問題児たちと無から有を生み出す錬金術師が箱庭にくるそうですよ?   作:神流朝海

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こんにちわ~

読んでくれてるみなさんのおかげで、お気に入り登録数70突破しました。

読んでくれている方、読んでくれた方、ありがとうございます!

今回はペルセウスとのギフトゲームです。
少し、というかそこそこ、原作とは違います。


では、どうぞ


北の祭りと禁忌と魔王
ペルセウスとのギフトゲーム


ゲームの舞台、白亜の宮殿に行くまでに十六夜からいろんなことを聞いた。

 

ルイオスは「アルゴル」という悪魔を使役しているとか、ドアをドアノブを回さずにあけられるとか。

 

・・・ドアノブを回さずにあけるとか、どうせ壊すだけだろ?

 

答えは俺の予想通りだった。

 

そして白亜の宮殿の門まで蹴り破った。

 

・・・・・

もうちょっと静かにあけられないのか?

 

ともかく、これでギフトゲームが始まった。

 

「じゃ、手はず通りに」

「りょ~かい。ちょっと暴れてくるわ」

「私も」

 

俺と耀は声がする方へと走った。

そして広間まで来た。そしてすぐに、

 

「いたぞ!!」

「これであと3人だ!!」

相手の兵士に見つかった。

 

「やっぱり見つかるの早いな~。開始何秒だ?」

「ん~8秒くらい?」

 

俺は耀とそんな緊張感に欠ける会話をした。

「とっとと片づけるか?」

「そうしよ。十六夜たちの方も気になるし。それに透明化の人たちに会わないとだし」

「そうだな。じゃ、行くぞ?」

「準備はいいよ」

 

俺は魔法で、耀はペガサスのギフト使って、兵士たちに向かって走り出した。

 

 

 

 

俺はジンと飛鳥と一緒にいた。

今はジンがギフトを使い、周りを警戒しながら慎重に進んでいる。

ジンのギフトは“精霊使役者”

隷属させた魔王や精霊などを使役できるギフトだ。

今は史夜からもらった「コロポックル」という人型の小型精霊を使役している。

そうして何事もなく、順調に進んでいった。

 

 

 

 

「これで見える敵はだいたい片付いたかな?」

「たぶん。久しぶりに暴れたな~」

耀は背伸びをしている。

「俺もだ。久しぶりにこんなに力を使ったぞ」

そんなことを話していたら、

 

・・・・・・・・・

 

『耀、分かったか?』

『少しだけ。正確な場所までは・・・』

『分かった。俺が探す』

 

俺は脳内で魔法を発動させる。

 

魔法の系統は振動系魔法だ。

空気を揺れさせ、跳ね返ってきた振動をもとに、相手の場所を割り出す。

 

イルカとかコウモリとかが使っている超音波みたいなものだ。

 

『思ったより少ないぞ。数9人。場所は右の柱の奥に4人、左の噴水の影に2人、後ろの出入り口に3人だ』

『了解。動くよ』

『ああ』

 

俺と耀はそれぞれ目標に向かって走る。

「お疲れさん」

俺は透明のギフトを持った兜をかぶっているやつがいるところへ向かって、昏睡の呪言を唱える。

 

スー、スー

 

よし、寝たな。俺は近寄り、その三人から兜を拝借する。

これで十六夜たちに渡せば俺らの仕事は終了だ。

 

「そっちも終わった?」

「ああ、いまさっき終わった」

耀の声がした方を向きながら言った。

 

だが、そこには耀の姿がなかった。

「へぇ~すげぇ兜だな」

「史夜に私は見えないの?」

「うん。見えないぞ」

「へ~いたずらとかに使えそうだよね」

「俺にはいたずらしないでくれよ」

 

俺は苦笑いを浮けべながら兜をかぶり、十六夜たちの下へ向かった。

 

 

 

 

 

「人が来ます」

「どうするよ?」

「どうするの?」

「僕がやります」

ジンが珍しくやる気だ。仲間をあんな扱いをされて怒っているのだろう。

「じゃ、頼むぞ」

「はい」

ジンが一度眼を閉じる。

そして開くとジンの瞳の色が赤色に変わっていた。

「#$%&’*+」

俺にもわからない声でつぶやく。

史夜ならわかるかもしれないが・・・

 

そしてジンがつぶやいた後、俺たちの周りが薄い膜みたいなもので包まれていくのが分かった。

 

