問題児たちと無から有を生み出す錬金術師が箱庭にくるそうですよ? 作:神流朝海
今回も書いていきます。
史夜「はぁ~結構俺長く出ないんじゃね?オリ主なのに・・・」
・・・まぁ、それは、ねぇ。
史夜「いつまで俺、寝てんだろ」
・・・ハーメルンのギフトゲームが終わるまでだね。
まぁでもその後には君がものすごい主役回がまわってくるから、もう少し辛抱しとって。
史夜「・・・まぁいいけどさ」
史夜って、少し前と性格が変わったよね。
史夜「・・・そうだな。友達ができたから、かな」
友達は大事だよね。いつも1人とか寂しいしね。
では、どうぞ
「・・・ほぼ非戦闘系のコミュニティじゃね?主に生産をしてます、って感じの」
「・・・そうだね。戦力になるのは“サラマンドラ”の兵士くらい・・・かな?」
「お2人とも何を冷静に戦力を見切っているのですか!?サンドラ様の話は始まっているんですよ!?」
俺と海晴の会話に、黒ウサギが小さい声でつっこみを入れてくる。
確かに、もうサンドラの話は始まっていた。
「その他に“ハーメルンの笛吹き”について詳しいものがいるならば、交渉に協力してほしい。誰か立候補する者はいませんか?」
参加者にどよめきが広がる。童話の類は知られている範囲が狭い、とさっき黒ウサギがいっていたのは、本当のようだ。
よって、この伝承についてさわりを知っている者はいても、細部について詳しい人間は少ない。
名乗りだすものがいない中、1人、手を上げたものがいた。
「・・・僕は、“ハーメルンの笛吹き”について、細部まで知っています。コミュニティ“ノーネーム”のリーダーを勤めています」
そのジンの行動に、黒ウサギも、レティシアも、海晴も、サンドラも驚く。
唯一驚かなかった結哉は、1人微笑んでいた。
一瞬だけ子供っぽい顔になったサンドラだが、次の瞬間には頭を振って、キリッ!と表情を戻す。
「他に申し出がなければ“ノーネーム”のジン=ラッセルにお願いしますが、よろしいか?」
サンドラの決定に再びどよめきが広がる。
「“ノーネーム”が・・・?」「何処のコミュニティだよ」「信用できるのかしら」「ありえねぇ」「おい、他に立候補者は―――」
「「俺が出る!(私が出る!)」」
「「・・・え?」」
手を挙げたのは、結哉と海晴だった。
「いや、俺が出る」
「いやいや、そこは私でしょ」
「いやいやいや、ここはやっぱり俺だろ」
「いやいやい―――」
「お2人ともいい加減にしてください!」
パシィィン!と黒ウサギのハリセンが炸裂する。音は大きいのに痛みは小さい。前に十六夜に聞いてた通りだ。
周りのみんなが俺と海晴に注目していたせいか、黒ウサギがつっこむところまでみんなが見ていた。
((((((“箱庭の貴族”って案外こういうのなんだな))))))
「なぁ、黒ウサギ?みんなの視線が微妙なんだが・・・」
「へ?あ、・・・・・・・」
黒ウサギの顔が少し固まる。
「まぁ、なかったことにしといてやるから、俺に感謝しろよ?」
『求めるは忘却>>>・記霧散』
対象の記憶を書き換え・・・いや“なかったこと”にする魔法だ。
はは、これで黒ウサギに貸しができたな。あとでなにかしてもらおう。
海晴が俺の魔法の効果を理解し、話を続ける。
「う~ん、じゃあ今回は結哉君に譲るよ」
「はは、さんきゅ。次は海晴に譲るよ。所属はジンと同じく“ノーネーム”霧下結哉だ」
「白夜叉が異世界から呼び出したから、実力は保障するよ」
「白夜叉様が!?」「まじかよ」「なんでそんな人が“ノーネーム”に?」
ところどころ声が上がる。が、その声をサンドラが制す。
「他に立候補者はいませんか?いなければ、“ノーネーム”のジン=ラッセルと霧下結哉さんが交渉テーブルに着きますが、よろしいか?」
声を上げるものは誰もいない。
「よっし、じゃあ行くぞ!ジン。この一件で名前が売れたら、本格的にチラシでも配るか。“魔王にお困りの方、ジン=ラッセルまでご連絡ください”って」
「はい!・・・は!?ちょ、十六夜さんみたいなこと言わないでください!」
「お、十六夜と気が合うな。まぁまぁ。なんなら“魔王にお困りの方、ジン○ラッセルまでご連絡ください”ってのでどうだ?」
「お か し い で しょ う!?一番伏せなくていいところを伏せてるじゃないですか!?なんで十六夜さんと同じことを言うんですか!?」
あーだこーだと抗議するジンと、からかう結哉。
サンドラと海晴と黒ウサギは、視線を交わし、半ば呆れたように笑って見守るのだった。
―――境界壁・舞台区画。大祭運営本陣営、貴賓室。
「ギフトゲーム“THE PIED PIPER of HAMELIN”の審議決議、及び交渉を始めます」
厳かな声で黒ウサギが告げる。
結哉たちの正面には、白黒の斑のワンピースを着た少女が座り、その両隣に軍服のヴェーザーと白装束のラッテンが立っている。
