ウルトラマンアース   作:アカイタマ

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ミジュクな彼ら①

 秋空星はただ、呆然と立ち尽くしていた。妹を傷つけた。そのことが頭の中で反響し続けていて。

 この無人の住宅街で、彼は壁に肩を預けていた。

 何がいけなかったのかと問われれば。自分が、彼女に隠し事をしてしまったことが、そもそもの要因か。

 ウルトラマンのことを伝えないのは、大切なことであると丈は語った。そこから星の、白夜に対する嘘は始まったのだ。

 ウルトラマンのことを話すと、白夜にも危害が及ぶ可能性があると語られ、話すに話せず、そして結局隠し通してしまっていた。それが彼女の心を傷つける結果につながったのだ。

 

 ずっと小さい頃、一緒に決めた“嘘をつかない”という約束を、破ってしまっていたのは分かっていた。本当のことを言えるなら、もっと前から言っていた。そんなことをあの時、もしも彼女に向かって吐き出していたら。

 

「あいつをもっと、傷つけてしまうから」

 

 自分は白夜の兄貴なのだ、だから自分は白夜に向かって、そんなことを吐いちゃいけないんだ。謝らないといけない、謝らないといけないけれど……あいつを今追いかけて、刺激してしまうと、もっと、もっと傷つけて。

 

「俺のせい、なのに」

 

 謝るのが筋というものではないか。それなら、やはり今すぐにでも____!

 

 怪獣が現れたのは、その時だった。日に、二度。現れるとは星も、そして走って行った白夜も思ってはいなかったから。だから、誰もがその出現に驚き、恐怖を口にした。

 その恐怖を掻き消すように、やつは強力な咆哮を上げる。

 

「ゴオオオオォォォーーッ!!!」

 

 その怪獣は赤と黒を混ぜたような、ドス黒い血の色をしていて。両の腕と頭に、黄金の角を一つずつ。裂けたように口を開くその獣は、赤い目で町々をジロと睨む。

 

「怪、獣……! っ、白夜は!」

 

 白夜の姿は見えないが、怪獣は彼女が去った方向と同じ場所に現れた。

 最初の一回目が。ガンQという怪獣が現れた時のことが、妙に頭にチラつく。あの時のようなことは、もう二度と起こしたくはない。

 

「っ、アース!」

 

《ウルトライブ》

《ウルトラマンアース》

 

 アースブレスレットに、虚空から生じたスパークドールズを掛け合わせ変身。銀色の角を持つ戦士、ウルトラマンアースへと、彼は変わった。

 金色の目が、町の全てを映すようになると。まず真っ先に白夜を探す。その姿はすぐに見つかるが、彼女は怪獣の足元にいた。

 

「白夜! っ、ドケぇ!」

 

 怪獣に掴みかかり、被害の少なくなるであろう山の方へと投げつけようとする。だが、怪獣はびくともしない。それどころか星の腕を掴み返し、ぎろりと睨んだ。

 

「なっ……ゴフッ____⁉︎」

 

 不意の一撃が、脇腹にクリーンヒットする。一瞬体が宙に浮き、意識が朦朧とした。そこに、怪獣はさらに手を握り込め。

 

「グルアアァァァァ!」

「ガハッ⁉︎」

 

 紫色の雷鳴が閃き、アースは吹き飛ばされていた。家屋を潰し、ビルを吹き飛ばし。星はゴロゴロと転がって、何転かしてようやく、動きを止める。受けた痛みがあまりに、重すぎる。

 体を痺れさせるようなそれを受けて、星は全く立ち上がれずにいた。今まで三度怪獣と戦ったが、それとは受けた痛みが全く違っている。

 

「で、も……立ち上がら、ねえとぉ……!」

 

 未熟な自分を圧倒する相手がいないとは、限らない。そう考えてはいた。だからこそ、今は自らの気合と根性と、覚えた技で戦うしかない。

 

「っ、チャージするような技じゃダメだ! ホーンサンダー!」

 

 両角から黄金の雷鳴を弾き出す。敵もまた、紫色の雷鳴を放ち、アースのものにぶつけてきた。衝撃が迸る中、勝つのは怪獣の放つ雷であった。

 

「ガアッ⁉︎」

 

