも同然の私の命を救って貰ってからずっと思っていた。」
アルファは声を震わせつつも話をつづける。
「どうすれば貴方に報いる事ができるのだろう、どうすればもっと速く貴方の隣でいる事ができるのだろうって」
「それなのに私は、隣にいる事に満足して、教団の事を甘く見ていたみたい」
目を合わせて涙をこらえて、笑顔を僕に向ける。
「いざ、貴方があちらにいると、私は不安になって、切り捨てられたと勝手に想像してでも本当は」
「貴方は私達の為に動いてくれていたと言うのに、勝手に信じられなくなってしまって」
「貴方を疑ってしまったわ.....本当にごめんなさい」
アルファは涙を流しつつも、僕に謝った。本当はただ勘違いを解くためにいったんだけど.....大変なことになったぞ。
どうしよう…どうしよう… そうだ!
「アルファ!」
「キャ!」
彼女の顔を胸いっぱいに抱きしめる。頭を撫でて、背中に手を当てて、落ち着かせる。
ほのかに顔一杯に香水の匂いが漂う、いい香りだ。
「いつもアルファのお陰で助かっているんだ、そんな気にしなくてもいいよ」
「でも.....」
「大丈夫」
「……」
「アルファはいつだって僕の隣にいたじゃないか、お陰で僕は孤独に過ごす事も無くて楽しいんだよ」
僕は彼女のお陰で嬉しかった事を上げた、アレだ前世で楽しい事を3つ上げたら幸福になるとかいうのがあったからそれを真似してみるんだ。
「そうなの?」
「うん」
「それにシャドウガーデンだってそうさ、僕は確かに組織を作ったけど実際に統治しているのはアルファだ」
「ええ、そう...ね」
「お陰で僕は負担も少ないし、やりたい事はやれているし、それに...アルファは綺麗だから泣き顔は似合わないよ?」
「な!...え? き、綺麗ってそんなに?」
「うん...うん?」
急にアルファは目を擦り、涙を拭き、顔を上げると、生き生きとしてこちらに顔を向けた。
「それは七陰よりも、き...綺麗って事かしら?」
「う...うん!そうだよ、だから笑顔でいてくれると嬉しいなぁ~って思うんだけど」
「そ、そう...ウフフ」
今度は急にいい笑顔になって笑い出した、なんか怖い。
「あ、アルファ?」
「ねえシャドウ?」
「な、なにかな?」
「その言葉は本当なのかしら?」
アルファは顔を僕の胸に擦りつけつつ言葉を投げかける。なんかヤンデレっぽくてゾクゾクする。いやアルファがヤンデレになったら怖いから出来れば辞めて欲しいけど
「うん!m、もちろんだよ!」
「なら私にご褒美をくれないかしら?」
「え?」
「どうしたの?」
「い、いやなんでもないよ」
「そう.....さっきの言葉が本当だと言うなら私とキスをしましょう?」
「……え?」
追記
たくさん評価貰えたので2話書きます! プロット作ってるのでしばらくお待ちください
もし良かったら評価お願いします
追記
新規で投稿した作品もあります 長くなりそうなの新規で投稿しました タイトルは陰の実力者 ABCルート編 です