特色ラップランド   作:イワシコ農相

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大遅刻したので初投稿です。


白き狂笑

放逐後の図書館内にて、都市最強と自称九級フィクサーが向かい合っていた。無数にある椅子を適当に探り、引っ張ってきて腰掛けたような雑な配置で。酷使されたであろう長い赤髪を邪魔だからと背もたれの裏に動かしながら、煙草を吸う。肺で味わうように、煙が届くのを待って、そして吐き出す。ゲブラーは少しの沈黙のあと口を開く。

 

「前に攻撃するだけして、逃げたあいつはなんだったんだ」

 

ただでさえ、暑い言語の階なのに眼前で煙がかかった自称九級フィクサーことローランは汗を少し流しながらも、前の襲撃を思い返す。

 

「はぁ…さすがのボクも数百キロを一週間で走るのは疲れるよ」

 

「ん?、お邪魔だったかな。ローラン」

 

アイツは疲れてると言いながらも一切乱れない規則正しい呼吸で、二つの黒い大剣を携え、まっすぐこちらを見つめてくる。ほぼ白とも言える灰色の瞳が、髪色にそぐわない戦意を見せながら、ギラリギラリと輝いていた。

 

「白き狂笑…ここは外郭だぞ」

 

「図書館は閉館しているわ。それにしても、特色は皆イカれてるのね」

 

「フフ、最高の褒め言葉さ!」

 

「ああ、アンジェラ。それは言えてる」

 

「それで何をやらかしたんだ?」

 

普段のアイツなら今みたいに乾いた血で汚れていることも、長い戦いを継続した証拠である手の筋肉の緊縮などを見れば、今が普通の事態ではないことは明らかだ。

 

「簡単さ、飼い主気取りのバカどもをボクお手製のミルフィーユにしただけだね。」

 

「お前…やっぱり、最恐だよ」

 

アイツが居たのはシ協会。それもその中で最優秀のフィクサーだから、おそらく脱退を申し出た際に断られたのだろう。そうなったなら、白き狂笑はいつものことをしでかしたとしか思えない。

 

「都市中の一級フィクサーに追いかけられながら、逃げてきたってところか」

 

「悪くない推理だね」

 

「ただ、ボクはただ逃げた訳じゃない。広域放送局を占拠できたからさ」

 

「今頃、あそこら辺の巣は楽しいことになってるんじゃないかな?」

 

「やってることがピアニストじゃないか…」

 

あの夜の再現をやってのけて、目の前で嗤うアイツはイカれてる。キチガイだ。

 

「じゃ、話はここまでかな。ボクだって図書館は知ってるよ?さぁ、接待してくれよ。ローラン」

 

「一人でやる。みんなを下げといてくれ」

 

司書補が下がったのを見て、仮面と手袋を付け、都市最恐に向き合う。

 

「なんで、キミがアンジェリカ(ボクの天敵)の手袋を持ってるんだい?あー、引き継いだのか。彼女が死ぬとは思わなかったけど、どうやって死んだんだい?嫁の死因くらい知ってるでしょ?」

 

「…」

 

「だんまりか。ボクだって気になるのさ、散々殺しあった相手がどう死んだのかをね。だって危うく殺されるところだったんだから、敬意は払わないと」

 

「黙れ、イカれ狼」

 

「…つまらないね」

 

「じゃぁ、体に聞くとしよう。どれくらいの痛みに耐えてから、話し出すかが楽しみだよ!」

 

「剣雨!!」

 

音を消しているお陰で、串刺しにされずにすんだ。ただし、沈黙と狂笑が互いに競合し合うことで形容しがたい不気味で、寂れた音が周囲に鳴り響く。打ち消された音から漏れ出た声が、たびたび無規則に黒い剣を出現させ、それが地面に突き刺さっていく。

 

「サイッコーだよ!」

 

そう嗤いながら、接近。心臓を突き刺すことを目的とした一刺しを弾くと、もう一振りの剣がこちらを横から真っ二つにしようとして来る。

 

「ッ!」

 

受け身の体勢を崩して素早くバックステップ。さっきの一撃で使い物にならなくなった剣を捨て、新たにデュランダルを取り出す。

 

「馬鹿力過ぎるだろ」

 

「キミが弱いんじゃないかな?」

 

何度もの近距離で斬り合いの末に床が抉れ、戦闘に巻き込まれた家具類が無様に散らばっていく。突き刺さった黒い剣は少しも動かずに、さっきから怪しい光沢を放っている。

 

