ウルトラマンアース   作:アカイタマ

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二人のキズナ①

『怪獣警報発令。多々良山近辺に怪獣が出現しました。屋外の方々は、お近くのシェルター入り口までお急ぎください。繰り返します』

 

 その警報がシェルター内で流れた。山へ行こうと動き始めていた星と白夜の耳にも、その声が聞こえていた。

 

「っ、おいおいこんな時に……」

 

 星はアースブレスレットをチラリと見やる。今から行けば、怪獣を止めることくらいはできそうだ。そう思って、彼は駆け出そうとするが。

 

「待って!」

 

 白夜がそれを止めた。手を掴まれ、星は一瞬よろけながらも、白夜の方を見る。

 

「でも行かねえと」

「兄さんの体はボロボロなんだよ! そんな状態で、戦いに行ったら」

「今度こそ死ぬってか?」

「……うん」

 

 白夜は悲しげな表情でそう言った。もう、そんな顔は見たくなかったが。使命感と白夜を守らなきゃ行けない気持ちと、二つのことで今はいっぱいになっていた。

 

「……丈さんも、ウルトラマンなんでしょ?」

「任せる、ってか? ……いいのかな、そんなので」

「傷ついてる時に、無理する必要はないよ……だって兄さんは、ウルトラマンである前に……普通の、人間なんだからさ」

 

 ……そうだったな。怪獣と戦う日々が続いて、忘れていた気がする。自分は人間であって、ウルトラマンであるのは後付けなのだ。そう、星は彼女に気付かされた。

 

「でも、丈さん携帯持ってないし、連絡取ることはできねえんだよな……いや、多分気づいたら出てくれるけど、その前に町が」

 

 普段は自分がすぐ出ているから、丈がどれくらいできてくれるかはわからない。そのことで悩んでいると、ガンQが「きゅい」とまた鳴いた。

 

「きゅきゅ、きゅい」

「どうした、ガンQ」

 

 ガンQは星を真っ直ぐに見て、ぴょんぴょんと白夜の肩で跳ねていた。何を表現したいのかは、少しわかりづらい。それを本人も思ったのか、彼は星のブレスレットを指差した。

 

「きゅ、きゅー! きゅい!」

「……俺の代わりに、戦ってくれる、のか? あの時みたいに大きな姿で」

「きゅい!」

 

 ガンQは大きくうなづいた。瞬間、彼は自らカードに変わり、星の手元に渡る。キャッチした星は、自分の意思を示すように輝く、彼の想いも受け止めた。

 

「力借りるぜ、ガンQ!」

「行こ、兄さん」

「おう!」

 

 心強い味方ができたものだ。星と白夜は急いで、かつ誰にも気づかれぬよう、シェルターから外に出た。

 ……もちろん、彼らを見張る者は、彼らが外に出たことは気づいているのだが。敢えて、追うことはしなかったのだ。

 

「頑張ってね、白夜ちゃん、星さん」

 

 こっそりと、端から彼らを見ていた極夜は、そう二人に向けて、エールを送るのだった。

 

 二人は外に出た。シェルターは怪獣の攻撃から市民を守るために閉まる寸前だったので、彼ら二人が出た瞬間に、もう入ることはできなくなってしまった。

 

「ガンQ、頼むぞ」

 

 後戻りはできない。星はガンQのカードを、再び自らのブレスレットにかざす。

 

《モンスロード》

 

 “GUN Q”と描かれたカードは、光を伴って螺旋となり、そして巨大に変わって行く。光は一つの形を取り、それは手のひらのサイズから、一メートル、五メートル、十、そして四十と、一気に巨大化した。

 赤い大足をドスンと鳴らし、その怪物は町に降り立つ。怪物なれど、人を守るために。奇獣ガンQは勇気を胸に、ブラッドキングに挑発の咆哮を叫ぶのだった。

 

「ギュイイイィィィーーッ!」

「グオッ……ゴアァッ!」

 

 叫ぶガンQの真下で。星と白夜はうなづきあい、口々に叫んだ。

 

「行け、ガンQ!」

「がんばれー!」

 

 声援を受け、ガンQは一歩踏み出す。そこに、敵が先手必勝とばかりに、電撃を撃ち放った。だがガンQはそれを、なんと自慢の目玉に吸収してしまい、さらにそこから打ち返した。

 

「ゴウッ⁉︎」

 

