「星。実戦だ」
出現した怪獣二体を見て、そう丈は言った。彼は赤縁メガネを取り出すや、それを顔にかけ変身する。
《バーンアップ》
《ウルトラマンラルバ》
既に変身している星は、こくりとうなづいた。
「丈さんが片方を、俺がもう片方をやればいいんすよね」
「その通りだ、星。俺はあの、金色の方をやる。君は黒い方を足止めするんだ。教えた技を使ってな」
「うっし、わかりました!」
「……では」
二人はそれぞれ自らの体に念じた。彼らの体はそれによって、巨大なものに変わっていく。光を放ちながら変化する彼らは、赤い巨人と、カラフルな色の巨人に、それぞれ変わった。
怪獣、レッドキングとブラックキングは、星たちの方を見る。現れた彼らを見て、虚な表情を崩さず、怪獣達は吠えた。
「行くぞ」
「はい!」
それぞれが怪獣に向けて、駆け出す。星の変身したウルトラマン、アースは、黒い怪獣ブラックキングに向けて突進した。
「グルッ……ゴオァッ!」
ブラックキングは口に火を溜めそれを解き放つ。地面を抉るその一撃を掻い潜り、チョップを一撃、首に叩き込む。ブラックキングは怯み、唸った。
「おらっ!」
「グゴっ⁉︎」
その隙に回し蹴りで敵の腹を弾き、後退させ。間髪入れず、技を叩き込む。
「ホーンサンダァー!」
技とは即ち、ウルトラマンという存在の体内に眠るエネルギーを用いた、光線のこと。様々種類のあるそれらを、ウルトラマンアースはあらゆる属性に沿って固め、放つことができるのだ。
角から放たれるその一撃は、黄金に閃く天の雷霆“ホーンサンダー”である。ブラックキングに生える金色の大角にそれは命中し、敵を痺れさせた。
「グガッ……ガグガァ……」
「よっしゃ!」
喜ぶ彼を横目に、ウルトラマンラルバもまた、レッドキングを相手に攻撃を繰り出す。レッドキングはラルバの腕を掴み、ねじ伏せようとしてくるが。だが、パワーではラルバの方が上のようである。
「ぬぅ……おおぉ!」
「ピシャッ⁉︎」
敵の腕を掴み返し、その場で投げる。転倒したレッドキングは、地面に叩きつけられ隙を晒した。一気に畳み掛けるべく、ラルバはレッドキングに馬乗りになり、チョップの連打。
レッドキングはそれを受けて身悶えるが、口から岩の弾丸を放ってラルバを吹き飛ばした。が、そのラルバは空中で体勢を立て直し、地面に着地する。
「悪いが一気に決めさせてもらう」
そう告げるや、頭部の宇宙ブーメランに手を触れ、それを取り外す。バーンスラッガーと呼ばれるそのブーメランは、名の通りと言うべきか炎を生み出す力を持つ。それを、腕力にモノを言わせ投げ飛ばす。
バーンスラッガーは空中で弧を描き、レッドキングに向かい。そしてその体を、木っ端微塵に切り裂いた。バラバラになったレッドキングの体は光となり、一枚のカードとなってどこかへ飛んでいった。
「っ、今のは⁉︎」
消えた怪獣のその様子に、ラルバは見覚えがあった。あれは確か、怪獣使いによって怪獣が操られ、それが倒された時に起こる現象だ。どこかに怪獣使いが、ラルバが追ってきたバルタン星人がいるのか? そう考えるラルバだが、確証は得られない。
ドン、と、その考察を破る破砕音がなる。鳴らしたのはブラックキングであり、彼は角を振りかぶって、ウルトラマンアースを吹き飛ばしていた。
「あぐっ……くそ!」
「星、あまり無闇に攻撃をするんじゃないぞ!」
「わかってますよぉ!」
叫ぶ星は、ブラックキングが掴みかかってくるのを避け、その顔面に膝蹴りをくれてやった。
「ピギュア⁉︎」
怯むブラックキングを前に立ち、星は息を大きく吐く。気合いは十分、後は覚えた技を解き放つだけだ。
両手を天で重ね、そして腰に据える。武道家のようなそのポーズから、両手をT字の形に組み。ウルトラマンアースは、必殺の光線を撃ち放った。虹色のその一撃は、ブラックキングの体を突き破り、一気に爆裂して粉砕する。これこそがウルトラマンアースの必殺技、“ストリウムシュート”であった。
「……よっしゃあ!」
「やったな、星」
「はい! 俺が、俺が怪獣倒して……町を守ったっすよ!」
そう嬉しくなって、笑う星。ふと、胸の宝石が青から赤に変わった。ピコンピコンと音を立て、点滅を開始する。
「んっ……丈さん、こいつ鳴り始めたんすけど……」
「エネルギーが少ないことを示しているんだ。変身を解こう」
「は、はい!」
二人は変身を解き、人間の姿に戻った。被害が出る前に怪獣を倒せた結果、町はいつものまま、火の手も見えない。
「……ウルトラマンの力なら、町を守れるんだな」
「そうだな。常に迅速な判断が必要だが。今日のように、怪獣に直ぐな対処できたなら、こうして被害は出ないだろうな」
「……丈さん、それなら俺、もっと色々強くなりたいっす」
星は丈にそう告げた。きっとそう言ってくるだろうとは丈と思っていた。
星はまっすぐな眼差しで丈を見ている。それを受けて、丈は首を縦に振った。
「また明日から、君に技を教えよう、星。まだアースの技の全てを、教えることができたわけではないからな」
「っ……! ありがとうございます、丈さん!」
そうして、二人はシェルターへと戻った。もちろん外に出ていたことがバレないよう、こっそり隠れながら。
彼らが戻るまでの間、残された一人の少女が、動揺を見せていたことなど、二人は知らない。
〜○○○〜
「にい……さん?」
テレビに映った巨人は、ウルトラマンアース。それに変身できるのは、白夜は一人しか知らない。だから自ずと答えが出た。
「どしたの白夜ちゃん」
「……いや、なんでも、ないよ……」
白夜はそう言うが、極夜の目には、彼女が狼狽えているのが分かりやすく映っていた。白夜の目線はテレビに映る、角の生えた巨人の方に向けられている。それが気になるのだろうか。
極夜はそれとなく、白夜に聞いてみた。
「ねえ白夜ちゃん。あの角の人、知ってるの?」
「し、知らないよ……あんなの、あんな人のことなんて……」
「ふぅん……それなら、いいんだけどさ」
白夜の様子はおかしかった。あの巨人がその状態に関わっているのは、間違いないだろう。なぜここまで狼狽しているのかは、わからないところでもあるが。
どうしたのかと心配になり、極夜は彼女をじっと見る。ふと、白夜の口から、小さく声が漏れるのを、極夜は聞いた。
「……兄さん、なんで……」
それが答えだろう。極夜は今聞いたことを、ひとまず心の中に、しまっておくことにするのだった。