再会した小学以来の親友と女友達がなぜかバトってる!   作:うどんそば

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幼馴染と同級生女友達の気持ちを察するのは難しいよ。

人気があれば続きます。


親友VS女友達

「佐倉響花です。よろしくお願いします!」

 

 その声を聞いた瞬間、「まさか」と思った。耳から入ってくる情報だけだったからか、「どうせまた幻聴かなんかだろう」と思ってしまう。

 ゆっくり顔を上げて、その顔を見てなお、まだ幻覚かなんかじゃないかと考える。会いたいという一心で、一緒の高校に転入してくるなんて妄想をしてしまうなんて、俺も随分飢えてるのかもしれない。

 

 転校生が来るらしい。そのことは朝からずっと周囲が話していた。「遠いところから来たらしいよ」とか、「とんでもなく可愛いらしい」とか言われても、その転校生に興味が湧かなかった。別に、まだ会話もしたことも、実際見たこともない人だからだ。とんでもなく可愛いなんて、逆に関われなさそうな人じゃないか。だから、友人になれそうなら話しかけに行くか、くらいに思って、俺は話半分にそれを聞いていた。

 

 今、じっとその姿を見つめて、こっちに気がついた響花が微笑みかけてきた瞬間、さっきまで変だった頭が急速に冷やされていく。

 

「え、ええええええ!」

 

「うるさい! 鵜戸!」

 

 思わず教室中に響き渡る声を出してしまった。先生が驚いた顔で注意してきて、周囲も笑いをこらえるのに必死そうだ。でも、俺がびっくりしたことを誰が責められるだろうか。

 俺の記憶の中では未だに幼い姿のまま残っていた、一番の親友。

 

 遠くに引っ越して離れ離れになって、離れ離れになったはずの響花が、なんでここにいるんだよ!

 

「少し遠いところから引っ越してきました。仲がいい人が少ないので、皆さんとも仲良くなりたいです」

 

 転校生らしい簡単な挨拶を述べた響花は、にこっと微笑んで教卓から降りる。先生が耳打ちするようにぼそぼそ響花に話しかけ、笑顔になったかと思うと、嬉々としてこちらに向かってくる。

 

「これからまたよろしくね。蒼真!」

 

 響花は俺の机の隣に座り、昔と全く変わらない笑顔を見せ、手を伸ばしてきた。

 俺はその手をしっかりと握り、その手の感覚を確かめる。……その感覚は、たしかに小学生の時最後に別れたときのままで、ここに響花がいるんだな、と心が暖かくなっている感覚がする。

 

「久しぶり。そしておかえり。響花」

 

 俺のその言葉に、一瞬響花は驚いたような表情をした後、みるみるうちに嬉しそうな笑顔を浮かべ、

 

「ただいま! 蒼真!」

 

 とはしゃぐように言った。

 

 

 ●●●

 

 

「おーおー、転校生さんはどうも大人気みたいだね」

 

 ちょうど廊下側最後列の席にいる俺は、廊下から話しかけられる。

 休み時間になって、響花は転校生の洗礼のごとくいろいろなやつに話しかけられ、机めぐりしていた。本来の席であるはずの隣には、授業中くらいしかいない。

 

「まあ、あれだけかわいいと、人気にもなるかあ」

 

「……うちの学年で一番人気の美少女さんがそれを言うか?」

 

「あはは、私は楽だよー? 話しかけられることも減った減った! いっつもすぐ鵜戸のとこに来てたおかげかな? もしかしたら鵜戸に気があるんじゃないかなんて思われてたりして!」

 

「勘弁してくれ……」

 

 紙パックのジュースを飲みながら、あはは、と楽しそうに笑う美少女は、菜折佐奈。ブラウンの髪が揺れ、ふわっと香る女の子らしい香りが魅力を引き立てる。なんでも、一年のときにされた告白は三十を超えるらしい。……が、俺にとっては、この学校に二人の大切な友達の一人である。

 

「あーあ、私がすこーし思わせぶりなこと言っても全く歯牙にも掛けないんだから。ファンたちに刺されちゃうよ?」

 

「は? あの裏組織俺のこと狙ってんの?」

 

「私と一番仲いいのは松殿だからねえ。ま、私と一番仲がいい男の子としての有名税だと思って!」

 

 裏組織……まあ、簡単に言うと、佐奈に告白しても諦めない奴らのことで、自分たちでコミュニティーを作っているため、裏組織なんて言われている。なんでも、告白とかはしないということになっているらしい――まあやっても断られると思うが――ので、特に問題にはなっていない。あくまで好きな人を見守るクラブ? らしい。

 しかし、それに狙われているとするなら話は別。命の危険を感じる……

 

「ま、そんなに心配なくても、手は出してこないでしょ。私から望んで松殿と話してるんだし」

 

「まあ、それもそうか」

 

「ま、ここで私が泣いたりしたら後ろからぶすっといかれちゃうかもだけどね」

 

「絶対やめてくれ!」

 

 必死の形相でそういうと、佐奈は満足そうに笑った。

 そうして、教室の方に目を向けた佐奈は、つぶやくように言う。

 

「ね、鵜戸がよく話してる『親友』ってあの子でしょ?」

 

「え? あ、ああ」

 

 なんでわかったんだろう。さっき会ったばかりの佐奈は、俺がさっきびっくりして恥ずかしながらもクラスに響き渡る声を上げたことも知らないはずなのに。

 そう思っていると、ゆっくり頷いて俺の方に向き直った。

 

「わかるよ。鵜戸の様子を見てたらそれくらいは。去年ずっと一緒にいたんだよ?」

 

 一体何に向けているのか、勝ち誇るように言った佐奈はこう続ける。

 

「だから、今の所君のことを一番理解してあげられるのは私なんだからね!」

 

 確かに、”今”の俺のことを一番理解してくれているのは、この学校での友人二人だけだろう。

 

「そうだな、頼りにしてるよ」

 

 俺がそう言った瞬間、後ろから声が響く。

 

「……ねえ、その女の子、誰かな」

 

 その声は、普段の、聞き慣れていた響花の声に聞こえた。ほんの少し声は変わったようだが、俺が響花の声を間違えるはずがない。

 だが、その声は冷たさを伴っていた。ぞわっと背筋が冷たくなり、見たくない心に引っ張られつつも、なんとか後ろを振り返る。

 そこにいたのは、得意の笑顔を引きつらせ、明らかに不機嫌そうな影が差している響花だった。

 

「あ、隣のクラスに居る菜折佐奈だよ。気軽に佐奈って呼んでね」

 

「なるほど。佐奈さん、これからよろしくね。じゃあ、佐奈さんは蒼真の何なのかな?」

 

 普通の会話のはずだ。これは普通の会話のはずだ。それなのに、どうして、どうしてこんなに圧を感じるんだ。

 

「私? 私は……鵜戸の『この学校一番の友達』だよ?」

 

「へー……この学校一番の……ねえ。私は『一番の親友』だけどね!」

 

 響花は一見まだ可愛げのある表情をしているように見える。しかし、それでは明らかに繕えていないくらいのオーラが出ている。恐ろしさすら感じるほどだ。

 それだけならまだいい。でも、なんで……

 

「な、なんで佐奈まで対抗しているんだ……?」

 

 まるで二人の間にはバチバチに稲妻が走っている。

 いやおかしいだろ。なぜ、なぜだ。

 

 なんで、小学校以来の親友と女友達がバトってるんだよ!

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