ジンはまだ、魔王を隷属させておらず、史夜にもらった「コロポックル」と「ペリ」という精霊しか使役できない。

これもきっとその「コロポックル」のギフトなのだろう。

確かコロポックルは「蕗の葉の下の小人」という意味の妖精だったはずだ。

あと「ぺリ」も史夜からもらったはずだ。

なにかの本で読んだが、確か、ペリというのはイランの高原地帯に棲んでいるとされる、四大元素の火、水、地、風の内の火から生まれた魔法を使える妖精だったはずだ。

 

それにしてもよくこんなの従えているよな。史夜もジンも。

そんなことを考えていたら、兵士が目の前を歩いて、そのまま去っていった。

俺は飛鳥を見た。飛鳥も驚いている。

俺は兵士が完全に去ってからジンにたずねた。

「今の、お前の力か?」

「そうです。といっても史夜さんにもらったこの「コロポックル」のおかげですが」

「透明化に似たような効果なの?」

飛鳥が質問する。

「少し違います。透明化、というか見えない?だけだと思います」

「思います?それはどういうことだ?」

「う~~ん・・・」

そこでジンは何かを思いついたかのようになる。

「十六夜さんは「ぬらりひょん」という妖怪を知っていますか?」

「ああ、知ってるぞ。確か、人の家に勝手に上がりこんでお茶をすする、とかいうやつだったな」

「これは「ぬらりひょん」の力に似ています。「見えていない」ではなくて「認識できていない」といったところだと」

「なるほどな。こっちは“姿”を見られなきゃいいわけだから認識できなければいいのか」

「さっきから何をいってるのかわからないわ・・・」

飛鳥だけ頭を抱えている。

「ただし、これはとまっている間しか使えません。それに「認識できない」だけであってさわることもできますし、音も外に漏れます」

「ま、さっきはそれに助けられたしな。この辺で史夜と耀を待つか」

「はい」

「~~~~~」

飛鳥はまだ頭を抱えていた。

 

そこにテレパシーが来た。

 

『お~い?十六夜、こっちはあらかた終わったぞ』

『今、どこにいる?』

『十六夜の後ろ』

ほう、そうきたか。あの兜を取ってくるのが史夜と耀の仕事だからいたずらくらいはしてくるだろうと思ってはいたが。

俺は振り返りざまに、

「よっと」

手刀を入れる。それに、

「あぶな!?」

史夜が反応し、避ける。

 

・・・・・チッ

 

「今舌打ちしなかったか?」

「ん?なんのことだ?気のせいだろ」

 

史夜が兜を取りながら言ってくる。

もちろん俺はしらばっくれたが。

 

「しかし本当に見えないんだな」

「ああ、結構楽しいぞ?」

「ま、とりあえず俺と飛鳥とジンは上にいってくる」

「ん、がんばれよ」

「がんばる必要もないかもな」

「飛鳥もがんばってね」

「もちろんよ」

「ジンも気をつけてな」

「はい!」

俺と耀は持ってきた3つの透明になるギフトを渡した。

十六夜と飛鳥とジンは俺たちの視界から消え、ルイオスのところへむかった。

 

「さて、暇になったけどこれからどーする?耀?」

「ん~とりあえず何か食べに行く?」

耀の反応に俺は笑って答える。

「それ、ありなのかよ?」

「いいでしょ?私たちの仕事は終わったんだし」

「ま、それもそうだな。じゃ、食べに行くか」

「うん!」

 

 

 

俺は白亜の宮殿の最奥、最上階にいた。

最奥に天井はなく、闘技場みたいな簡易な造りをしていた。

 

「十六夜さん、飛鳥さん、ジン坊っちゃん・・・!」

最上階で待っていた黒ウサギは安堵したように三人の姿を確かめてため息を漏らす。

 

眼前に開けた闘技場の空を見上げると、見下ろす影があった。

「―――ほんとに使えない奴ら。今回の件でまとめて粛清しないと」

そいつには、ルイオスには確かに翼があった。

光り輝くブーツから対になっている光る翼があった。

 

「おいおい。なかなかおもしろそうなギフト持ってるじゃねぇか」

俺は感想を述べた。

 

バサッと光る翼が一回、空気を打ち、落下速度の数十倍の速さで俺たちの前に降り立った。

 

