「いない……夜」
「しまった!」
作られた一瞬の隙に、もう本人からすると歌ではない声が小さく広がった。その瞬間、すいせいはヘラクレスの目の前から消え去ってしまった。周囲を見渡しても青の髪は見当たらず、ヘラクレスは憤慨する。それは時間稼ぎだと勘づいたからであろう。しかし、その勘は間違いである。
ヘラクレスは目に見える全ての建物を壊し始めた。しかし壊しても壊してもすいせいを見つけることはできず、ただただ、空に映る彗星の量が増えるだけであった。
「星街すいせい……正々堂々姿を現せ!」
その声に現れる程、すいせいは馬鹿ではない。一通り建物を破壊したヘラクレスは、それでも試合終了が宣言されないことに少し腹を立て、大きく空へとジャンプした。その時であった。
「……君の行方を探していた」
突如として背後から声が、すいせいの歌声が聞こえてきた。空中で体ごと後ろを向くと、そこには斧を振りかざしたすいせいがおり、今まさに振り下ろさんとしていた。その光景は、遠距離から見ると、三日月を振り下ろす巨人であった。
しかしそれを無抵抗で受けるヘラクレスではない。ヘラクレスもすいせいに対抗してか、左手で拳を作り、それをすいせいに向けて放つ。同時に、すいせいも斧を振り下ろした。二人の攻撃が当たる瞬間、二人は地面に不時着し、砂埃を舞わせた。
砂埃が晴れ、最初に立っていたのは…………すいせいの方であった。しかし、すいせいの右足がもげ、血が滝のように落ちている。一方、ヘラクレスには落下の衝撃も加わってか、右肩から心臓までの間を両断していた。
「……は。どうやら私の勝ちのようだな。最後の振り名付けるなら……『流月』なんてどうよ」
「……貴様、喉は大丈夫なのか?」
「……ん、まぁ、全然駄目。喋るのにも無理が必要」
「なら喋るな」
ヘラクレスはかろうじて動かせる左腕で、すいせいに抱擁をする。その抱擁を見た者は、一切の下心や嫌悪感が湧くことはなく、親子のハグを見るような、恩師との別れにハグをするときのような、暖かな気持ちが湧きあがっていた。
そして、ヘラクレスに緑の光が現れ始め、亀裂が入り始める。少しづつその亀裂は大きく広がってゆき、やがてヘラクレスを粉砕してしまった。
すいせいの中に残ったヘラクレスの慈悲深さは、ただただ心を暖かくする。すいせいは左の手の甲に右手を縦に置き、それを上げた。
「おつかれさまです!」
いつものようにこよりの声が響く。機械から出たばっかのすいせいは右足の有無による感覚の違いにより少しよろけたが、こよりが受け止めたため何ともなかった。
「いやぁ……めっちゃ楽しいわ」
「なら良かったです!」
他の0期生達も出てくる。
「……なんか私達だけ何回も行ってる気がする……」
「みこは3回も行っちゃった!」
「まぁ流石に考えましょうかね……さあ次……てなんか皆一致しちゃってる……」
ある一人を除いたメンバーは皆、その除いた一人に目を打ち付けられていた。
一方、某所では、主が大きく笑い声を上げて試合を楽しんでいた。
「あぁ! やっぱあいつは最高だな! 対戦相手への感謝も忘れねぇ、最高のファミリーだ!」
主は次の試合を待ち始めた。
謎の主さんが言ってますが、すいせいの最後の謎行動、あれ実は手話の「ありがとう」なんですよね。いくら戦闘狂の彼女も、対戦相手への敬意は忘れない……良くないですか?
さて次回は破壊神戦、お楽しみに!
胸板が薄いメンバーの胸盛りはありかなしか(暫く後に控えた登場者の演出のためのアンケートです。第四回戦ではありません)
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あり
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なし