(へぇ?あいつが十六夜を負かしたヴェーザーか)
招かれた部屋は豪華な装飾が施された貴賓室だった。
本来招かれるはずだった来客はゲームの外にいたのか、不在となっているらしい。
対等のゲームを定めるための交渉を謁見の間で行うわけにもいかず、この貴賓室でやることになったらしい。
「まず、“主催者”側に問います。此度のゲームですが、」
「不備はないわ」
斑の少女が遮るように吐き捨てる。
「今回のゲームに不備・不正は一切ないわ。白夜叉の封印も、ゲームのクリア条件も全て整えた上でのゲーム。審議を問われる謂われは無いわ」
「・・・受理してもよろしいので?黒ウサギの耳は箱庭の中枢と繋がっております。嘘を吐いてもすぐ分かってしまいますヨ?」
「ええ。それを踏まえた上で提言しておくけれど。私たちは今、無実の疑いでゲームを中断させられているわ。つまり、貴女たちはこの、神聖なゲームに横槍を入れていることになる。―――言っていることは分かるわよね?」
「不正が無かった場合、主催者側に有利な条件でゲームを再開させろ、だろ?」
「そうよ。新たなルールを加えるかどうかは、その後に交渉しましょう」
「・・・わかりました。黒ウサギ」
「は、はい」
サンドラが黒ウサギに確認するように言う。
黒ウサギは天を仰ぎ、ウサ耳をピクピクと動かす。
俺はその間に、後ろに控えたマンドラに小声で問う。
「なあ、どの程度ならゲームの不正に相当するんだ?」
「・・・。そんなことも知らずに同行したのか、貴様」
チッとマンドラが舌打ちをする。
あ、ちなみに俺が命令してマンドラを隊の指揮にあたらせたことは、俺が魔法で記憶を書き換えたから、問題ない。
「貴様も知っているだろうが、ギフトゲームは参加者側の能力不足・知識不足を不備としない。不死を殺せと命ぜられようが、殺せぬ方が悪い。飛べと命ぜられても、飛べぬ方が悪い。今回ならば、クリアに“ハーメルンの笛吹き”の伝承の知識が必要でも、“知らぬ方が悪い”となる」
「へぇ?それは結構理不尽だな」
「今回のゲームに不備があるとすれば、まず白夜叉の封印。“参加”を明記しておきながら“参戦”は出来ぬという。これは看過できん。其処には明文化された要因が必要のはず」
「しかし記されていたのは『偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ』の一文のみ、か」
そこで会話が途切れる。
黒ウサギがはしばしば瞑想した後―――気まずそうに顔を伏せた。
「・・・。箱庭からの回答が届きました。此度のゲームに不備・不正は一切ございません。白夜叉様の封印も、正当な方法で造られたものです」
ギリ、と奥歯を噛む音がした。これで参加者側は圧倒的に不利になる。
「当然ね。じゃ、―――」
「一週間で、こっちはシュヴァルを出さない。これでどうだ?・・・“黒死斑の魔王”ペストさん?」
「「「!?」」」
俺の突然の発言に、サンドラと黒ウサギとマンドラは驚いたようだ。
ジンは・・・驚かなかった。
「あなたがたの目的は、ゲーム再開の日取りでしょう?」
驚くどころか、ジンが俺の発言に上乗せする。
「・・・そうよ。ジャッジマスターに問うわ。再開の日取りは最長で何時頃になるの?」
「さ、最長ですか?ええと、今回の場合だと・・・一ヶ月でしょうか」
「ほんとは一ヶ月がよかったのだけれど。御見事ね。名前も知らないあなた方。コミュニティと名前を聞いても?」
「・・・“ノーネーム”のジン=ラッセルです」
「同じく“ノーネーム”の霧下結哉だ」
コミュニティの名前を聞いて、ペストが意外そうに瞳を見開いた。“ノーネーム”ということに驚いているのだろう。
「そっ。覚えておくわ。だけど残念だったわね。私たちはゲーム再開の日取りを左右できると言質を取っているわ。勿論、参加者には―――」
「一ヶ月・・・ね。それじゃ俺ら死んじまうじゃん」
「え?どうしてですか?」
黒ウサギから質問が出る。
まぁ、答えても問題ないだろう。
「さっき海晴に聞いたんだが、すでにこの辺一帯にペストの菌が蒔かれているらしい。ペストの潜伏期間は約3日~7日。それから一週間もすれば、体力が少ないやつからばったばったと倒れてく。もちろん、俺も例外でなく、すぐに死ぬ。治療しなければな」
「あなた方は新興のコミュニティだと、白夜叉様から聞きました。つまり、あなた方がほしいのは、人材、ではないのですか?」
「だから、なに?・・・一ヶ月でなくても、二十日。二十日後に開始すれば、病死前の人材を―――」
「では、発症したものを殺―――」
「す。と言いたいところだが、黒ウサギ。ルールの改変はまだ可能か?」
「へ・・・あ、YES!」
うさ耳をひょこんとたてて黒ウサギが言う。
突然話を振るといつもああいう反応をするんだが、なんだ?プログラムでも組んであるのだろうか?
