怪獣ガンQを葬り去った赤き巨人。そのことでテレビも新聞も話題は持ちきり。謎の巨人、ウルトラマンは人類の味方か否か。かねてより噂されていた宇宙人ではないのかと、そんな噂が噂を呼ぶ。
その中で、多くの人々に叫ばれているものがあった。ウルトラマンは、女神の使い、眷属なのではないかと。
「女神とはなんだ、星」
変身し、光線を頭から撃つ練習を、誰もいない山でしている最中。そんなことを突然、丈は聞いてきた。
ガンQの被害から避難してから、既に数日が経っていた。星はその間に特訓を始め、今は腕から“ストリウムシュート”と呼ばれる技を放てるまでに至っていた。星の中のアースが、得意としていた技らしい。
今は頭部から放つ雷光、“ホーンサンダー”を習得しようと特訓中だった。その最中に唐突に問われ、技が暴発。溜めていた電撃が星の全身を這い回り爆発した。
「あばばばばばばば⁉︎」
目を白黒させてしまう星。ようやく爆発が終わった頃に変身が解除され、星はどしゃりと音を立てて地面に倒れた。目を回した彼に、丈は駆け寄る。
「……大丈夫か?」
「んなわけないでしょ……」
黒焦げのままなんとか立ち上がって、星は丈をじっと睨んだ。
「丈さん! やってる時に話しかけないでくださいよ!」
「すまない」
たく、と悪態を吐きつつ、星は自分の体の焦げを払い、丈の先ほどの問いに答えるのだった。
「女神様……つっても、俺は見たことないんですけどね。俺と同世代は多分、聞き齧ったくらいの人っすよ」
「ふむ。なら、どんな存在だったか、聞いたことを教えてくれないか?」
「ふーん……女神様って言うのは、ウルトラマンみたいなもんなんすよ」
抽象的な説明から、星は入り始めていた。
「ウルトラヘカーテって呼ばれてまして。巨人って言うくらい大きくて、まあ他んとこも色々大きいらしくて。すごく強いんですって。いろんな怪獣を倒して、いろんな人を助けて、防衛隊もすごく助かってたみたいっす。十七年前になんかの戦いで負けた後に、姿は見えなくなったとか、で……俺らはほんとに、聞き齧ったりネットで調べたりして知ってるだけなんすよね」
言いつつ、星は取り出した携帯で検索をかけ。そこに映った画像を、丈に見せた。画面の中には、金髪をたなびかせ、海を背に立つ、美しい乙女の姿があった。抜群のプロポーションを持つその乙女の胸の谷には、三角形の青い宝石が瞬いている。
「……これは」
「かっこいいつーより、結構いけてる感じでしょ? 男はやっぱり好きだと思うんすよね、女神様」
なんて言う星は、なぜか笑いながら携帯を操作した。本人は電源を切ったつもりだったのだろう。だが、押す前に携帯の画面が操作され、写真のアプリが開かれた。
そこに“何故か”分けられた女神様と名の付くファイルを、丈は見た。丈はそれをトンと押す。
結論から言えば、それはかなりいかがわしいファイルだったのだ。この場では言えないような画像を大変多く内包している、まさに男の夢が詰まっているような。
「何してんすか丈さん?」
「いや、星。君は女神が好きなのだな、と思ってな」
丈は苦笑していた。星は自分の携帯を見る。開いていた画面を見て凍りついた。
「………………あの、その、えと、見なかったことにしてください……」
「すまないが、既に目に焼き付けてしまってな。忘れることはできそうにない」
「ちっきしょう! あーもう、実際女神様エ……じゃない、可愛いじゃないっすか。だからその、やっぱり好きになっちゃうんすよね……」
「なるほどな」
星は再び変身するためか、人形(スパークドールズという)を取り出して、言った。そんな彼を見つつ、丈は呟く。
「性愛はあるも、その本質は敬愛か。……この星の女神は、それほどまでに人を惹きつけているのか」
丈は女神のことを、知っている。先ほどの問いは“女神そのもの”ではなく、“この星の女神はなんというのか”について聞いたつもりだった。星は少々間違った受け取り方をしたが、目当ての答えは得られたので、結果オーライといったところか。
「……てか、そういえば俺も聞きたいことあるんすけど」
「どうした?」
星は、そういえばと丈に、思い出した問いを投げかけた。
「丈さんは何をしにこの町に来たんすか?」
「友人の非行を止めるためだ。君に出会ったのは、正直に言えば偶然だ」
「いや、偶然って……まあそれは良いっすけど。その友人って、なんなんです?」
「一言で言うなら宇宙人だな」
宇宙人まで出てきた。なんかもう、そんなことでは驚かなくなっている自分がいる。
「……ひとまず、そいつが怪獣を呼び出してるとかで良いんすよね?」
「どうだろうな。彼にはそこまでの力はないからな」
「……なら、あんまり考えなくて良さそうっすね」
星はそれだけ言うと、「ありがとうございました」と告げて、特訓に戻った。
「あまり伝えなくても良いことだが……しかし十七年前から行方知れず……一体どうしたのだ……?」
そう、女神の現在について考える丈をよそに。星はアースに変身し、技の特訓を開始していた。丈の立てた避雷針に、ホーンサンダーを命中させている。
少しずつ様になってきている、と、丈はそちらに目線を移すのだった。