私は前世でリュークと名乗る魔王だった。
しかし勇者に殺された。
数日前、水商売に誘われて淫らな格好で接客をし、金を得た。
ある時客から
「名前は?」
と興奮気味で聞かれた。
私はとっさに目についた店のメニュー票から見つけた名前…
「ココア……です」
顔を赤くしてそう答えた。マジで恥ずかしかった。
そして自分のこの世界での名前も「小子愛(ココア)」と決めてしまった。
無職になった。所持金約1万円の女。
私には対処すべき課題がある。
まず、働き手。金が尽きたら何もできない。
そして、住む場所。
暖かくて、安全で補導されない、そんなところがいいなぁ~。
公園のベンチで1人妄想。
砂場で遊んでいる男の子が見てる。
………見んな。
昨日まで、怪しい仕事先の男の部屋に住まわしてもらっていた。
………今日はどうする⁉
あれから公園のベンチで2時間悩んでいる。
「ゔぅー……ゔぅぅ…」
ベンチに正座し、両手を頭に当てながら私は鳴き声を発する。
その瞬間、風が顔面を直撃する。
「ゔぅ…ゥゥゥウゥ…サブイィィ………!!」
頭に当てていた両手は一瞬で定位置に戻る。
交番支給の服。通気性がとても良く私を寒さで殺す気だ。
そんな瞬間、私の目の前が真っ暗になった。
1枚の紙が顔面をおおっていた。
その紙は凄まじく、私の口まで塞いでいた。
両手を使い顔面の紙をはがす。
口に当たっていたところは少し湿っていた。
そしてインクがぼやけている。
インク……もしかしてっ!!
私はこの紙の同族にこの前会っていた。
「お前かよ……」
愛着がついていた。
それはスーパーのチラシだった。
子供の頃、母と魔界のスーパーに行った事があった。
魔族小学校に通っていた頃だった気がする。
母の買い物が遅く、私は駄々をこねていた。
母は優しい。
私は大人気のお菓子『チョコッレートン』という普通のチョコを買ってもらい大満足だった。
私は見逃さない。
チラシには大きく『スタッフ募集』と書いてある。
今日はもう遅いだろうか。………遅いな。
今からスーパーに行っても、面談はできないだろう。
なら……、
ベンチを乗り捨てる。行動だ。
公園なら“あれ”がきっとある。
私は見渡し、目当てを見つける。
公園のトイレの裏、芝生を少し歩いたところの長方形。
「もしもし……あー広告でスタッフ募集と見かけて……」
たったの10円。その10円を犠牲とし、私は公衆電話を使っていた。
「明日ですか…?」
ついでに面談の日も決まっていた。
聖剣が光の粉のように消えていく。
勇者は魔王を殺害した。
「遅れてごめんよ…」
鮮血で汚れた勇者は遺体を見ながらそう言った。
これで本当に良かったのだろうか……?
旅の途中で拾ったこの聖剣。
殺した相手を転生させるらしい。
「争いのない世界で……」
勇者は魔王の転生先を両手を合わせて、何度も何度も祈っていた。
しま◯らで新調した洋服。髪も散髪し、銭湯で体も洗った。
もう時間か………
目的地へ向かう魔王の背中。
「決戦だ!」
魔王はスーパーの自動ドアを通過した。
ーーーーーそこは勇者が願った世界があった
寒い日に飲むココアはうまい!
ちなみに自動販売機の缶のやつです。
次はおしるこを飲もっかな!