ウルトラマンアース   作:アカイタマ

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赤きキョジン③

 その光は、彼らの預かり知らぬところではあるが、秋空家の邸宅に侵入し……神棚の中に入り込んだ。その瞬間。

 家を出ようとしていた秋空白夜の体を吹き飛ばし、その光はあるものを実体化させた。それによる爆発で地面が大きく揺るがされる。

 

 突如として起こる地面の揺れに、星たちは一斉に体を屈める。何が起こったのだ。そう思い、星だけが顔を上に上げると、巨大な目玉が目に映った。爆発の中に、その目が光っていて。それがぐにゃりと曲がって、笑った。

 

「かい、じゅう……⁉︎」

 

 怪獣の中でも、あまりに気持ちの悪い姿。怪獣は「ギィ」と鉄を切り裂いたような轟音を鳴らし、爆炎の中から現れた。怪獣どころか奇獣とも言えるその出立に、星だけでなく周りの人々も恐怖を示す。

 

『怪獣警報発令。多々良山近辺に怪獣が出現しました。屋外の方々は、お近くのシェルター入り口までお急ぎください。繰り返します』

 

 不意に聞こえるその音声に、気づいていない人たちも怪獣の出現を感じたようだ。波紋のように、恐怖が広がって行く。

 

「うわっ、あ……⁉︎」

「怪獣だぁ!」

 

 最初に逃げろと言ったのは誰だったか。ともかく皆、その言葉に乗せられて一目散に駆け出していった。然たちもまた、逃げ出そうとするが、ただ一人星だけが動かない。

 そんな星の背を、蓮が引っ叩いた。

 

「何してるの! 早く行くわよ!」

「いやっ……あそこって……俺の、うちの」

 

 星は辿々しく、そう言葉を発する。「俺のうちの」と、その言葉を聞いて、蓮たちはハッとして声を上げた。極夜が、彼らを代弁して声を上げる。

 

「白夜ちゃんが、まだあっちに……」

 

 その言葉を聞いた瞬間、星は自転車に乗り、駆け出していた。その様子に呆気に取られ、蓮たちは動くのを忘れたが、然が真っ先に駆け出した。

 

「星! 待ってよ!」

 

 星は聞く耳を持たず、自転車を走らせていく。急な斜面さえもそれで無理矢理超えて、家の方まで直走る。家の方、つまり丘の上のその場は、怪獣の出現位置に非常に近かった。だからだろうか、星がついた頃にはその一帯は火の手が走り、ボロボロになっていた。

 それらを見て、妹が生きていることを祈りながら、自分の家の方へ。

 家は内側から破裂したように、炎を発して燃えていた。すぐそばには怪獣がいるが、星には気づいていないようだった。

 

「白夜、白夜! ……あっ!」

 

 玄関から少し離れた、近くの塀に、白夜の倒れ込んでいる姿を星は見た。頭から血を流し、右の腕と左の足が酷い方向に曲がっている。生きているとは、到底思えないようなその惨状。

 だが彼女の胸に手を当てれば、心音が聞こえ息を吐いているのも確認できた。だがこのままでは死んでしまうのは明白だ。星は彼女を背に抱え、走ろうとする。

 それに気づいた怪獣は、目から紫の光を発した。その光が家屋を、公園を吹き飛ばしていく。星はなんとか走ってそれを掻い潜るが、途中で瓦礫に足を取られ、倒れてしまった。

 

「白、夜……うぐっ……」

 

 目の前で倒れる妹に、星は覆い被さる。すぐに次の攻撃が来てしまう。

 怪獣は星たちを見て、紫の光を目に溜めて……それを撃ち放った。

 それが、兄妹を包み込む寸前で。赤い光が彼らを、守るように立ちはだかった。

 

 爆発の音が響くのを聞いて、星は空を見上げる。そこには赤い色の巨人が、彼らを守るように立っていた。

 

「赤い……巨人?」

 

 瓦礫と化した、町の中。巨大な赤色の勇姿が、星たちを守っていた。黄金色の瞳で彼らを見つめる巨人は、逃げろ、と二人に促すかのように、何らかの音を発する。

 

「っ、わかった! しょっ、とぉ……逃げるぞ!」

 

 血を流す白夜にそう伝え、星は彼女を抱えて駆け出す。巨人はそれを見届けるや、大きくうなづき立ち上がった。

 

