「なんか白夜ちゃん、最近機嫌いいよね」
ようやく戻った日々の中。久方ぶりに学校、光ヶ丘中学に来ていた白夜に、極夜がそう語りかけた。白夜はそうかな? と首を傾げて見せる。
「とぼけてもダメだよ〜? 星さんと仲直りしたんでしょ!」
「えっ! いや、ち、ちがうよぉ!」
そう極夜が言ってみせると、白夜の顔はカァっと赤くなり、彼女は分かりやすく狼狽えた。その様子に少しの安心と、そして可愛らしさを覚え、極夜はさらにいじっていく。
「違わないでしょ〜? だってさ、喧嘩中はずーっとツンツンしてたのに、今はいつもどーりの柔らかい感じになってるし! 白夜ちゃんわかりやすすぎるよ」
「そうかなぁ……全然わかんないんだけど……」
「そーなの、顔に出やすいんだよ、白夜ちゃんは」
極夜はそう、白夜に告げる。白夜は自分で気づかないことを、なんで極夜がわかるのかと、首を傾げていた。極夜は、そんな白夜の頬をツンツンとして遊びながら、話を続ける。
「ほらぁ、どうやって仲直りしたの? 教えてよ、ねぇねぇ! やっぱりやり返したのー?」
「してない! ちゃんと話し合ったの!」
「へー。なぁんだ? じゃあ仲の進展とかもなかったわけ」
「仲の進展ってなに! 兄妹なんだからそれ以上とかないでしょ!」
「白夜ちゃんたちはあるでしょ」
極夜がそう言うと、白夜は頬を膨らませ、さらに極夜を咎めようとする。だがそれよりも先に、極夜は彼女の口にちょん、とだけ手を当ててから、自分の言葉を続けた。
「白夜ちゃんがお兄さんのこと好きなの、私にはお見通しなんだから。そろそろ認めちゃいなよねー?」
「っ……やっ、それは……」
「昔は私にも星さんにも、お兄ちゃんと結婚するんだー! とか、言ってたのにさぁ。いつのまにか言わなくなっちゃったし。遠慮してるのかナー?」
「……っ、うぅ、もう! 意地悪なんだからぁ……」
極夜は歯を見せて、にしし、とでも言うように笑ってみせる。どうして彼女はこう、昔の事を引っ張り出してくるのだろうか。やはりずるいというか、なんというか。
と。そこでガラリと戸が空いて、誰かが教室に入ってくる。
「白夜、迎えに来たぞ」
入ってきたのは星だった。どうやら白夜を迎えに来たらしい。
「……兄さん!」
兄の姿を確認して、白夜の顔が変わったのを極夜は見た。パァッと明るくなったのだ、春に咲き誇る花のよう。
白夜はタッと駆けて行って、星の胸に飛びついた。
「うわっ!」
星はぐらりと体をよろめかせるものの、なんとか支えを取り戻し、白夜の肩を持った。
「遅いよ! 私、今極夜ちゃんに詰められてたんだからね!」
「別にいいだろ極夜ちゃんなら……仲良いんだしさぁ」
極夜はそんな二人をニヤニヤと見つつ、星の方に近づいて行った。
「仲直り、できたんですね星さん」
「……まぁ、一応な? てか極夜ちゃん、然と一緒になんかしてたろ」
「えへへ、なんのことでしょーか?」
わからないなあと、またとぼけてみせる極夜。何とまあずるい嘘つきだろうか。とはいえ咎めるつもりもないし、むしろそのおかげで仲直りできたのだ。星は極夜の頭をポンと撫でた。
「わっ」
「……ありがとう。然にも伝えててくれよ」
「……え、へへ。はい!」
顔を埋めていた白夜は、そんな二人のやり取りを見て首を何度もかしげていた。彼女に星は、パッと手を取る。
「それじゃ帰ろうぜ、白夜」
「……うん!」
それから二人は、極夜にさよならと挨拶をして。仲睦まじく手を繋いで、帰って行った。その後ろ姿を、夕焼けに照らされる教室から見ながら。極夜はただ少しだけ、つぶやくのであった。
「……敵わないなぁ」