 ホーンサンダーの電撃と合わせ、敵の雷撃がアースを焼き尽くした。彼の体が動きを止め、がくりと膝をつく。怪獣はそこに近づき、アースの右手を取り。そこから、雷撃を流し込んだ。

 

「ガッ……やめ、ハギュッ⁉︎」

 

 ピコン、ピコン、ピコン。そう、何かの音が響く。胸の青い宝石が赤い輝きに変わり、黒と境目を伴って点滅し始めているのだった。それがウルトラマンの命が、燃え尽きかけている証拠である。

 星の命が少しずつ、焼け焦げようとしているのだ。彼女に謝ることもできずに。

 

「死ん、で……たまる、かぁ……」

 

 稲妻を体に流されながら、星は敵の腕を逆に掴み返す。敵は何度も雷撃を流し、その度に星は悲鳴を上げるが、彼は動きを止めず。左腕に敵の電撃を溜め込んで、無理やりに顔面を殴りつけた。

 

「ラァッ!」

「ガッ⁉︎」

 

 怪獣の体がグルリと周り、吹き飛んでいく。山の方へと行ったそれは、岸壁で轟音を上げ、崩れ落ちた。

 あんなことで止まるような相手ではないことはわかっている。星は構えを取り直そうと、体に力を入れ____られ、なかった。

 

「……え」

 

 ガクッと体が傾いたと思えば、膝が地面を突いていた。体が思うように動かない、動いてくれない。今、敵に隙ができているのだ。それを打たないと、奴を、あの怪獣を倒して、この町を救うことはできはしない。

 動け、動け、動け、動け、動け……!

 

「動、けぇ!」

 

 一歩出た左足。その動きに重ね、星は両腕を頭上で組んでエネルギーを溜める。煙の中の敵は動いてはいない。その隙に溜めたエネルギーを、腕をT字に組むとともに解き放つのだ。

 最大の切り札である、ストリウムシュートを……敵の体を貫くために、今。撃ち放つのだ!

 

「喰らえ……ストリウムシュートォ!」

 

 虹色の破壊光線が、敵にむけて放たれる。今宵もまた、ウルトラマンの勝利で戦いが終わる。そう思われた。

 だが、怪獣はその大口に溜め込んだ、炎のエネルギーをもってして。ストリウムシュートを迎え撃った。剣先のような一撃のそれが、ストリウムシュートとぶつかり弾け合う。だが先の稲妻のように。やはり敵の光線の方が、はるかに威力は高いようであった。

 

「っ、ガッ……ハァ……」

 

 剣のようなその炎は、ウルトラマンの胸を貫いていた。吹き飛ぶ彼の体が、地面に倒れる。ウルトラマンは穴の空いた体を、また無理やりに起こそうとするが。動き出した怪獣は、再び炎をその口に溜め、アースに向けて撃ち放った。

 

「ギアァァァ……」

 

 カラータイマーの点滅が早まる。その音は逃げろと言っているようであるが、星はもう動くことはできなかった。

 ウルトラマンの体が粒子に変換されていく。ボロボロの光となったその体は、パン、と弾けるようにして、空中に霧散し消え失せた。

 

 ウルトラマンアースは敗れたのだった。怪獣、ブラッドキングを前にして。三本角のその怪物は、勝利の雄叫びをあげ、大地を踏み鳴らした。

 

「ゴオオオオォォォ!」

 

 獣の方向が響くと共に。耳鳴りのような音が響き、怪獣の体が足先から粒子に変わった。“時間が来た”ようであった。

 怪獣の体は一気に粒子に変わる奴、二枚のカードに収まってどこかへと飛んでいった。

 

 

 

 

 

「始末は完了しました」

 

 戦いを多々良山から見終えると、ジンはそう呟いていた。淡々としているなと思いつつ、バルタンはそれに応じる。

 

「残るはラルバだけか……意外に、呆気ない幕切れだったな」

「未熟者が刃を持てば、早死にするものです。まぁ……もし生きていても、もう戦うことはできないでしょうね」

「なぜわかるんだ?」

 

 バルタンの問いに、ジンは笑って答えを出した。

 

「彼の精神は限界寸前だった、からですね……まあ、ひとまず」

 

 さようならとだけ、彼は死の淵へと堕ちた、ウルトラマンへと告げた。少しずつ夜へと近づく町に、獣の残した赤い火の手が、広がり始めていた。

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