ウルトラマンマルティス   作:闇夜の月

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※このエピソードから、Pixivにて投稿していた「ウルトラマンコスモス」のとある二次創作に連なる人物が出てきます。
本筋に関わる存在でもありますが、あくまで客演程度の認識で見ていただけると幸いです。


第1話「この世界で笑えますか?」

『待てっ!!』

 

「待てと呼ばれて止まる奴がいるか? 俺達は君達のような"抑止力"が嫌いでね、この宇宙からは手を引こうと言ってるんだ、悪い話じゃないだろ?」

 

 人質としてダメージを負わせた宇宙船からは火花が散り、今にでもドカンといく寸前だ。

 

「ほらほら、君の親友夫婦が乗ってるその宇宙船を助けるのが先だろ?」

 

『貴様ァッ……! っ──!』

 

 ウルトラマンなんだ、そういう人助けの方が優先ってもんだろ?

 

 ────────

 

 ー1966年7月10日ー

 ーアステロイドベルトー

 

「墓参りに来たよ、クソ親父」

 

 かつて何人ものウルトラマンの手によって討伐された邪神、その残り滓を封印した場所。

 

 デビルスプリンターと模造ベリアルカプセルでウルトラマンにしてやった信者に、グリーザカプセルを突っ込んで意思がない生首剣を複製、これでここに来れる切符を手に入れた。

副産物(グベローグ)は、"ウルトラマンの乗り手"がどうにかしてくれたから、ヨシ! なんの問題もないね!

 

 生首剣を振るって墓を破壊し、中にあったカプセルを全て取り出す。

 あとはついさっき"あの男"から回収したカプセルもまとめて──

 

 

 青い星へ、さぁ、いってこい!

 

 

 これより創りしは、我らが同胞の神々が降りるに相応しき星。

 下等生物は供物として使うのが適切ってもんだ。

 

「さーて、イエが来る前にサクッと色々済ませておくとしようか!」

 

 *******

 

 

 

 まモらなクてハ

 

 イチめんがヒのウみ

 

 クいあらさレタ たクサんのーーー

 

 まもらナ

 

    クワ

 

   な  クて  

 

 

 クワ

 

 クウ

 

 ま  も

 

 クウ

 

 

 クウ ら クウ

 

 クイ ま も

 

 ま

 

 ク

 

 クウ

 

 

 マちへムカわないと

 

 

 もッと た クサん の 

 

 

 

 タベ もノ

 

 

 クウ

 

 

 

 

 

 クウクウクウ 

 

 クウクウクウ クウク ウクウクウ クウクウクウクウクウク ウクウク ウクウクウクウ クウクウクウ

 クウ           クウクウ

     クウクウ クウクウ クウクウクウ

  クウクウクウクウ

 

    クウクウクウ クウクウクウクウ 

 

       クウクウクウクウクウ

 

 

 

 食ウ

 

 

【挿絵表示】

 

 

 *******

 

『防衛ライン突破されますっ!? アミナ(防御)、持ち堪えられ──(バツッ

 

セラピア(回復)の拠点にまで来て、いやだ、やだぁぁぁぁぁぁ(バツッ

 

 ー2001年7月7日ー

 

 到着した頃には、先行部隊は全滅していた。

 やはり狂獣相手に、各部隊に配備された既存の兵器は全く役に立たない。

 各部隊や役職に適したカスタムが施されたゼブルとペオルの破片が、他のウルトラマン(巨人型兵器)の食べ残しが無造作に散らばっている。

 

「AAAAAAaaaa……」

 

 第二狂獣、アーダム。

 人型ということしか、原型が何かはわからない。

 首から上らしき箇所は腐り落ちたように千切れ、胸から腰の辺りにまでに渡る縦に開けっぱなしのだらしない大口がある。

 