「なかなか派手な登場だな、ルイオス」

「“名無し”風情がよくここまでこれたな。ま、それも雑魚どものせいだろうが」

「おいおい。これは俺たちの力だぜ?」

「ま、なにはともあれ、ようこそ白亜の宮殿・最上階へ。ゲームマスターとして相手をしましょう。・・・・あれ、この台詞言うの始めてかも」

それはすべての騎士たちが優秀だったからだ。

もしこれがちゃんと準備されたゲームなら俺たちの勝ち目はさらになくなっていた。

“史夜がいなければ”だが。

俺たちには史夜がいる。結構腕も立つし、頭もいい。俺並みだろう。

 

俺はルイオスの言葉に肩をすくめて答えた。

「ま、不意を打っての決闘だからな。勘弁してやれよ」

「フン。名無し風情を僕の前に立たせた時点で重罪だ」

ルイオスの翼がもう一度羽ばたく。

彼は“ゴーゴンの首”の紋が入ったギフトカードを取り出し、光と共に燃え盛る炎の弓を取り出す。

 

そのギフトを見て、黒ウサギの表情が変わった。

「・・・炎の弓?ペルセウスの武器では戦わない、という事でしょうか?」

「当然。空が飛べるのになんで同じ土俵に立って戦わなきゃいけないのさ?」

ルイオスは小馬鹿にするように天高く上っていく。だが、戦いの意思はまだ見られない。

 

壁の上まで飛び上がったルイオスは首にかかっているチョーカーを外し、付属している装飾を掲げた。

「メインで戦うのは僕じゃない。僕はゲームマスターだ。僕の敗北はそのまま“ペルセウス”の敗北になる。そこまでリスクを負うような決闘じゃないだろ?」

俺には少しばかり身構える。

あいつの言うことから推測するに、あれにはギリシャ神群の神々の中の一体を呼び出すものだ。

「伝承通りならアルゴールか?それともそれに似たなにかか?」

 

ルイオスが持っている装飾が強弱様々な光を放ち、一つ一つ封印を解いていっているようだった。

 

俺は飛鳥とジンを背後に庇い、臨戦態勢を取った。

光が一層強くなり。ルイオスが獰猛な声で叫んだ。

「目覚めろ!―――“アルゴールの魔王”!!」

 

光は褐色に染まり、俺たちの視界を染めていく。

白亜の宮殿に共鳴するかのような、甲高い女の声が響き渡った。

 

「ra・・・Ra、GYAAAAaaaaa!!!!!]

 

それは最早、人の言語野で理解できるものではなかった。

冒頭こそ、謳うような声であったが、それすらも中枢を狂わせるほどの不協和音だ。

 

 

現れた女は体じゅうに拘束具と捕縛用のベルトを巻いており、女性とは思えない灰色の髪を逆立たせて叫び続ける。

うるせえな!と思っていると、黒ウサギの背後から結構な勢いで大きな岩塊が落ちてくるのを見た。

「よけろ!!黒ウサギ!!」

 

黒ウサギは突然のことに硬直する。

ああ、くそ!!

俺は黒ウサギを抱え、飛びのこうとした。だが、その必要はなかった。

『水たちよ、私たちを守りなさい!』

飛鳥がギフトを使って、大きな岩塊を弾き返した。

そして俺たちを岩から守ったのだ。

「すまねぇな、飛鳥」

「どうってことないわよ。あなたはルイオスを叩きのめすんでしょ?」

「ルイオスのヤローはまかせとけ、ジンと黒ウサギを頼んだぞ」

「わかったわ」

 

飛鳥にジンと黒ウサギをまかせ、俺はルイオスの前に立った。

「“アルゴールの魔王”、アルゴルとはアラビア語でラス・アル・グルを語源とする、“悪魔の頭”という意味を持つ星のことだ。

同時にペルセウス座で、“ゴーゴンの首”に位置する恒星。だからゴーゴンの魔力である石化を備えているのはそういう経緯があるから、だな?」

「名無しのくせに案外物知りじゃないか」

「お褒めの言葉ありがとよ。さ、準備はいいかよ?ゲームマスター」

「ん?3人でかかってこないのかい?後ろの子、リーダーと仲間だろ?」

「おいおい、自惚れるなよ。お前如き、うちの坊っちゃんとお嬢様が手を出すまでもねぇ」

 