新たに取り出したデュランダルによって、白き狂笑の攻撃をいなしつつ、隙が出来たその腹に蹴りを入れる。後ろへと後退していくアイツを見つつも、香ばしい紅茶の匂いで誰が来たのかに気付いて勝利宣言する。

 

「白き狂笑、残念だったな。俺の勝ちだ」

 

アイツは明らかに驚いた顔をしていた。そりゃ、俺がアイツなら同じ顔をしていただろうな。

 

「あれは……まさか……調律者!?」

 

金色の模様が入った黒い外套を着ているビナーが奥の方から出てきたのだ。

 

「これは、ボクでも厳しいね」

 

アイツは冷静に状況を判断し、即座に撤退の姿勢に入った。アイツなら図書館の壁をぶち抜いて、逃げようとするだろう。

 

「久々に逢ったのに、逃げようとするのは厭う事柄だよ。あの時見逃したフィクサーが、これほどの事件を惹起出来るのは、なかなか素晴らしい。その絢爛な装いは…特色にでもなったのようだな。「出会いは油断している時に来るもの」とは良く云ったものだ」

 

「アハハ、まさかね…ガリオン」

 

乾いた声を出しながら、白き狂笑は明らかに焦燥している。ごくりと唾を飲み込み、その瞳孔がせわしなく動く。

 

「そうだねぇ、これはキミの勝ちでいいよ。ローラン、さすがにボクだってこの状態で調律者と特色は相手できないさ」

 

「無視か、哀しいな」

 

複数の柱がアイツ目掛けて飛来する。それを壁を蹴りながら、避けきると、勢いを殺さずに重心を前に。壁を蹴って、蹴って、上へと上っていく。

 

そして、窓を突き破り、そのまま外郭へと消えていった。

 

「逃げられたな…」

 

「ええ、そうね。でも仕方ないわ、特色だもの。」

 

「そうだな、アンジェラ。」

 

その回想を終え、口を開く。

 

「ゲブラー。フィクサーにはいろんなのがいるが、都市の中では白き狂笑が最恐だ。イカれ具合なら青い残響で、強さなら君だが…アイツは最も都市の住民から恐れられている。何でかって?それは巣の住民も裏路地もアイツの前では関係無いからだ。

アイツは弱いやつは絶対に殺してくんだ。一級フィクサーでも無視することが多いやつらをあの黒い剣の雨で余すこと無く殺し尽くしてしまう。弱さは罪だと笑いながら、アイツは外郭に消えてった。」

 

「少なくとも、アイツは万単位で殺してる」

 

「そうか…」

 

「しかも、あの時のアイツは疲れていたんだ。それもかなり、その状態で互角に戦えてる」

 

「ビナーを見て逃げたところを見ると、アイツは理性的に狂っているんだろう。衝動に身を任せられるが、同時にちゃんとコントロールしている。強いフィクサーの類いだ」

 

ゲブラーはそう結論付ける。都市最強とも言われた赤い霧の戦闘経験を以てすれば、話を聞くだけで大体の目安はついてしまう。

 

「また攻撃されたら困るんだよな」

 

「それは無いだろう。白き狂笑はここにビナーが居るのを知ったからな。誰も好んで調律者とは戦わん」

 

「お前が言うと説得力あるな」

 

「仮にまた来てもまた声を封じれば良いだろう。あの黒い剣は見覚えがある。憎しみの女王や大鳥に似たあれか…」

 

まだL社のセフィラだった頃に見た幻想体のBLACKダメージに酷似している。

 

「あの攻撃を受けたら心身共に死んでいくのだろう?」

 

「まさしく地獄絵図だ。死んでいっているのに、狂ったようにみんな笑うんだからな」

 

自己のE.G.O持ちか、カルメンは彼女にも?

 

いや…それは

 

「無いだろう」

 

「どうしたんだ?」

 

「なんでもない」

 

思わず口に出てしまったのを誤魔化しつつ、席を立つ。

 

「ありがとう、助かった。ローラン」

 

そう言い残して、赤い霧はその赤い髪を揺らしながら言語の階の奥へと向かっていった。

 

 

 

 

外郭 a.m 9:16

 

 

「調律者が出てくるとは本当に運がない…しかも、あのガリオンだったし」

 

串刺しにされて、地面に横たわっている死体の山を踏みながらあてもなく彷徨う。

 

「フフ、ここでもヒトリオオカミなのは運命かもね。あとはテキサスが居ればいいのだけど…都市のどこを探しても居なかった」

 

ラップランドのテキサスへの思いはこの都市に閉じ込められて以降に増すばかりであった。テラに居た頃はまだ龍門やロドスに行けば会うことができたが、ラップランドはかれこれ数年もテキサスを見ていない。