 狂獣。

 1年前に突如として現れた自然現象では到底発生しない異常進化を遂げた生命体、元はなかった特性を気が狂ったかのように振り回す。

 討伐された第一狂獣は肉体が原型を留めない程に変質しており、解剖や研究を進めれば肉体の構造や遺伝子自体が大きく崩壊していたとわかった。

 明らか人工的に進化の要因を埋め込まれ、頭がイカれて暴走した獣。

 

 あの日、たくさんの屍を並べた悪魔の様な獣。

 

 目の前のアレもそう変わらない程の狂気。

 狂獣の背後に広がるのは、無茶苦茶に荒らされた森林と島らしい街並みだったものの痕跡。

 人の少ない島、被害の規模としては少ない。

アミナ(防御)部隊が先行していた理由は簡単、どうにも飛行能力を有してるらしいあれが都市部へ侵攻するのを防ぐため。

 この進行速度、否、食事のスピードでいけば今日中には近くの都市部に入る、阻止しなければ外野の煩い声が無駄に響く。

 どれも無駄に終わり、この有様なわけだが。

 

『各機作戦行動開始。α、β、γ、δは先行してアーダムの意識を逸らしてください』

 

 アレの指示が通信に入る。

 

『『『了解』』』

 

 呼ばれた組は機体のドッキングを解除。

 先行して地上と空から同時攻撃を両サイドから仕掛ける。

 

『Ωはこれより降下してドッキングを解除します。やることはただ一つ、アーダムに突っ込んで──』

 

「わかってる、爆薬を食わせて中から破裂させる」

 

 ドッキングが外れ自由になった自分のペオルは、地面を滑りアーダムに向かって走る。

 アーダムの様子は変わらずただ進み続ける、周りの同時攻撃すらまともに取り合わない。

 ……いや、違う。

 当たったところで支障がない攻撃、アレの食欲の矛先を変えるまでもない。

 

 近づくのは、今じゃない。

 

 ブレーキをかけ、自機を瓦礫の中に隠す。

 

『……見ていない』

 

『あぁ、あれはそもそもこっちが眼中に入ってない』

 

 こちらが搭載している兵装は墜ちた連中のものと大差はない、ここまで一度も致命傷を与えられていないのだからやはり痛くも痒くもないんだろう。

 事実、今もやはりこっちの先行攻撃は効いてない、何も感じてないかのように同じ方角へ進み続けている。

 

『目前の攻撃には目もくれず、何故都市部の方角を目指して進行を? ……直進した先はエネルギー資源や産業が特別ある都市ってわけでは……』

 

「アレが今まで食ったものはなんだ」

 

『報告によれば、人間を含めた動植物を主に。ただ、建物ごといってるみたいでコンクリートなども』

 

「それなら仮定はできる」

 

『……まさか、都市部は人口が多いから』

 

「そういうことだろうな。あれだけ食っても足りないってなら、余程の大喰らい或いは底なし腹か」

 

 強度の高い皮膚と悍ましいまでの食欲。

 爆薬を食わせてどうなる? おそらくは。

 

「やるだけはやってみるが、爆薬食わせたところでただの時間稼ぎだな」

 

『なーに、この鈍臭さなら殺せる!』

『これなら勲章は俺達のもんだ!』

 

『……あぁ、馬鹿なことを』

 

 手遅れだ。

 堂々と正面から向かった瞬間、あの大口から長い舌が伸びて馬鹿なゼブルが絡め取られる。

 あぁ、見る気がなかったんじゃない。

 目が口の中にあるから見れなかったのが正解か。

 

『あ、』

 

 脱出機構があっても無理だ、出られない。

 軽い装甲は徐々にひん曲がり、燃料が漏れ出ていく。

 

『ぁ、いや、いや……! こんな死に方は──、ぁ、ァァァッァァァァァ゛ア゛』

 

『やめろおおおおお!!!』

 

 馬鹿なペオルがその舌に向けて砲撃する、それもおそらくカプセルのエネルギーを込めての強力な一発。

 舌は千切れて捕まっていたゼブルは解放されて地上に落ちていった。

 ……コックピットは原形残らず、丸めた紙の様になっていたが。

 