十六夜の軽薄そうな笑いに、ジンはうすら寒い悪意を感じる。今回のことも広報に使うつもりらしい。

しかし、ルイオスは侮辱されたと思い、肩を震わせて叫んだ。

「―――はっ。名無し風情が。精々後悔すればいいッ!!」

「ra、GYAAAAAaaaaaaaa!!!!」

 

輝く翼と灰色の傷ついた翼が宙を舞う。

ルイオスはアルゴールよりさらに高く飛び、その影から炎の弓を弾く。

蛇のように蛇行する炎の矢を、俺は気合一括で消し飛ばした。

「渇!!」

それだけで炎の矢は消し飛んだ。我ながらすばらしい肺活量だ。

 

「チッ。うちのクラーケンを倒すだけの力はあるか」

ルイオスは無駄を悟り、炎の弓をしまう。代わりにギフトカードから取り出したのは,“星霊殺し”を新たに付与された鎌のギフト・ハルパー。

縦横無尽に飛び回るルイオスたちは挟み込む形で十六夜を追い詰める。

「押さえつけろ!アルゴール!!」

「GYAAAAAAAA!!」

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、ある喫茶店。

そこで俺と耀は昼ごはん兼おやつを食べていた。

「お、これおいしいな」

「え?どれ?」

「ほら、このクッキー」

俺が指をさすと、すかさず耀が手をのばし、クッキーを一枚取って食べる。

「ほんと!おいしい!」

 

十六夜たちが戦っている間に俺と耀は楽しんでいた。

黒ウサギに見つかったら怒られそうだな・・・・・。

 

「はぁ~」

「あ、またため息をつく」

「あ、ため息をついたら幸せが逃げるんだっけ?」

また一枚クッキーを食べながら言う。

「たぶん。幸せは大事」

耀もクッキーを一枚食べながら言う。

 

「今頃十六夜たちは戦ってるかな?」

「そうだと思う―――」

「どうしたの?史夜?」

「う、上」

俺は上を指差しながら言う。

 

「上?―――え?」

耀も上を見ながら言う。

 

俺たちが見上げている空から、とても大きい岩の塊が落ちてくるのを見た。

 

「これ、どうなってんの?」

「私に聞かれても・・・」

「とりあえず守るぞ」

「ん、わかった」

 

俺は錬金術を編み始める。

耀はペガサスのギフトを使って、飛ぶ。

耀が落ちてくる塊を砕き、俺がその欠片を集め、被害が出ないようにする。

 

さて、この塊、どーしたもんか?

ん?これって―――

 

「史夜、あっちにも岩塊が」

「あっちって言われてもわかんねぇ!」

「う~んと・・・白亜の宮殿を0時の方向としたら、6時、8時、3時、11時、1時のところ。距離は今の私の足で3秒ってとこ!」

「了解。じゃ、いくぞ」

 

俺はかなりの速さで練成陣を描いていく。

別に指を鳴らすだけでもよかったけど、あのやり方は少し神経削るからめんどいんだよな。

それに遠隔練成はちょっと脳内だけじゃめんどくさい。

俺は5つの練成陣を2秒で描きあげ、発動する。

 

この錬金術は普段使っている「構築」と呼ばれるものではなく、「再築」と呼ばれるものだ。

 

この「再築」は例えば、自然界にあるものや人間が作ったものを錬金術やその他術で物質を変化させた場合、それを元の物質に戻すことを言う。

俺はすでにこの塊の正体を知ってるから「再築」を使った。

 

この塊の正体は、「雲」だ。

確かに、空を見上げると、さっきまであった雲が全部消えている。

 

ここで「分解」を使ったら雲がなくなるからな。

雲は作れるけどいちいち「構築」とかめんどくさい。

 

俺はアニメのように、手を合わせ、そして指をパチンパチンパチンっと3回鳴らす。

こんなときだが俺はふと、こんなことを思ってしまった。

 

アニメとか忠実に錬金術を再現してるよな~。多少省略してあるけど。

悪魔の祓い方とかもちゃんと本物に則ってるし。

アニメや漫画作る人、結構学習してるな~

 

と。まさに、今どうでもいいことである。

 

そんなことを考えながらも俺は錬金術を発動させる。

発動した錬金術は岩の塊(雲)を覆い、白い雲へと変えた。

もちろん、こんな高さで雲はできないので、すぐ消えたが。

 