「じゃあ、俺らはルールに“自決・同士討ちを禁ずる”“黒死病の治療を禁ずる”を追加する。だから再開は一週間後にしろ。なんなら、黒ウサギもつけるぞ」
「は、はい!?確かに一週間後ならば、黒ウサギも参加できますが・・・」
「・・・わかったわ。でも、十日後よ」
「え?マスター!?“箱庭の貴族”に参加資格を与えては―――」
「だって欲しいもの。ウサギさん」
焦るラッテンに素っ気ない一言で返答する。
十日。あと少しで七分ってところかな?もちろんこちら側の。
「じゃ―――」
「ゲームに・・・期限を付けます」
「なんですって?」
「再開は一週間後。ゲーム終了は・・・その“二十四時間後”。そして、“ゲーム終了と共に主催者側の勝利とします”」
そう、言い放ったのは、ジンだった。
よくやったな。ジン。これで七分、こちらが優勢だ。
「・・・本気?主催者側の総取りを覚悟するというの?」
「ああ。それで構わないぞ。一週間は俺らが耐えられるギリギリのラインだ。ほかのコミュニティもな。それ以上は無理だ。だから、俺たちは無条件降伏を呑む」
ペストは口に手を当てて思考する。これは両者にとって得となる話である。
相手側は黒死病の治療もしないというし、なにより、シュヴァルを出さないといっているのだ。
今後の準備や謎解きの時間が欲しい参加者側。
優秀な人材達を無傷で手に入れたい主催者側。
一週間+一日、というのは両者にとってまさに理想的な期限―――では、ある。のだが。
(・・・気に入らないわ)
ペストは不快だった。一見して合理的に話が進んでいるが何もかもが参加者の目論見通りになっている。
特にあの2人。ジンと結哉っていう頭の切れる2人の掌で、踊らされている気がする。
それが気に食わない。
確かに自分は若輩だ。魔王を名乗れはするが、同時にルーキーだ。思うようにゲームできないのはある種仕方ないのだろうが、何より気に入らないのは。
「ねえジン。もし一週間生き残れたとして・・・貴方は、私に勝てるつもり?」
「勝てます」
ジンが即答する。いいぞ、ジン。反射でも、その言葉が出るだけでいい。
「・・・・・・そう。良く分かったわ」
ペストは不機嫌だった顔を一転させ、にっこりと笑った。そんな、華の咲いた様な笑顔で、
「宣言するわ。あなたは必ず―――私の玩具にすると」
瞳に壮絶な怒りを浮かべた。激しく黒い風が吹きぬけ、参加者達が顔を庇う最中、主催者―――“黒死斑の魔王”は消え、一枚の黒い“契約書類”だけが残った。
『ギフトゲーム名 “THE PIED PIPER OF HAMELIN”
・プレイヤー一覧 現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者、主催者の全コミュニティ。
・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター
太陽の運行者・星霊 白夜叉
・プレイヤー側・禁止事項
・自決及び同士討ちによる討ち死に
・黒死病の治療を禁ず
・「シュヴァル」の使用を禁ず
・休止期間中にゲームテリトリー(舞台区画)からの脱出を禁ず
・休止期間の自由行動範囲は、大祭本陣営より500メートル四方に限る
・ホストマスター側勝利条件
全プレイヤーの屈服、及び殺害
・プレイヤー側勝利条件
一、ゲームマスターを打倒
ニ、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ
・休止期間
・一週間を、相互不可侵の時間として設ける。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗をホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
“グリムグリモワール・ハーメルン”印』
これで、参加者達が、勝てる。
いや、勝たせる、か。
昔から俺は言葉を操る、使うのが得意だ。
ルールの抜け道くらい、簡単に見つけてやる。
まずは手始めに“散歩”から、かな。
相互不可侵をどれくらいの解釈としていいかはわからないが、たぶん、いける。
さあて、久しぶりに楽しいゲームだ。楽しまなきゃな。
審議決議に参加した者達の中で唯1人、嬉々とした気分で、微笑んでいた。
次回・・・どうしよう?
空いた一週間をどう活用しようか迷っているところですね。少しは考えてありますが、大部分はまだです。
・・・いや、もしかしたらカットするかも・・・?です。
いや、たぶん書きますけど。
問題とかありましたら感想までお願いします。
感想くれたらうれしいです。