『……やってくれたなぁぁぁ!!!!』

 

 自暴自棄のペオルはワイヤーアンカーでアーダムに飛びつく。

 

『死ね! 死ね!! 死ね!!! 死ねぇえぇぇぇぇ!!!』

 

 砲身がオーバーヒートしてるだろうに、何度も重い砲撃を憎悪と共に放ち続ける。

 餌を取り損ねたんだ、単純な怒りなら向こうの方が勝るだろ。

 今までユラユラと不気味に揺れるしかしてなかった手がペオルを掴み、

 

『ぁ』

 

 大口の中に放り込んだ。

 

『ァ゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛!!!!!』

 

『──ッ!』

 

 咀嚼音と悲鳴が耳を劈く。

 

『……──ッ。正面からの攻撃は無意味、全機散開して正面以外の角度から攻撃。当初の作戦はおそらく無駄ですが食わせるだけ食わせます』

 

 他の連中は指示通りに背後や真横から攻撃を始める、が、直前の攻撃が怒りを買ったかアーダムの挙動が大きく変わってる。

 ユラリと動く手に光輪が握られ真横にいた2機が縦に切り裂かれ、次に指先から水を放って目潰しして機体を掴んで口に放り込む。

 他にウルトラマンになれるのがいないわけじゃない、巨大化する前に喰われるか八つ裂きにされてるかだ。

 なりかけてたのも食べ応えのあるものに変わっただけで翼のように広がった大口に捕まって喰われた、食虫植物に捕まるハエ同然だ。

 アレは全身が脱力しているように見えていてもその動きは本能レベルで戦い慣れしていて隙がない、コイツは何かの戦闘経験が身体に染み付いてるのか?

 

『ぁ、ぅあ、ぁぁぁぁぁぁぁあ!!!』

『い、いやぁぁぁぁあ!!』

 

 次々と降ってくる悲鳴や咀嚼音は機械的なノイズで断ち消える。

 

『……イズミは後方から飛びついて。あなたはここまで捕捉されてませんね? こうなることをわかってたんでしょう?』

 

「そこまで器用じゃないが、無駄に弾を使わなくて済んだ」

 

 追跡するように自機を進める、その間に他の機体は蹴飛ばされたりなんだりでスクラップにされた。

 ここまで落ちた機体は全て攻撃したせいで位置が分かられていた、こちらは幸いアレの言う通り瓦礫に隠れて砲撃をしてなかったから気づかれていないはずだ。

 

 仮に気づかれてても──

 

「ここまで来たら支障はない距離だ」

 

 ワイヤーアンカーを背中に刺して巻き取って飛びつき、一気に首まで駆け上がる。

 流石に気づかれたがもう遅い、伸びてくる手や光輪を回避、機体の足を斬り落とされたが致命傷じゃない。

 口の中へ飛び込みながら、新たなカプセルをレプリカントランサーへ装填、数秒後に起爆するように爆薬のスイッチを押す。

 

「カプセルを使う、ご期待通りにならないかもしれないが」

 

『構いません』

 

 レプリカントランサーのトリガーを引き、爆発が起きるペオルから飛び出した。

 

 ────────

 

 インナースペース。

 機体のコックピットよりも深い暗闇。

 窮屈さはない無限に広がる暗闇。

 

 展開された光のコンソールから自分のステータスを見る。

 

 固有名称 マルティス

 現形態名 不明

 身長47m

 体重4万2000t

 基本活動時間 3分[標準]

 STR(筋力)C

 PHO(光子)B

 CON(体力)B

 DEX(敏捷)A+

 

 現形態主要兵装

 マルブートストライク[威力中 破壊光線]

 ブルームーンカタルシス[威力0 特殊効果:浄化]

 ブレードヴァレット[威力小 連射可能]

 リバースパイク[バリア 反撃効果有]

 

 現状わかる基本ステータスはこの程度か。

 