「おつかれ、史夜」

「おつかれ、耀。俺はたいして疲れるようなことはしてないけどな」

「ううん。錬金術であの塊が街に落ちるのを防いだじゃん」

「ま、そうだけど」

「これからどうする?まだデザート、食べてないけど」

耀はデザートをご所望のようだ。まぁいっか、俺も食べたいし、

「そうだな。デザート食べに行くか」

「うん!」

耀と俺はデザートを求めて、次の店に向かった。

 

 

 

 

史夜たちがそんな風にのんきに空から降ってくる石化した雲を街に落ちないようにしているときに、十六夜は戦っていた。

 

ルイオスの命令により、十六夜を押さえようとアルゴールが両手を振り上げ、下ろす。

それを受け止めた十六夜は、相手の両手を組み合うようにして、握り締める。

信じられないことだが、星霊と真正面から力比べをやるつもりなのだ。

 

「ハッ、いいぜいいぜいいなあオイ!!いい感じに盛り上がってきたじゃねぇか」

「RaaAAaaaGYAAAaaaaaa!!」

 

十六夜の手とアルゴールの手が重なる。しかし、押し合いになったのは、ほんの一瞬だった。

アルゴールは耐え切れずに押し切られ、その場でねじ伏せられてのだ。

 

「GYAAAAaaaaaaaa!!!!!」

「ハハッ、どうした元・魔王様!今のは本物の悲鳴みたいだぞ?」

 

まだまだ余裕のある声を上げ、アルゴールに攻撃を続けた。

 

それを私は離れた場所から見ていた。

「すごいわ・・・1人でこれだけの相手と・・・」

私、久遠飛鳥は今までに繰り広げられた攻防をずっと見ていた。

私にはあんなことできない・・・・。

せめてあれを援護できるくらいにはならないと!

という思いと、私、あまり十六夜君の役に立ててないじゃない!、というかなりの悔しさが心の中で葛藤していた。

 

だけど今は我慢するところ。彼に言われたことをやり遂げるだけ。

私は水樹の苗が入ったギフトカードを握り締めた。

 

 

 

十六夜がアルゴールを攻撃している間にルイオスが十六夜の背後にまわる。

「図に乗るな!」

「テメェがな!」

ハルパーを片手に疾駆するルイオスを、下半身をひねった勢いで蹴り上げる。

かろうじて柄で受け止めたルイオスだったが、あまりに重たい一撃を受けて、空へと吹き飛ばされた。

 

防いだにもかかわらず、嘔吐感がこみ上げるほどの一撃。第3宇宙速度で殴り飛ばされた騎士たちより更に速い速度で吹き飛ばされたルイオスに十六夜は跳躍して一瞬で追いつく。

「どうした?翼があるのに不便そうだな?」

「き、貴様っ・・・!!」

今度はルイオスが怒り任せに鎌を振り下ろす。

だが、十六夜は難なく受け止め、今度は地面に向かって投げ飛ばした。

ルイオスは闘技場で昏倒しているアルゴールに重なるように叩きつけられたのだ。

「ガッ!!?」

「GYA・・・!」

二つのうめき声。ルイオスはあまりのデタラメっぷりに体を起こしながら狼狽して叫ぶ。

 

「き・・・貴様!本当に人間か!?一体どんなギフトを持っている!!?」

無理もない疑問だろう。“星霊”を力でねじ伏せ、天駆けるヘルメスの靴よりも速く走る人間など存在しない。

その疑問に答えようと十六夜はギフトカードを取り出す。

「ギフトネーム“正体不明”―――ん、悪いな、これじゃわからないか」

飄々と肩をすくませて笑う。

余裕を見せる十六夜の姿を見てジンは慌てて叫んだ。

「い、今のうちにトドメを!石化のギフトを使わせてはだめです!!」

ジンの言うとおり、アルゴールは石化のギフトが本領なのだ。

だが、自分の力でねじ伏せたいルイオスは更に正面対決を望んだ。

 

「アルゴール!神殿の悪魔化を許可する!やつを殺せ!」

「RAAaaAA!LaAAAAA!」

謳うような不協和音が響く。とたんに白亜の宮殿は黒く染まり、壁は生き物のように脈打つ。

その中から蛇の形をした石柱が数多の数十六夜に襲い掛かる。

十六夜は避けながら思い出したようにつぶやく。

「そういえば、ゴーゴンにはこんなのもあったな」

ゴーゴンには様々な魔獣を生み出した説がある。

そして今は、白亜の宮殿は魔宮と化している。

 