 紫の電撃をその身に受け、火花がブラッドキングから散る。まさか攻撃を跳ね返されるとは思っていなかったようで、慌てふためいている様子だ。

 ガンQは地面を踏んで跳躍、怯んだブラッドキングの顔面に、強烈な蹴りを叩き込んだ。

 

「ガウァ⁉︎」

「ギイィ!」

 

 吹っ飛ぶブラッドキングの体が、音を立てて倒れる。ガンQは着地し、喜ぶように体を跳ねさせ揺らした。

 

「すごい……前よりずっと強いぜ、ガンQ!」

「……な、なんか、兄さんよりも優勢だね」

「……言うなよな」

 

 三日前の不甲斐ない自分を思い出してしまう。だが、それを戦っている彼が、払拭してくれている。星はガンQに、何度も声援を送っていた。

 

「がんばれ、ガンQ!」

「きゅいー!」

 

 ガンQに、その声援は届いていた。その思いに応えるべく、ガンQは全身に力を込める。目玉にエネルギーが集まってゆき……ガンQは今度は、紫色の光弾を目玉から撃ち放った。

 

「ガアァ!」

 

 だが、それらは全て、ブラッドキングのはなった紫雷にかき消されてしまう。それどころか、光弾を放っていた目玉に雷が命中し、ガンQは吹っ飛ばされてしまった。

 

「ガンQ!」

「さっきは跳ね返せたのに、なんで跳ね返せないの⁉︎」

「多分、光弾を撃ってる時はそっちに集中しちゃうから、吸収に手が回らなくなるんだ。なら、こっちが受け身になるしかないんだが……」

 

 ブラッドキングはそれに気づいたのか。ふらりふらりと目と体を回すガンQに接近。足を掴んで、地面に叩きつけた。ガンQから奇妙な音が漏れ、さらに彼の体が地面を抉る。家屋が潰れ、吹き飛んでいった。

 

「まずい……! やっぱり俺が」

「ダメだよ、絶対ダメ……!」

「でも、ならどうすんだよ!」

 

 自分の代わりにガンQがやられてしまう。変身したところで、自分が敵わないのはわかっているが……

 丈はどうしたのか。彼にすがりたいと、心の底から星は思ったが。だが、肝心の彼は、今どこにいるのかはわからないのだった。

 

 

 

 

 

〜○○○〜

 

 

 

 

 

 銀の刃が空中に閃き、それをバルタンが受け止めた。ラルバは即座に、バーンスラッガーを自らの元に戻し、頭部に付ける。バルタンはハサミから冷凍弾を放ち、ラルバを氷漬けにしようとする。

 

「っ、ハァ!」

 

 額からのレーザー、“エメリウムメーザー”によって、それらを打ち消す。バルタンとラルバの間には、大きな距離が空いた。そこを、バルタンの背後から現れたジンが攻撃しようとするが。

 

「下がっていてくれ、ジン」

「ですが」

「私たちの目的の遂行のためにも、お前は必要な存在なんだ。ここは私がやる」

 

 バルタンはハサミをラルバに向けつつ、そう告げる。ジンは言われた通りに、彼らから離れた位置に立った。

 その様子を見て、ラルバは構えを解かず、バルタンに問いかける。

 

「その男はお前の協力者か、バルタン」

「そうだ。父の友人だ」

「……やはり君は、騙されているのだな」

 

 ラルバがそう呟くのに、バルタンは「何?」と反応を示す。ラルバは自身のスラッガーを構え、バルタンを見据えた。

 

「君たちを拘束し、星間連合に引き渡す。君たちの悪行は、ここで終わりだ」

「……悪行だと? ラルバ、君はまだそんなことを」

「たとえ君がどれほどの大義を胸にしていようと、他者を考えず己の我だけを通すのなら、それは悪でしかない!」

 

 バーンスラッガーが空中で閃く。バルタンはそれに、腕に取り付けていたブレスレットを変形させ、ぶつけた。ブーメランとなったブレスレットを、バルタンはハサミで受け止める。

 

「それは」

「君のブレスレットだ、私が確保していたが……使わせてもらうぞ!」

 

 再び、ブレスレットブーメランが投げられる。ラルバは念をスラッガーへと飛ばし、自らを守るように軌道修正を行なった。スラッガーとブーメランがぶつかり合い、火花が散る中、ラルバはその場に接近。そこに、バルタンもまた接近する。

 

「っ!」

「ハァ!」

 