「……ティァ……」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 閲覧を終えてアーダムと対峙する。

 やはり喰わせた爆薬の効果は見受けられない、精々煙をあの大口から咳きこんで吐き出しただけ。

 既にあれだけの血肉を蓄えたのに欲も腹も膨れてる様子はない、腹の中は底無しなんだろう、当然といえば当然。

 

 どうでもいい、さっさと終わらせる。

 

 準備運動と試運転がてらの跳躍、ほぼ一瞬でアーダムの頭上を飛び越えて着地の前に蹴り倒す。

 倒れたところを掴もうとはしたが筋力は標準以下、ならばと蹴り上げる。

 蹴り上げられたのを幸いとばかりにあの大口を翼にして滑空して都市部へ向かおうとしている、狂ってるにしては頭が回るな。

 跳躍力を活かし飛びつき地面に叩きつけると、激しい揉み合いになり地面を転がる。

 案の定奴の手から光輪が出力される、斬られる寸前に抑え込み、自分の周囲に「ブレードヴァレット」という光刃を出力して光輪を弾き飛ばす。

 反撃で伸びてくる舌、大きく開く口、これに飲まれたら筋力的に逃げようがない。

 そうなる前に距離を取り、追撃で撃ってきた光輪とこちらが発射する光刃が交わり破片が飛ぶ。

 

 ウルトラマンの力、にしては弱い。

 戦闘向けじゃないな。

 

 ならいっそと破片が飛び交う中をドリルのように身体を急速に回転して一気に突っ込む、これなら大口を構えられても食われる余裕はない。

 そうして跳ね飛ばされたアーダムは地面を転がると、起き上がりながら手を十字に組んで赤白い光線を撃ってきた。

 

 今のは──

 

 咄嗟に「リバースパイク」で弾き返す。

 

 ……こいつ。

 

『イズミ、聞こえてますね』

 

 コンソールに通信ウインドウが現れ、アレが映る。

 

『あぁ』

 

『今、奴の使用する技を解析しました。……変質はしていますが、《1/1/1》のカプセルと酷似するエネルギーを検出。……なんでこの狂獣から』

 

 目の前にいる3分以上活動しているウルトラマンのような化物。

 そこら辺にいた使用者を食ったのかは知らないが、厄介極まりない。

 浄化光線とやらを撃って沈静化できるかもわからない、この様子ならある程度削らないと防がれるオチだな。

 暴走した巨人型兵器の対応マニュアル、はあるが狂獣込みとなればそれも役に立たない。

 

『解析を続けますが、今手元にあるものでどれだけやれるか』

 

『やるだけやる』

 

 睨み合い。

 間合い、息遣い、足の動き、その全てを見誤るな。

 

「ティァッ」

 

 動く兆しを見抜きアーダムが足を上げた瞬間に「マルブートストライク」を足元へ撃ち込みほんの数秒動きを止め、その間に高く足を上げて蹴り飛ばす。

 どうせまた広げられる大口の翼に風穴を、「ブレードヴァレット」で貫かれた口は翼の役目を失くして墜落していく。

 落ちる前に高速で接近して蹴り上げ、また飛ばす。

 落ちては蹴り上げ、落ちては蹴り上げを何度も繰り返して光線や光輪を出す間を与えない。

 頃合を狙いさらに高くへ飛んで、身を翻して急降下のキックで一気に地面に突き落とす。

 

『細胞のカケラから解析完了。遺伝子情報の原型が残ってませんからわかりませんが、付加されている特性は"ボガール"と呼ばれる種族のものに酷似してます』

 

 確か、ワームホールから流れてきた高次元捕食獣と呼ばれたモノ。

 

『よって食欲は旺盛、エネルギーは食われるだけ。……ですが、あなたの今の力なら、食われても内部から浄化や沈静化ができるはず。消化される前に片付けてください』

 

 ……そういうことか。

 

『要は食われるのは予定通りだな。了解した』

 