周囲が見えていないのか、ルイオスが狂気じみた形相でルイオスは叫んだ。

「もう生きて返さないッ!この宮殿はアルゴールの力で産まれた新たな怪物だ!貴様にはもはや足場一つも許されていない!貴様らの相手は魔王とその宮殿そのもの!このギフトゲームの舞台に、貴様らの逃げ場はないものと知れ!」

ルイオスの絶叫と謳うような不協和音。その間にも数千の蛇が生まれ、十六夜の体を覆う。

その中心で十六夜はボソリとつぶやいた。

 

「そうかい―――・・・つまりこの宮殿ごと壊せばいいんだな?」

 

「「「え?」」」

飛鳥とジンと黒ウサギはいやな予感がした。

 

十六夜は無造作に上げた拳を、黒く染まった魔宮に向かって振り下ろした。

十六夜を覆っていた蛇はその衝撃波によって霧散し、闘技場は崩壊し、瓦礫は4階を巻き込んで三階まで落下した。

「わ、わわ!」

「十六夜君!もうちょっとまわりも考えて!!」

「だいじょうぶですか!?2人とも!!」

黒ウサギは急いで飛鳥とジンのもとへ向かう。

ちなみに崩壊には巻き込まれていない。飛鳥が水の浮力を底上げし、今は水の上に立っているのだ。水はギフトカードに入れた水樹の苗から引き出している。

「わりぃわりぃ、次から気をつける」

飛鳥から講義の声があがったので一応弁護しておく。

別のところからも声があがっていた。

「・・・バカな!!・・・どういうことなんだ!!?奴の拳は・・・山河を砕くほどの力があるのか!?」

上空で恐怖とも言える叫びをあげるルイオス。

ルイオスたちには翼があるので崩壊はまぬがれたようだ。

 

残った闘技場の墓場から見上げる十六夜は少し不機嫌そうに声をかけた。

「おい、ゲームマスター。まさかこれでネタッ切れじゃないよな?」

「・・・・ッ・・!」

まだ宮殿の怪物は生きている。だがこのままいっても好転はしないだろう。

ルイオスは屈辱に顔を歪ませた。彼にとって本拠での正式なゲームは、これが初めてだった。

それがまさか此処まで一方的に押されるなど、考えてもいなかっただろう。しばし悔しそうに顔を歪めていたルイオスは―――スッと真顔になる。

そして極め付けに凶悪な笑顔を浮かべ、

「もういい。“終わらせろ”、アルゴール」

石化のギフトを開放した。

アルゴールは謳うような不協和音と共に褐色の光をまわりに撒き散らす。これこそアルゴールを魔王に至らしめた根幹。

天地に至るすべてを褐色の光で埋め尽くし、灰色の星へと変えていく星霊の力。

褐色の光に包まれた十六夜は、真正面からその瞳を捉え、

 

「・・・―――カッ!ゲームマスターがいまさらずるいことしてんじゃねぇ!!!」

 

褐色の光を踏み潰した。

 

それは比喩でもなんでもない。他に表現のしようもない。

十六夜のその一撃で褐色の光はガラス細工のように砕け散った。そして跡形もなく、吹き飛ばした。

 

「ば・・馬鹿な!!!?」

ルイオスが叫ぶ。叫びたくもなるだろう。

十六夜を見守っていた飛鳥もジンも黒ウサギでさえも叫び声をあげていたのだから。

「すごい・・・ほんとにこんなことが・・・?」

「せ、“星霊”のギフトを無効化―――いえ破壊した!?」

「ありえません!あれだけの身体能力を持ちながらギフトを破壊するなんて!?」

 

白夜叉が“ありえない”と結論付けた理由。その二つの恩恵は相反するギフトのはずなのだ。

先も説明したとおり、この神々の箱庭において“恩恵”を無効化するものなどさして珍しくはない。

だが、それは武具などの形で肉体と別に顕現しているものに限る。

 

十六夜は他にギフトを持っていない。それはギフトカードを見ても明らかだ。

なのに天地を砕く恩恵と恩恵を砕く力が両立していることになってしまう。

だが、そんな魂は絶対にありえないはずだ。

「さあ、続けようぜ、ゲームマスター。“星霊”の力はそんなもんじゃないだろう?」

 