 ブレスレットブーメランをバルタンがつかんだ瞬間。ブレスレットはブーメランから、刀の形に変わった。ラルバはそれを確認するや、スラッガーを刀の刃に当てがう。

 

「……やはり念力の扱いは上手いな、君は」

「今褒められても嬉しくはないな!」

 

 刀に氷のエネルギーがまとわれ、それをバルタンは刀を振るい、飛ばす。ラルバは両腕を組み、マグナカノンを照射。その氷の刃を打ち砕いた。

 

「若干不利なようですね、バルタン」

「ジン、黙って見ていろ!」

「ですがそうも行かないのですよ。あちらを」

 

 ジンは杖で、山の向こう、町の方を指した。あちらにはラルバを誘き出すために作り出した、ブラッドキングが暴れているはず。だが、そのブラッドキングと戦う者の姿が、バルタンとラルバの目に映った。

 

「あれは!」

「……ガンQ、だと? 一体誰があれを操っているんだ⁉︎」

「やはりあの程度では死んでいなかったのでしょうね。ウルトラマンアースは」

 

 その言葉にバルタンは驚いた。ブラッドキングによって胸を貫かれ、アースは粒子となって消え去ったのだ。あれで死んでいないと言うのか? いや、もし生きていても、すでに戦える精神状態ではないはず……!

 

「ウルトラマンはカラータイマー内に存在するコアを破壊せねば死にません。いわば不滅の存在なのですよ」

「それを知っていながら、何故奴の胸を狙わなかった!」

 

 さらりと述べるジンに対し、バルタンは怒りをぶつける。やれたのならば、何故やらなかったと。

 だがジンは、これまたさらりと。いや、どこか冷淡に、バルタンを見て言葉を述べた。

 

「狙いが逸れただけですが。私の狙いは的確ではありませんのでね」

 

 言い終える間もなく、彼の杖が輝く。彼はそれを見るや杖を振り抜き、星型の弾丸を撃ち放った。その狙いはラルバ……ではなく、バルタン星人だった。

 

「なっ……ガグァ⁉︎」

 

 星型弾の切先が、バルタンの胸を突き破った。彼の体は宙を待って吹き飛び、近くの木に叩きつけられる。

 

「バルタン!」

「うら、ぎったな……?」

 

 バルタンはジンを睨みつける。ジンは冷淡な目線は崩さず、しかしフッと笑って見せた。

 

「裏切ったとは、元から仲間だった者に対しての言葉でしょう。私は貴方の仲間ではありませんよ」

「なに……?」

 

 やはりか、と、ラルバは心の中で思う。バルタンを騙し、ジンは彼を利用していたのだ。

 

「貴方は私の嘘に……容易く騙されてくれました。故に操るのがとても楽だった。レイオニクスとしての力は、非常に低かったので、使い物にはなりませんでしたがね」

「っ……」

「ですが、そこは私が補えばいい。私が欲しいのはあくまで……貴方のレイオニクスとしての力なのですから」

 

 そう告げるや、ジンはカードを一枚杖に据えた。カードに描かれた名は“PEGILLA”。冷気を操る怪物の力が、杖に宿りてバルタンを襲う。

 

「っ、マグナカノン!」

 

 それをラルバのマグナカノンが弾いた。炎のエネルギーと冷気のエネルギーはお互いを相殺しあい、そして消し飛ぶ。それが終わると同時に、ラルバはがくりと膝をついていた。

 

「ラルバ、どうした⁉︎」

「……マグナカノンを、撃ちすぎたようだ」

 

 ラルバの額の緑の宝石、ビームランプが点滅を始める。それもまた、アースのカラータイマーと同じように、点滅することで危険を知らせるのだ。ジンはそれを見て「ほう」と笑った。

 

「貴方もやはり、ウルトラマンの一人ということですね。貴方のタイマーはそちらでしたか」

「……そういうことだ。っ、だが、まだ撃てるぞ!」

「その体たらくでよくほざきますね。では、第二打を!」

 

 ジンは杖に、カードを二枚かざす。先ほどの“PEGILLA”に続き、“GIRADLLAS”と描かれたカード。どちらも氷の力を操る怪獣、ペギラとギラドラスの力を持つものだ。さらに威力を増した氷の一撃が、今度はラルバに襲いかかる。

 

「マグナカノンを……ぐっ」

 

 L字に組んだ腕から、炎の光線を出す前に、彼は力尽き再び膝をついた。動けぬラルバに、肉体の芯までを凍てつかせる冷気が迫る。ラルバは少しでもダメージを減らそうと、体を丸めた。ラルバの体が、冷気によって一瞬で凍りつく。

