そこで。星の懐にあった、バトルナイザーが二つの光を放った。その光は一つ、アースブレスレットへと向けられ、またもう一つはゲルシェールのカードに向けられ、そして浸透していく。まるで何かを、指し示すようだった。
「もう一度かざせってのか?」
ならばと、ゲルシェールのカードをブレスレットにかざしてやる。今度こそ、ゲルシェールのカードが輝いた。実体化する、そう思ったが。
次いで響いた言の葉に、それは違うと思い知らされた。
《ウェポンライブ》
《ゲルシェールウィングセイバー》
それは、アースのコピー能力の成せる技だったのか。それとも、変身道具であるアースブレスレットの元となった、ウルトラブレスレットの成せる技だったのか。
今を語る未来になっても確証たる事実はわからないが、ともかくとして。その時、ゲルシェールは姿を変え、アースの武器として実体化したのだった。
「ゲルシェールの羽……っぽい、武器か、これ!」
それこそはゲルシェールウィングセイバー。
天色怪鳥ゲルシェールを見て、その翼の輝きと鋭さを見て。まるで“剣のようだ”と、星は想像した。その想像から生み出されたこの剣は、二刀一対、二つの翼の如き武器である。
双剣と言えばわかりやすいか、ともかく星はそれを構えた。今ならば、今のアースならば、誰よりも早く飛び戦える気がする!
「っし、やってやるかぁ!」
飛んだ。素早く、先ほど飛び出した時とは段違いのスピードで。その速度にものを言わせ、ウルトラマンアースはムーンと戦うメルバに、一瞬で接近し蹴りを入れた。
「ギュエッ⁉︎」
「はやっ⁉︎」
白夜が驚くのも束の間、ゲルシェールウィングセイバーを適当に振るう。三次元空間での戦闘などしたことがない上、双剣なんて使ったためしがないため、こう使うしかなかった。
「てやぁ!」
一度適当に振ってみると、体が武器に引っ張られ、変に好きを晒してしまう。
「っ、つかいにく、うおっ⁉︎」
肉薄してのドッグファイトでは、さすがにメルバに分がある。メルバは瞳から光線を放ち、アースにぶつけ、自身から突き放した。
次いで空中で方向転換、アースの背後に回るように、飛んだ。
「させない!」
そこにムーンが光線を放とうとするが、メルバの動きは彼女が構えるよりはるかに速い。あわや、アースの背が貫かれる。
しかし、アースは剣を背後にやり、無理やりメルバの鎌を受け止めて見せた。
「あっぶな!」
「キョエッ……ギイィ!」
火花を散らした鎌を見て、メルバは再度距離を取る。切り札の一つ、メルバニックレイを放ち、遠距離戦に持ち込むつもりなのだ。
メルバニックレイは光線、光の速さで動く強力な武器だ。これは通常飛行速度マッハ5のメルバにとっては、スラッシュクロー以上に戦力となる武器だ。さらに言えば、空中戦時の最高速マッハ9のスピードならば、彼に追いつけるものはほとんどいなくなる。
故にメルバには、慢心があった。現状光線を放った時点で、すでに戦闘時に出せる最高速には到達している。先ほどのアースのとろい動き、舐めていた時のムーンのスピード、そのどちらとも、自身にはついてこれないと。
「おらあァー!」
「キョエッ⁉︎」
だからこそメルバは驚愕した。あの角の巨人が見せた、自分以上のスピードに対して。
「ギイィ⁉︎」
メルバニックレイを撃ち弾くや、すれ違いざまに一閃。メルバ右腕のスラッシュクローが吹き飛び、地面に落ちてゆく。
突然敵が凄まじいスピードを出したことに驚きながらも体制を立て直し、メルバはアースを睨んだ。
さて、なぜアースがメルバのスピードに迫ることができたのか。これについて答えるとなると、やはり目につくのはウィングセイバーだろう。この二刀には、翼のような形状と、搭載されたジェット機構により。使用者の空中制御能力とスピードを、約二倍に跳ね上げる力が秘められているのだ。
アースの最大飛行可能速度はマッハ8。あくまでこれは最大の値であり、星が飛び出した際の速度はマッハ5であった。このスピードは、戦闘時マッハ9を叩き出すメルバ相手にはあまりに心許ない数値。
星自身がうまく飛行できていないこともあり、通常ならばメルバ相手には敵わない。そこに飛行能力を強化するウィングセイバーを得たことで、アースの空中戦適正がかなり強化されたのだ。
それはちょうど、メルバに迫るスピードと、制御能力に。ゲルシェールの力がそのまま武器となった二つの剣は、それほど強力なものだったのだ。
「だったら逃げる必要なかっただろっと!」
二刀を投げる。ブーメランのように回転するそれを、念力によって制御、メルバへ攻撃。メルバはそれらに左手の鎌を当てがうが、うまくかわせずにモロに攻撃を受けた。よろけた今が、最大のチャンスだ。
「一気にトドメだ! 白夜!」
「あーもう! ほとんど自分でやっちゃってるくせにぃ!」
ムーンは自分のカチューシャを手に取る。……取れたというのが正しいか、白夜は勢いに任せてそれを投げる構えをとった。
それに合わせるようになる、取り付けられた緑のエネルギー体から光が放たれティアラに纏われ。投げるや、緑の竜のようになり、それはメルバに向かっていった。アースは彼女の攻撃に合わせるように、二つの剣を構え立つ。
「行くぞ」
二刀の柄の底部を合わせ。巨大なブーメランとなったそれを、一気に振りかぶり投げつける。
片や緑の光を纏うは、グリンスペクトラム。巨大な嵐の如き一撃は、ツインシュナイダー。それぞれの技名を心の中で叫ぶや。
丁度にメルバがバツの字に切られ、粉砕された。肉片は全て光に変わり、カードに変わる。それが飛んで行こうとしたところを、アースは慌てて確保した。
「危ねえなぁ……メルバか。よろしくな」
“MELBA”と、書かれたそのカードは、先のゲルシェールよりも呼びやすかった。アースは背を伸ばし、疲れを取って……そこでウィングセイバーが輝き、元のゲルシェールのタロットに戻った。
「怪獣のカードが、武器になってたの?」
体を伸ばすアースに、ムーンが問う。アースはうなづき、ゲルシェールのカードとブレスレットを、ムーンに見せた。
「バトルナイザーが示してくれたんだ。ブレスレットにカードをかざせって。そうしたら、カードが怪獣を元にした武器に変わったんだよ」
「……怪獣が変身したのかな? 兄さんの思うような形に……とか。ともかく、結構良さそうな感じだね、それ。もしかしたらガンQ達でもできるんじゃない?」
それは確かにそうかもしれない。今先ほど仲間に迎え入れた、メルバとだってできるかもしれない。
「っし、なら早めに試して」
「……この真っ暗な中で?」
と、今日は新月で、今はもう陽が落ちているのだった。今日はもう、早めに帰った方が良さそうだ。
「そーだな……っし、帰ろうぜ、白夜」
「うん。疲れちゃったし、早く寝よ」
そんな他愛もない会話をして、二つの巨人は消えていく。町の警報も、いつのまにやら止んでいて、人々も戻ってきている様子であった。
「……そういえば、ゲルシェールはなんで追いかけられてたんだ?」
星は一瞬疑問に思い口に出すが。それに応えるものは、誰もいなかった。