奇跡を身に宿しながら奇跡を砕くギフト矛盾したギフト。

そんなありえない存在を前に、ルイオスは呆然としていた。

黒ウサギがため息混じりに割ってはいる。

「残念ですが、これ以上のものはでてこないと思いますよ?」

「何?」

「アルゴールが拘束具につながれて出てきた時点で察するべきでした。・・・ルイオス様は星霊を使役するには未熟すぎるのです」

「っ!?」

ルイオスの瞳に灼熱の憤怒が宿る。

射殺せんばかりの眼光を放つルイオスだが・・・否定する声はあがらなかった。

黒ウサギの言葉が真実だからだろう。

 

だが、この惨状を誰が予測できた?数多のギフトで身を固め、さらには世界を石化させることが出来るほどの星霊を従えたルイオスが“名無し”に負けるなど、誰にも予知できまい。

「―――・・・ハッ。所詮は七光と元・魔王様。長所が破られれば打つ手なしってことか」

失望した、と吐き捨てる十六夜。これで勝敗は決した。黒ウサギが宣言しようとした、その時

 

十六夜hあこのうえなく凶悪な笑みでルイオスを追い立てた。

「ああ、そうだ。もしこのままゲームで負けたら・・・お前たちの旗印、どうなるか分かってるんだろうな?」

「な、何?」

不意を突かれたような声を上げるルイオス。それもそうだろう。

彼らはレティシアを取り戻すために旗印を手に入れるのではなかったのか?

「そんなことは後でもできるだろ?そんなことより、旗印を盾にして即座にもう一度ゲームを申し込む。そうだなぁ。次はお前たちの名を戴こうか」

ルイオスの顔から一気に血の気が引いた。

その時、彼は初めて周囲の惨状に目がいった。砕けた宮殿と、石化した同士達に。

だが十六夜は一片の慈悲もなく凶悪な笑顔のまま尚も続ける。

「その二つを手に入れた後、“ペルセウス”が箱庭で永遠に活動できないように名も、旗印も、徹底的に貶め続けてやる。たとえお前達が怒ろうが泣こうが喚こうが、コミュニティの存続ができないように徹底的に、“徹底的にだ”。・・・まぁそれでも必死に縋りついちまうのがコミュニティってものらしいけど?だからこそ、貶めがいがあるってもんだよな?」

「や、やめろ・・・!」

 

ここで敗北すれば旗印を奪われる。そうなれば“ペルセウス”は決闘を断ることはできない。

ましてや、こんな壊滅した状況で戦うことなど不可能だ。

ルイオスは・・・今になってようやく気づく。

自分たちのコミュニティは、今まさに崩壊の危機に立っているのだと。

「そうか、嫌か。―――ならもう方法は一つしかないよなぁ?」

指先で誘うようにルイオスを十六夜は挑発した。

「“来いよ”、ペルセウス。命懸けで―――俺を楽しませろ!!」

獰猛な快楽主義者が両手を広げてゲームの続行を促す。

彼はまだまだ遊び足らなかった。

自らが招いた組織の危機に直面したルイオスは覚悟を決めて叫んだ。

「負けない・・・負けられない、負けてたまるか!!奴を倒すぞ!アルゴォォォル!!!」

輝く翼と灰色の翼が羽ばたく。

コミュニティのため、敗北覚悟で二人は駆けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~~、クレープおいしかったなぁ」

「うん!久しぶりにこんなおいしいクレープ食べた」

俺たちはクレープ専門店?にいた。

今ちょうど食べ終わったところだ。

食べたのは、俺がチョコバナナで耀がチョコバナナとブルーベリーWクリームというのを食べた。

 

・・・・・さっきサンドイッチとかクッキーとか食べたのによく食べるね、耀。

 

「そろそろ十六夜たちは終わったかな?」

「たぶ―――」

「あ!天才クンじゃん!なんでここにいるの?」

会話に入ってきたのは言うまでもない。千流海晴だ。

「なんでって、クレープ食べに来たに決まってんじゃん」

「なんで私といかないんだよぅ!」

「いや、なんで千流と行かないといけないんだ?」

「えっと・・・この人誰?史夜」

「ああ、そうか耀は会った事なかったんだよな。こいつは千流海晴。俺がまだもとの世界にいた時に一緒の研究所で働いていた。まぁ、この箱庭で会うまでしゃべった事とかなかったけど」