 

 

 だがその前に、バルタンが割って入り、彼を守った。バキッ、と氷が生まれ、バルタンの肉体を凍り付かせる。

 

「ガッ……ラル、バ……」

「バルタンッ⁉︎」

 

 バルタンは何事かをラルバに伝えようとし、しかしその前に氷となった。氷像となった彼の体に、ジンは星型弾を放ち命中。像は粉々に砕け散った。

 

「きさ、ま……!」

「おやおや、あっけない幕切れですね……」

 

 砕け散ったバルタンの体から、光が舞い散り。それがジンの杖に宿った。その杖からさらに青い光が生まれ、一つの形を形成する。バルタンが持っていたものと同じ、バトルナイザーであった。それと共に彼の手元には、一枚のカードが生まれるが、ジンはそれを投げ捨てた。

 

「このようなものはいりません、無価値もいいところです」

 

 そのカードは、バルタン星人の力を宿すタロットカードだった。ラルバはそれと、氷の中で唯一残っていたブレスレットを、とっさに拾い上げる。

 

「……目的は達成しましたし、貴方も用済みなのですが。まぁ、このまま捨て置いていても、問題はないでしょう。あくまで今回の目的は、レイオニクスの力を手に入れることですから」

 

 杖をトンと叩き、彼は呆然とした様子のラルバを、ニヤリと見る。彼は目の前で砕けた友人の死体を見て、何も反応ができない様子だった。

 

「あとはブラッドキングにお任せしましょう。秋空未来の遺した怪獣には、アレよりも強いものがまだ、この地に眠っていますからね」

 

 そう告げるや、彼の体が虚空に消える。ラルバはそれに気がつけず、自らの体が人間の姿に戻っていることにも、気づいていなかった。

 

「丈さん!」

 

 そんな彼を現実に引き戻したのは。彼を追って山の中まで来た、蓮の声だった。蓮は息を切らした様子で、しかしなんとか腕を上げて、丈の肩を掴む。

 

「バルタンの居場所がわかった途端、突然出ていって……見つかったんですか?」

「……ああ。だが、彼は」

 

 丈は自らの手に眠る、一枚のカードを蓮に見せる。バルタン星人の描かれた、それ以外は何の変哲もないタロットカードだ。

 

「これが、どうしました?」

「……バルタンの魂はその中だ。奴を利用していた男に、肉体を破壊された」

「そんな! ……やはり、未来さんの名を騙る者が?」

「いや、どうやら少々違うらしい。俺はあの男を、杖の男を探さねばならない」

 

 バルタンのカードを、丈は自らの胸に据える。最後に何も話せず、逝ってしまった友の名は、そういえばついぞ、聞くことができないでいた。

 悲しむ間も無く彼は死んで、今その力のかけらだけが、手の中にあるのだ。

 

「……感傷に浸っている場合ではないな。行かねば……ぐっ⁉︎」

「丈さん!」

 

 丈は膝をつき、倒れる。エネルギーを多く消費し、反動も多いマグナカノンを何度も撃ち、彼の体は疲弊していたのだ。今の彼は、もう動けそうにない。

 

「後は、星たちに任せましょう」

「……だが」

「……あの子は、やる時はやる子ですから」

 

 そう、蓮が呟く瞬間。キィン、と、空から音が響いた。そちらに目を向ければ、幾つもの二つの機影が、空を飛んでいくのが見えた。アレは、確か地球防衛隊の。

 

「地球防衛隊の……ナイツの、戦略機体……」

 

 銀色の機影は地球防衛隊に配備された、トライデントファイターと呼ばれる航空戦力である。その防衛隊、正式な名称をナイツと言うそこでは、主にこの武器の名を冠する機体が使用されている。そのうち、トライデントファイターは特に戦闘能力に特化した、特別性の機体だ。

 

「何故防衛隊が?」

「普段は星がすぐに倒してしまうので、彼らの出番はありませんでした。ですが、見ての通りガンQが今、苦戦しながら戦っていて、戦いが長引いています。恐らくそれを見て、トライデントを手配したのでしょう」

 

 二つの銀影は宙を舞い、気付かれることなく戦う両者に迫っていく。二つの機体は備えられた銃口を構え、その内部に稲妻を宿し、解き放つ。それこそがトライデントファイターに内蔵された小型レールガン、“トールハンマー”であった。

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