みょんな呪術師 作:大嶽丸
西暦19◼️◼️年◼️月◼️◼️日。
任務概要。
◼️◼️県◼️◼️市◼️◼️町北部の集落にて複数の変死体が発見される。
調査の末、呪霊による犯行と判断。2級術師二名を派遣するも20分後に消息不明。
その後間も無く集落が壊滅。死傷者◼️◼️名。
呪術総監部は1級案件と判断。近隣で別の任務にあたっていた1級術師に応援要請をするも、数時間後に連絡が途絶える。本件を特級相当の案件に格上げする。
原因と思われる呪霊排除のため『魂魄妖夢』特別1級術師を派遣する。
それは人にあらず。それは呪いにあらず。
けれど、同時にそれは人であり、また呪いでもある。
表と裏。
光と闇。
生と死。
そのどちらにも属し、どちらにも属さない。ある意味では、この世の理から逸脱した混じり者。
──
「……また嫌がらせ、ですか」
そして混じり者とは、常に異端である。
況してやそれが人と、人ならざるものであれば尚更のこと。どちらの側にとっても異質であり、異様であり、異常であるが故に、恐れ、疎み、嫌うのだ。
1級術師。それは文字通り斜め上の特例である“特級”を除いた通常の呪術師の等級の中では最上位に位置する精鋭達であり、呪術界を牽引して行く存在とされている。
そんな栄誉ある立場に位置し、相応の実力を有する彼女は重用されているにも拘わらず、上述した理由からよく思わない一派は存在し、中には忌々しき異物を排除せんと動く者が居た。
既に四名の術師が生死不明、その中には1級術師も含まれている特級案件。精鋭たる1級術師でも特級呪霊を単独で祓うことが出来る者というのは限られる。
故に、本来であれば1級術師が数名、少なくともツーマンセルで対処にあたるはずで、しかし単独で派遣された彼女は謂わば死兵扱いにも等しい。
「ハァ……
尤も、そもそも彼女からしてみれば呪霊案件そのものが嫌がらせなので気にも留めていないが。
魂魄妖夢、現着。
『あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛』
足を踏み入れると同時に、周囲の景色が変わり、言葉にならぬ呻くような鳴き声が響く。
生得領域。自らの心象風景の具現化。それを現実に反映させるのは生半可なものではなく、呪霊が特級であるかそうでないかの基準の一つにもなる。
既にこの集落一帯が侵蝕されており、もはや呪霊の巣窟と化していた。
「ふむ……一匹だけではないな」
瞬間、感じる夥しい程の気配。それらが物凄い速度で増え、減り、より強くなっていく。
その中心にある、一際強い呪いの塊。
(……成程。産んでいるのですか、呪霊を)
俗に言う蠱毒。自らが産み落とした呪霊達……この場合は式神の方が近いかもしれない。それらを互いに殺し合わせ、より強い個体へと育成する。最低でも二級、呪力のみならば一級クラスの個体もちらほら居た。
その数、優に二百を超える。情報が正しければ現出から一日足らずでこの有り様。到着が遅ければと考えるとゾッとする話である。
そして、恐らく本体の特級呪霊は──。
『り゛ょ゛う゛い゛き゛ぃ゛』
呪いが蠢く。上下左右、四方八方から無数の呪霊が転送されたかのように空間を埋め尽くし、濁流の如く呑み込まんとする。
個ではなく群体。圧倒的な数の暴力。その物量に圧し潰されたであろう哀れな1級術師が敗れたのも納得であった。
「──人鬼」
しかし、彼女……魂魄妖夢は迫り来る殺意に微塵も動じることなくその背にある身の丈程にもなる大太刀へと手を伸ばす。
刹那、二百以上もの呪霊達が、一匹残らず切り刻まれた。
『──あ゛あ゛ぁ゛?』
自ら蜘蛛の巣へと飛び込んだ憐れで愚かな餌を下僕共が貪り喰らう様を眺めるつもりだった特級呪霊は何が起きたか理解出来ずに硬直する。
あれだけ居た、胎み、産み、育て上げた下僕が、気が付けば全滅していた。
「他愛無し。所詮は有象無象ね」
そして、疑問を解決する暇も無く肉体に一閃が走る。
『あ゛き゛ゃ゛ぁ゛ッ!?』
ぱっくりと開いた傷口から鮮血が噴き出す。身悶え、のたうち回る特級呪霊を、妖夢は意外そうな反応をする。
「おや?」
一刀両断にしたつもりだったが、腐っても特級。この程度の太刀筋では甘かったようだ。
仕留め損ね、そこから逆転されて勝てる試合にも勝てぬ羽目になれば元も子もない。妖夢は己の詰めの甘さを恥じる。
「──断命剣」
そして、再び太刀を振るう。
呪力を纏った巨大な刃が、今度こそ特級呪霊を真っ二つにした。
「まだまだ半人前……精進しなければ」
特別1級術師、魂魄妖夢。現着から僅か数分足らずで特級呪霊を祓う。
──これは、呪いの世を生きる、“半人半霊”の剣士の物語である。
苗床の呪い。
みょんの噛ませとなった特級呪霊。見た目は描写しなかったが、エイリアンクイーンみたいなのをイメージしてくださったら。
単為生殖で呪霊を無尽蔵に産む術式を持つレア個体で放置していればヤバイことになっていた。サマーオイルやメロンパンが喉から手が出る程欲しがるポケモンだが、みょんに祓われた。