「天才クン?この人誰?」

「こっちは春日部耀。俺と同じコミュニティに入ってる。俺と同じ時に箱庭に来た」

「いっつも名前で呼んでるの?」

「そうだけど?」

俺が答えたら千流が小さな声でなにか言った。

「・・・私はまだ1回しか名前で呼んでもらったことないのに」

「ん?なにか言ったか?」

「ううん!なんでもない!それよりさっき白亜の宮殿のほうが騒がしかったけど、何かあったの?」

「それなら、同じコミュニティの問題児が暴れてるさ」

「・・?」

千流は首をかしげた。

「じゃ、俺たちはそろそろ行かないといけないから。じゃあ、また今度な、千流」

「うん!また今度ね!!」

「ほら、行くぞ、耀」

「・・・うん」

俺と耀は白亜の宮殿に向かって・・・十六夜のいる場所に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~~」

私は知らぬ間にため息をついていた。

 

私の親は錬金術師でイギリスの国家研究所に勤めていた。

親は2人とも日本人だが、(なぜだか私の髪は白色だ)イギリスには派遣チームの一員として働いていた。

私も小さい頃から錬金術の教育を受け、小さい頃から多少の練成は出来た。

私は毎日ずっと練習を続けた。そのころは幼稚園や学校などに通っていなかった。

家の前には小さな公園があった。

そこでよく小さい子達が遊んでいるのを窓から見た事がある。

私も一度、あんなふうに遊んでみたいな、と思うこともあった。

だけど、国家研究所に入るため、毎日練習した。

その成果がでて、私は8歳の時に研究所に入れるようになった。

研究所に入って間もなく、1人の少年が研究所を尋ねてきた。

その少年は私と同じ、8歳くらいに見えた。

だから、“友達”になれる、と思った。私の始めての友達に。

 

だけどそれは叶わなかった。少年に話しかけても、少年はなにもしゃべらない。

少年は誰よりも速く、誰よりも集中して研究を行っていた。

私は毎日声をかけた。「おはよう」とか「休み、とってる?」とか。

その言葉も全部無視された。いや、聞こえていなかったのかもしれない。

そのまましゃべることなく8年という月日が流れていった。

私はその8年間もずっと少年に話しかけた。

最初のほうはくじけて自分から話しかけようとするのにためらったこともある。

それでもくじけずに話しかけ続けた。

その8年があったからかな?今の性格があるのは。

私も彼も16歳になって、彼は「等価交換」を無視した練成方法を編み出した。

・・・・それもたった一人の力で。

それを世界に発表し、付け加えで、「俺以外が使ったら死ぬかもしれないから」

と言った。この研究所の錬金術師はその方法を使い、死んだ。

そしてある日、彼は消えた。

私は探し回った。彼の部屋も、彼がいきそうなところ全てを。

それでも見つからなかった。

外界へ行ったのかとも思った。

私はそれから数ヶ月、外界のことについて研究し、ある錬金術を完成させた。

それは「探し求める相手の場所へと導く錬金術」だった。

これは私が彼、天才クンに会うために作り、編み出した錬金術だ。

しかし、これは完璧ではなく、天才クンがこの世界、箱庭に来る数日前に来てしまった。

 

私は私の作った錬金術で東区画のそこそこ人脈と権力がある人物を探し当て、白夜叉に会った。

そこであなたのコミュニティに入れてほしいとたのんだ。

白夜叉は笑ってOKしてくれた。

それから働き出して今に至る。

 

 

今ここのクレープ屋で天才クンと出会えたのは偶然だ。

でも、天才クンと会えたのは偶然でもすごくうれしい。

けど、隣に座ってたあの娘。春日部さん、だっけ?

いいなぁ。私もできるなら春日部さんのところにいたかった。

下の名前でも呼んでほしいし。

 

 

ずっと前からあったこのもやもやする気持ちはなんだろう?

 

 

最近になってさらに強くなった気がするよ。

 

 

この気持ちは・・・・・何?

 

 




書いてるといつもの2倍くらい書いてました・・・

ペルセウスとのギフトゲーム終わりました!
これで小説の1巻は終了となります。
これからも続けていくつもりなのでよろしくお願いします!

読んでくれた方々、ありがとうございました!


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