 こちらに向かって大口を広げて突っ込んでくるのを、抵抗せずそのまま飲み込まれた。

 消化される前にやればいい、全身に「リバースパイク」を張り巡らせて浄化光線のチャージ。

 

「フッ、ハァァ……」

 

 このウルトラマンの特性である浄化、それを最大限に扱う光の粒子「ブルームーンカタルシス」を腹の中でぶち撒けた。

 粒子を受けた強靭な腹が崩壊していく、巻き込まれる前に脱出、大口から飛び出して身を翻して着地。

 

 アーダムの身体は溶け出し、その気持ち悪い肉はドロドロと地面に液体となって広がっていった。

 

 転がる兵器の数に対して銃声も何も聞こえない。

 

 自分のカラータイマーの点滅音が、静かな夜の中にこだました。

 

 

 

 ウルトラマンの姿を解き、地上に戻る。

 

「…………」

 

 目の前に転がるスクラップ。

 案の定、ひしゃげたコックピットに挟まれたパイロットがいた。

 

 あの出血量では、助かる見込みはない。

 

「ぁ……」

 

 目の光はまだある。

 だが、仮に助け出してもその先は無い。

 

「…………まだ、死に、たく……」

 

「それで、生きている必要があるのか?」

 

 血だらけの額に銃口をつきつけ、もう重くも何ともない引鉄を引いた。

 

 そんな死に損ないが……また一つ、また一つ。

 

「………………」

 

 探せばまだいるかもしれないが、清掃係が到着する前に撤収する。

 ゆっくり時間をかけてくる連中だが、ルールとして自分らはそれと鉢合わせはしてはならない。

 

 仮に鉢合わせても、碌なものを見ないことを知っている。

 中途半端に生きている方が苦しい、死んだ方が何も知らずに済む。

 

「イズミ」

 

 強い風と共に、アレの声がした。

 

「作戦、お疲れ様でした。あぁ、あなたなりの掃除も終えたのですね。今日は何発使ったんです?」

 

「6発」

 

 気持ち悪い。

 

「6人……。見つからなかった分も含めて、また補填依頼を出さなくてはなりませ──」

 

 

 

 気持ち悪い。

 

 

 

 催した吐き気を誤魔化すように目の前の女を押し倒し、銃口を突きつける。

 

「……あぁ、また発作ですね」

 

 笑うな。

 

「えぇ、いいですよ。あなたなら許せますから」

 

 まるで銃口とキスするかのように、女は"僕"の手を掴んで動かす。

 

 吸い込まれるような、紫色の瞳。

 

見ちゃいられない(天真爛漫な)笑みを浮かべるな。

 

 震える指先、引鉄はまるでダイヤモンド。

 乱れる呼吸、引き裂かれるような頭痛。

 

 あの雪の日の光景がフラッシュバックする。

 

 真っ赤な雪に彼女を溶け込ませたあの日の光景を。

 

 

「『私を殺してください』」

 

 

 殺さなくてはいけない。

 殺さなくてはいけない。

 ころさなくては

 コロサナクテハ

 

 

 

 もっと、苦しむ

 

 

 

『それは優しさじゃない、いつか自分を殺すぞ』

 

 ……!

 

 声を聞いた。

 途端に、自分に襲いかかっていた症状は全て落ち着いていて、銃は手から滑り落ちている。

 初めての感覚だった、今までは身体が石のように重くなって動けない時間が、ずっと続いていたのに。

 

「……おや? 落ち着きました?」

 

「……あぁ」

 

 女から降りて、放心状態の身体に無理矢理芯を入れて立ち上がる。

 ……今の声は誰だ。

 これまでとの相違点の心当たりは一つだけ、この新たなカプセルだ。

 

「……アンタは、誰なんだ」

 

 何もかもがわからない18番目のカプセル。

 自分は、何の力を使っている。

 

 なんで、他の誰よりも適性があるんだ?