 

膨れ上がる思いはラップランドを侵食し、その熱望が、その狂気が、その愛憎が、明確な自我として現れた。テキサスを感じたいと願ったラップランドはその姿を、戦い方を、そして技までを似せていた。その自我たるEGOはテキサスの『剣雨』として表出した。『剣雨』はテキサスのそれとは似ているが異なる。ラップランドの声を聞いた者の周囲に剣を出現させ、それで攻撃するというものだ。EGOが止まらない限りは、無限に降る剣の雨は悪名高き白き狂笑の象徴となっていた。

 

「そろそろ解いていいか」

 

ラップランドがそう念じれば、外郭の住民を突き刺していた剣が消え、蓋のなくなったペットボトルが溢れるように血液が吹き出し、荒廃した大地に染み込んでいく。虚ろな目をしながらも、その顔に張り付いた笑顔をみてラップランドは自然と笑みを作る。

 

黒い剣が降り積もる中、戦場を縦横無尽に駆け抜ける時に見える白い髮。攻撃を受けたものが笑いながら死んでいく、ラップランドが笑えば笑うほど剣が増えていくという様子からハナ協会は彼女に『白き狂笑』の色を送った。

 

「あんた、本当にすごいことやらかしたね」

 

金色のネックレス、紫色に固めた服装、腰に二振り、背に一振りに備え付けられている剣。その瞳はじーっと、ラップランドを捉えていた。毒蛇がその獲物を噛むときの、獰猛で、ひどく冷静な目だった。

 

「紫の涙か。ボクが都市を去ったのに、ハナ協会が追手として送ったってことかな?」

 

「まさか、自主的に外郭に行ったやつをハナ協会は追いはしないよ」

 

「ならなにさ」

 

「あんたはやりすぎたから放逐しにきたんだよ。3つの巣を地獄絵図にするだけじゃ飽き足らず、多数の一級フィクサーを死傷させ、シ協会の上層部まで吹き飛ばした」

 

「私が見てきた別空間のどれを見てもあんたは居ないんだよ。あんたは特異点みたいなものなんだ。あんたを軸にこの空間が狂ってきてきている。これ以上は見過ごせないわけなんだ」

 

「ボクだってここには居たくなかったさ、ここにはテキサスは居ないからね。」

 

「元いた場所に返してあげるよ」

 

「残念、15年前だったら信じたかもね。でも、ボクはもう都市の人間さ」

 

「言って見るだけ無料だからねぇ。まぁ、疲れていないあんたならもっと厳しいけど…今のあんたならもっと簡単に倒せるさ。腹の傷も癒えてないみたいだし、ジークフリートの一撃は痛いようだ」

 

「フッ…言うね。なら見せてみてよ!」

 

四日に渡る激闘を制したのは紫の涙だった。ラップランドは一週間都市で戦い続け、図書館でも戦い、そしてその状態で紫の涙と戦っている。いくら戦闘が得意な特色といっても限界があり、日が立つにつれてその狂笑は弱くなっていった。

 

「…はぁ…はぁ」

 

ラップランドの頭を掴みつつ、紫の涙は息を整え、言葉を運ぶ。

 

「あんた、本当に強いね…」

 

紫の涙は思わず感嘆の声を溢す。これほど戦いながらも、まだ反撃しようとしているのだから。だが、出来るだけ早く放逐を終えなければならない。これ以上、空間が狂っていく前に。

 

「さぁ、いってらっしゃい。白き狂笑、帰ってこなくていいよ」

 

 

 

そうして、ラップランドは都市から消えた。

 

 

都市の星17人単独撃破

 

 

通算20万人以上殺害

 

 

多数の一級フィクサーを撃退または殺害

 

 

白色を冠する特色、白き狂笑。

 

 

彼女が戻った先に何を見て、何を得るかは都市の意思さえも予測できないだろう。

 

 

「ただいま、テラ」

 

 

都市最恐が降り立った。

 

 




ホントにすみません。受験があったので三日も遅れました。お許しください!!

さて、今回出てきた特色を知らない人の為に解決すると漢字が一つのカジミエーシュの騎士みたいな者です。めちゃくちゃ強いとハナ協会が認めたらはれて特色になれます。
フィクサーは級分けが九個あるんですけど、その最上位の一級の更なる最上位がハナ教会より色を送られ特色となるわけです。

では、皆さんの感想や評価をお待ちしております!!

※当小説は不定期更新です。書け次第更新するスタイルです。
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