〜○○○〜

 

「奇獣ガンQ……パートナーとなる人間は、いないのか?」

 

 暴れる怪獣、ガンQの行動には指向性が見られない。ガンQはただただ、何かの力に引っ張られるようにして暴走しているのだ。

 巨人、ウルトラマンラルバは、彼を止めるべく構えを取った。ガンQは目の前の巨人を敵と判断したのか、顔を変形させ睨みを効かせる。だがウルトラマンも、顔の形を変え敵を睨みつけた。

 

「ギィ……」

 

 ガンQの方が怯んだ。ウルトラマンはその隙に、額からのレーザーでガンQを攻撃する。ガンQはそれを受け、吹き飛びながら動きを止めた。

 

「ジェア!」

 

 ラルバは接近、ガンQをすれ違いざまに転倒させる。そこから更に、彼の足を掴み、ジャイアントスイングの要領で投げ飛ばした。ガンQは倒れ伏すが、立ち上がってラルバを睨む。

 

「ギイィ!」

「ジェア……シェアァッ!」

 

 右手のブレスレットに頼ろうとした時。そのブレスレットがないことに気づくラルバ。先ほどの戦いの時、おそらくブレスレットはバルタンの手元に。

 仕方あるまいと、ラルバは頭部のトサカに手を当て、それを取るや投げ飛ばした。それはトサカ型のブーメランなのだ。ブーメランはガンQの命中し、彼を吹き飛ばしてしまう。

 ブーメランが頭部に戻った瞬間、ラルバは両腕をL字に組んだ。光のエネルギーをそこから撃ち放ち、ガンQに命中させると、ガンQは内側から膨張して爆発した。

 

「……よし」

 

 ガンQが粉砕された位置はクレーターとなった。そこを、何かを探すように見つめるラルバ。だが目当てのものは見つからなかったらしい。

 

「バトルナイザーがどこにもない。どこかに飛んでしまったのか? それとも……」

 

 考えている暇はない。そのバトルナイザーを回収しなくてはならないのだ。

 ウルトラマンは体を縮小させ、人間と同じ姿に変わった。赤い髪のメガネをかけた青年になったのだ。彼は瓦礫と化した秋空家邸宅に入ろうとする。だが、そこで声が聞こえた。

 

「白夜! 白夜、おい! しっかりしろよ!」

 

 その声は先ほど助けた青年の声だった。鬼気迫るその表情に、ラルバはすぐさま走ってゆく。青年が、少女の胸の上で何度も手を押している。彼は倒れた少女を必死で介抱しているようだった。

 

「死ぬな、おい! 死ぬなよ、白夜ァ!」

 

 死にかけの彼女を何度も、何度も助けようとする彼。ラルバはその姿を影から見ながら、彼に何かを重ねているようだった。

 

「……シェア」

 

 ラルバは一瞬姿を変え、額から光を放つ。桃色のその優しい光は、死の淵に瀕した少女の体を満たし、癒した。少年が無理矢理治した腕や足も、中身の骨を修復し、そして穴の空いた内臓も塞いでいく。

 その光が彼女に浸透した直後、秋空白夜は息を吹き返していた。

 

「……えほっ、けほっ……にい、さん……?」

「っ、白夜! よかった、生き返った……!」

 

 息を吹き返した白夜を、ぎゅっと抱きしめる星。白夜は驚くが、状況がわかってか、彼の体を抱きしめ返す。

 

「……あの少年は」

 

 そんな二人を見ながら、ラルバは星の方をじっと見やる。彼の体の中に、何を感じたのか。

 ラルバは、瓦礫の影から現れて、星たちに近づいた。

 

「……わ⁉︎ って、人? 大丈夫ですか?」

 

 星はラルバを見てそう言う。白夜もまた、星の言った言葉を聞いて、ラルバの方を見た。

 

「大丈夫だ。君たちを助けに来たんだ。……まず、君と話がしたいんだがね」

 

 ラルバは星の方を見て、そう言った。星は「話?」と一瞬首を傾げるが、それから言った。

 

「あの、貴方名前は……?」

「そう、だな。嵐山、丈……タケルだ。よろしく頼む」

 

 そう告げる、赤いウルトラマン。

 

 これが、彼ら秋空兄妹と、ウルトラマンの初めての邂逅であったことは、誰も知る由がない。

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