怪獣の出現が、ブラッドキングの後から無くなっていた。平和な日々が戻って、シェルターに行くこともほとんど無くなった。とはいえ家は壊れたままなので、今現在は建て直し中、山の上の霊島家邸宅に居候中なのだ。
今日は日曜日で空は曇り空、全く過ごしやすい気候だ。星は居間でゴロゴロとさせてもらいながら、手に入れた五枚のカードを並べていた。
「ガンQ、レッドキング、ブラックキング、アボラス、バニラ……読み方これであってんのかな」
計五体の怪獣たち。それぞれはタロットカードのような形になっていて、触れると暖かな熱を帯びていた。まるで生きているかのように、脈もうっている。
これら怪獣のカード、便宜上怪獣カードというそれらは、アースブレスレットによって、怪獣に変化させることができる。以前はガンQでそれを行い、共に戦ってもらった。レッドキングやブラックキングでも同じことができたらと考えると、これは大きな戦力ができたことになる。
「今日は誰もいないし……試してみるか」
居間の縁側から外に出て、怪獣カードを一枚取る。
“RED KING”と記されたそのカードを、アースブレスレットにかざせば、カードは光の帯となり、一つの獣の形を成した。これまた手のひらサイズの怪獣、レッドキングがちょこんと、地面に降り立っていた。
「ガウッ」
レッドキングは星に小さく吠える。
「……レッドキング、だよな。よろし、く?」
星は恐る恐る、彼に指を差し出した。握手代わりだ。レッドキングはその指を、両腕でしっかりと握った。それから、満面の笑みで笑って見せる。
「わっ」
小さい故デフォルメ調に見えるのか、なんだかとても可愛らしく思えた。というか、以前戦った時は虚ながら凶暴な一面を見せていたはずなのに、操られていなければこんなに可愛いのかと。
星は男の子であるが、かっこいいものと同じくらい可愛いものも好きだった。携帯カバーのデザインも、星とハートで可愛らしいデザインにしていたりするのだ。
それはともかく、星は両手でぶんぶんと指を振ってくれるレッドキングにメロメロにされた。この分なら他の子達はどうだろうかと、さらに三体も呼び出してみる。
「ギュル?」
二体目のブラックキング。彼はレッドキングを見つけるや、彼とハイタッチ。そして星の差し出した指も握ってくれた。
三体目、四体目のアボラスとバニラも同じくだ。この二体に限っては、お互いを見るや泡と炎を吐き始めて慌てて止めたのだが。どうやらカードから変化する怪獣たちは、どいつもこいつも可愛らしくいい性格をしているというのは、わかった。
「操られてなけりゃ、みんないいやつなんだな。安心したぜ」
星は遊ぶ四体を見てはにかんで笑った。四体はそんな星を見て、みんなして首を傾げる。
「あ、ごめんな。ひとまずみんな、カードに戻ってくれ」
星は四体をカードに戻した。光の帯からカードへと変わったそれらを、星は買ってきたケースにしまう。ひとまず、怪獣たちはどうやらやんちゃで可愛らしい存在のようだ。少なくともカードに変わる個体たちは。
そんな彼らが町に現れて暴れようとしたり、合体したり。やはり黒幕というのがいるらしい。そういえば丈は、バルタン星人を追ってきたと言っていた。そのエビのようなやつが、怪獣を操り暴れさせていたのだろうか。
「丈に聞いてみるか、そこらへんのこと!」
星はそう決めるや、丈の帰りを待つことにした。やることもないので、一応掃除を代わりにしながら。
そんな折、携帯がピピピと音を発した。着信音だ、星は掃除の手を止めて、応じた。
「はい、秋空ですけど」
『もしもし? 秋空黒江です。星、聞こえてます?』
秋空という姓と、黒江という名。星は顔をパァっと明るくさせ、彼女の言葉に応じた。
「姉さん! どうしたんだよ突然電話なんかかけて!」
秋空黒江というのは、星と白夜の姉に当たる人。秋空家の一番上の、長女だ。星からは七つほど歳が離れていて、今は二十四、海外で仕事をしている。その姉が電話をかけてくることは滅多になく、星は久方ぶりのそれを受けて、とても嬉しかったのだ。
『そちらの方で怪獣が多く現れたと、友人から聞きまして。星、大丈夫でした? 白夜も……大怪我をしたって』
「怪我なら大丈夫、俺も五体満足! 姉さんの方は大丈夫?」
『ええ、大丈夫でしたよ』
黒江はそう、電話口の奥で告げる。それから彼女は「そうだ」と言って、言葉を続けた。
『星。私、近々そちらに帰ります』
「え……帰ってくるのか? 仕事は」
『すでに仕上げていますよ。デザインも完成させて渡していますから』
黒江の仕事はデザイナー、らしい。あんまり姉が話してくれないし聞いても教えてくれないので、星は正直、あまり何をしているのか知らないのである。とはいえ彼女の仕事は実入りが良いらしく、星や白夜が学校に通えているのも、黒江のおかげであった。
「……んでも、姉さん。こっちは大丈夫だし、帰ってこなくても」
『いいえ。しっかり帰らせてもらいます。私も久しぶりに、二人に会いたいんですよ』
それならまあ、いいか。黒江のその後の話では、もう飛行機のチケットもとってあるという。来週には、帰ってこれるらしい。
「……一応言っとくけど、今家ぶっ壊れてるからさ。来るんなら霊島さんとこな」
『ええ、わかりました。星、白夜にも。よろしくと伝えておいてくださいね』
「了解、それじゃあな」
黒江との電話を切り、星はふぅとため息をつく。姉には仕事を心置きなくやっていてもらいたかったのだが、どうやら自分たちのせいで心配させていたらしかった。それが少し悔しいが、今はそれ以上に、姉が帰ってきてくれるというのが、星にはとても嬉しかったのだ。
「姉さん……ふふっ、久しぶりに帰ってきてくれるんだな、姉さん……!」
顔を赤くして、嬉しそうにクルクル回る星。その様はどこか、恋する乙女のようであった。