 

「さ、早く戻りますよ。清掃係と重なったら面倒です!」

 

「わかってる」

 

 カプセルを専用の胸ポケットに入れてアレの元に向かう。

 

 唯一残るアレのゼブルのコックピットに密着して乗り込み、共に帰投した。

 

 

 

 

 18番隊の生存者は、自分達だけ。

 

 

 

 

 *******

 

 パタン、と。

 いくつも並べた人形の内から、"初代"を倒す。

 

「……お仕事ご苦労様。退社祝いは受け取ってくれたみたいだ」

 

 モニターに映るのは、新たに作られたウルトラマン。

 

「いやー、いつかは覚悟していたがいざ直面すると面倒極まりないな」

 

"天敵である力"がベース、まだこの青年は使いこなせてないにせよ素質はある。

 変身者の名前を追加で映して、その死んだ目に一先ずは安心感。

 

「シナノ イズミ、君は優秀でいてくれるだろうね」

 

『サザキ ナギ社長、今回の狂獣災害の報告を』

 

「はいはい、例によってデータだけおくれ。私はこの通り忙しくてね」

 

『かしこまりました』

 

 有能な部下から送られてきたデータに目を通す。

 ……あぁ、またか。

 負傷者より死者の方が多い。

 しかも貴重なウルトラマンに変身できる逸材もだいぶ。

 

 老人はいい、問題は若人達だ。

 これはいけない、非常に良くない。"1号"をリリースしてから、この1年ずっとこうだ。

 多少の誤差ならまだしも塵も積もればだ、おかげさまでこちらの取り分が減っていて宜しくない。

 どうも一部の死体からは怪獣との戦闘で本来ならつかない銃痕があるらしい、それも即死の位置に。

 誰かが殺しているには違いないが、それが誰なんだか。

 

 モニターに、とある施設のカメラ映像を広げる。

 

「こりゃあいくつか在庫出して、死ぬ前に保護させるようにしなきゃだな」

 

 姉であり妹のアレが、今どこのいるのだかは実のところ知らない。

 とはいえこうもバランスが崩れてるなら、悪いがしばらくは我慢してもらうしかないな。

 素材の在庫は自分も必要だが、こんなに多いと在庫過多ってやつだろう? それならこっちに回したっていいじゃないか、うん。

 

 コンソールをいじると、指定した数のコンテナがレールに乗って製造ラインへ流れていく。

 コンテナは赤い液体の中へ浸かり、さらに流れていく。

 赤い液体のラインを超えるとコンテナは開き──

 

『『『『uuuuuuu……』』』』

 

 はい、完成。

 私の血を大量に飲ませて変生させ、親元に食料を運んでくる忠実な死徒()の出来上がりだ。

 成長し過ぎると親の手を離れてしまって独自に動くようにはなるけれどそれはそれで、良い親は子供に旅をさせるってもんだからね?

 まぁ私のクソ親父はそうでもなかったかな!! ただの性根が悪い奴だったし!!

 

「しかし、イエはどこに行ったのやら」

 

 ただでさえ、嫌な奴の気配がする。

 変なことをしなけりゃいいんだがね。

 

 *******

 

 この宇宙にたどり着いたのは、誰かからの叫びが聞こえたからだ。

 元より行く予定だった宇宙ではあったがその叫びがすごく苦しくて、まともに準備すらせずに飛び出してきた。

 

 結論から言うと、間に合わなかった。

 

 …………酷い、肉の腐った臭い。

 知らない臭いなわけじゃない、だがここまで強烈なものはなかなかない。

 その発生場所、取り返しがつかなかった存在の元へ行く。

 もう首が無くなって話すことも記憶を見ることもできない、それどころか肉が急速に腐敗して形が崩れていく。

 これを仕掛けた奴は性格が悪い、どころじゃないな。

 

 腐敗した肉の中に火花が散ったカプセルが紛れていた。

 ヒビ割れたボガールカプセル、その機能はほとんど失っている。

 それに、元の力とは別の気配がある。

 いつか聞いた、違うものが混ざっている感じ。

 詳しく調べる前にパキンと弾けて何もわからなくなった。

 証拠隠滅、手がかりは残さない、か。

 

