問題児たちと無から有を生み出す錬金術師が箱庭にくるそうですよ? 作:神流朝海
えぇっと、大変遅くなりました。
シルバーウィークもちょっといそがしくてですね、なかなか書けませんでした。
終わったら、本編を一話投稿して、一話から改稿といった感じで進めていきます。
今読み返したらあまりにもひどかったので。
ではでは、どうぞ
「わ、まじだ。耀そっくり」
輝雪は驚きながらもレイピアから手を離さない。
彼の前には紅い目をした耀が立っており、無言のまま輝雪を見つめていた。
先に仕掛けたのは、輝雪。
「セイッ、ヤッ、ハッ」
ゲームと同じ掛け声で、ゲームどおりに体を動かしていく。
耀の写し身はグリフォンのギフトを使って宙に舞い、輝雪の突きをすべてかわした。
結哉に身体能力強化の魔法をかけてもらってはいるものの、やはり耀には遠く及ばないようだ。
写し身の目が紅いのは、写し身かどうかを見分けるためのGMの優しい配慮によるものだろうか。GMってのはゲームマスターのことな。
写し身はしゃべらないのだろう。無言のまま攻撃を始める。
ゾウ、トラ、グリフォン、ペガサス……
輝雪が確認できたのはそれくらいだ。
あまり幻獣に詳しいわけではない輝雪は、知らない幻獣が次々と出てきて、手を焼いていた。
「圧倒的すぎるだろ、戦力差……なんか、こう、俺が有利になるような武器っていうか知恵っていうか、なんかないか?」
「では私が時間を稼ぐので、その間に考えてください」
「ああ、よろしく頼む」
レイピアにそう言うと、剣は鞘と共に腰と手から離れ、目の前に人の形をして現れた。
輝雪の前に現れたのは、薄く黄金色に輝く髪に、剣士の軽鎧といった服装の女性。
レティシアに匹敵するような美貌を持っているが、レティシアのそれとはまた違った美しさだ。
かわいいにも、かっこいいいにも部類できそうな顔立ちは、さながらアニメにでてきそうなキャラの顔だった。
「あれ、えっと……」
「この姿で会うのは初めてですね、マスター。私は『光を喰らう細剣』、どうぞシャインとお呼びください」
自己紹介をしている最中も、輝雪はそのシャインの姿に見惚れていた。
もちろん、容姿に対してではない。(それもあるが)
剣の、レイピアの使い方に、だ。
耀の攻撃を完全に防ぎきり、それでも尚平気な顔で捌き続ける彼女を見て、思わず見惚れていたのだ。
「お前は……シャインは、神霊なのか?」
「そうですね。この箱庭では、そういう位置になるかと。それよりマスター、私はあなたに隷属している身なので、主を守る以外は命令していただけないと動けないのですが」
「あぁ、悪い。じゃあシャイン、レイピアに戻って俺のための剣となってくれ」
「わかりました」
間髪おかずに即答し、シャインはまた光となり、レイピアとして再び手の中に戻る。
耀の攻撃にはやはり衰えはなく、数多の獣たちの力を使ってくるが、先ほど見て盗んだシャインの剣技を使い、捌く。見て盗むのは得意だ。
「マスター、そろそろ攻撃して彼女を倒さないと、体中傷だらけになりますよ?」
そう言われ輝雪はふと腕をみると、数箇所に切ったような傷がある。
飛鳥に攻撃されているのだろう。結哉の魔法で痛みはないのだが。
彼女もなかなかの強さで、そうこうしているうちに輝雪の写し身が負けてしまうかもしれない。
となると、問題はどうやって耀の写し身を倒すか、だが……
「あ、……」
「どうしました? マスター」
輝雪はあることを思い出す。
確か、あのゲームの中の職業、絡繰師の固有スキルに『写し身』というスキルがあったはずだ。
少し前に写し身だけを討伐するというクエストをクリアした気がするが、あの時はどうしたんだっけ。あのゲームは日本の神々が登場するゲームだから、“息長足姫命(おきながたらしひめのみこと)”にも関係してるはずだ。
輝雪は耀の写し身を見て、考える。
なにか、本物と違うところ……どこか、そう、確か本物と違うところを攻撃すれば、それで写し身は壊れたはず。
「シャイン。耀の写し身の眼を狙う。寸分違わずに。エストックに剣の形状を変えられるかな?」
「わかりました」
シャインに光が集まり、今度は刃がない、突くためだけに鍛えられた剣に変化していく。
エストックと呼ばれる剣で、14世紀ごろからヨーロッパで使われるようになった鎧を貫くための剣だ。
刃がないことはないのだが、ほとんど突きの攻撃のために作られたので、刺突攻撃で敵にダメージを与える。
「行くぞ、シャイン」
「はい、マスター」
今まで喰らってきた光を開放させるかのようにエストックが輝き、体が加速していく。
これが神霊の力……。やっぱすげぇな。
耀の写し身が一瞬驚いたかのような表情になるが、すぐになんらかの幻獣を模倣しこちらにむかってくる。