「……狂獣として死なずに済んだだけ良かったのかもしれないな」

 

 それを成し遂げたのは、初めて見たウルトラマン。

 ……あの青いウルトラマンの力の元はよく知っている、知らないわけがない。

 

「あれは誰だ」

 

 そう考えている内に、大勢が歩いてくる気配がしたので身を隠す。

 

『『『『uuuuuuu……』』』』

 

 違う、その数に対して生気が全く感じられない。

 それこそ人の形を残してはいるが……。

 

「死体兵、じゃないな、あれは」

 

 そんな近代的なものじゃない、もっと古いもの。

 あれは相棒の方が詳しいだろうが、そんなもんがなんだって。

 眼を見開いてそれらが群がる方へフォーカスを合わせてみれば、そこには──

 

 沢山のーーのーー、辛うじて生きている者もいる。

 

『死体は素材だ。多少は食っても構わんが、息があるのは食うな。全て施設に送る』

 

 血で染めたかのような赤髪の男がそれを仕切っている。

 だが、死体は素材、だと?

 それにあの物言い、施設は施設でも断定できないが医療施設じゃない気がする。

 

『覗き見をする奴がいる。気に食わん』

 

 おっと、もしかしなくてもバレてるな。

 突如飛んできた血肉を槍に加工したような武器を、光剣で相殺してインナースペースへ逃げ込む。

 助けられる命があったのが悔しいが……、相手はおそらく相棒専門の物の怪の類だ、詳細が全くわからない今は分が悪過ぎる。

 咄嗟に位置を探知するビーコン弾をライザーから撃って仕込んだが、気づかれるだろうな。

 眼を使って辿るしかない、やりようはある。

 ……早く、一人でも多く救わなくては。

 

 心臓を指でトントンと叩いて、旧友(元仇敵)に話しかけるように呟く。

 

「アンタの子供達、本当によく似てやる事えげつないな、まったく……」

 





 ーMaterial 1ー
「人とカプセルの間の適性ランク」
 個人のクラス(役職)が大凡の目安にはなるがさらに細かく区分すると、カプセルごとに適性ランク(A〜E)が存在する。
 ランクB以上でそのカプセルを使った変身が可能となり、ウルトラマンとして戦線に立つことができる。
 また、適性を満たさないカプセルの場合でも兵装に装填してエネルギー弾としても使うことはできるため、現状全てのカプセルがランクBを下回っていても必ず1人1個はカプセルが支給される。

 イズミはランクBの適性を持つカプセルがいくつかあるが、カプセル側に負荷がかかって破損する事態に幾度も見舞われており(正確にはランクB-と思われる)、マルティスカプセルが自身初めてのランクA。
 ランクAであり且つカプセルの運用経験が良い意味でも悪い意味でも豊富であるため、詳細がわからないカプセルのデータ収集に適任として此度の支給に至っている。

 なお、イブはすべてのカプセルがランクC以下、変身の素質なし、となっている。

 ーMaterial 2ー
「ランク」
 ウルトラマンのステータスや適性などに振られているランク表記。
 A〜Eまであり、Eが最低、Aが最高となっている。
 また、ランクの文字以下に+-の表記がある場合は常時のランクではなく下記のように時折変動しているランクである事を示す。
 ・+の場合、瞬間的にそのステータスが倍加。(×2)
 ・++の場合、瞬間的にそのステータスが倍加。(×3)
 ・-の場合、状況によりステータスが下落。

 また、ウルトラマンのステータスは下記の意味がある。
 それぞれBが標準程度。
 STR(筋力):物理攻撃の威力や性能
 PHO(光子):光子エネルギー使用時の威力や性能
 CON(体力):体力及びダメージに対する耐久性能
 DEX(敏捷):飛行や走行のスピード性能




 ー次回ー

「夢なくとも呼吸は絶えず」
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