何を顕現させているのかはわからない。
ただ、俺は空を飛べない。この一撃を外したら負けだ。
だけど俺は、
「俺は、負けないッ!」
急速に光がエストックに収束し、さらに刀身が細くなっていく。
一筋の光は、人形の眼を貫き、人形は塵と消えた。
同時刻、耀は、
「……え? なに? 急に力が抜け……まず……」
突然の疲労感に体が耐えられず、なんとか戦闘から離脱し始めた。
また、十六夜は
「……あぁーもうめんどくせぇ! 史夜から錬金術受けっし、結哉から魔法受けまくるだぁ。結哉、生きてろよッ!」
懇親の一撃を結哉に放つ瞬間に、結哉が唄を歌い終わった。
「我が求むるは反射>>>空鏡」
予期せぬ衝撃に十六夜は眼を見開く。
結哉に向かって殴った力の四分の三が返ってきたのだ。
防御のことなどまるで考えてなかった十六夜は、その衝撃に耐えれず右手足を捻挫。
「おいおい、まじかよ」
結哉もダメージを受けたが、まだ立っていられるようだ。
「くそ、このゲーム降りてやるか」
半ばあきらめ、半ばしょうがなく、右足を引きずって退避を始めた。
また、結哉は
「……かはっ、十六夜の野郎、手加減しなかったな…………」
体中に傷を負い、治療しながら、敵の前から姿を消した。
消える直前に衝撃の魔法を放って。
また、飛鳥は
「痛ッ! まったく結哉ったら! 手加減してっていったのに!」
半泣きの状態で撤退を開始していた。
また、海晴は
「え、もう、式も召喚回数もないんだけど……」
すべての術式を史夜に防がれ、攻める手を失った海晴は、全力で退避し始めた。
耀の写し身を倒した瞬間、まわりの景色が崩れ始めた。
「あ、やっぱり、神様の正体はあってたんだ」
にぎやかな街の風景がうってかわり、日本の山奥にありそうな大きな神社に景色が変わっていく。
まだそこには誰も来ていないようだった。
それどころか、あまりにもシン……としていて、ほんとにこんなところに魔王なんているのかとさえ思えてくる。
「お主、あれをクリアしてきたのか」
「ん、ああ、そうだ。君が“息長足姫命(おきながたらしひめのみこと)”かい?」
「いかにも。さて、久しぶりに遊ぶとするか」
その言葉に輝雪はレイピアを構え、戦闘態勢に入る。
魔王は少女の外見をしており、和服を着た、巫女のような姿だ。
「シャイン、行く……」
「これこれ、なにをやっておるのだ。はようこっちきて座りなさい」
「……は?」
こっち、と魔王様が指し示したのは、将棋盤。
てっきり戦闘になると思っていた輝雪は、素っ頓狂な声をあげ、一瞬固まった。
「ちゃんと“契約書類”にも書いておるであろう? “ゲームマスターを打倒”と」
「……確かに」
「じゃから、将棋をしようと言っておるのじゃ」
「なんでそこからそうなる!?」
そりゃま、確かにゲームマスターを打倒とは書いてあるけどさ、普通、そこは戦闘じゃね?
それにしても将棋、か。中学の頃やった以来だな。
ルールしかわかんねぇ。
「あ、輝雪、もう着てたのか。速かったね」
「あぁ、史夜。なぁ、俺、どうすればいい?」
「は? なに、これ。どういう状況?」
あの天才史夜でも状況がすぐに飲み込めないようだ。
まぁ、そりゃそうだろうけど。
「まだやらんのか。どっちが先にやるんじゃ」
ようやく史夜が状況を飲み込めたのか、笑顔を浮かべ、こう言った。
「俺たちは二人一緒にやります。盤を二つ使ってね」
パチンパチンパチンと指を鳴らしたかと思うと、もともとあった将棋盤の横にまったく同じものが現れた。
これが、等価交換を無視した錬金術……。
「かっかっか、おもしろいことを言うなお主。よかろう。互いに二手ずつでよいな?」
「もちろんです」
「おい、史夜。なに、どういうことだよ?」
「二人一緒に将棋をやるんだ。いつもの倍の駒と盤を使ってね」
「わしも一人じゃちと厳しいからの。分身を作らせてもらおうか」
少女もパチンと指を鳴らしたかと思うと、少女が二つに分かれ、やがて人の形をとる。
「やっほー!二人ともお手柔らかにお願いねっ☆」
「……お手柔らかにお願いします」
…………。
なんだろう、この、性格の違い。
分身して、だいぶ陽気なほうと、だいぶ陰気なほうに分かれたんだけど。
これって、分身っていうの? 分裂じゃなくて?
「さぁさぁ、ゲームをはじめようよっ☆」
「……あなたがたから先行でどうぞ」
「じゃあ、ありがたく」
「勝てるのか、これ……」
日本の神を相手に、このゲームの勝敗を分ける戦いが、始まった。
読んでくれてありがとうございました。
なんか、こう、もっとテンポよく書けるようになりたいです。
いつもグダってますので……。
楽しんでいただけたでしょうか?
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